2016/05/25 のログ
ご案内:「学生通り」にくどう さすけさんが現れました。
くどう さすけ > ぺた、ぺた、ぺた。
小さくて珠のような肌の足裏が、アスファルトの地面とついたり離れたりしている。
ここまで来れば、見張りの人もいないはずだ。
そう……自分にとって都合のいい解釈をして、少年は隠れるのをやめた。

「―――わぁぁ…!」

こっそりと研究区を抜け出してきてしばらく歩けば、見たことの無い景色が広がっていた。
外で黒い飲み物を飲んでいる人や、重たそうなカバンを持ってたくさんの人と一緒に歩いている人がいる。
こっちの人たちも研究所の人と同じように、みんなそろって似たような服を着るらしい。

くどう さすけ > ―――
■おおきなひと1 >「おい、何だよあの子。迷子か?」
■おおきなひと2 >「しらないわよ。どうせ近くに親御さんでもいるんでしょ」

おやごさん、とは一体誰のことなのだろう。幼いながらに思う、『くどう』のさすけ。
”おやご”とは苗字なのか、それとも名前なのか。
数字が入っていないあたり、その人は研究所とは無縁の人間なんだろうなぁと思う。

くどう さすけ > あたりをきょろきょろと見回していると、ガラスの向こう側に飾られている、細い線で作られた人形に目を引かれた。
両の手と鼻、それから口をガラスにべったりとくっつけながら、しばらくの間それを眺めていた。

(これ、かっこいいなぁ)

ふと、入り口らしき扉を見上げてみる。
『WIRE WORK』……と書かれた看板が目に入った。

(うぃれうぉるく?……ヘンな名前ー!)

ここはうぃれうぉるくさんの部屋なのかな、と合点する。
人の部屋に入るとき、バレるように入ったら怒られるものだと、さすけはそう理解している。
だから、バレないように入る。

うぃれうぉるくさんの部屋の裏側に回り込んで、どこか入れそうな場所を探す。
裏口、通気口、下水道……パジャマ姿の少年は、泥だらけになりながら店の周囲を荒らしていた。

くどう さすけ > (……どこにも入れないね。うーん)

溝から顔を上げたさすけの顔は、黒く汚れていた。
水色のパジャマは汚水を吸って、ひどくだぼだぼになってしまっている。
どうやら、正面から入るほか方法がないようだ。

(ようは、うぃれうぉるくさんに気付かれなければいいんだよね)

そうやって、今度は店の奥の方を覗く。
ガラスの壁に黒い水がへばりつくが、そんなことは気にも留めない。
高い台に頭をのせてくつろぐおじさんと、銀糸人形を何度も乗せたり置いたりしているおばさんが見える。

「……どっちがうぃれうぉるくさん?」

くどう さすけ > 流石に、両方の目を掻い潜るのは難しい。
隠れられそうな場所もなく、入り口はこの『WIRE WORK』の板がかけられている正面だけ。
流石に無理かな、と、遊びに行くことを半ば諦め始めていた。