2016/11/16 のログ
■滝川 浩一 > 「お、出来た…」
思い通りに物品が完成して、そう声を出す。
無人航空機。通称UAV…昨今ではドローンとして有名な一品だ。
そのUAVとそれを管制し、操作・録画してデータとして保存するためのノートPC。
それらを思い描いて、異能を使用した。
どうやら成功だったようだ。
無事にそれらの生成は成功。形だけ見れば完璧なUAVとノートPCだ。
次に生じる問題はその性能だ。異能で作りだした物であるならばそれなりの性能を有しているはずだが…
しゃがみ込んで折りたたまれたノートPCを開き、起動する。
起動すれば直ぐにUAVの管制画面へと移り、様々なアイコンのUIに囲まれてカメラに映ったものを画面に表示させるモニターが映っていた。
当然の如く、UAVを起動してないために画面は真っ黒だ。真っ黒過ぎて自分が映るくらいである。
「よし…次はこいつだな」
UAVを手に取り、機体下部を覗き込む。
機体下部には外殻と同じ色をしたカバーがついており、それに指を引っ掛けてプラスチック製のそれを取り外す。
中には白色で『○』と『-』の書かれたロッカースイッチが取り付けられており、それのスイッチをオンにする。
その直後、UAVの機能が稼働し、カメラが音を立ててピントの調節を開始。
主翼の補助翼、フラップ。そして水平尾翼の昇降舵、垂直尾翼の方向舵を動かして調節を開始し始めた。
よく機体下部を見ればランディングギアに相当する装置が無いが大丈夫なのだろうか。不安である。
「とりあえず、物は試しだ。落ちたら落ちたでもう一回トライということで…」
PCの画面に目を移せば、しっかりとカメラと連携が取れているようでカメラが映した情景がしっかりと画面に映っていた。
立ち上がって、UAVを構えれば、勢いをつけて投擲する。
UAVは真っすぐと飛んで、しばらく滑空すれば、プロペラを回転させて飛んで行った。
「おぉぉおお!!」
つい、声が出てしまう。次の瞬間、しまったと言った表情で口元を覆えば、PCの方へと目をやった。
■滝川 浩一 > PCの画面を見れば、UAVに取り付けられたカメラが街の夜景を映していた。
興味深そうにそれを見ていれば、PCのキーボードを操作する。
夜景を観察するためにわざわざここまで、迷彩装置で消えてやって来たわけじゃない。
黒い塊の捜索。
今回、ここまで来てUAVを飛ばした理由はそれだ。
今までは自分の足で路地裏や歓楽街、落第街などの治安の悪い地区。転移荒野などの危険が多い地区を調べて回ったのだが特にこれと言った収穫は無かった。
探索のみならず、人々へ聞き込みも行ったのだが、これも成果なし。そもそも黒い塊の存在を知らない人物が半数以上居た。
あれだけの事件があって、もう忘れ去られるまで収束している。
その事実にまるで自分が取り残されているような錯覚に陥る。
「……いや、そんなことはない。そんなことは……」
拳をぐっと握る。
こんな所でくたばって忘れ去られてたまるか。
絶対に生き残ってやる。何が何でも、自分を汚染しているクソ虫を取り除いてやる。
その為に…その為にだ。安全な取り除き方を探し出さないといけない。
それを探し出すためにはサンプルが必要だ。黒い塊のサンプルだ。
「…そう簡単に見つかるわきゃねぇか…。…お、いい設定はっけーん」
画面を見据えて、路地裏を徹底的に探索する。UAV一基ではやはり無理があるだろうか。
そう考えつつ、設定を見ていればよい物が見つかった。
『魔力サーモグラフィ―』。文字通り、サーモグラフィーカメラを起動して、熱の代わりに魔力を探知するというものだ。
要領は従来のサーモグラフィーと変わらず、魔力の濃度が濃ければ赤く、低ければ青い。
これは使えると考え、画面をそれに切り替える。
「うわ、真っ黒。…人は若干青いんだな。逆に魔法を用いたパレードとかは真っ赤だな…」
顎に手を添えて、画面に映った風景にそう感想を漏らす。
建物は大概は魔力を帯びて無いため真っ黒。通りに居る人々はほとんどが青く、一部の人間は若干赤く映っていた。
特に、魔力を用いた催し物やパフォーマンス、パレードを行っている場所は真っ赤に映っており、魔力の濃度がどれだけ濃いか伺うことが出来る。
それに目を眺めていると、ふと気になるモノが映り、目を細める。
「そこ、ズーム。………やっぱり居やがったな」
路地裏に少し赤い反応を発見した。
それにズームをすれば、明らかに人間ではない液体がウヨウヨと動いていた。
やっと見つけた。黒い塊だ。
異能を使えばこうも簡単に見つけられるなんて、異能様様、異能万歳である。
■滝川 浩一 > PCのキーボードをいじり、UAVへその物体の追跡を命令する。
ジィィィイとカメラが駆動し、黒い塊をマークすればその上空を旋回して追跡を開始するUAV。
不幸中の幸いか、常世祭の影響で街は活気があふれており、UAVのプロペラ音は人々の耳には入っていなかった。
「……よし、行くか」
立ち上がって、PCを折り畳めば、それを手に持って歩き出す。
先ほどのバッヂを生成すれば、それを胸に装着して姿を消した。
扉が開き、再度、大時計塔には足音のみが響くだろう―――
ご案内:「大時計塔」に滝川 浩一さんが現れました。
ご案内:「大時計塔」から滝川 浩一さんが去りました。