2015/07/21 のログ
ご案内:「大時計塔」にヨキさんが現れました。
ヨキ > (夜の見回り。立ち入り禁止の扉を抜け、上へ続く階段を登ってゆく。
 申し訳程度の懐中電灯を携えているのは、暗がりを照らすためというより、自らの存在を知らしめるためだった。
 夜目が利く獣の瞳は、わずかな光を吸い込んで金色の光を淡く返す。電灯の光がいっそ煩わしい。
 規則的な足音だけが、遠く反響する。

 ヨキにとって、『生徒の立ち入り禁止』は絶対の掟であった。
 見敵必殺と言わんばかりの冷たい眼差しが、塔の上下左右をくまなく見渡している)

ヨキ > (今宵ここへ入り込んだ生徒の姿は、まだ目にしていない。
 鐘楼の天辺にに続く扉を開けると、物言わぬ鐘の代わり、扉が重たく軋んだ。
 階段に滞っていた風がたちまち流れはじめ、ヨキの背を押すように吹き抜けてゆく。
 波打つ黒髪が躍るのを、空いた左手がぐいと掻き上げた。

 ――外へ出る。

 巨大な鐘の下、島を見渡す。
 夜の地と海とはその輪郭をおぼろげにして交じり合い、街の灯が鏡写しの星めいて密集し、浮かび上がっている。

 瞼を落とすのではなく、上下の瞼をいっぺんに引き上げる、どことなく獣めいた深い瞬き。
 ぱちん、とスイッチの小さな音を立て、ひととき懐中電灯の光を消す)

「…………、たしかに。
 心が誘われる場所――では、ある」

(左手の指先が、鐘を取り囲む重厚な壁の縁をついと撫でた)