2015/10/11 のログ
■倉光はたた > 実際のところ、こんな濫読が到底ためになるはずもない。
何冊目かを放り出して、ため息を付きながら目許を指で揉んだ。
それでも、はたたはしばらく前から、
空いた時間には図書館へと通い、この行為を続けていた。
込み入った事情から、自分のことを調べる必要に迫られたはたたであったが、
それには一切の手がかりが存在しない。
ならば、当てずっぽうにアタリを引くまで
資料を虱潰しにあたるしか無いのではないか――
そんな発想に至ったらしかった。
学園の授業や講義で教わらないことを調べるなら、
ネットか図書館がいい――という、学友の助言があったのだ。
なめくじにタイプライターを這わせてシェイクスピアを書かせるのを待つよりかは
マシかといったこの調査(と、言っていいものかどうか)は、残念ながら進展の兆しはない。
しかし、別のものは得られた。
わからない言葉や単語にあたるたびに、はたたは辞書や辞典を引いていた。
それを繰り返すうち――だんだん、人の言葉についての理解が深まってきたのだ。
それすらおぼつかないままでの試行だったというわけで、正気の沙汰ではなかったという話でもあるが。
■倉光はたた > さらに別の本へと手を伸ばす。
地誌、法律、哲学、異能学――異世界学、怪異学。
「怪異…………」
時空の歪みに乗じて現れる、異世界の怪物。
ヒトに害を為すもの。
ふと、本来なら真っ先に調べるべきものであるはずの、
異世界や怪異に関する文献に、ほとんど触れていなかったことに気づく。
――“人に害をなす存在は、斬る”
いつかの言葉がリフレインする。
言葉を知り、世界に触れ、この肉体の使い方を覚えて……
かつての自分がどれほどなにも知らなかったかが、じわじわと理解できてきていた。
■倉光はたた > ……いつまでも、曖昧なままなら、すべては楽なのだろう。
だけど、
知らない、を、知っている、にする、と、はたたは宣言してしまった。
異世界と怪異に関する文献の、貸出手続きを行って、
はたたは図書館を後にした。
ご案内:「図書館」から倉光はたたさんが去りました。