2016/10/12 のログ
大河 > 「ん?」

ヨキの呼びかけに、気だるそうに振り返る。
その視線は険しいが、敵意を帯びてるわけではない。元よりそういう目つきなのだろう。

「別に俺がどこで何を食おうが勝手だろうが。誰だあんた?」

不良じみた風貌の男だが、両の手をポケットに突っ込み
睨むような視線で威圧する様は、まさしくチンピラといった様子だ。

「用務員のおっさん…ってわけじゃなさそうだな。
それにしちゃお洒落に気を遣いすぎだしよ。」

どうやらヨキの事は知らないようだ、名前を名乗れば反応はあるかもしれないが。

ヨキ > 「君が何を食べようが構わんが、立入禁止の高所で床に食い散らかすのは危険だし不衛生だ」

大河の目付きにも動じる様子はなく、淡々とした碧眼がじっと見返す。
人間のくせ、どこか大型犬が獲物を見定めてゆっくりと距離を詰めてくるような眼差し。

「ヨキだ。ここでは美術を教えている。
 あとは学園の内外のルール違反を見つけては、こうして説教するのが仕事」

小さく笑って、名を尋ねる。

「手早く食事を済ませたろうに、このヨキに見つかるとは運が悪かったな。
 君は?」

大河 > 「ヨキ…あ~、そんな名前の奴がいるって聞いたことあるな。つってもそいつは獣人だって聞いてたけどよ。
は、男がそんな細かい事いちいち気にするなよ。まあごみは持ってくけどよ。
食いカス位鳥かなんかが食って掃除すんだろ。」

ヨキの視線に、こちらも動じることなく、悪びれもせず言い放つ。

「あ?俺?大河っつんだ、まあよろしくな。
説教だけか、残念だぜ。そっちが殴りかかってきてくれりゃあ
こっちも手を出す理由ができんのによ。」

冗談めかした様子で口にする男。
だが、男の纏う雰囲気は冗談だとは言っていない。
ヨキが獲物にゆっくり詰め寄る大型犬だというのなら
男はさながら、獲物が迂闊に飛び出すのを待ち伏せる、虎の如く。

ヨキ > 「そのヨキで合っているよ。先月から人間をやってる」

大河の反論にくっと吹き出した顔は、どこか可笑しげだ。

「細かいことを気にせぬ男は結構だが、ものは綺麗に食う方がよほど高評価であるぞ。
 大河君か。この印象深い出会いで、一発で覚えたな」

腰に手を当て、にっこりと笑う。
張り詰めていたヨキの顔立ちが、いっぺんに和らいだ。

「ははは、正当防衛か。
 君を楽しませてやれればよかったが、仮にも教師が自分から学生に手を上げる訳にはいかんよ。
 何しろ君はまだ、ヨキに殴られるほどのこともしていないし」

美術教師を名乗る割に恵まれた体格で、明るく笑う。

「それとも、口より拳で語る方が得意かね」

大河 > 「へー、ま、こんだけ異能がありゃ種族変わる位そう珍しくもねえか。」
元より異常が日常の中で生きてきた男は、初対面という事もありそこまでの衝撃は無かった様だ。

「残念ながらマナーとは無縁の生き方でよ、食えるモンは食えるときにくっとかねえと、何時死ぬかわからねえしな。」

ヨキの様子につられるように、若干態度が軟化する…とはいえ、警戒心はまだ残っているが。
しかし、次にヨキの口から出た言葉を聞くや、その目には闘志と喜色の色が浮かぶ。

「当ったり前だろ、口でぺらぺら語り合うより、こっちの方がよっぽど手っ取り早え。
何より、強い奴と戦り合うのは楽しいしな、ぶちのめせれば最高だ。
あんたは違うのか…って、その見た目でわかるか。」
体格だけで見ればそちらの側に見えなくも無いが、それにしては細い。
何より、その身形が余りにも闘争から離れている。
掴みやすい服、髪、眼鏡…喧嘩を生業とする者から見れば、ヨキの見た目はデメリットだらけだ。

「ま、俺だって進んで教師に拳振るったりはしねえよ。ここでんな事しても
仕事も生活もし辛くなるだけだしな。」

気づけば、目に浮かんだ闘志はすっかり消えている。

ヨキ > 大河の反応に、そういうことさ、と軽く返す。

「最低限の行儀でも身に着けておけば、暴力の幅も広がりはせんかね。
 大人しくしておいて、相手が油断したところをぶっ飛ばすとか……。

 いや、そういう手管は使わんか。あまり君の趣味ではなさそうだ」

軽い調子で両手を広げてみせる。

「ヨキには、君のように荒っぽい生き方は出来そうにないな。
 べらべらと喋って、言葉を交わし合う方が好きさ。

 ヨキが嵐のような暴力を振るうのは、ゲームセンターの筐体の中と食卓の上だけさ。
 ヨキの料理は、食べた者の胃袋を絞め技のように掴み取るぞ」

美味という意味らしいが、いまいち分かりづらい表現だ。

「やりづらくなる、というだけの理由だろうが、むやみに暴れないのなら御の字さ。
 教師に目をつけられてしづらくなる仕事って、何だい」

ご案内:「大時計塔」に大河さんが現れました。
大河 > 「俺の事わかってきてるじゃねえか、そういう事だよ。
こそこそ策を弄したりすんのは性にあわねえ、男なら真正面からぶつかって
その上で叩きのめしてこそだ、そのほうがスカッとするし気分いいからな。」

「ま、あんたは話した感じそうだろうさ。
別に俺は俺みたくしろって強制してるわけじゃねえ。あんたがそれがいいなら、そうすりゃいい。
何かよくわからんが料理に自信があるのはわかったが、ゲーセンでねえ…」

その長身を屈ませ、今にも絞め殺さん形相で格ゲーをするヨキの姿を想像する。
なかなかにシュールな光景だった。

「…通報されねえようにな。
あ?別に色々だよ、つってもクスリ絡みや殺しの請負は流石にしてねえぞ、ああいうのは後々も面倒だしよ。
それに、俺はいわゆる違反学生って奴らしくてな、ただでさえ真面目君の皆様に目をつけられてるのに
あいつ等がいちゃもんつける口実を増やす理由がねえってこった。」

粗暴な人物ではあるが、その辺りの一線は弁えている様だ。見たところ噓をついているようにも見えない。

ヨキ > 「いいねえ」

大河の行いを戒めたのが嘘のように、あっけらかんとした反応。

「聞いていて気持ちが良い。
 拳を振るうなら、強者を圧倒してみせてこそだ」

教師然とした堅苦しさが不意に緩む。

「ヨキにも君にも、互いのやり方があって然るべきってことだ。
 少なくとも、学内に居る間は学園のルールを守っては貰うがな。

 ゲームセンターにもいろんな子が集まるからね。
 彼らと駄弁るのは楽しいし、駄弁りに聞き耳を立てるのも退屈しない」

趣味が悪い。

「よかった。面倒な生業を明かされたら、流石のヨキもここで暴れていたやも知れん。
 はは、君は見るからに強そうだから、敵に回さないようにしなくてはね。

 …………、違反学生?」

“らしい”という伝聞調に、訝しげに眉を顰めた。

「君自身が、自分から違反をした訳ではないと?」

大河 > 「おいおい、教師がそれでいいのかよ。ま、あんたがいいならそれでいいけどよ。」

笑いながら語る男は、次に見せたヨキの反応に鼻でため息をつくと語り始める。

「何でも屋みたいな事してんだけどよ、俺の性格と異能のせいで
周りが被害を被るから何とかしろってあちこちから苦情が来たらしくてな。
余りにそれが続くもんで、気がついたら悪い奴等をぶちのめして稼いでた俺も違反学生ってわけよ。
俺自身周り何ざ気にかけてねえから、別に犯罪者扱いだろうとなんとも思ってねえけど。
つっても別に自分から迷惑かけようって思ってるわけじゃねえぞ、ただ頭に血が上って
結果的にこう、あれだ、『少し』被害がでかくなるだけだ。」

珍しく言葉を濁したのは、つまり世間の少しと彼の言う少しは違うのだろう。

ヨキ > 「人と街と学園とに迷惑を掛けなければ、ヨキはとやかく言わんことにしているでな。
 ヨキほど校則にうるさい教師はないが、コツさえ掴めばヨキほど大目に見てくれる教師もおらん」

まるで学生のようなことを自分で言う。
大河の説明に、あちゃあ、とでも言いたげな顔をした。

「ときどき落第街がいやに荒れているのは、もしや君の所為ではなかろうな……」

落第街。公には存在しないはずの区画の名が、ヨキの口から先に出た。
指先で額を掻いて、言葉を続ける。

「君が大層爽快な人間であることは判ったが、少々爽快すぎるようだな。
 何だ、戦っているうちに興奮してくるのか。
 それとも相手から煽られて怒ってしまうとか、そういうことか?

 そこまで来ると、少し勿体ないような気もしてくるな……。
 行儀といい、感情の御し方といい、身に着ければ損も減りそうだが」

大河 > 「っせえ、こればっかりはどうしようもねえんだよ。
さあな、ただ建物が崩れただのそういう話があったら、もしかしたら俺かもしれねえけど。
悪いがそういうコツは物覚えが悪くてよ、俺を説教することになったらお手柔らかに頼むぜ。」

悪びれる様子も無く語る男、全く反省してないわけではなさそうだが
かといって自制する気もなさそうだ。

「そういった器用な生き方もできねえから、邪魔してくるもん全てぶっ飛ばして生きてきた。
今更変える気もねえし、俺はそういうのが性にあってる。そんだけのこった。
後、俺には俺の生き方が、意地の張り方ってのがある、あんまし干渉してくんじゃねえ。」

そう言うと、食いカス以外のゴミをさっさとまとめると、足に装甲の様なものを一瞬で纏う。

「そんじゃ、俺はそろそろいくわ。じゃあな。」

まるでこれ以上の干渉を嫌がるかのように、別れの言葉を継げると時計塔から飛び降りる。
この高さから落ちれば即死だろうが、男は地面に軽やかに着地すると、次の瞬間には
何処かへと飛び跳ね、消えていった。

ヨキ > 「“お手柔らかに”出来るかどうかは、説教する内容にもよるな。
 建物、やっぱり崩してるのか……」

どこか思い当たる光景でもあるかのように、視線がわずか上を見遣る。
土地勘のある者の顔付きだ。

「それが君の性に合っている、と言うのなら、ヨキはそれ以上何も言わん。
 ヨキ自身、悪習が街に蔓延るのを嫌うのと同じで……助言もまた、過干渉たりうるからな」

目を細めて笑う。
そうして突如として大河の足を覆う装甲の現出に、ほう、と感心の声を零す。

別れを告げた相手が宙に身を躍らせるのを目にして――それきりだった。
相手がどのように着地したかも、見届けさえせず。
やれやれ、と笑って息を吐く。

しばしの後。

床に散らかったゴミは綺麗に片付けられ、汚れが拭き取られていた。

ご案内:「大時計塔」からヨキさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から大河さんが去りました。