2015/06/11 のログ
ご案内:「大時計塔」に伏見灯継さんが現れました。
伏見灯継 > 立入禁止の時計塔にも、うまい具合に景色を眺めることの出来る“展望台”のような場所がある。
そこに今、一人の少女が足を踏み入れていた。

「たッ…………かいわね、流石に」
眼下に広がる景色に、思わず呟く。
吹きすさぶ風に、彼女の短い黒髪が乱れる。
「それに今日は風も強いし。涼しくて丁度いいくらいだけど……足を滑らせるのはもう御免だわ」
切れ長の目を細め、ぼんやりと景色を眺める。

ご案内:「大時計塔」に矛海 遼さんが現れました。
ご案内:「大時計塔」にウェインライトさんが現れました。
矛海 遼 > 何処かから、鈴のような音と寝息が風の音に混ざって聞こえて来る……

良く見渡せば、端の方に座って眠っている着物の男が見えるかもしれない。

ウェインライト > 「フッフッフッフッフ……」

展望台に不気味に響く笑い声。
展望台、奥まった陰。
燃えるような金の髪。蕩かすような赤い瞳。
絶大な美貌をもったそれが立っている。

「ハッハッハッハッハ! ア――ッハッハッごふっ」

高笑いとともに喀血。

転倒/捻転/死亡。

一人で完結するウェインライト。
時計塔の奥、笑い声とモザイクのかかった血だまりを残して倒れ伏す。

矛海 遼 > 今日は授業が早く終わり、時間を潰すためにここで眠っていたが………この音は何。
この声は何。
この騒音は何。

そう、思考を回しながら目をゆっくりと開き、下を向いていた首を上に向ける。

「随分と、騒がしい物が紛れ込んだ物だ」

伏見灯継 > てっきりここには自分しかいないと思い込んでいたらしい少女が、頭上にハテナマークを浮かべながら振り返る。
「……あれ、先客がいたのね。それにしても着物の上にコートって―――」
セーラー服の上から黒い羽織を着ている少女が、自分のことを棚に上げて零す。
「……あ、失礼、起こしちゃったかしら。いや、どっちかっていうと私じゃなくて―――」
言いながら、柱の陰に視線をやる。今の高笑いと痛ましい物音は、一体全体何事か。

ウェインライト > 二人の視線を一挙に浴びるウェインライト。
普段ならば声を上げてしなを作り、艶然とした笑みを視線へ返すだろう。

だが。

嗚呼。

死んでいる。徹頭徹尾、死んでいる。

口元から肩にかけては良い子に配慮したモザイクがかかっている。
だって首、曲がってるし。

矛海 遼 > 妙な死体に視線を移す。

あぁ、聞いたことがある。
確かウェインライト、と呼ばれている者だったか。

随分な登場をする奇人を後目に、少女へと視線を向けて言葉を返す。

「どうも、此処は寝るには上出来すぎる物でな。
まぁ、結局はアレに起こされた訳だが。」

アレ、と呼んだ物に指を指しつつ、やれやれと言ったように腰を上げる。

「君も、セーラー服の上に羽織を着ているではないか」

伏見灯継 > 「ええ、いい風に吹かれながらの昼寝は素晴らしいモノでしょうね。突然現れた誰かが盛大に即死したりしないならもっと快適に眠れたと思うけれど……」

指摘され、不服そうに彼女は男に答える。

「実家から持ってきた服がこんなのばっかりなんだから仕方ないじゃない……ねえ、今はとりあえず、あなたとか私とかの格好が妙ちくりんなのは置いておきましょう?」

言いながら、彼女は死体に目を遣る。

「それよりそこの、放送しがたい死体のようなものを見かけた時って、どうしたらいいのかしら」

矛海 遼 > 「そっとしておこう、と言いたい所だが。
正直私はアレに関わり合いになりたくないと思っている。」

至極当然な意見である。

「まぁ、問題は無いだろう。
放っておけば復活する。」

ウェインライト > 「ふ、そうまじまじと見つめないでくれ。
いくら死したときすら美しいこのウェインライトであっても――いささかの照れは残る」

彼らの死角から響くフィンガースナップ。
いつの間にか死体は消え/あたかも最初からそこに居たかのように。
美貌の吸血鬼がそこに立つ。

「良い夜だ。そうは思わないかね」

風に吹かれながら揺れる金の髪。
先ほどの光景がなければひどく幻想的な笑み。

問いかけは風に運ばれ二人へ届く。

矛海 遼 > 「本来だったら夜風と夜景に酔いたかったが、そこにいる君のせいで酔いも醒めたな」

ふぅ、と軽く溜息を付いて全く違う所に視線を移している。

「良い夜【だった】の間違いだろう?カトンボ」

辛辣、唯辛辣である。

伏見灯継 > 「……え、そうなの?」
放っておけば復活する、という言葉を聞き、彼女は目を丸くした。
信じられないというより、少しその声色に歓喜の色の混ざった驚愕。
そしてコートの男の言葉通り、確かに“そのひと”は蘇った。
「うわホントに復活した」

「ええっと……そうね、いい夜だわ。少なくともここから先、数日は夢に出そうなくらいにいい夜よ」
若干引き気味な笑みを浮かべ、彼女はウェインライトの問いかけに答える。
隣から飛んで行くやたらと辛辣な応答に、二人は知り合いなのかなと推測しながら。

ウェインライト > 「君とこの僕は初対面のはずだが……カトンボ。カトンボか。
定命の者は礼儀を知らないと見える」

それともこの美しさに嫉妬したのかと。
笑い混じりの言葉が空へと溶けた。

笑みは崩さず、もう一人の女性へ視線が動く。

「比べて、そちらのレディは実に良い。
ランタンの灯りも実に美しいね」

近くの手頃なベンチへ座り込み――死んだ。

#死因・カトンボの姿を想像した際の精神的ショック。

矛海 遼 > 「あぁ、そうだな。直接会うのは初対面だが情報はこっちに入ってきている。
どうにも、初対面の相手に自身の汚い死体を見せるような美学は持っていない物でな。元ロストサイン。」

辛辣な言葉を交えながら言葉を返す

「あぁ、相手にしなくていいぞ。ところで、君も休憩かな?」

死体は意に介さず、少女への言葉を続ける

伏見灯継 > 「あ、ありがと……?」
思いがけぬ賞賛にたじろぐ。
「言及されたことは何度かあるけど、
 この灯を美しいって言われたのは初めてよ」

(ロスト、サイン……って? というか初対面なのにあの辛辣さ―――)
聞きなれない単語に彼女は引っかかる。
「……え、ええ。夜風に当たるにはいいかな、って思って。
 立入禁止にしては賑やかでびっくりしてる所」

矛海 遼 > 「まぁ………立ち入り禁止と書かれて守る者の方が少ないだろうからな。」

カツリ、と靴の先端を床に一回付けて

「やはり夜景に夜風は良い。話し相手がいるならば尚更。」

ウェインライト > 生き返った直後。矛海の言葉が突き刺さり死に至る。
畳み掛けるような死であったため、復活は一度にしか見えないだろう。

「苛烈だね、君は。なるほど……ふ、この学園も昔と変わったかと思えば、変わらぬ者も居るらしい」

憂うような声。落胆の視線。かつての学園。
思いを馳せながら足を組む。

だが、と。

「なに、良いものも見れた。その灯りは実に僕好みでね。
……ただの一度も? それは驚きだ。
この世に美を解さぬものが居ることは悲しいことだよ」

揺らめく火に視線を向けて。
失意の心を落ち着けた。

矛海 遼 > 「確かに美しい物は美しいしあの灯は美しいがあの死体は別だ。」

容赦無い。本当に容赦が無い。

「で、結局そちらはナンパか何かかな?」

伏見灯継 > 「そうね……ここ、警備の人もいないみたいだし」
興味本位で近づいてみたら、ついぞここまで登れてしまった彼女が言う。
「こんなに素敵な場所なのに立入禁止なのは勿体ない気もするけれど、
 流石にこの高さから足を滑らせたら、皆死んじゃうもの」
そう言う彼女の視界に映るのは、この僅かな時間で4回ほど死んでは生き返る奇妙な存在。
「……うん、静かなのも悪くないけれど、賑やかなのも―――賑やかすぎるのも困るわね、うん」

「私の方が綺麗だし仕方ないわ―――うん、冗談よ」
―――もしかしてこの不死者(あるいは即死者)は、この“灯火”の本質に気付いているのだろうか。
そうぼんやりと考えながらも、彼女は着物コートの男に刺された釘が気になって問いかけるのを躊躇っている。
「……初対面にしては随分嫌われてるのね、あなた」

ウェインライト > 「道を失ったのならば、新たな道を探せとさる君に言われたのでね。
ここは学園が一望できる。……思索に耽るには良い場所だろう」

初めてこの場所に来た。ここから見下ろす学園は美しい。
こういったことを知るのも、ウェインライトにとっては初めての経験だ。

「……しかし、ナンパとはいったいなんだね?」

この最も優美な貴族たるウェインライトにも、知らない言葉があったとは。
ウェインライトは静かに血反吐を飲み込んだ。

一、二、三。

過ぎ去る死の予兆。己が生きていることを確認。
ふ、と息を吐き、

「なるほど。そう誇ることもまた美徳だよ。悪くない」

そう言いながら笑むその瞳は、
"天災"とも呼ばれたその頃より衰えてなどいないのかもしれない。
すべてを見通し/あらゆる美を評価し/それを賛美する。
美の追求者、ウェインライト。

「その昔、少々彼らと敵対していたことがあってね」

敵対、などという生易しいものではないが。
あの争いは善悪の彼岸で量れるものではない。

「それもこれも、この僕の美しさが罪なのだろう」

微動する睫毛。溢れる吐息。
なるほど、珍妙な死さえなければ心奪われることすらあったかもしれない。

矛海 遼 > 「嫌いと言う訳では無いがな。
面倒は避けたい、つまりはそういうことだ。」

やや呆れの混じった声で言葉を紡ぐ

「道に迷った、か……………迷っているのは道では無いような気もしないでもないが、まあいい。」

溜息を付くと黒い髪を靡かせて、静かに夜景に視線を向ける

伏見灯継 > 一瞬、息を呑む。
彼女自身、自分が何のために動けずにいたのかは理解できていない。
言うなればそれはきっと、「息を呑むような美しさ」と呼ばれるもの。
……確かにこれまでの妙な言動さえなければ、魅了されていてもおかしくはない。
「―――……っ!」
灯継は少しだけ惚け、それからはっとしたように気がついた。

「ナンパってワードも知らないくらいの『昔』って、私が産まれるよりもずっと前だったりしそうだけれど……ううん?」
そんな永い時を生きる者達がいることを、彼女はなんとなく聴いたことがあって、知っていた。
……知っているだけで、理解ができているわけではないが。

「……うん、迷ったというより、血迷ったって所かしらね」
同意するようにして、ぽつりとつぶやく。

矛海 遼 > 「………まぁ、関わるなとは言わないが、勧めはしない。」

風を一度大きく浴びると、そのまま外側へと足を進めて行き

「私はそろそろ失礼しよう。明日の授業の準備がある物でな」

一度振り返りそちらを見ると、屋上の端へ立つ。一歩でも誤れば落ちてしまいそうな、そんな所だ。

ウェインライト > 「面倒を避けたいというのならば、わざわざ人の生きるに唾を吐かねばいい。
僕にとっては、面倒を避けたいといいながら僕を罵る姿にこそ道の迷いを感じるよ」

迷ったわけではない。
いつの日もウェインライトの道は失われていく。

でも、だからこそ。ウェインライトは、自身のためにしか戦わない。
罵られようと、傷つけられようと。
己の誇りのため、或いはその誇りを受け入れるもののため。

罵られようと、傷つけられようと。
彼が敵対の意志を持つことはない。

「僕は、最も優美で最も華麗であったウェインライト。最強にして最期の一人。
永い時を生きたけれど、何年生きたかまでは数えていないな」

彼女の問いにはそう答えた。

ウェインライト > 「去るのかね。ごきげんよう、定命の者。教師の君。
いささか短気のようだから、心やすらぐ美を見つけて心の平衡を保つといい」

嘆きはすれ、怒りはしない。
去ろうとする矛海に対して、ただただその背を見送った。

矛海 遼 > 「まさか、私はこれが素だよ吸血鬼。
短気と言われるほど頭に血が上っている訳でも敵としてみている訳でもないさ。」

ロングコートが一度大きく揺れると、一瞬、絶対零度の氷のように冷たい瞳が奇人を写す。

「あぁ、授業には出席したまえよ。そこでなら教師も生徒も平等だ。」

姿が一瞬揺らめくと、そのまま時計塔から飛び降りて姿を眩ます。
残ったのは風の音だけだ。

矛海 遼 > 「唯、美学に違いがある、とだけ言っておこう。」

言葉は小さく、夜空に消えて行った。

ご案内:「大時計塔」から矛海 遼さんが去りました。
伏見灯継 > 「授業の準備……? ……あっ」
何かを察したように、彼女は小さく声を上げた。
「あ、貴方は、その、ここの先生だったのね―――ですね?
 ……うう、いや、そうね、今更無理に取り繕う方が失礼よね」
とって付けたように丁寧な口調で問いかけ、すぐにやめる。
そしてあからさまに足元の不安な場所へと歩みを進めた男に対して、再び疑問符を投げつけるのだ。
「…………ねえ、確認だけど、ここ、だいぶ高いわよ―――って……!」
その疑問符が届く前に、男は姿を消したのであった。

「―――ウェイン、ライト」
図らずして、思わずして。彼女の口をついて出たのはその者の名だ。
無意識の内に、彼女はその響きを“美しい”と感じていた。
「変な人ね、すっごく」
くすりと笑うと、ランタンの灯はふらりと揺らいだ。

ウェインライト > ――君はそうして、全てを否定していくというのかね。

消え行くその背に投げかけようと思って、やめる。
それはとてもナンセンスだ。美しくない。

美しくない言葉が口に出そうになったウェインライトは、
ついでそのままかくりと首を曲げた。

溢れ出る白/血ではない/美しく輝く魂だ

ふわりと浮かんだ光の煌きがシャボン玉のように割れて消える。

気付けば、彼女の横。近くのベンチに腰掛けているだろう。

「奇妙とは、つまるところ誰にでもあるものだよお嬢さん。
この僕も、君も。だからこそ美もそこにある。
名前を伺ってもいいかな? ランタンの君」

伏見灯継 > 散るように消え、いつの間にか現れる。
神出鬼没のその様子に、彼女は記憶の中の“誰か”の面影を見る。

「そういうもの、かしら?
 私にもちょっと妙な所はあるけれど……あなたには及ばないわよ」

「……あ、そうね。御免なさい、名乗って貰ったのに、私ったら。
 私の名前は、伏見灯継。ともしびをつぐと書いて、ひつぎ。
 あんまり縁起のいい響きじゃ、ないけれど」
言って、彼女は手に持ったランタンを―――それに灯る灯火を見遣った。

ウェインライト > 「この世で最も美しいのが僕なのだから仕方がない」

自らを抱き、ベンチに背を預け、君を見上げる。

「だが恥じる必要はないのだよ、ミス……」

普段ならば、ファミリーネームで呼ぶのだが。
気まぐれな猫のように舌を出し。

「ミス灯継。君もまた、ひとつの美。
花園に咲き誇る薔薇が美しいように、野山に咲く花もまた美しい。
そこに貴賎はなく、ただ僕が偉大であったというだけのこと」

そういって、赤い瞳で見つめるのだ。

かつて誰をも蕩かせた魔性の瞳。
だがそこに、誰かを魅了しようという意志はない。

優しげに、受け入れるように。目を欠け月のように細めながら笑う。

伏見灯継 > 「み、みすひつぎ……なるほど、なるほどね……?」

……因みに、灯継は今まで生きてきた一六年の間、そんな風に呼ばれた経験は一度もない。
漫画の中でしか見聞きしたことのない響きに、なんだか力が抜けてしまう。

「……ふふ、励まされたような気分だわ。
 あなたって本当に、胡散臭くて変テコで妙な人だけど……なんだか嫌いになれそうにないわ」

くすくすと楽しそうに笑いながら、彼女はふらりと歩き出す。

「―――って、もうこんな時間じゃない。そろそろ私も行かなくちゃ。
 それではまた、何処かでね? 偉大なウェインライトさん」

そう告げた彼女は小さくお辞儀をすると、階段を降りてその場を去っていった。

ウェインライト > 彼女の言葉に、ウェインライトは静かに首肯する。
穏やかな笑み/閉じた口/僅かに嚥下する音。

「ああ、往くといい。ミス灯継。
この僕の美しさは永遠不滅。
ゆえに、君が僕を嫌わぬというのならば、良き関係が結べるだろう」

また会おう、そう背に告げてゆっくりと姿勢を崩す。

彼女が階段を降りる音に合わせるように。

――燃え尽きていた。真っ白に。

#死因・胡散臭死

ご案内:「大時計塔」から伏見灯継さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」からウェインライトさんが去りました。