2016/07/24 のログ
ご案内:「大時計塔」に比良坂 冥さんが現れました。
■比良坂 冥 > なんとなく、また此処へと足が向いた
前に来た時は、あまり良い気分になれる場所ではなかったけれど良い出会いがあった
だからそんなことを期待していたのかもしれない
「………」
覗き窓へ前傾姿勢で寄りかかるようにして、外を眺めた
相変わらず世間は明るく、賑やかだ
明日からは夏季休校
運動部は活発になるだろうけれど、学園自体の活気は多少落ち着いてゆく
■比良坂 冥 > 「(……あ)」
補講のみとなった学園は人もまばら
上から眺めていると、そんな中に仲睦まじく歩く男女を見つける
きゅっと手を繋いで、他愛無い話なのだろうけれど、幸せそうな顔で言葉をかわしながら校門のほうへと歩いていった
「(……いいな…)」
心が、乾いてゆく
■比良坂 冥 > あの二人は今この瞬間、自分達の感情に一切の疑念を抱いていない
恋とはそういうもの
愛とはそういうもの
その感情自体には一切間違いというものは存在しない
絶対的で確定的で信頼のおける、間違いのない感情
愛を間違える時は、自分の相手への想いに疑問符がついた時だけ
でも、その時点でそれはもう愛とは呼ばない
「……だから、愛に間違いはないんだよね………」
盲信していればいい
その間だけは、絶対にその愛という感情は自分を裏切らない
相手が一方的に裏切ってきた、その時には……
「……ちょきん」
遠目に見える二人の丁度間を指で挟みのジャスチャーをするように、切る
……それで何かが起きるわけでもないのだけれど
■比良坂 冥 > 自分のジェスチャーに関わらず二人は仲睦まじく歩いていった
それはそうだ、そんな力は自分にはない
きっとあの二人はこれから色んな試練にぶつかって…
誤解や、勘違い
価値観の相違
お互いの知らなかった部分の許容
家族との摩擦
金銭のトラブル
あらゆる壁を乗り越えてゆけば、晴れて結ばれる
そしてその先でも様々な試練を乗り越え…
「…乗り越えることばっかり」
外を見るのをやめて、覗き窓の下へぺたんと座り込む
そんな面倒なことをしなくても、殺してしまえばずっと自分のモノなのに
体温を感じられなくなるのは寂しいけれど、もう誰にも盗られないし、裏切られることもないのに
死が二人を別つまで、なんて言葉は嘘っぱち
神様にだって渡しはしない
■比良坂 冥 > 乾いてきた
潤いがほしい
小さくヒビ割れた壺のようにいつまでも完全には満たされないから
自分を潤してくれる相手は選ばない
男でもいいし女でもいい
子供でもいいし大人でもいい
なんなら、人間でなくとも構わない
色素の薄い唇をぺろりと紅い舌が舐める
ゆらりと立ち上がる
お昼ごはんは何処で食べようかな
オトモダチの家にでも言ってみようか
チャリ、とポケットの中で音が鳴る
取り出したのは…鍵束
40近くはあろうかという合鍵の束だ
その半分くらいは、鍵が中ほどから折れていた
「…今日はー…この人でいっか……」
1つ選んだ合鍵をピンッと外して、鍵束をポケットへと戻す
鍵1つ1つをその相手と結びつけて記憶しているのか、
それとも何かの匂いを判別しているのか
ともかく、不敵に唇を歪めた少女は時計台を後にした
ご案内:「大時計塔」から比良坂 冥さんが去りました。