2017/04/07 のログ
ご案内:「公安委員会棟の一室」にクローデットさんが現れました。
クローデット > 今までクローデットが受けた処分は、「勇み足」による軽微なものがほとんどだった。
しかし、軽微とはいえ違反組織関係者が、少しずつとはいえ更生しつつあると思われていたところで、再びの…しかも、大きな「逸脱」を招いてしまった失態は、「勇み足」では済まされなかった。
…そんなわけで、クローデットはこの日、本部から呼び出されて、面談を受けているのである。
面談を担当するのは…違反等により拘束される者の尋問などを担当する、専門部署の人間。心や思考を読む類の技術こそないが、その手の技術者には違いなかった。

『…しかし、あなたほどの人が、どうして警戒対象相手に取り乱すんです?
お宅には、争いの痕跡などはありませんでしたが』

彼は穏やかに、何でもない風に尋ねてくるが…その瞳が怜悧なのを、クローデットは見逃さなかった。
…きっと、「あの男」の「隙」を伺おうとしていた時、自分もそんな目をしていただろう、というような目を。

クローデット > クローデットは、膝の上に置いた手で、閉じたままにしてある羽根扇子を軽く握った。
持ってきてはいるが、流石に「内輪」に対して表情を隠すようなことはしない。
反省し、消沈しているような表情を作ってみせ…軽く俯きがちにしてから、躊躇いがちな風に相手の方に向き直った。

「………恐らく…「異性」という側面を強調した上で、接近されたからだと思います。
…故郷でも、魔術師以外とは、さほど親密でない生活を続けてきたものですから…どう接したら良いのか…分からない場合もありまして」

面談担当者が、目を丸くする。表情からは「本気で言ってるのか?」という驚愕が伺えた。

『………ルナンさん、委員会内でのあなたの今後に関わる、大事な面談なんですよ?』

監視対象や「裏」の住人に対する苛烈さのよく知られるクローデットながら、他の委員会の職務領域への侵犯を積極的に行ったりはしない。
ただ、その辺りの話のつけ方に不穏さと隙のなさの両方を感じる者は少なくなく…普段の振る舞いの巧妙さからすれば、「異性との接し方が分からない」なんて、性質の悪い冗談にしか思われないのは仕方のないことだったかも知れない。
躊躇いがちなそぶりも、何らかの演技ではないかと。

…実際、演技には違いなかったが…クローデットとしては、「敵」に話せる精一杯の真実だった。

クローデット > 「…ええ、あたくしなりに、真剣にお答えしているつもりです。
委員会の職務でしたら、必要なことが定められておりますし、それに合わせて振る舞えば良いんです。…私情を出す必要性もありませんし。
ですが…「異性」として近づかれた場合、その私情こそが要となってしまいますでしょう?
そうなった時に…あたくしには、拒絶する以外の方法がよく分からないんです」

『………。』

クローデットの、躊躇いがちながらも抑制された語り口に、微妙な顔をする相手。
確かに、表向き女性らしい振る舞いを崩さないクローデット・ルナンの、プライベートでの人間関係…特に異性関係の話は、ほとんど聞かれない。
公安委員会の性質上、特別な部署に配属されて「私人」としての側面をほとんど殺してしまっているような委員もいるにはいるが、クローデットはそうではない「その他大勢」の中の一人なのだ。私情が要となりうる場面でそれを捨てて振る舞えというのは、流石に職分を超えた要求になってしまう。

『………でも、ご家族とかの人間関係で、何かヒントとか、あったんじゃないですか?』

「…両親の関係は、物心ついた時には既に良好ではありませんでした。
父が、仕事で家を空けることが多くて…母は、強く孤独を感じていたようなんです。
魔術師一家ということで警戒されてか、地域でもあまり深い人の縁はありませんでしたし…」

そう語って、寂しげに視線を落とすクローデット。
母の孤独を共有するクローデットにとっては、この表出は偽りとは言いきれない。意図して出しているのは確かだが。

『………あー………』

困った、という声を出して固まる担当者。
人間関係の話という面ではクローデットの境遇が詰み過ぎているし、何より驚きに負けて、話の筋を誘導されてしまった感が否めなかったのだ。

クローデット > そうして、しばらく歯切れの良くない問答が続いて。

『………分かりました。とりあえずそういう事情ということで、ひとまずお伺いしておきます。
もしかしたら、再度の面談をお願いするかもしれませんが…その際には、ご協力をよろしくお願い致しますね』

「ええ、承知致しました」

面談担当者に割り切れないものを残したまま、その日の面談は終わった。

クローデット > その後、何度か面談が繰り返されたものの、
「『感情の制御に失敗した』というクローデットの説明には疑問も残るが、他の原因がまるで出て来ない」
ということで、それに沿った処分がなされることになった。
最低3ヶ月のカウンセリング。カウンセリング期間の間、公安委員会としての職務は裏方に徹する指示(魔具作成などの絡みで、裏方に回ってもクローデットの出来ることは多い)。また、その間の単位・給与は出ないという処分。
カウンセリングを義務づけられたクローデットが、少々とはいえ動揺を見せたことも、委員会本部にはしっかりと記録された。

『味方である分には頼もしくもあるけど、取り調べ対象としては向き合いたくない』
と、委員会の関連部署ではしばらく囁かれていたという。

ご案内:「公安委員会棟の一室」からクローデットさんが去りました。