2015/07/14 のログ
ご案内:「●公安委員会取調室付近の廊下」に『死立屋』さんが現れました。
『死立屋』 > 公安委員会、『フェニーチェ』にとってみれば、
いわば、『敵城』のど真ん中。
 
『死立屋』はそこに居た、狂ったような笑みを浮かべながら。
そう、そこに居るのが当然のように。

『死立屋』 >   
実際、当然なのだ、彼は公安委員会に『招待されて』ここに来た。
余所行きの衣装を『死立』て、彼らの招待に従って、この『城』に足を踏み入れた、
『死立屋』から常に漏れる不気味な笑い声に、『案内人』の公安委員は、
そこが涼しい廊下であるにも関わらず、だらだらと汗を流している。

『死立屋』 >  
「あゝ―――ご招待に預かり光栄です。
 して、この見事な城の城主は何処ですかな?―――ヒヒッ!!」

『死立屋』は『案内人』に話しかけない。
その問いかけは『案内人』話しかけているように見えるが、
その問いかけに対する返答を『死立屋』は求めていないという事がはっきりとわかる。
なぜなら、返答すら待たず、腹を抱えて笑い出したからだ。

「―――グッフッ!!!ヒヒヒッ!!!
 城と呼ぶにはいくらなんでも無理があるだろ、ヒヒヒッ!!
 こんな、こんな、装飾も何もない城があってたまるか、
 馬鹿か俺は!!!ヒヒヒヒヒヒヒッ!!!!!!」

『死立屋』 >  
「アアアアアアアアアアアアアアアアアヒヒヒヒヒヒヒッ!!!!
 ヒヒッ!!!!!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!!!
 アアアアアアアアアアアアアアヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!!!
 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアヒヒヒッ!!!!
 ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!!!――――あーーー。」

『死立屋』 > 考え直したように、笑いを押し殺して、体を起こす。
それでもクックと小さな笑い声が、その歪められた口から漏れ出る。
クの字に曲がって小さくなった影は、直立して大きくなり、
彼を『案内』する公安委員に黒い影を落とした。

「――――あゝ、だが、この空気の淀みっぷりは、
 糞尿すら場内に垂れ流していたという中世の城を忠実に再現していると言える。
 見事、実に見事、見事な仕事だぞ!!!!!!公安委員会ッ!!!!!!!」

彼はその『招待された人間の証』が嵌められた手を叩く、
じゃらじゃら、と、それに装飾としてつけられた鎖が音を立てた。

「アアアアアアアアアアア!!!!ヒヒヒッ!!!!!!ヒヒヒヒヒヒヒッ!!!!!!!!!!
 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!!!!!!!」

『死立屋』 > パンパン、パンパン、パンパンパンパンパン。

手を叩く、手を叩く。
乾いた音が、長い長い、
ひたすらに長い廊下に響き渡った。

パンパン、パンパン、パンパンパンパンパン。

『死立屋』 >  「―――あゝ、舞台設定としては申し分ない、
 『演者』を招くには、まさに最高の舞台といえよう
  ッグッフ!!!ヒヒヒッ!!!!ヒヒヒヒッ!!!」

頭を振り乱し、顔を抑えて嘆く、笑う、そして嗤う。
彼を案内する公安委員の顔は、彼を案内しているのにもかかわらず、
蛇に睨まれた蛙のように青ざめている。

「だぁがなぁ、舞台に『死立屋』を招いてどうするんだ、
 なんだ、ここの城主は裸の王様にでもなるつもりなのか、
 ヒヒッ、確かにそれなら俺も、『舞台』に立てるかもしれないなァ!!!!
 ―――アアッ!!!!!ヒヒヒッ!!!!!」

『死立屋』 > ひたすらに長い長い『赤い絨毯』をその『死立屋』と、『案内人』はただ歩く。
やがて二人は、『謁見室』へとたどり着いた。

「ヒヒッ!!では、演目は『裸の王様』に決定だ、
 俺は『死立屋』として、『バカには見えない服』を用意してやろうじゃないか、
 あゝ!!!もちろん最高の衣装をな!!!!ヒヒヒッ!!!!!!!!!」

『取り調べ対象を連れてきました、失礼します。』
『案内人』はそっと胸をなで下ろしながら、その扉を開く、
中には一人が『王座』に座って待ち、そばに控える『衛兵』が二人。

「あゝ、王様。ここに在りますは、
 『バカには見えない服』で御座います。ヒヒッ、ヒヒヒッ!!!」

『王様』の目が、見開かれる。常識はずれな『謁見者』に。

「アアアアヒヒヒッ!!!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!!!!!!!
 ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイヒヒッヒッヒッヒッヒッヒ!!!!!!!!!」

『死立屋』 >  
 
その部屋からは、唯、ひたすらに不気味な笑い声が響いている。
 
 

『死立屋』 >    
取り調べ担当の私は、唯々頭を抱えていた。
何しろ、どう頑張っても会話が成立しない。

「あの、まず名前をお願いしてもよろしいですか?」

そう問えば、彼はこう答える。

「お前は花に名前を聞くのか?お前はリンゴに名前聞くのか?
 花は花、リンゴはリンゴ、『死立屋』は『死立屋』だ。
 ヒヒッ!!!なんで当たり前の事を聞くんだ!!!!!
 あゝでも、リンゴに名前を聞いて「リンゴです」って帰ってきたら
 確かに面白いな、なるほど、いいセンスだ!!!!あゝこの出会いに乾杯ッ―――!!!」

名前を聞くだけでこの有様である。
それ以外の時にも意味の分からない事を言い続けていて、
不気味である事この上ない。

そもそも、いきなり公安委員会の本部にやってきて、
そのまま笑いながら逮捕され、そのままここに連れてこられるなんて、
どう考えても理解できない。いや、理解したくもない。

私は目の前の男をどうしたものか、と唯、頭を抱えた。
こいつには聞きたい事がたくさんある。
あるが、一つ質問する度に、寿命が縮む思いがするのだ。
早く取り調べを終えて、『補習会場』に連れて行きたい。

なぜだか、行っても無駄な気がするのだが。

『死立屋』 > 彼は机に突っ伏すようにして机をたたきながら、ただ笑う。

「ヒヒヒッ!!!ヒヒヒッ!!!
 ああ、面白い、面白いなぁ、もし喋れるリンゴがあったとして、
 リンゴに名前を聞いたらリンゴですって帰ってくるのか、
 あゝ、それはすごく面白い、ヒヒヒヒッ!!!!
 さすがは王様、実にウィットに富んだジョークだ、ヒヒヒヒッ!!!」

机をばんばんと叩きながら、彼は笑う。

「ヒヒヒッ!!!
 それで、次の質問はなんでしょうか、王様。
 そろそろ、この『バカには見えない服』について聞いては頂けませんかな?―――ヒヒッ!!!!!」

『死立屋』 > 彼女は、ただ困惑するように両の目頭を押さえると、
『衛兵』二人に合図を送る。
二人は彼に近づくと、彼を『客間』へ案内するべく、その腕を取った。

「あゝ、残念だ、まだ話足りないというのにッ!!!ヒヒヒッ!!!
 ―――では、『王様』、また後日お会いしましょう、ヒヒッ!!!!」

彼はそのまま笑いながら『客間』へと案内され、
その客間で、一夜を過ごした。

翌日、その様子を見に来た『衛兵』は、悲鳴を上げて倒れたそうだ。

『死立屋』 >  
 
 
「今回の公演は大成功、またの開演をお待ちください。
 ―――ヒヒッ!!!」
 
 
 

ご案内:「●公安委員会取調室付近の廊下」から『死立屋』さんが去りました。