2017/06/10 のログ
ご案内:「大時計塔」に暁 名無さんが現れました。
暁 名無 > ──月が明るい夜は、何故だか高い所に来たくなる。

「誰か居るわけでもねえってのに、どーしてえっちらおっちら時計塔昇ってんのかね、俺は。」

愚痴と一緒に最後の一段を踏みしめて、ようやく辿り着いた時計塔は、案の定先客の気配は無い。
もしかしたら誰か居るかも、という期待も淡く消え去って、俺は肩を竦めた。

「ま、いーですけどー。」

胸ポケットから煙草を取り出すと、早速咥えて火を点す。

暁 名無 > 「さて参ったな……」

何か目的があって来た訳じゃない。
たまたま夜空を見上げたら、たまたま月が綺麗で、ふらっとここに来てしまっただけ。
なので一人でこうして煙草をふかしていても、何だか落ち着かない。

「こんな事なら歓楽街のビル、適当に上れば良かったな。」

溜息と共に吐き出した煙を目で追いながら、とりあえずで月を見上げる。

暁 名無 > このままぼーっとしてるのも、悪くないかもしれない。
そう思い始めたのは、三本目の煙草を取り出した頃だった。

思い返せば、昔から屋上や時計塔の高い所に上っては、意味も無くボーっとしていた気がする。
当時は単純に、高い場所へのあこがれが強かったように思えたが、案外それを抜きにしても高い所が好きなのかもしれない。

「まあ、何とかと煙は高い所が好きって言うしな。」

昔はけっして馬鹿じゃなかったし、今でも馬鹿では無い自負はあるけど。
時折薄い雲が掛かって朧げに輝く月を見上げながら、俺は明日は何をしようかと考えていた。

暁 名無 > 「食料の買い出しに行って、資料纏めて、それから──」

それから、どうすっか。
どこか美味い飲み屋でも探してみようか。
ぼんやり考えてるのが悪いのか、存外やりたい事が少ない事に気付く。
日頃忙しさに追われている所為というのも、あるのかもしれない。

「ま、明日の事だ、明日考えるか。」

吸い終えた煙草を焼きつくしてから、俺はさっき上って来た階段へ足を向ける。
確か職員が使えるエレベーターもあった筈だが、どうもアレは使うのに抵抗がある。
理由は解らない。解らないが、階段の上り下りが面倒臭いという以外にデメリットも無いので放っておくのだ。

「さて、カップ麺が一番安いスーパーはどこだろうな。」

階段を下り始めながら独り呟く。
我が辞書に自炊の文字は、未だ無い。

ご案内:「大時計塔」から暁 名無さんが去りました。