2015/08/12 のログ
ダナエ > 「その格好なら、街中を歩いても違和感がない。
 言われ無き差別に遭うことも少なかろう」
溶け込んでいる、と頷きながら。

「……けじめか。邪魔をしてすまなかったな」
 ポリポリと(手甲のままなので性格にはガリガリと)頬を掻く。

背伸びをしろ、と言われれば少し笑う。
「目一杯しているつもりだ。
 ──悪いが負ける気はないぞ、防御ではな」
自尊心を見せて背伸びをする、とゴコッ、と鎧が鳴る。

「白だ。上の方に小さな茶色のリボンが、
 下の方にロスコ草の押し花が──小さな黄色の押し花が付いている」
本人なりに堅い身体を屈めて栞を探したまま、丁寧に説明する。

「騎士が空を……!?」
思わず顔を上げる。
「どのように飛ぶのだ、鳥の背にでも乗るのか、
 それとも雲に乗るのか?」
イメージが沸かず、質問を重ねる。
眩しそうに紋章を見て、少し笑う。
「ふむ……。
 どの世界でも、騎士は主と仲間を誇りに思うと見える」
気のせいかもしれないが、自分の感覚からすると、
相手は誇りを持ってその紋章を見せたように思えた。
ゆっくりと振り返り、負けじと背中のマントを見せる。
ぼろぼろのマントに薄く見えるのは、騎士団の紋章。
「金羊騎士団団員、大地のダナエ。
 ──これが私の名乗りだ。名乗り、だった」
後ろを向いたまま、笑いを含んだ声で。

アーヴィング > ……いや、市街地を完全武装で歩いてたらいわれあるんじゃねぇかなあ…
ここ、騎士の鎧とか一般的じゃねえみたいだしよ…
(自分もたぶん完全武装状態で歩いていたら奇異の目で見られるだろう
 というか通報されないだけ慈悲深いとすら言えるのではないだろうか)

いんや、邪魔になんざ思ったりしねぇよ
こうしてアンタと出会ったのも何かの縁だ
縁は大事にしねえとな?
(だから気にすんな、と笑いながら付け加えて)

おう、イイ感じの覇気だ
騎士ならそれくらいの気概がねぇと面白くねぇ
(ニィ…と、唇の端を吊り上げると、軽く戯れのように打ち込みの気だけを発して見て)

ふんふん…保護色になって見つかり難いかもしれねぇな…
あんた風は起こせるか?そいつで舞い上がれば俺の力で察知できると思うんだけどよ
(アーヴィングの異能、風の声は三次元的な知覚能力を持つ
 静止状態で意識を集中すればその効果範囲と精度はかなりのものになる)

ん?ああ…飛行魔法っつー魔法を使うんだよ
俺の場合足から魔力光を放出してその反動で飛ぶ
んで、乗騎も…あれだ。魔剣と契約した人造の翼を召還して、そいつを駆るんだよ
(と、指をくるくると回して言う
 本人的には空中でのマニューバを表現しているらしく滑らかに宙をなぞって)

おう、空は違えど俺の誇りはここにある
(と、胸を拳で叩いて)

だぁら俺は胸ぇ張って言うぜ?俺はレガリアの騎士、賢王フェリックス・ル・ケブレスの剣だと
いいじゃねえか、過去にしなくても
お前が騎士である限り、その誇りは誰にも穢せやしねえや
(世界は違えど同じ騎士
 彼女の誇りは心地よいほど響いてくる
 ここに昇った時はどこか空虚な物を抱えた胸の内は、今では弾むように楽しさを覚えていた
 縁は精霊の導きと言う、ならばこの縁を結んでくれたこの地の精霊に感謝を)

ダナエ > 「なんと!
 騎士が鎧を着て何が悪い、鎧のない重騎士など甲羅のない亀と同じだ!」
いわれあると言われ、憤慨。
正しくは脱ぎたくても脱げないのだが。
通報されたことは今のところない。
心の広い島民達に感謝しなければならない状況。

「そう言ってもらえると助かる。
 縁は異なもの味なもの、異国で異国の騎士と出会えるとは運が良かった」
しみじみと。

「力では負けたとしても気持ちでは負けたくな、ッ!?!?」
突如発せられた気に咄嗟に腕をかざすが、相手の笑みに悪戯めいたものと気づけば、
「ハッ!!」
大剣を抜き、相手が避けも守りもしなければ両脛を切り落とすような動線でなぎ払おうと。
速度は、先ほどの相手の鋭い一閃には及ぶべくもない。

「なるほど、貴公には某かの探知能力があるのだな?
 風の魔法は使えんが、強い風を起こす手は他にもある。
 やってみよう」
構え、母国の言葉で何事かを呟く。
「……む。場所が悪いな、ここでは大地から遠すぎる」
眉間に皺を寄せ、目を閉じてさらに集中する。
すると柵や外壁がメキョメキョメキョと音を立てて勢いよく押し上げられ、見事な壁となった。
「行くぞ!」
大盾で己の身をガードし、一枚の壁となったそれをこちらに向けて倒すと──風圧で突風が起きた。
大盾の向こうから「どうだ、あったか!」と叫ぶ。
壁は倒れ、崩れ落ちた。
もしあの風で栞が舞っていなければ、
この壁の残骸でかえって探索は困難なものとなるだろう。

「飛行魔法……風の魔法の高度な応用だろうか。
 人造の翼というのは、鳥のゴーレムのようなものか?」
なかなかイメージ出来ず、難しい顔。

「レガリア、それが貴公の国の名か。
 ……そうだな、今も私は騎士だ。
 たとえ暮らす世界が変わっても、私は変わらん。
 変わってたまるものか」
負けん気丸出しの表情。
「しかしオルブライト殿。
 その言葉、そっくり貴公にもお返ししよう」
少しからかうような口調なのは、
今しがた己を弔ったはずの騎士が騎士らしい誇りを口にしたからだった。
世界が変わっても、死ぬまで主の剣として、盾として生きたいものだ、と呟く。

アーヴィング > いや…でもよぉ
地元ならほら、俺ら騎士って身分保証があっから頼もしく映るんだろうけどよ
こっちじゃ俺ら外様だし…ただの完全武装の通行人だぜ?
(カリ…と頬をかいて困ったようにする
 なるほど、騎士という立場は同じだけど、感じ方はやっぱり違いがあるんだなと
 彼女の都合という物を把握していないので流石に脱げ無いとは思い至らない)

ハハッ、そうだそうだそうだ
やっぱ騎士と騎士がであっちまったら試したいよなあ!
どっちがつえぇか!
(相手が抜き放つのに合わせて胸から大剣を召還、変位抜刀
 実体化までのわずかなタイムラグの非実体状態で長い刀身を地面にひっかからないよう振り上げ、這うような一閃に合わせ、受ける
 ギン…!と鋼のぶつかり合う心地よい音を耳に、足裏で石造りの地面を削り、数十センチばかりの後退を余儀なくされる
 彼女からすれば、先ほどの剣閃や炎から感じ取った実力からすると些か軽すぎる、と感じるかもしれない
 無論、アーヴィングとて手を抜いたわけでは無い、本気だ)

ハハッ、楽しいねぇ
胸が躍らぁ
(ニィ…と唇の端を吊り上げれば犬歯が覗き
 まるで野生の獣じみた笑みを浮かべ)

ってぇ!意外に力技だなお前!?
(ズン!と重い響きと共に風が巻き上がる
 しかしすぐに驚きを押さえ込むと目を閉じ、風の声に耳を澄ませる
 渦巻く風の流れが色鮮やかな音色を奏で、舞い散る粉塵が賑やかに彩を見せる
 その情報を本能的に取捨選択を行い…)

飛行魔法ってのぁ…こういうの、さ!
(足裏に光のリングを生み出すと、そこから赤い魔力光が吹き出し、体が宙に浮かび上がる
 赤い残光を航跡として宙に刻み、左右の足を細かに動かし推力調整をすると、暴力的な推力とは裏腹に柔らかな曲線を描き
 綺麗なカーブを中空に描き旋回すると元の場所へと着地し)

おら、こいつだろ?
(と、指に挟まれているのは彼女が探していたもので、差し出す
 おそらくどこかに引っ掛かっていたのが風に飛ばされたのだろう)

む…そう来やがったか…
ま、なんだ、国家所有の決戦戦力としての騎士はもう死んだが
生き様としての騎士は捨てられやしねぇな
(ふん…と負けを認めた子供のように鼻を鳴らし、しかし口元と目元は楽しげに)

ダナエ > 「むむむ……。
 周囲の者にどう思われようと、己を貫くのが騎士道ではないのか!?」
堅い。頭も。

物理的には収まりきらない位置から現れる大剣、
その出現方法にさえ威圧感を覚えるが顔には出さない。
自分の目には非実体状態の大剣は見知らぬ素材と思えたが、
打ちつけ合って響く音は耳慣れた金属の音で少し安堵する。
距離が少し開いた。
「……どうした?
 遠慮は要らんぞ、私はワインボトルとは違う」
実力者相手にこうも強気でいられるのは、舐められたくないというただその一心。
相手は楽しそうに笑っている。その笑みを消したいと、強く思う。


「意外か? 見た目通りだろう」
ひょこっと(ゴゴッと)大盾の向こうから顔を覗かせる。
光のリングから吹き出した赤い光に、「むっ!」と目を細める。

──空に、人が浮かんでいる。

と思ったのもつかの間、相手は滑るように飛んで、すぐに戻ってきた。
「……………………ま、まるで曲芸師だな」
ぽかんと口を開け、はっとしてそれだけ呟く。
想像していたものとは全く違う、武骨さのない幻想的で鮮やかな飛行。

「おお、まさにこれだ!!」
慌てて手甲を外して栞を両手で受け取る。風に飛ばされないよう、そっと。
土埃にまみれて煤けてはいるが、それは間違いなく姫君が贈ってくれた栞。
「……感謝する。本当に、感謝する」
涙が滲みそうになり、慌てて上を向く。
「しかし、よくこれほど小さなものが舞ったのが見えたな。
 あれも何かの魔法か?」

「貴公は騎士だからそんな不自由な生き方をしているのではなく、
 そんな生き方だから騎士をしているのだな」
恐らく同類だ。くくく、と思わず笑いが零れる。

アーヴィング > あ~俺の騎士道はあれだ、俺の中にだけありゃいい
たとえば…そうだな
俺の武勲っつーのは、故郷だとそりゃもうすげぇもんだった
けど、こっちの奴らにゃ関係ねえ
だから、誇らねぇ。俺だけがそれを誇りとして持ってりゃ十分だ
(どん、と力強く自分の胸を叩く
 その笑みは、たとえどこにあろうと自分という物を見失わないという自負から来るもの)

勘弁してくれや、俺ぁ地上戦闘は不慣れでな
それに……派手にやったらここが壊れちまう
(言葉の前半は困ったように、しかし楽しげな笑みは消さず…
 言葉の後半は、瞳に威を込め、目元だけが笑わない)

俺らカエルーンの民は空の民だ
風と共に行き、精霊と共に空を舞う
ま…俺の飛行技術はテッペンに近ぇけどな?
(と驚かれればどこか得意げに、そこだけ騎士の誇りと言うより、自慢の玩具を見せびらかす子供のような稚気が混じって)

おう、良かったな
ああ、俺は…風の声が聞こえるんだよ
こう…なんつうの?周囲の風の彩りや音色が聞こえるっつーか……
あー…つまりだ、風の流れが読めて、んでもって風の中にある物なら大体の場所やベクトルが判んだよ
魔法、っつーかギフトだな。こっちじゃ異能っつーんだっけ?
(感覚的な能力なので上手く言葉に出来ず、首を捻り詰まり詰まり説明して)

おう、騎士っつーのは…希望を受けて輝かねぇといけねぇ
俺が居るから大丈夫、俺に任せりゃ大丈夫…って思わせる義務がある
国は、世界は変わっちまったけどそいつは捨てられねぇ

さて、目的も達したようだし俺もそろそろ行くわ
剣の腕…試しあいたいならそれなりの場所でやろうぜ?
ここで私闘したのがバレたら…始末書もんだわ
(風紀だからな、と付け足すと、それが面白い冗談だったかのように1人でくつくつと笑っている)

ダナエ > 「ふむむむむ……」
言葉が分厚い装甲を貫通して胸に刺さる。
場に合わせることで誇りが傷つく自分は、尊大でありながら揺るぎない自信はないのだった。

「“地上”戦闘か……」
自分にとっては戦闘と言えば地上戦闘のことである。
それに大分遅れて、水中戦闘が思い浮かぶ。
「なるほど。
 オルブライト殿は本当に空の騎士なのだな」
発想がまるで違う。鳥と亀のようだ。
何だか毒気を抜かれて、大剣を収める。
大、の言葉に相応しい時計塔を見上げて、
「壊されては困る、足場のない重騎士など赤子も同然だ。
 ……困るが、壊す時には呼んでくれ。
 見物させてもらおう」
さぞ派手で面白いのだろうとぼんやり想像する。

「風の声とはまた不思議な……魔法ではないのか。 風の民なら皆聞けるものなのか?」
よく見ても恐らく相手の耳は長くもなければ、
特別大きくもないのだろう。
栞を丁寧に鎧の中へしまい込み、そっと鎧の上から手を当てる。

「その通り。
 光の加護なく剣を振るうなら野獣と同じだ。
 騎士は民の先に行く者であり、同時に遅れた者の手を引く者でもある」
先導者であり庇護者。どちらにも正義は欠かせないと信じている。

「承知した。……飲酒に私闘か。
 仲間に捕縛されても文句は言えないのではないか」
風紀委員会のことはよく知らないが、
正義の味方に味方してもらえないような行動だと。

「栞を見つけてくれたこと、感謝する」
騎士の一礼。
「ああ、私ももう戻る」
言うなり、

──ゴッ、ゴツ、ゴッ、ゴツ……

本人的ダッシュでエレベーターへ。
ボタンを押し、中に乗り込むと、
「飛んで帰るのか?
 エレベーターに乗るのなら、ボタンを押すのは私だぞ」
先日エレベーターの使い方を教わったばかりで、とにかく押したい時期らしい。

アーヴィング > まあ、そんなもんは人によらぁ
お前にとって譲れねぇ誇りを俺は笑ったりしねぇ
俺はまあ…こんな奴だからな
お前は適当すぎる…なんて怒られたりしてよ
(ケケケ、と品の無い笑い声をあげては手をヒラヒラと振る
 誇りなんて物は人それぞれだ、たとえそれが小石であろうと、幼き日の敬愛すべき方に貰ったものなら宝石にも勝る
 それを小石と笑うのは愚かな振舞いだ)

おう、一応出来ねぇ事もねぇんだけどな
俺にはやっぱり空がしっくりくる
風を切って飛ぶ戦いが一番性に合う
あと…楽しいぜ?飛ぶってのは
(肩に剣を担ぐようにして
 取っておきの自慢をするように満面の笑みを浮かべ)

壊したら俺がとっ捕まんだろが…
っていうかここは俺も気にいってる場所だから壊したくねーの

あー…うちの故郷は、精霊に愛されるって表現があってな
まあソイツの個性、振舞い、そういうのに精霊が寄って来て、たまに贈り物をくれんだよ
んで、俺が貰ったのはこれっつーわけで、どっちかっつーと珍しい方だな
実際に声を聞いてんじゃなくて…あー触覚を空間投射してるっつーのが近ぇかもな
五感とはまた違う感覚だから上手く言えねぇや
(耳に視線が集中している事に気付けば苦笑を浮かべその考えを否定する
 自分でも良く判らないのだ
 ただ、それが風の声であるという感覚だけは間違い無い)

その辺の考えは一緒なんだな
何かうれしーね?異界の同輩っつーのはよ
って、だから飲酒っつーほど飲んでねっての
意地の悪ぃ奴
(ちぇ…と舌打ちを一つ、唇を尖らせて見せる
 不満があるのは確かだが、その見せ方は気安い相手に見せる冗談のようなもの)

………たまにゃ地面歩いて帰るのも悪くねーだろ
頼まぁ
(一瞬考えてから、こいつ妙なところでガキくせぇな…と口には出さず
 なにやらやりたそうな気配を感じれば大人しくエレベーターに乗り込む
 街並みを眺めながら歩くのも、嫌いじゃない)

ダナエ > 「……少し考えてみよう」
相手の慰め?に頷き、騎士の誇りとは、と家に帰ってゆっくり考えることだろう。

「そうだろうな。誰しも一度は鳥に憧れる……」
飛ぶのは楽しいと笑う相手に、羨ましさと憧れと悔しさの混ざり合った表情。
「しかし。地を這うことにもまた価値がある。
 ……海の底は別だがな」
負けず嫌いは胸を張る。後半はつぶやき。

「精霊に愛される、か。とても分かりやすい表現だ。
 貴公は風の精霊と相思相愛なのだな」
わりと原始的な魔法文明の世界から来たため、理解しやすい表現だと頷く。

相手がエレベーターに乗り込めば、
「いいか、これが閉じるボタンだ。
 そしてこの1を押すと……」
嬉々として要らぬ解説をしながら、地上へと帰っていくことだろう。

ご案内:「大時計塔」からアーヴィングさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」からダナエさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」にミザリーさんが現れました。
ミザリー > 学園地区に高く聳える大時計塔の上層部、
続く階段を上がれば開けた広間へと辿り着く、
緩く生温い夜の風に銀の髪は優しく揺れる…
静かな足音で向かうは広間の端の方、
学園都市が一望できる外を覗くべく柵にそっと両腕を乗せて寄りかかり、
銀の双眸を外の景色へを向けて映し出す…

「綺麗なものねー…、えぇ、わかっているわ?時間が無い事も…」

声の聞こえる範囲に誰もいないとわかっている前提での大きめな独り言。
呟いてはその声は誰にも届くことはなく夜の闇へと飲み込まれていくだろう…
瞼を少し閉じて薄っすらと微笑んだ。

ご案内:「大時計塔」にウェインライトさんが現れました。
ミザリー > 細めた眼をそのまま閉じる。
たまにはこういうのも悪くはないな、
と、心で呟き今度は声に出さなかった。

「…」

其の儘無言で暫くして、
柵に乗せた両手の内右手を離して、
その手を開き目の前付近で上に向ける。

「…」

言葉は先程同様無い、
瞼を開いて銀の双眸で上に向けた目の前の掌を覗く。
すると、何もなかったその掌の上に小さな淡い光、
微かに大きくなって行けば形をなして光だけが消えて赤色の果実が生成される、

「やっぱりこれよね。んふふ」

その赤色の果実、リンゴを口元へ持って行き一齧り、

「ん…、70点ってとこかしら?」

と、緩い微笑み浮かべてその赤色の果実を見つめた。

ウェインライト > 怪談のステップを踏む軽やかな足音。
小気味良く、華やかに踏み込むつま先。

広間に続く蝶番が歌うように軋んだ。

そうして現れたのは一つの長躯。

燃え上がるような金の髪/融かし尽くすような赤い瞳/蕩けさせるような美貌

ウェインライトと名乗る吸血鬼が大時計塔の広間に現れる。

「おや」

首を傾けると鈴のように響く声。

「先客一人といったところかな」

欠け月のように細められた赤い瞳。
それがすでにいる魔女に向けられた。

ミザリー > 赤色の果実を人齧りしてそれを見つめていたその瞬間、
僅かな物音、僅かな気配、それに反応して林檎から手を離し其れを消し去る、
まだ其方を見る素振りはない、
少し時を置いて広間に響いた特徴ある声、
確実に此方へと向けられたその声主の方向へ銀の双眸を向けてその赤に染まる瞳を見つめ返す。

「あら…、珍しいのね?この時間にこんな場所に生徒が来るなんて…どうしたのかしら?」

向けた銀の双眸をそっと閉じて眼は優しく弓なりに、柔らかくにこりと笑って見せた。

ウェインライト > 交錯する銀と赤。
受け止めるように目を見開いて見せるウェインライト。

「どうにもしていないさ。ここからの景色は美しい!
これを独占するというのはあまりにも惜しいと思わないかね、ミス!」

芝居がかった、それでいて本気のような芝居。
いや、ウェインライトにとって生きることは謳うこと。
まるでここが舞台のように大仰にステップを踏む。

「僕はここからの眺めが気に入ってね」

生徒立ち入り禁止。
そんな札も無視してやってきた。
柔らかく笑む君に向ける華やいだ笑顔。

ミザリー > 「あら…、折角私が独り占めしようとしてたのに…」

若干不満そうな表情で眉を下げてそのミュージカルに近い表現をする相手を見つめる、と、

「…ふふ、冗談よ、そうね、折角来たのだから貴方もどうぞ…?ウェインライト君だったかしら?」

不満そうな表情は一転、悪戯な微笑みへと変わり、
右手の指先でクルッと空を一回しする。
入って来てどうぞ、と言わないばかりに生徒立ち入り禁止の札を剥がし空中で炎に包まれ塵へと変わった。

「私も此処からの眺めは好きかな…」

相手の言葉に同調する様に小さな声で呟き、
外の景色に再び視線を戻した。

ウェインライト > 「エクセレント! 美しいこの僕の名を知っているとは!」

不満気な顔もなんのその。
微笑み告げられた言葉に喝采を上げるようにツタンと鳴らされる踵。

「いかにも。僕は最も優美で最も華麗なウェインライト!
そういう君はこの学園の教師かな?」

何年も昔にこの学園を騒がせたウェインライト。
その名前をよく知るものといえば、やはり教師だろう。

分かっても態度は分からず、胸に手を当て歌う。

同じく柵に背を預けるようにしてみせて、
身体を傾けながら君を見る。

背後に広がる学園の夜景。
それを浴びながら艶然と笑んだ。

ミザリー > 「噂通り、一つ一つが大袈裟なのね?…ふふ。」

彼の素振りが新鮮で何処か面白みのある表現をするものだから笑が少しこみ上げてしまった。
コホン、と小さく咳き込んで誤魔化して…

「そうね、この学園の教師になるわ?…一応ね。
受け持ってる生徒や参加してる行事は無いの、だから知らなくて当然かしらね…?」

彼の質問に答えてちらりと銀の双眸を景色から隣に来た彼へと向ける、
相変わらずの彼の喋り方と素振り、やっぱり少し面白く見えてしまうのか小さく笑う。
再び景色に視線を戻して…

「ミザリー、エーデルハイン…私の名前よ?覚えておくといい事あるかもね…」

くるくる、っと指先で三角帽子から出てる銀の髪の毛を弄びながら、
心なしか嬉しそうに微笑んだ。

ウェインライト > 「この僕の美を語るのに、過大という言葉はないものさ」

己への絶対の自信。
それをありありと表しながら胸を張るのがウェインライト。

笑みには笑みを/親愛には親愛を

踵を回し、夜景へと身体を向ける。
相手の名を聞くと指を鳴らして腰に手を当てる。

「ミス・ミザリー。その名前を、僕の美しき魂に刻んでおこうじゃないか」

美を愛でることを良しとするウェインライト。
記憶力にも自信はあったが、やはりその名前は思い出せない。

だから/といっても

態度を変えることなく、繊細な睫毛を伏せた。

「夏期休暇が終わった後はどこかを受け持つのかね?」

ミザリー > クルクルと弄んでいた髪の毛を、ぱさ。っと後ろへ流して自分の表情が相手にはっきり見える様に。
柵から体を離してくるりと正面を其方に向け、
いつからか持っていた背丈に及ぶ杖を横にして後ろに手を回し持つ。

「んふふ、君の美しい魂に私の名前なんて、傷になってしまわないかしら?」

首を小さく傾げて妖艶に、悪戯に微笑みを向ける。
まだ噂しか聞いていなかった彼という存在。
まだまだ荒いとこはあれどとても見込みがあり魅力的であり、
そして魔力も普通とは違う何かを持っている様に感じとれる。
興味が湧いて来たのか、じっと覗き込む様に彼の方を見つめ続ける…
続く彼の言葉に目を静かに閉じて…

「少しだけ、興味が湧いたから受けもとうかしら…、
夏期休暇が終わってから、とは言わないかもしれないわ?」

ウェインライト > 「傷?」

心外、といったように己の身体を抱きすくめる。
陶酔するようにしなを作って熱い吐息を吐き出した。

「この僕ならば傷もまた美しさだよ、ミス。
見給え、僕のこの美しさを。
朽ちず曇らず衰えぬこの美を!」

身体をわななかせるように、その動きで搾り出される声。
男とも女ともつかない魔笛のごとき声。

ただ美しく在ることを志すウェインライト。
美しいと褒められて見つめ続ける眼差しに、
鰻登りのようにテンションが高まっていく。

「なに。ミスのような名前ならば、
傷ではなく僕の美を彩る首飾りの一つになるだろうさ!」

指先で空を指すように突き出すと、
背後で満開の薔薇が咲いた……ような気がした。

ミザリー > 「…君は十分に美しいわ?見えている上に目の前で感じ取れるもの」

絶対なる自信を持つ彼、
性別とてどちらかわからないが自分にとっては彼、なのだろう。
其れが少しだけ羨ましくもあり、少しだけ心配でもある。
心の内に秘めた声こそ今は言葉には出さないが…

「んふふ…、嬉しいこと言ってくれるのね?其れじゃあそうねぇ…」

自らの口元に指先を添えて、
少し考える素振りを見せる、
否、実際はもう決まっている、
考えるまでもなく自分の中では、

「君に興味が湧いたわ…?夏期休暇と言わず、私の生徒になりなさい…?」

細まる眼差し、悪戯染みた表現ではなく、冗談でもない。
この声と心は彼へと向ける選択肢、
どう答えようとも此方は後悔しないだろう…