2015/07/15 のログ
■渡辺慧 > 眼はつぶったまま。
眼だけは、つぶったまま。
硬く、硬く。それ以上は、見ないように。
どうしたって顔は、もうどうしようもないほど熱いし。
そこにまだ、彼女が、そのままでいるから――開けるわけには、絶対に。
彼女の声が聞こえる。
――あぁ……気づいた。
だから、その涙も見えないし。
その慌ててる声だけが、自らの感じれるすべてだった。
――いや、もう一つだけあった。
彼女が、まだ、触れていること。
「おッ……れが聞きたいよ……ッ」
気のせいか、吐く吐息も……熱い気がする。
言葉が、冷静に紡げない。
――あ。
……彼女の、感覚がなくなった。
目を閉じたまま。
彼女が、ひどく慌てていたのも……自分の冷静さが遠くにあるのも、分かっていた。
彼女は走り去る。
音が消える。
あの彼女は、この後、大丈夫なのか……なんて、心配が出来る程度の冷静さが――帰ってくる。
「…………ばか、じゃないよ、ばか」
疲れ、からか。
――それはいまだに残る、頬の熱さからか。
硬く閉じていたその目を開いた時には、暗くなった空が見えた。
――ハァ。
そのため息は。
ひどく熱を持っていて。
――また浮かびかけた物を、勢いよく頭を振って消した。
少年にとって。
今日の夜と言う日は。
熱帯夜、それよりも熱い……。
――眠れぬ夜になるのかもしれない。
ご案内:「大時計塔」から渡辺慧さんが去りました。