2017/12/05 のログ
ご案内:「図書館」にクローデットさんが現れました。
クローデット > 夕刻。図書館に入ってくる女性の姿。
「学究の場」を意識してか、彼女を知る者が見れば、普段よりやや控えめなデザインのワンピース姿である。

そして、彼女が向かうのは、魔術ではなく…ジェンダーやセクシュアリティの諸問題にまつわる資料のある書架だ。

クローデット > かつて「被害者」であった青年が何とか表社会への復帰を成し遂げ、新たな住まいを得て以降…卒業研究の合間に、クローデットは図書館に度々姿を見せるようになっていた。

青年の、あまりに素朴な「欲求」。その「欲求」への接近を許さない、彼の内なる語彙。
それを打ち破るためのヒントを提供してやる…その目的に有用な資料を探すのが、最近のクローデットの「暇潰し」だった。

クローデット > (「性教育」にまつわるものは、先日提示した2冊に加えて、あと1冊くらいあればひとまず足りるでしょう。
セクシュアリティの差異に基づく意見の違いは………彼は他人のために自分の意見を殺すことはあっても自分の意見を他人に押し付けようとはしないでしょうから…女性の問題を理解させるより、自らの…異性愛者男性の問題を掘り下げさせた方が良いでしょうね。

………そうなると、男性学ですか)

クローデットの白く艶やかな指が、書架に収まる資料の背表紙をなぞっていく。

クローデット > 書物を一瞬で読み取るような魔術は魔力面でも身体面でも負荷が大きいので、クローデットは基本的に使わない。
だから、2〜3冊をまとめて借りて、暇な時間や研究で肩が凝ったタイミングなどに内容を確かめて…「彼」の助けになるだろうものを選んで、案内の手紙を送るのだ。

無論、限度はあるものの書物は多様な読みを許す。
案内の手紙には、
「読んで分かりにくい部分があった場合、私の元にお聞きにいらしても構いませんが、信頼出来る他の大人の方に助力を請われてもよろしいかと存じます。
私なりの目的意識は持って資料をお薦めしておりますが、読み取り方そのものは、シュピリシルド様の自由です」
とも添えてある。

クローデットが推薦した資料をどのように読み取り…それを、どのように自分との関係に反映させようとしてくるのか。
クローデットは、「彼」の成長に大いなる期待と、少しばかりの不安を抱いていた。

クローデット > (…今回は、これと…これに致しましょう。
お父様とのお約束の調整もありますし、3冊は厳しそうですものね)

そうして、男性学関連の書籍を2冊書架から抜き取り、貸し出しカウンターに持って行く。

(…お父様との相談のこと、「彼」にもお伝えした方が良いかしら?)

今までまともな進級も覚束なかった「彼」には、重すぎる話だろうか。
ただ、「自分のため」だけに社会で生きようとするには、今のクローデットには、自らと社会が共同で作り上げてしまった障壁が高く、厚過ぎた。

(………まずは「お勉強」の成果を確認すべきかしら?
「共に」生きられるかどうかの前提が、そこで決まるわけですし)

そんなことを考えながら、借りた書籍を抱え…クローデットは図書館を後にした。

ご案内:「図書館」からクローデットさんが去りました。