2015/09/11 のログ
ご案内:「学生通り」に『モンク』さんが現れました。
■『モンク』 > 学園という巨大な施設に続く大通り、それがこの場所だ。
当然のように通行人が大勢いて、賑わっている。
路面電車が走っており、多くの店やカフェが立ち並ぶ。
日が沈み、夜の姿がだんだん見え始めている頃だ。
七英霊の一人『モンク』は、大通りにある建物の屋上を陣取っていた。
二メートル半ばを超える巨体から、地上の人達を見おろす。
その両手には手甲『デストロイヤー・ナックル』。
考えている事は単純だ。
誰に勝利しよう……。
勝負方法は簡単。
『モンク』が誰かに襲い掛かり、そいつを殺せれば完全勝利。
殺せなければ、『モンク』の完全敗北。
引き分けはない。殺すか殺せないか、その二択のみが存在する勝負。
そして『モンク』はそのゲームの勝利を求める。
「この島に来てようやく一戦目。
勝利は我の手にあるぜ。
なんたって、我は七英霊の一人『モンク』なんだからな」
通行人の内誰に仕掛けるか、決めよう。
脳筋は深く思考せず、直感で動こうとする。
■『モンク』 > 「今、決めたぜ。
丁度目に入っちまった。
あの黒髪女と勝負しちまうか」
ジャンプする事で『モンク』の巨体は大きく飛躍し、そのまま屋上から落下。
黒髪女の手前に、ドスン! と大きな音を鳴らし、アスファルトの地面にひびを入れながら着地する。
「よぉ、女。
この我と一戦、やっちまおうぜ。
逃げんなよ。逃げても、殺すぜ。
その時は、我の勝利って事で幕が閉じるだけだぜ」
女は突然の事で訳が分からない、といった表情をしている。
だが女の顔からは、だんだん恐怖の色が見え始める。
巨大な手甲を持った巨漢が襲いかかろうとしているのだ、無理もない。
周囲もざわめき始めてきた。
しかしそんな事『モンク』の知ったこっちゃない。
「早速、おっぱじめようぜ」
その瞬間。
『モンク』は、黒髪女に右ストレートを決めようとしていた。
ご案内:「学生通り」にウロボロス(笛木 奏太)さんが現れました。
■ウロボロス(笛木 奏太) > 「待てぇい!」
その瞬間、蛇の仮面をつけた青年が現れ声を上げる。
「無抵抗な女子供に手を上げる悪逆非道、誰が許しても俺だけは許さん!」
左半身を前に出し、オーソドックスな空手の構えをとる。
「それ以上無益な暴力を振るうならばこのウロボロスが相手だ!」
■『モンク』 > 突然現れた、仮面をつけている正義の味方っぽい誰か。
空手の構えをしているところから見ると、同じく格闘家か?
良い勝負が期待できそうだぜ。
女に向けて前に突きだそうとしていた拳は、一旦ぴたりと止まる。
「許さねぇっていうなら、何だというんだ。
我と決闘でもすっか?
それと無益な暴力じゃねぇ。
この女を殴り殺す事によって、俺はこの女に勝利する事ができるんだぜ」
やめる気はないようだ。
「お前の相手は、この女との決着がついてからちゃんとやってやるぜ。
それまで待ってろよ。
すぐこの女との勝負も終わらせてやるぜ」
ウロボロスの言葉なんて知ったこっちゃないと言わんばかりだ。
『モンク』は気を取り直して、目の前の女に右腕でアッパーを決めようとする。
その動きは素早い。
『モンク』の右腕が、無抵抗のか弱い女の顎へと迫る!
■ウロボロス(笛木 奏太) > 「良いぜ、お前が決闘を望むというならば受けてやる! だが順番は俺を優先させてもらおうか? お前が連勝記録でも持っていて、それを俺に止められるのが嫌というならば――――まてっ!」
閃光より早く、彼の心は飛び出していた。
それが笛木奏太の心の在りようだ。
そして能力が、身体がそれに追いつく。
「やらせは――――しない!」
ウロボロスは自らの能力を生かして超加速を行い、女とモンクの間に立ち塞がる。
そのまま行けば拳は彼に突き刺さるだろう。
■『モンク』 > 『モンク』は、ウロボロスよりも先に黒髪女に目をつけた。
そして宣戦布告もしたところだ。
「どっちか優先かは、我が決めるぜ。
連勝記録?
ヘタレで律義な『ハンター』じゃあるめぇし、どれだけ勝ったかなんて、いちいち数えてねぇぜ」
もう、数え切れねぇ程に勝利してきたんだからな。
『デストロイヤー・ナックル』が女に迫らんとしていた。
その時、『モンク』よりもさらに速いんじゃないかとすら思うスピードで、ウロボロスが女に前に立ちはだかる。
ガードする動作がないなら、このままではウロボロスへともろに右ストレートが通ってしまう事だろう。
だが、少なくとも後ろの女には攻撃がとどかない。
■ウロボロス(笛木 奏太) > 「反動軽減、アンチソニックブームフェノメノン確認、うおおおおおおおおお!」
腕を十字に組み、腕の中に仕込まれたアダマンタイトの防盾を展開。
「――――正当防衛である!」
人は言う。
豆腐の角に頭をぶつけて死ねと。
人は言う。
そんなこと不可能だと。
――――さにあらず。
どんなに柔らかくても超高速でぶつかりさえすればその衝撃は全てを破砕しむる。
超高速でぶつかっていけば豆腐であっても人は死ねる。
笛木奏太はインパクトの直前に超加速を開始する。
それはどんな相手であっても自爆を意味する。
だがそんなことに興味は無い。
自分が死のうが砕けようが、この邪悪のみは討ち果たす。
笛木奏太はこれぞ正義也と言うだろう。
だが人はそれを殺意と呼ぶ。
■『モンク』 > 仮面の男ウロボロスは、腕を十字に組んでガード動作をとる。
『モンク』と黒髪女とのバトルをあくまで邪魔するって事か。
だがこれでまず、仮面の男を葬れるってわけだ。
『モンク』のこの右ストレートをくらって生き延びているというなら、少し本気を出す価値があるというもの。
勝利のしがいがある。
だが、右拳がヒットする直前の事だった。
「な、なぬっ……!?」
仮面の男ウロボロスは、またもや閃光をも超える超速度で『モンク』の拳の方へと突っ込んでくるではないか!!?
速すぎるものにぶつかってしまえば、例えそれが柔らかいものだったとしても大きな衝撃になり得る。
だが超高速で動くものが人の身であるなら、その人間のダメージは相当なものになるだろう。
同時に、ぶつかられた側『モンク』の方もただで済むわけがない。
突き出した右拳に、超高速でぶつかられた強大な衝撃をもろに食らったのだ。
「ぐぬ……ぐおおおおおおおおおっ!!」
それはまるで、猛獣のような雄叫びだった。
「う、腕が……腕がぁ!!!」
手甲『デストロイヤー・ナックル』を装備した『モンク』の右腕に強い衝撃が走ったため、その手を引っ込める。
巨大な肉体も、一歩だけだが後ずさった。
それでも、強靭な肉体を持つ『モンク』は耐える。
宝具である右腕の『デストロイヤー・ナックル』が破壊される事はさすがになかったが、『モンク』には大きなダメージが伝わった。
「……仕方ねぇな。
いいぜ、その黒髪女とお前vsこの七英霊の一人『モンク』、二対一っつー事にしておいてやるよ。
まず仮面の奴、お望み通りお前から消してやるぜ。
おい女、後回しにしてやるが、逃げようとすりゃ容赦なく真っ先に殺すぜ」
■ウロボロス(笛木 奏太) > 「……正義である!」
笛木は仮面の中で不敵に笑っていた。
展開した防盾は砕け、腕も若干ひしゃげているというのに、それはそれは不敵に笑っていた。
己の命など知らぬと笑っていた。
「お嬢さん、彼は二対一をご所望だそうだ。後衛としてゆっくりしていると良い……さあて!」
ひしゃげた腕を力任せに直し、再び構えをとるウロボロス。
サイボーグとはいえ損傷はモンクと同等かそれ以上であるのに、怯える様子は無い。
相手の方が強い(ソリッド)か。
相手の方が尖い(シャープ)か。
そんなことは関係無い。
我が振る舞いは正義である。
故に貫徹されねばならぬ。
我が振る舞いは正義である。
故に不倒でなければならぬ。
「――――これぞ我が正義である!」
ヒーローは高らかに歪んだ正義を謳う。
ヒーローは怪物の如くモンクへとにじり寄る。
■『モンク』 > カウンター攻撃をもらってしまった……。
防盾を失い、少しであるが腕をひしゃげている仮面の男。
『モンク』は間違いなく大打撃を受けたが、それは向こうも同じだという事だ。
「正義だと?
お前もくだらねぇ事をぬかす奴だぜ。
そんなくだらねぇ正義のために死ぬか?
ばかばかしいぜ。
我は、お前の言うその正義を撃ち砕くぞ。
お前に勝利する事で、正義を潰してやるぜ」
『モンク』も一度構え直す。
誰彼かまわず勝負を仕掛けて殺そうとする。
そんな『モンク』は間違いなく、絶対悪であった。
「ゲームのルールを説明するぜ。
我がお前達二人を殺せれば、我の勝利。
それ以外は、我の敗北だ。
じゃあ、いくぜ!」
正義を口にするヒーローが『モンク』に迫ってくる。
何かを覚悟した、そんな風貌。
気にいらねぇ……気にいらねぇ……。
「俺に、気持ちよく勝たせやがれ!」
巨体も少しずつ動く。
近づいてくる仮面男ウロボロスに向けて、足技を繰り出す。
それは単純でシンプル、だからこそ強力な横蹴り。
いや、巨体から繰り出されるそれは、もはや蹴りとは思えない程のスピードと重さ。
ミサイルなんじゃないか?
そう錯覚してしまう程に、蹴りだけで爆音のようなものが辺りに響渡り、その衝撃で地面のアスファルトにひびをいかせる。
その事から、少なくとも音速は超えるキックであった。
「その正義ごと、死ね!」
■ウロボロス(笛木 奏太) > 「俺が死んでも正義は潰えない」
この時笛木は冷静に計算していた。
自分の能力的に逃げようと思えば一瞬の相手。
暴れれば暴れる程、風紀委員会なりが駆けつける筈。
そうしたら後は数の暴力で叩き潰せば良い。
計算は終わった。
そして計算は捨てた。
雑念は正義断行の妨げ也!
「うおおおおおおおおお!」
反射速度を生かしてモンクと同様の蹴りを繰り出す。
いかに機械化された身体とて格闘特化のモンクに勝てるかは分からない。
だが笛木自身はモンクに勝とうなどとは思っていなかった。
何故なら笛木にとってはこの勝負既に勝っていたからだ。
――――己にとって正義とは勝利である
――――――ならば己が己の正義を為す限り、己は勝っている
――――――――故に己の正義は実行される
「カウンターソニック!」
正しく狂人の論理。
しかしそれは人々には自己犠牲と潔白にさえ映る。
しかしそれは戦士には勇猛とも映る。
そういう類の狂気。
このまま行けば蹴り足と蹴り足が再び交差するだろう。
そして笛木の機械の足は、悪への打撃と引き換えにそれは醜く痛ましく歪むこととなる。
もっとも笛木が、ヒーロー『ウロボロス』がそれを気にすることは無いが
■『モンク』 > 「正義なんてくだらねぇものは、いつか潰える!
なんなら、我が正義に勝利して潰してやるぜ」
『モンク』の頭は良くない。
ただ自分の肉体能力の高さを生かして戦うのみだ。
そこに計算なんてものはない。
それ故に、仮面男の思考など読めようはずもない。
『モンク』は、正義というものを考えられる程賢くない。
ただ自分の目的のために行動する、それだけだ。
『勝利するこそ』、それこそが『モンク』の生き甲斐。
勝利条件は常に、相手を殺害する事。
それ以外での勝利は、ありえない。
覚悟を決めた仮面男ウロボロス。
『モンク』も邪悪とは言え、戦士の一人である。
そんな『モンク』には、ウロボロスが勇猛に見え、唇を歪ませる。
高速かつ重い蹴りが仮面男に迫ろうとしていた。
だがその仮面男も、足を前に突き出す。
邪悪に迎え撃つ、ヒーローの蹴り。
互いの足、互いの蹴りがぶつかった時、周囲に衝撃が響き渡る事だろう。
蹴り同士が交差した時、『モンク』の左足……つまり蹴りだした足に激痛が走る。
「ぐるわああああああああっ!!」
痛みに叫ぶ声は、獣の咆哮、そんな風に聞こえるかもしれない。
なんだ、この痛みは……。
鍛え抜かれたこの肉体に、これ程のダメージ……。
束の間、左足が動かず片膝を地面につけてしまった。
おのれ!! 正義を謡うくだらぬヒーロー風情が!!
■ウロボロス(笛木 奏太) > 「ぐぅううおおおおおお!!」
右足からは人工血液が噴き出て、内部構造があらわになる。
完全に折れていた。
誰もが苦悶に悶えていると思うだろう。
違うのだ。そもそも機械の身体には痛みなど実に些細な感覚だ。
仮面の下で笛木は笑っていた。
「まだだ……俺の後ろに人が居る限りぃ……! ヒーローは……俺は倒れない!」
足を一本奪われたのだ。
加速能力は存分に生かせない。
そう思ったのならば早計だ。
ウロボロスを無害化するならば指先一本さえ動かせなくする必要が有るのだ。
彼の持つ「終点喪失」はそういう異能だ。
腕一つ、首一つ、眼一つ残る限り、最速最短の正義は執行されうる。
「そうだ……まだ、三本有る」
折れた足をかばうように左足だけで立ち、モンクを見据えるウロボロス。
「俺から行くのは億劫だ。早く立て……!」
■『モンク』 > 当然、足を痛めたのは相手も同じ。
仮面の男は血液のようなもの噴き出し、内部構造が──。
こいつ、サイボーグなのか……?
さすがに頭の悪い『モンク』でも、そこは気付く。
機械の体。人間よりも遥かに身体能力を発揮しやすい事は、いくた馬鹿の『モンク』でも想像できる。
ウロボロスの後方には、黒髪の女。
「……そこまでして、なぜちっぽけな命を守ろうとする。
理解できないぜ」
痛みに悶え片膝をつけながらも、声を発する。
そして『モンク』は鋭い眼つきで、ウロボロスを睨んだ。
「どちらにしても、後ろにいる女の命も今日限りになるのは変わらねぇぜ」
足一本奪う事ができた。これは非常に大きい。
これまでの戦いを見てきたら分かるが、奴のスピードは桁違いである。
しかし片足を失ったとなると、その機動力は活かせない事だろう。
馬鹿ながら『モンク』はそう考えた。
立ち上がるウロボロスを見て、『モンク』もまた左足の痛みを我慢しながらも両足で起立する。
しかし、やはりというべきか左足はとても不安定だった。
「その足だから、自慢のスピードは活かせねぇな。
では遠慮なく、また俺の方からいかせてもらうぜ」
攻撃手段を変えよう。
どうせなら、後ろの女も巻き込みやすい攻め方が良い。
「なら、この宝具『デストロイヤー・ナックル』の力を使うぜ」
『モンク』は両手の手甲を前に突き出した。
束の間、戦場と化した学生通りは静まり返る。
しかし、しばらくすると手甲『デストロイヤー・ナックル』に異変が起きる。
「全てを殺し、全てを破壊しつくしてやるぜ!!」
両手の手甲から、波動が放出される。
その波動は球状になり、一直線にウロボロスへと迫る。
波動の球のでかさは、直径三メートル。
まるで波動の周囲にある空間が歪んだかのようにも見えるだろう。
■ウロボロス(笛木 奏太) > 「ちっぽけな命……そんなものはない」
故に。
「当たり前に尊い命を、当たり前に守っただけだ」
そして。
「足一本失った程度で、俺の速度が鈍ると思ったか――――」
それは―――――それは、あまりに大きな間違いだった。
「終点喪失(クレイジークロック)」
狂った時計に終わりは無い。
狂った正義に行き場は無い。
その加速、その速度、片足どころか這っていても全てを凌駕する速度が彼には有る。
ではその超高速を相手にぶつけるのか?
違う。
それもまた非正義。
彼は片足のみで女性の元に向かい、彼女を抱えて跳躍することでその一撃を回避しようとする。