2017/10/24 のログ
■鈴ヶ森 綾 > 長い階段を登りきり、長い階段を登りきり、吹きさらしの時計塔頂上部へとやってくる
街中には先日の台風の名残がそこかしこに残っているのだろうが
ここから見る景色になんの関係もない
空には雲ひとつ無く、星と街の明かりがそこから見える天と地とを覆っている
外縁の金属柵の傍に立ち、そんな景色を眺めながら
身体の中に溜まった悪いもの搾り出すように、長い息を吐いた
■鈴ヶ森 綾 > 風は無い
数日前の冬の訪れを思わせるような寒さも、今は鳴りを潜めている
腰の高さに設置された柵に身体を預け、上体を少し乗り出す
皮膚に触れた金属の冷たさに肌が若干粟立つが、不快さは感じない
「…今日は、三日月辺りだったかしらね」
ぽつりと呟きを漏らす
少し西の空を探してみたが、この時間では既に沈んでしまっているだろう
■鈴ヶ森 綾 > 些か物足りなくはあるが、それよりも冬の気配が遠のいた事を喜ぼう
冬は嫌いだ。この身体を得てから幾度越えてきたか分からないが、それでもだ
きっと、自分が消滅するその日まで、永遠に克服する事はないのだろう
女郎蜘蛛は春に生まれ、秋に子を成し、冬には死ぬのが常なのだから
そこから外れて生きる自分のような存在でも、その宿命は生涯付き纏うようだ
「……はっ」
それを笑い飛ばすように、微かに声が漏れる
小さく足を振り上げ、靴のつま先で柵を蹴るとカシャンと乾いた音が響いた
■鈴ヶ森 綾 > それから暫くの間、何をするでもなくぼんやりと夜空を眺めていたが
不意に柵から身体を離すと、のんびりとした足取りで塔の中へと戻っていく
そうして来た時と同じように、一歩一歩階段を踏みしめて時計塔を後にした
ご案内:「大時計塔」から鈴ヶ森 綾さんが去りました。