2016/02/03 のログ
真乃 真 > 「だっ大嫌い?」

体に電流が走ったような衝撃が走る。
真のその性格上偽善だなんだと言われることは多かったが
あんな、爽やかな笑顔から大嫌いって言われたのは初めてだった。
つらつらと自分の行いを笑顔で話される。
そこまでか!と思いながら聞いていて…
不意に自信ありげな笑みをうかべた。

「聞いたとも!確かに君の言葉を聞いた!確かに君の気持ちを聞いた!
 だけど、生憎と僕は君が思ってる通りの誰にどう思われてるのか気にしないやつだからね!
 僕はずっと変わらないともさ!君が思ってるとおりね!」

溜めて、溜めて、溜めて最高にカッコいいポーズで声高らかに宣言する。

「あ、僕は日下部君のことは翼がカッコいいだけのヤツだと思ってたけど。
 今の君はそんなの抜きにカッコいいと思うぜ!そう、僕の次くらいにだけどね!!」

こちらもずっと思っていた事を言い返す。その翼の付属品のように映っていた理沙。
だが、今はその大きな翼も目立たない!本人がそれよりも輝いてるからだろうか。

日下部 理沙 > 「知ってます」

本音に対して本音を返し。
悪意に対してなお善意で返す。
そんな真だからこそ、理沙は羨み……だからこそ、妬んだ。
今もきっとその気持ちは変わらない。
でも。
 
「だから、俺は先輩の事が大嫌いでも、妬ましくても、気に入らなくても。
とっても、とっても……信用して、信頼してるんです。『背を向けても大丈夫』な相手だって。
悪意も善意も受け止める『真乃 真』って男を……信じてるんです」 
 
嫌悪の対義が好意ではない以上。
嫌悪と好意は同居する。
これはきっと、それだけの話。
 
「ありがとうございます先輩。俺の信じた、真乃 真でいてくれて」
 
チャイムがなる。
席を立ち、足早に『次』に向かう人並みの中で、残された二人。
それでも、理沙はただ笑顔で、右手を差し出した。
 
今は、その方が大事だから。

真乃 真 > 「知ってたかー。」

そこまで言われてしまったら、もう応えるしかない。
そこまで信頼されてるならば裏切るわけにはいかない。

「そうだ。この僕を真乃真を信じても絶対に後悔はさせないとも!
 なんせ君にそこまで言わせた男だからな!」

人からここまで信頼されたのは信用されたことはあっただろうか?
こんなに腹の中の汚い部分まで全て晒して見せてくれたことはあっただろうか?
この思いに応える存在きっとそれが真が憧れた『ヒーロー』の一歩なのだろう。

「どういたしまして。そしてありがとう。真乃 真をここまで信じてくれて。」

いつも通りの自信ありげな笑みを浮かべて差し出された右手を強く握った。

後には鳴り終わったチャイムの余韻だけが残った。

日下部 理沙 > 常世島にきてからこれまで。
理沙は、大きく変わったと、自分では思っている。
しかし、この目前にいる真は……何も変わっていない。
いや、変わらずにいてくれた。
きっと、だからこそ彼は『ヒーロー』なのだろう。
変わらず、ブレず、ただ、そこにあるもの。
彼がそうであるからこそ、軸がそこにあるからこそ、廻り巡るものもある。
 
思えば、自分に関わってくれた芯のある人たちは、皆そうでは無かったろうか。
 
「こちらこそ、ありがとう……俺の嫌いなアナタでいてくれて」
 
強く握り返された右手を、あっさりと手放し。
笑顔と共に、今度は教科書……魔術教本を小脇に、背を向ける。
 
言うべことは済んだ。語るべきことも済んだ。
ならば、最早それ以上は必要ない。
 
「さようなら、先輩」 
 
背中越しに、振り返りもせずに別れの言葉を継げる。
今生の別れではない。
だが、そのつもりで別れる。

そのほうが、また会えた時に……恥ずかしくない自分でいられるような気がするから。
 
 
別れ際。窓辺から挿し込む日の光。
その一条の光に目を細めて。 
 
 
改めて、理沙は笑った。 
 

ご案内:「図書館」から日下部 理沙さんが去りました。
ご案内:「図書館」から真乃 真さんが去りました。