2016/10/14 のログ
ご案内:「委員会街ラウンジ」にセシルさんが現れました。
セシル > 放課後。
警邏業務開始の前に幾分時間があったセシルは、何となくラウンジのカフェに立ち寄った。
コーヒーを頼み、テーブルに腰掛けていると…

『ラフフェザーさん、お疲れ様〜』

と、事務方の女子の同僚2人に声をかけられた。

セシル > 『これから警邏?』

2人のうち一人の質問にセシルが

「ああ」

と頷くと

『そっか、私達は書類仕事だよ』

と、もう一人が言う。よく見ると、2人とも大量の書類を抱えていた。

「…事務方には毎度苦労をかけるな…」

セシルが苦笑いで応じると、

『ま、そこは適材適所だし、危ないところに行ってるのは実働部隊だしね』
『そうそう、気にしない気にしない』

と、にっこりと、人の良さそうな笑みを浮かべる2人だった。

セシルの性別を知らない人間が見たら、ちょっとばかり妬ける光景かもしれない。

セシル > そうして女子らしい女子と会話をしていて、ふと思い立ったらしい。
セシルは、少し考えるようなそぶりを見せてから

「…ああ、そうだ。
少し気になっていることがあるのだが…構わんか?」

『ん〜…立ち話で良ければ、かなぁ。何?』

微妙な顔をする女子2人。
時間を取ったらまずいのは流石に分かるセシル。出来るだけ端的に圧縮しようとして…

「…いや、非番の時の振る舞いについてだ。
少し、とっつきづらく見えるかと思ってな…話し方を砕いたりだとか、非番の休日くらいは気やすい服装にしてみようかと思っているんだが…」

どう思うか?と、最後はどこか躊躇いがちに声が発された。

セシル > 『………』

女子2人は、少しの間目を丸くしていたが…

『………ラフフェザーさん、そういうこと気にしない人だと思ってた』
『…まあ、言うまでもないこと、ってのはあるよね。ただでさえ言葉堅いし、おまけに声強そうだし』

と、酷い言葉が返ってきた。

「………そこまでか………」

思った以上に強烈な言葉に、悩ましげに眉間に皺を寄せながら、こめかみを抑えるセシル。
彫りが深く、顔立ちが整っているセシルがやると絵になるジェスチャーではあるが、本題はそこではない。女子の一方が、あわてて切り出した。

『あ、だからね、ラフフェザーさんが考えてるのはいいことだと思うよ。
威圧してばっかりってのも人間関係とか微妙だしね。ラフフェザーさんが意識してないにしても』

「………ありがとう」

セシルが溜息とともにその言葉を吐き出す頃、コーヒーが届いた。
セシルはブラックのままカップをとり、口元に運ぶ。

セシル > 『でも…ラフフェザーさんの場合、話し方より声じゃないかなぁ。
強い声で、おまけに背も高いし…ガタイはそこまでじゃないのが救い、ってくらい』
『そうだねー、多分ここはラフフェザーさんの元いたとこより背が低い人が多いし、声低い人も少ないから、余計に』

「………ぅ」

女子2人の論評に、コーヒーカップを口元に運んだまま固まるセシル。

『…ラフフェザーさんって、それ地声なんだっけ?やたら芝居がかってるっていうか、ぶっちゃけヅ○っぽいけど』

一方から指摘を受けて、溜息を吐きながら一旦カップをテーブルに置く。

「………そんなわけはないだろう」
『そっかー…良かったー、安心したよー』
「何に対してだ?」
『いや…ほら、まあ色々?』

尋ねてきた方の女子とは別の女子が安堵に胸を下ろすのを見て、思わず反射的につっこんだセシル。女子の方は、賢明にも濁した。

セシル > 『………一応確認するけど、地声ってちゃんと女の子の声なんだよね?』

恐る恐るといった風情で尋ねてくる女子に、溜息を吐きながら…

「高くないから、いわゆる女らしい声からは遠いと思うが…少なくとも、男に聞こえる声ではないな」

と、白状する。

『『えー、聞きたーい!』』

当然のごとく、ハモる女子2人。

「………勘弁してくれ、恥ずかしい」

少しだけ頬を赤らめてそう吐き捨てると、セシルはコーヒーを一気に半分くらいあおった。

セシル > 『えー、ケロケロ声なら確かにギャップ!って感じだけどさ、高くないならそこまでじゃないって』
『そうだよー、雰囲気柔らかくしたいんでしょー?』

立ち話という前提条件はどこへやら、食い入るようにセシルに詰め寄る女子2人。
…セシルが男子制服姿なのもあって、セシルの性別を知らない人間が見れば羨ましい光景に…見えなくもない。
当の本人は、顔を赤らめながら強張らせているのだが。

「…本当に、勘弁してくれ…かれこれ3年くらい、家族以外の前で出していない声だぞ。
どのように話したらいいかすら、見当がつかん」

セシルの恥ずかしがる様子に、女子2人の目がきらきらと輝きを増していく。

セシル > ここで、女子の片方がとんでもない爆弾を投下する。

『きっと、男の格好でその声出すと思うから恥ずかしいんだよ』

「…は?」『なになに?どういうこと?』

女子の爆弾発言に、怪訝そうに眉間に皺を作るセシルと、目の輝きを増すもう一人。

『いや、だからね。
今まで作り上げてきたイメージを和らげるにしても、ラフフェザーさんからすると、地声はギャップが酷過ぎて恥ずかしく感じるわけだよね?

だったらさ、いっそ男の人の格好をやめちゃったら、声の方は寧ろそっちの方が自然になるんじゃないかなーって』

「はぁあ!?」
『うわー、ケイちゃん天才だね!いい、それ絶対いい!
ラフフェザーさん、見た目整えたら絶対皆が振り向く美人になるもん!モデル系の!』
「いや、だから、こちらの女性の格好は露出がだな」
『おっけー、露出が少ないのを選べばいいのね!』
「………。」

女の子はカワイイものも大好きだが、身近にあるものをかわいくするのも大好きなものだ。
ガールズトークに火がついてしまったら、セシルではもう止める術がない。
セシルは、最終的に頭を抱えて黙り込むことになってしまった。

セシル > 『でもさあ、ラフフェザーさんの体型だと服選び大変だよね…
大きいサイズだと、横幅ヤバイし』
『そこはほら、この島にはそういう体型の異邦人向けのショップもあるわけだし』
『あ、そっか、じゃあ問題無いね!』
『あとは、私達がお店をしっかり調べておけばいいもんねー♪』
「………私の意思は無視か?」

盛り上がる女子2人に、疲れ果てた声を出すセシル。
女子2人が、両側からはしっとセシルの手を包み込む。

『私達に任せて、ラフフェザーさん』
『後悔させないから。ばっちり綺麗にしてあげるから』
「………。」

あ、これ逃げられないやつだ。
観念したセシルは、警邏に発つ時間が来るまで置物と化したのだった。

ご案内:「委員会街ラウンジ」からセシルさんが去りました。