2017/09/06 のログ
ご案内:「図書館」に時坂運命さんが現れました。
■時坂運命 > 放課後、傾き始めた日の光が差しこむ物静かな図書館。その片隅にて。
本棚から拝借した本を机に置き、独り読み耽る少女の姿があった。
目を通しているのは21世紀以降に起きた大変容について記された歴史書にはじまり、
現代科学について分かりやすくまとめられている物など、種別は雑多。
共通点としては、どれも専門的な要素を含まない一般書籍ばかりだ。
「…………。」
パラパラとページをめくる早さは速読に近く、本当に読めているのか疑わしいところだが、
少女は手を止めずに、パタンと歴史書を閉じると別の山から新しい本を手に取る。
ここで読書を始めてから、既に二時間が経過していた。
読破したらしい本は20cm程度の山を二つ作っている。
■時坂運命 > 新たに開いた本は、歴史の中でも大変容直後の事件や、この学園で起きた騒動について書かれていた。
流し見る程度に捲られて行くページの中で、ふと手が止まった。
細い指先を、行をなぞる様にして滑らせる。
「……黙示の実行者、か。
刻印者―― とは、今ではほとんど言わないんだったかな」
俯くと長い髪がその顔を覆い隠す。
隙間から覗く、薄く開いた口元が歪み、そこから小さな独り言が漏れた。
そのページをじっくりと、物思いに耽るようにゆっくりと目を通し、瞼を閉じる。
沈黙。
静かに息を吸い込み、時間をかけて吐いた。深呼吸だ。
回転し続け空回りを始めた思考を制御しよう。
■時坂運命 > 「僕の保有する知識はどれも古すぎる……。
もっと、もっと、情報を、記録を、知識を得ないとね」
そう言って持ち上げた顔は、いつもの余裕を含んだ笑みを浮かべていた。
それでも――
「……はぁ」
冷房が利いているはずなのに、一筋の汗が頬を伝い落ちた。
どう取り繕っても、頬を伝う汗と疲労感までは隠しきれないようで、
軽いめまいを覚えると読みかけの本を閉じ、少しの間机に突っ伏して過ごすことにした。
オーバーヒート寸前の脳を休めるなら、
休憩室にでも行って冷たい飲み物を買う方が良いのだろうが、
今はそこまで動ける気もしない。
■時坂運命 > 三十分ほどが経ち、のろのろと顔を上げ目を擦りながら伸びをする。
特に眠っていたわけではないが、瞼を閉じていたので傍から見れば居眠りをしているように思われたかもしれない。
注意されなかったのはこの席が片隅にあったお陰か、単に運が良かったのか。
とりあえず邪魔されず休めたのは重畳だ。
「――ん、そろそろ立ち上がっても平気かな?
日も沈んで涼しくなったし、帰るだけならこれで問題ないね」
軽く辺りを見渡してから席を立ち、立ち眩みが無ければそのまま片付けに移行しよう。
持ち出した本は最後の一冊以外はほとんど読み終えたので、そのまま本棚に返す。
重い本の山を何度も往復して戻すのは面倒だったが、4回ほど行けば終わるのでよしとして、
残りの一冊だけは、カウンターで貸し出してもらい持ち帰ることにした。
帰り道に見た、大きくて燃えるような夕日を目に焼きつけながら、少女は家路に着くのだった。
ご案内:「図書館」から時坂運命さんが去りました。