2017/09/30 のログ
ご案内:「図書館」に鈴ヶ森 綾さんが現れました。
鈴ヶ森 綾 > カリ…カリ…
夕方の図書館に紙にペンを走らせる音が小さく響く。

髪の長いセーラー服の女が一人、
個別に仕切られた学習机ではなく、椅子の並んだ大テーブルの一角に陣取り
レポート用紙を埋めていく。

向上心や学習意欲といったものにはとんと縁の無い身だが、
経緯はどうあれ今は学生の身分。
提出物はあまり大っぴらにサボるわけにはいかない。

鈴ヶ森 綾 > 今までにこうして学生として学校に通った事は一度や二度ではない。
何しろ学校というのは年若い男女が多く集まり、
しかも外部から干渉されにくい環境だ。
餌場としては中々適している。

自然、代わり映えしない一般教養科目には飽々してくるというものだ。
レポートの文末を決まり文句で結ぶと、手にしたペンをその上にころっと投げ出す。

「さ、て…」

脇に積んでおいた幾つかの本から一冊を手にし、最初のページから軽く目を滑らせる。

鈴ヶ森 綾 > 退屈な学生生活の中での僅かばかりの関心事といえば、
異能や異世界といった、この学園で盛んに行われている超常の事象に関する研究開発。

中でも魔術に関しては自分の領分外の事象。
自身もそれに酷似した能力を幾つか使うが、これは生まれもった力。
言うなれば超能力に類するものであり、
体系化された魔術とは理を異にするものだ。

主目的は暇つぶしだが、あわよくば何か有益な力が身につけば。
そういう思いから魔術に関する基礎的な本を幾つかこうして見繕い読み進めていくが…。

ご案内:「図書館」に藤巳 陽菜さんが現れました。
藤巳 陽菜 > 「ハァ…。」

憂鬱気に溜息を吐きながら数冊の本を持って席を探す。
机の上に置いた本はこれまた魔術に関する本。
内容は基礎より一つ上ぐらいのものそして異種族が使うようなものに関する本が多い。

その長い蛇の体を器用に丸めてメガネの少女の二つ隣の椅子に座る。
その際、隣の椅子にぶつかってガタッとちいさな音が立つ。

「あっ、ごめんなさいね。」

小さな声であやまると自分前に本を目の前に広げて読もうとするだろう。

鈴ヶ森 綾 > 特に周囲に気を払っていたわけでもなかったので、
傍を通った少女の存在に気づいてはいても気には止めなかった。
二つ隣の席に座ろうとして、些細な失敗を詫びた彼女の声を聞いて初めて顔を上げ、
その全身を視界に捉え、目を丸くする。

「いえっ、大丈夫ですよ。…あら」

その印象的な姿についつい不躾な視線を送り続けてしまう。
最初はその見事と言っていい蛇体、それから上半身、顔、髪と、
要するに全身である。
そして最後に、その手にある今読み始めようとしている本。

「貴方も、魔術の勉強を?」

そうして、小さく控えめな声量で問いかけた。

藤巳 陽菜 > 「……。」

もう何度も感じた視線、珍しいものを見るような視線。
…事実珍しい身体なのだから仕方ない事だけど良い気持ちではない。
それが表情にも浮かぶ。

「ええ、こっちに移ってから始めたのでまだ全然なんですけどね。」

…相手が読んでいた本を見れば基礎的な魔術の本。
自分も読んだ事のある本。

「…ああ、その本は…もしかしたらこっちの本を読んでからの方が
 分かりやすいかもしれません。」

そう言ってメガネの女生徒が持って来ていた別の本を指さして言う

鈴ヶ森 綾 > 「あぁ、ごめんなさい。まだここに来て日が浅いものだから、見慣れないものが多くてつい…そんな事、言い訳にならないわよね」

表情を曇らせる相手から目線を逸し、申し訳なさそうに口をきゅっと結んだ。
しかし、相手は気づいたのだろうか。
女が彼女を見ていたのは、単に物珍しさからだけではない事に。

「じゃあ、あなたも今年からこの学園に?私は夏休み明けからなのだけど」

手にしていた本を一旦閉じると、相手が示してくれた本を手にとって開いてみる。
確かに、先程まで読んでいたものより幾分頭に入ってきやすい内容をしている。

「…ほんとう。こっちを先に読んだ方が良いみたい。ありがとう、…あ、お名前を聞いてもいいかしら?私は一年の鈴ヶ森綾、よろしくね。」

藤巳 陽菜 > 「…いえ、仕方ないのは分かってるから。
 そこまで気にしなくても大丈夫よ。」

それは悪意から来るものではない。
物珍しさから向けられたものそれは分かっている。分かっているけど…。
…当然視線に含まれていた他の意味には気がついていない。

「ええ、今年の四月から…えっと、異能に目覚めちゃって…
 それで、本土では生活しにくくなって…ああ、この蛇の身体なんだけど…異能でこんな風になっちゃってるの。」

自分の下半身に目をやりながら言う。
後天的に自らの身体が変質する異能、目に見えて分かりやすい異能。

「でしょ?私も師匠に言われるまでこっちから必死に読もうとしてて無駄に苦労したわ。
 私は藤巳陽菜、同じ一年生だけど私の方が先に入って来てるから分からない事とかあったら聞いてね?
 …そういう私もまだ分からない事ばかりなんだけど。」

半年で全てを知るにはこの島はあまりにも非日常的な事が多すぎる。

鈴ヶ森 綾 > 「後天的に?そう…そんな事もあるのね。私、てっきり別の世界の出身なのかと。…異能って、本当に不思議なものね」

内心、相手に共感するところがないでもない。
種の違いという決定的な差はあるし、状況もまったく異なるが、
その身に起きた出来事はある意味共通している。
そういう感情を僅かながら抱いて相手に向ける視線には、最初の興味本位で向けたものとは違う、
同情や憐憫とも異なる不思議なものが混じって。

「じゃあ、改めてよろしくね、藤巳さん。えぇ、困った時は頼らせてもらうわ。藤巳さんも、何かあったら遠慮せず言ってくれたら嬉しいわ。…あ、隣に行ってもいいかしら?」

柔らかな微笑みを相手に向ける。
そうしてから、空席一つを挟んで話し合うのに不便を感じたのか、そんなお伺いを相手に立てて。

藤巳 陽菜 > 「…まあ、そう思うわよね。
 朝、起きたらこんな風になってたから本当にもう…はあ。」

忌々し気にその蛇の下半身に触れる。
…陽菜はあまりこの身体を好いていないようだった。

「ええ、こんな身体だから色々と不便も多いし…その時は遠慮なく。
 もちろん、どうぞ。」

微笑みに対して笑顔で返す。
この島に来てから同性で同世代の知り合いというのは少ない。
そんな知り合いが増えるのは素直に嬉しい。
尻尾で椅子を引いて相手に差し出す。