2017/11/05 のログ
ご案内:「図書館」にレンタロウさんが現れました。
レンタロウ > 「………どれにしようか。」

数十分前に図書館へとやってきた男は、本棚の前で背表紙とにらめっこをしていた。
その本棚には、この世界の軍隊に関する資料が幾つもあった。
以前に知り合いに言われた台詞を思い出し、少し調べてみることにしたのだった。

「これとこれ、あとこれも読んでみるか。
 ………む、こんばんわ。失礼するぞ。」

目に付いた数本を取り出して、胸元で抱えるようにしてテーブルまで移動する。
その時、先客である少女の姿を見つければ小さめに挨拶をしてから、近くの椅子へと腰を下ろした。

鈴ヶ森 綾 > 「こんなところかしらね…」

読み進めていた本を静かに閉じると
レポートや筆記用具と共に鞄にしまい込み帰る準備を始めた時であった

「あら、もうそんな時間かしら。こんばんは…ん…失礼ですけど、初対面、でしたよね?」

薄っすらと残っていた日差しは気づけば遠く海の向こうへ消えていた
その事に気づかせてくれた相手に軽く挨拶を返し
はてと小さく首を傾げ、記憶を辿るような仕草
それから改めて相手に伺いを立てて

レンタロウ > 「うむ、そろそろ寒くなってくる時間帯だな。」

図書館へと入る時、既に日は落ちてしまっていた。
季節が冬に差しかかっていることもあり、徐々に気温が低くなってくる頃だと椅子に腰かけた体勢で答える。
その後に続いた少女の言葉には、少し不思議そうな顔をして。

「あぁ、初対面だな。
 …ひょっとして、何処かで似たような格好の者を見たのか?」

首を傾げる少女に頷きながら答える。
何故そんなことをと考えた後、もしかしてと逆に少女へと質問をした。

鈴ヶ森 綾 > 「あぁ、いえ。前にお会いした事があるのを失念してしまったかと思って。
 そういう格好の方は知り合いにはいないと思ったので…
 もし忘れていたら失礼にあたると思ったのですが、私の勘違いだったみたいですね」

何しろ図書館である。不要な会話は慎まれるべきであろう
それをふまえて声をかけるのなら相手が知人であるか、何か質問があるか
他にもいくつか考えつくがそれが頭に浮かんだのはむべなるかな

「あら…変わった本をお読みになるんですね。歴史の勉強…というのとも、少し違うようですけど?」

そのまま席を立ってその場を後にしようとしたが
ふと相手が手にしていた本に目を引かれ、その場に留まる事に

レンタロウ > 「そうか、居ないのか…
 いや、挨拶くらいしておいた方がいいかと思ったのだが…此処では良くないことなのか?」

もしかしたら、何か情報が得られるかと思ったが、どうやら違ったらしい。
少し表情を曇らせた後、特に理由もなかったと少女へと話す。
前に大声を出した時に受付の人に睨まれたことを思い出しながら、ついでに聞いてみて。

「む…これか。確かに勉強というよりは情報収集に近いな。
 俺の着ている服に似たものが無いかどうかを調べようと思っていたのだ。」

軍人に似た自分の格好。もしかすると、軍に関係した立場だったのかもしれない。
ならば、まずはこの世界に軍のことを調べてみるのも悪手ではないはず、と思ってのことだった。

鈴ヶ森 綾 > 「一応、静寂が尊ばれる場所ですから。知り合いでもないのなら特に挨拶も不要かと思いますが…
 まぁ、ですけれど…」

そこで一旦言葉を区切ると立ち上がって、今まで使っていた椅子を相手のすぐ隣まで移動させ
改めてそこに座り直して
互いの距離は先程よりも随分近づくことになった

「もう知り合いになってしまった事ですし、こうして小声で囁き合うぐらいなら咎められる事もないかと。
 それで…その、貴方と似た格好の方というのを探していらっしゃるんですか?」

なるほど、確かに改めて見ると学園という場にはあまり似つかわしくない出で立ち
学生や教師というよりは軍人のそれ
しかし今ひとつ事情を飲み込めずにいて

「ご自分の着てる物と似たもの…なんだか話が見えてきませんけど…
 良ければ事情を伺っても?」

レンタロウ > 「………。
 此処は静かにするべき場所だったのか…そうか…だから睨まれたのか…」

少女の言葉に、少し間を置いてから言葉を口にする。
どうやら此処では無闇に会話をするべきではないらしい。
受付の人は睨まれた理由が漸く理解できたと頷く。

「なるほど、許容範囲があるのだな。
 うむ…正確に言うのであれば、この俺個人に関する情報を探しているのだ。それこそ、何でも良い。」

特に距離が縮まることを気にすることもなく、直ぐ隣に座り直した少女へと答える。
人物、衣服、武装…自分が何者であるかに繋がる情報であれば、どのようなものでも構わない、と。
その後の少女からの尤もな質問に、腕を組んで。

「尤もだな。うむ、ならば自己紹介をしよう。
 俺の名はレンタロウ。記憶喪失の異邦人…以上だ。つまり、そういうことだな。」

今の自分にできる最大限の自己紹介をして、そういう状況であると言外に告げた。

鈴ヶ森 綾 > 「…あぁ、それは…」

一体どれ程の大声を張り上げたのか
どうやら、目の前の相手はかなり浮世離れした素性をしているらしい
それはこの後の彼の自己紹介を聞けば納得する事になるが
今はその返答に小さく目を瞬かせ、困ったように曖昧な笑みを浮かべる

「ええ、そういう事です。
 貴方個人の?」

彼の隣で話を聞きながら、まずは相槌をうつだけで話の続きを促して

「申し遅れました。私、鈴ヶ森 綾といいます
 まぁ、記憶喪失…の、異邦人さん
 それは…なんと言ったものか…」

その自己紹介はこれまでの彼の行動を説明するには十分過ぎた
掛ける言葉がない、というのはこういう事を言うのだろう

「それで…貴方と同郷の人間や、元いた世界の手がかりを探していた、というわけですか」

レンタロウ > 「………。」

困ったような笑みを浮かべている少女を見ると、黙ったまま思わず額を手で押さえてしまう。
だが、余り気にしても仕方ない、今度から気をつけようと心の中で思い、数秒後に手を戻して。

「うむ、困ったことに名前くらいしか覚えていないのだ。
 剣術と体術は身体に染み込んでいたようだが…独学なのか、誰に教わったのかすらも分からん。」

少女の自己紹介には、よろしく頼むと笑みを浮かべて言葉を返す。
誰かに伝えて、改めて思うのは状況は正直悪いの一言に限るということ。
この世界のことも自分のことも分からないというのは、五里霧中も良い所だった。
それをもう一度実感し、やや苦い顔になる。

「そういうことだな。まぁ、成果はまだ出ていないが…」

鈴ヶ森 綾 > 「ちょっと失礼」

そう言って手を伸ばし、相手が持ってきた本の一つを手にして何ページかざっと目を通してみる
とても異世界に繋がるとは思えないその内容にうーん、と小さく唸って

「そうですね…昔から情報収集の基本は雑誌や新聞と言われてます
 この島に拠点を置いている地方紙やタブロイドならあるいは…
 最も、いるかも分からない同郷の人をそこから探すというのは、雲をつかむような話ですが」

苦々しい表情を浮かべる彼に、自分なりに思いつく方法を一つ伝える
失礼な話だが、犯罪者として捕まったりでもしていれば顔写真なりが乗っている可能性もあるだろう

「あと、私は足を運んだ事はありませんが、異邦人の方が集まる異邦人街という場所があります
 そこで聞き込みをなさった事は?」

レンタロウ > 自分の持ってきた本の一つを手に取り、適当なページに目を通す少女。
小さく唸る様子に、ある程度予想できたが有益な情報が無さそうだと推測する。

「雑誌に新聞、地方紙にたぶろいど?…か、なるほどな。
 同郷の人間に関しては正直期待はしてはいない。まずは俺自身のことだけでも把握しなくてはならんからな。」

少女から教えられた方法を繰り返すように口にして頭の中へと叩きこむ。
早速、明日から実行に移そうと考えていると、少女からの質問に顎に手を添えて。

「異邦人街になら行ったことはある。
 聞き込みもしてみたが…有益な情報を持っている者には会えなかったな。」

異邦人街ならば、行ったことがあると答える。
成果は得られなかったと付け加える表情は、少々険しいものだった。

鈴ヶ森 綾 > 「ああ、人の不祥事や噂話を主に扱う情報誌の事です
 真偽の疑わしい情報でも載せる事が多いからあまり信用はおけないけど
 その分まっとうな所では扱わないような情報が得られることもあるから…まあ、忘れてください」

その辺りを漁っても彼自身の事となるとさすがに得られるものはなさそうだ
最後に忘れてと言い添え、もう一つとばかりに人差し指を立てて

「後はそう…学生街の方に古書店が集まってる一角があります
 あそこならここでは見つからないような異世界関係の本も見つけられるかもしれません」

この図書館も蔵書量は相当なものだが、こと一分野の事に限るならあちらの方が優る事もあるだろう
締まっていた筆記用具をもう一度取り出すと、メモ帳に周辺の簡単な地図と、ついでに自分の連絡先を書き記す

「どうか気を落とさないで。一度や二度、三度四度で見つからなくても
 次には何か手がかりを得られるかもしれませんよ」

険しい彼の表情を解そうとするように柔らかく微笑み、その手を両手で包むように軽く握り
その際に今書いたメモ書きを相手に握らせようとする

レンタロウ > 「…不祥事に噂話を扱う…そんなものもあるのか。
 なるほど、当てにしない方が良いということだな。」

少女からの説明に頷いて答える。
本来であれば、信憑性の薄い情報だろうから情報源としてみなすべきではないのだろう。
だが、今は少しでも情報が欲しい。選択肢には入れておこうと、口にする言葉と裏腹に考えていた。

「なに?そんなところがあったのか。
 そちらは全く見てなかったから、知らなかったな…」

少女から初めて店のことを聞いて、驚いた表情になる。
此処以外にも情報源となる場所の存在に、やや食い入るような身体を傾ける。
そのような場所があるなら、行かない理由は無い。

「…あぁ、そうだな。幸い、時間はまだある。
 焦らずに調べていくとするとも。ありがとう、鈴ヶ森。」

自分の手が少女の両手で包みこまれると、少女の方を見遣る。
微笑みながら言葉をかけてくる少女に少し気持ちが楽になったのか、笑みを浮かべて礼を言う。
メモ書きも、そのまま受け取って。

鈴ヶ森 綾 > 「私は本が好きなのでたまに寄るんですが…
 初めて行くと、きっと驚くと思いますよ」

単に規模もそうだが、その品揃えの『濃さ』や、その一帯が纏う雰囲気
それらが初めて訪れるものに与えるインパクトは極めて大だ
彼が求めるものが得られるかは分からないが、仮に何も得られずとも気晴らしぐらいにはなってくれるだろう

「今渡したのは古書店街への地図と、私の連絡先です
 こうして知り合ったのも何かの縁ですから、何か困ったことがあったら連絡してください
 微力ですが、力になりますから」

そうして握った手が離れる直前
最後に指先で相手の手の甲をなぞって擽るような動きを見せる
それから自分の荷物を小脇に抱えて立ち上がると、右手で小さく敬礼の真似事をした

「では、レンタロウさんの幸運を祈ります」

そのまま右手をひらりと軽く振って、棚に戻すべき本を戻してから図書館を後にした

レンタロウ > 「そうなのか…楽しみにしておこう。」

少女の言葉に、一体どのような場所なのだろうと想像を巡らせる。
そして、願わくば何か情報が得られるようにと内心で思っていた。

「む…すまんな、鈴ヶ森。
 何かあれば、頼らせてもらうかもしれん。
 何、ちゃんと礼はさせてもらうからな。」

初対面だった少女に色々としてもらい、少し申し訳なさそうに言葉を返す。
だが、頼れるものは頼るべきだと思い、少女へと言葉を続ける。
してもらったことに対する礼は、いつかちゃんとするつもりだった。

「うむ、ありがとう。気を付けてな。」

敬礼の真似をする少女に、自分も同じように敬礼の仕草をする。
そして、そのまま少女を見送れば、持ってきた資料を読み始めるのだった。

ご案内:「図書館」から鈴ヶ森 綾さんが去りました。
ご案内:「図書館」からレンタロウさんが去りました。