2016/10/24 のログ
ご案内:「大時計塔」に因幡幸子さんが現れました。
■因幡幸子 > 秋の夜。なーんて一口に言っても10月後半ともなれば実際は冬に近いってもんです。
それが風を遮る一切の無い高い所ともなれば尚更で、ファー付きフードを目深に被った不審人物こと因幡幸子こと私は立ち入り禁止の誘惑に負け
夜中にこうして忍び込んだ事を早々に後悔しそうになる。
「う"っわ寒ぅ……なんかこう……凍死する程じゃないけど堅実に体調を崩していく系の寒さですね!」
フードからロップイヤーのようにはみ出る耳を揺らしながら白い吐息を寒さに負けじと散らしもし、
その気になれば乗り越えてしまえそうな落下防止柵に手をかけて私はお空を見上げました。
そう、忍び込んだ事を早々に後悔しそうでだがしかし後悔しない理由が此処にあるっ!
「ま~でも寒い日じゃないとなーぜかお星様って見えないんですよね。嫌がらせですかね。」
まるで宝石箱をひっくり返したような夜空に私の真っ赤なお目目が愉しそうに細くなる。
生憎と星座に諳んじているような身の上じゃあないんですが、理由も無く星を見たい時もあるんです。
それが若さって奴なんですよ……等々独り不気味に笑うといよいよもって不審人物度が高まるんですが
高まった所で何も無いのでどうでもいいことなのでした。
■因幡幸子 > 「ん~……しかしこう……私の所とはちょっと星座が違うようなそうでもないような……
星座の本でも持ってくれば良かったかな?」
ファッキンコールドな中、持参した水筒から暖かい珈琲を喫して身体を温めながら私が唸る。
おまけに天体望遠鏡とかもあれば尚結構な所ですが、周囲を見回しても3分100円で稼動しそうなそういう代物は見当たらない。
立ち入り禁止区域なのだから当たり前っちゃ当たり前なんですが、そんな事はぶん投げて不満顔。
「おっ……何か光った!雷……ってんな訳ないか。じゃあ爆発?気の早い誰かがハロウィンの悪戯でもしたんですかね?」
その時眼下に望む街で、瞬くお星様のよーに何かが光り、明るけりゃ月夜とも思わない私の感心がそっちに向きました。
位置的に歓楽街の一寸奥、此処に来て日が浅い私でも知り得る悪所の悪所、落第街のほうでした。
噂によるとトゲ付き肩パッドをつけた屈強なモヒカンですら生き残れない修羅の国状態だとかなんとか。
■因幡幸子 > 「お菓子をくれても悪戯するぜぇー!な類でしょうか。いやあ此処からだと勝手に想像出来ていいですね!」
電飾のようにぴかぴかと不自然に明滅する様を他人事のように見守り隊。総勢一名。
あの中では意味不明な単語の羅列を叫びながら、花火のように散っていく人達が居るのかもしれないし居ないのかもしれない。
実際はもっと別の事が起きているのかもしれませんが、観測出来なきゃ想像が真実なので私は独りで愉しそうにするのです。
愉しそうにするんですが、流石にこんな所に一晩居続けるようなマゾでは無いので暫くしたら鼻歌混じりに御暇しましょう。
帰路の折にはもう星とか謎の光とかはどうでもよくなっていて、私の頭には暖かいお風呂だとか明日の時間割だとかが居座っていて
クラスメートの噂話を聴くまではすっかりと忘れていたのでした。ちゃんちゃん。
ご案内:「大時計塔」から因幡幸子さんが去りました。