2018/08/15 のログ
白鈴秋 > 「流石に無傷って事はねぇか。まぁ鼻血だけで済んで良かったってところだな」

 少しだけ笑いを浮かべる。
 鞄をガサガサと漁り、ティッシュを取り出した。

「とりあえずこれ使え。詰める方が楽だろうし、それと病院も行っとけよ。どっか折れてるといけねぇから、今は痛みねぇだろうけど、後数分もすると痛み止め切れるから」

 両手でずっと押さえているのも大変だろうし、ティッシュを渡し、ちゃんと病院にいけとそう伝えた。
 それから少し首を捻った。

「時空神隠し? 初めて聞いたな……まぁ、たしかにその二つに比べや空の上はまだ運が良かったな」

 思わず笑ってしまう。本当に運が良い、地球はむしろ地面の中や海の底じゃない方が珍しいのだから。

「あ? ……あぁ、いやこれは生まれつきだ。人相が悪ぃんだよ」

 怒ってるかと言われればそう答えるしかない。少し罰の悪そうに頬を搔く。

アリス >  
「ティッシュありがとう、それと助けてくれてありがとう」

鼻血を拭いた。さすがに男子の前で鼻にティッシュを詰めるわけにはいかない。
さっきまで高度4000メートルにいたけど、花も恥らう乙女なのだから。
んん?
乙女?
あ、髪がボサボサ! ありえない!!

慌てて櫛を錬成して髪を梳いた。
もう二度とスカイダイビングは御免。

「時空神隠しって言って、誰かが時空間系の異能を使ったら生まれる世界の歪みがあるの」
「それに巻き込まれたらタイムスリップしたり、あるいは遠い場所に飛ばされたり」
「カーネギーメロン大学のモラヴェック教授が提唱した……あ、その話はどうでもいいとして」

にっこり笑って服の裾を指先で直して。

「私はアリス。常世学園一年、アリス・アンダーソン。あなたは?」

そう言って相手の名前を聞いてから、小首を傾げた。

「ごめんなさい、私てっきり……」

余計な手間を取らせたから、怒っているのかと。
体を捻ったり小さく跳んだりしながら、体のダメージを確認した。

白鈴秋 > 「気にするな、あの状況で見捨てる方が気分わりぃ」

 そんな事を言いながら腕をヒラヒラと振るう。焦った表情などを見せておきながら何をといったところだが。
 櫛を作り出すのを見て便利な能力などと呟く。

「……あぁ、つまりなんだ。どっかの誰かの二次被害でぶっ飛ばされたって事か。それにタイムスリップって……ホント運が良かったなお前」

 クツクツと笑ってしまう。九死に一生どころではない確立で生き残ったという事のようだ。

「学年としてはタメだったのか、てっきりどっかの中学生か小学生だと思ったぞ」

 落ちてる最中でしっかりと見る余裕が無かったとは言えとてつもなく失礼な事を言う。
 そしてさっき置いた缶コーヒーを拾いなおして。

「白鈴秋、同じ1年だ。まぁこれもなにかの縁だし学校でもよろしく頼む」

 と軽く挨拶をした。
 それから少し笑って。

「いいって、よく言われるから気にしてねぇ……そんなことより体、問題ねぇか?」

 もう慣れっ子の事で謝られたためそれは問題ない、
 だが相手が捻ったり飛んだりと確認しているのを見てむしろ相手の体の状態の方が心配になった。

アリス >  
相手が自分を助けた理由は、随分とシンプルなものだった。

「そう? でもそれで命を拾ったんだから、私はツイているわ」
「空論の獣(ジャバウォック)。空中でパラシュートを作れる異能よ」

ドヤ顔で説明しながら使い終わった櫛をよく冷えた保冷剤にして首筋に当てた。

「元々、時空神隠しが存在を疑われるレベルで低確率で発生するものだから。貴重な経験ね…」

深く重い溜息をつく。
こんなこと、パパとママになんて説明すればいいのか。

「しょ……小学生はないでしょ! 本土では中学生の年よ、中学生!」

赤くなって抗弁する。
確かに背が伸びてないけど。

「白鈴秋ね、って……学校で話しかけていいの?」

ぼっちには恐ろしい響きに聞こえた。
え? 知り合いができたってこと?
棚からボタっと餅がきた。

「痛みはちょっとあるけど、折れたり挫いたりした感じはないみたい」
「アドバイス通り精密検査は受けるけど」

白鈴秋 > 「今その場でパラシュート以外の物作り出してんじゃねぇか」

 ドヤ顔で説明しながら櫛を保冷剤に変えている。何かを何かに変える能力とでも考えておこう。

「……それをツイてるって言えるお前はすげぇが。まぁたしかにツイてるのかもしれねぇな、とんでもない確立を2回連続で引き当てたって事だし」

 つまりはそういうことなのだ。とんでもない強運……いや悪運というべきか。
 赤くなって否定するのを見て少しだけ笑ってしまう。

「しゃあねぇだろ、あの時は焦ってたのもあって空から子供が落ちてくる~程度にしか思えなかったんだから……まぁこうしてあってもタメには見えなかったが」

 少しだけ弄るのもあってそんな事を言う。
 それから相手の様子を見て、あん? と首をかしげコーヒーを一口。

「むしろ学校でダメな理由なんかねぇだろ」

 それから相手の方を見る、折れたり挫いたりはしていないとの事だか。一応見れる範囲で見て……無さそうだ。

「ああ、そうした方が良い。顔から落ちてるしな、脳とかそっちの方が心配だ俺としては」

 そこまで堅くはしてないが、気にするべきはそっちだろう。

アリス >  
「もちろんジョークよ、物質創造系の異能だもの」

自分でも異能の理屈はよくわかっていない。
異能が発現した後に、研究者から解説されたけど半分も頭に入ってこなかった。

「私とあなたの異能がなかったらトマトが潰れてたわね」

足元をコツコツ、と靴の爪先で蹴ってぞっとした。
人類は皆、コンクリートの硬さと恐ろしさを知るべき。

「子供じゃないし! 14歳だし! 紅茶をストレートで飲めるし! 一人で大抵のことができるし!」

まぁ、ぼっちだから一人で色々やらざるを得ないんだけど。
一人カラオケとか、一人映画とか、一人遊園地とか。
第一の友達、追影切人さんにメールを送りまくるけどほとんど返ってこないけど。
第二の友達、モルガナのメルアド知らないけど。
ぐすん。

「あ………」

ひょっとしたら段階を踏めば彼も友達になってくれるのでは!?
いや、むしろ友達になってもらう! してやる! なれ!!
心の中の獣が獰猛に吼える。

「あ、うん。学校で会ったらよろしくね」

シンプル1500シリーズThe意気地なし。

「脳が!?」

頭を押さえて仰け反る。脳挫傷とかあったら困る。とっても困る。

白鈴秋 > 「……また随分とすげぇのだったな。てっきり変換系かと思ってたぞ」

 AをBへ程度の能力かと思っていたらもっと凄い能力だった、思わず少し目を見開き驚いた。

「本当にな、見たくもねぇ花が咲いてるところだった」

 顔をしかめる、本当に見たくも無い。
 まぁ結果的に助かったのだ、よしとしよう。

「悪い悪い、もういわねぇよ」

 クスっと笑い子供扱いはやめる、いやもしかしたら弄る程度のネタとしてするかもしれないが。
 それから相手のあーという悩むような声を聞いて少し首を捻るが。

「ああ、よろしく……俺こっちに来て日浅くてな。正直なんかあったときに話す相手もそんなにいねぇから困ってた。お前助けてこっちまで助かった気分だ」

 そんな事を言うと少し笑う。授業だとかでペアといわれると大体顔からのイメージで避けられて余るタイプ。授業が被ったらよろしくお願いするとしよう。

「顔……ってか頭に近い場所だしな。目に見えない位置って所だとやっぱりそこが不安だろ」

 しかも怪我すると結構洒落にならない部位でもある。何もない事を願おう。

アリス >  
「物質転換系でもあるけど、空気中の微粒子や大気自体を全く構成要素の違う物質に変えたり」
「有機物から無機物を作ったりできるから、分類としては物質創造系ね」

自分でも何でこう呼ぶ理屈なのかはわからない。
でも、将来は異能を生かした職業に就かざるを得ないだろう。
私の人生を変えた能力。異能。

「そう? それならいいのよ。私はね、我慢ならないことが二つあるの」
「一つはぬるい紅茶で、もう一つは子供あつか……」

そこまで言ってから手を差し出し。

「よろしくお願いします」

と言って手を差し出した。
やった! これはもう友達!!
友達が三人いたらもうぼっちではない!!
ぼっちキャラ卒業!!
リア充でワンチャン、マジ卍、ネイルつけま愛されメイク!!
謎の妄想が迸った。

そして頭を両手で押さえて。

「病院に行くわ、またね白鈴秋」

とさりげなく呼び捨てにチャレンジしながら去っていった。

ご案内:「大時計塔」からアリスさんが去りました。
白鈴秋 > 「……おっそろしい能力だな。学校で制御完璧にすれば何でも出来るようになるじゃねぇか」

 さっきのを見る限りまだ完璧じゃないようだ、もし完璧になると……と思うと少し技術屋としては同じ技術を開発できるだろうかと考えてしまう。

「わかった、しねぇようにするよ……たぶんな」

 たぶん、とつけてしまうのは……まぁ、正直そう見えることの方が多いからとしか言い様がないからだろう。無意識にしてしまうこともあるかもしれないし、少し故意でやる場合もあるだろう。

「あ、ああ?」

 差し出されれば一応は握手を返すがなんでこんな過剰なんだ?と頭の上に?が飛んでいるだろう。

「ああ、またな……だが、ひとつだけ言うが」

 良く背中に向かい、声をかけた。

「白鈴・秋だ。苗字か名前かどっちかでかまわねぇよ!!」

 それだけ伝える。呼び捨ては別に気にしていない様子だ。

「……少し、温くなったな」

 温い紅茶が許せないといっていたが気分がわかる。缶コーヒーも始めは冷たかったがこの暑さ、すぐに温くなってしまった。とても不味い。
 少ししかないので流し込み。

「俺ももう少ししたら戻るか」

 町を眺め、そんな事を呟いたのであった。

ご案内:「大時計塔」から白鈴秋さんが去りました。