2016/11/12 のログ
ご案内:「学生通り【常世祭期間中】」に竹村浩二さんが現れました。
■竹村浩二 > 竹村浩二は常世学園の用務員である。
しかしそれは仮初の姿………彼こそが常世にて人知れず悪と戦うアーマードヒーロー・イレイス。
そう――――正義の味方である。
ご案内:「学生通り【常世祭期間中】」から竹村浩二さんが去りました。
ご案内:「学生通り【常世祭期間中】」に竹村浩二さんが現れました。
■竹村浩二 >
「だってさ」
そう独り言を呟くと、男は大あくびをした。
竹村浩二―――たこ焼き屋の出店の店主は退屈そうに伸びをした。
確かに客はそこそこいる。
だが、退屈だ。
金稼ぎの一環と割り切ることもできない。暇なのだ。
■竹村浩二 >
酒でも飲んで酔っ払うわけにもいかず。
食い物屋の店主が煙草を吸うわけにもいかず。
粉モノなら簡単に稼げるだろうと踏んだが、何とも無難すぎて退屈だった。
何度も時計を見た。
時間が過ぎるのが遅い。
「ラ、ラ、ラ、それでも世界は待っちゃくれないのさぁ」
ハッカの香りが出てくるだけのプラスチックの禁煙パイプを咥えて、十年前のヒット曲を歌う。
ステレオでも持ってくればよかったのだが、男の歌の趣味は古い。
そもそも竹村浩二の音楽の趣味はこれまた無難だ。
歌番組で気に入る歌は大抵ランキングの一位近くだ。
面白みがない。
■竹村浩二 >
「Bye by world さよならさようなら世界とお互いに別れを……」
歌いながら、ふと思い出した。
この歌は戦隊をやっていた頃にブルーが好きだった歌だ。
あいつは知的で冷静で要領がいい。
最近は本土のほうで警察機構の結構いいところまで出世したらしい。
自分とは大違いだ。
感じた寒気にぶるっと身を縮めて目の前のたこ焼きにソースを塗る。
■竹村浩二 >
「寒……」
男は寒がりだ。そして寒いのが嫌いだ。
ふと、顔をあげると子供が屋台の前で目を輝かせていた。
そして子供を追ってきた母親がたこ焼きを買っていった。
「はいよ、毎度ありー」
愛想笑いで見送る親子は、暖かそうだ。
手に残された硬貨がぬくもりをおすそ分けしてくれる。
「………」
あの子供のように純真でもいられず、あの母親のように家庭を守ることもせず。
この屋台で儲けた金も安酒と安淫売と安い博打に使い果たすだろう。
やれやれ。
口に出してみることにした。
「やれやれ」
気づけば友達を連れた学生や家族連ればかり。
個人経営の変わった記念館に足を踏み入れた時のようなアウェー感だ。
■竹村浩二 >
右隣はお好み焼き屋で、左隣ははしまき屋だ。
ソースとマヨネーズが基本な粉モノばかり。
味が全部一緒だが、右隣は屋台の主がカノジョとイチャついてて客が来てない。
左隣は店主がどっか遊びに行ってて店が開いてない。
よってこの辺りでは竹村浩二のたこ焼き屋はそこそこの売り上げだ。
っていうか両隣が論外だ。
そもそもはしまきってなんだよ。
携帯端末で検索したら九州のクソ田舎ローカルフードか。知らんわ。
負けてねーし。青春なんて羨ましくねーし。寒くねーし。
■竹村浩二 >
「毎度ありー、売り上げ? ショバ代くらいにはなるって感じスね」
「お買い上げありがとうございましたー、最近物騒なんで気をつけてー」
「ははは……まぁボチボチですよボチボチ、お釣りです」
……やべぇ。
つまんねぇ。
うっかりたこ焼き屋で飯を食っていく覚悟を決めていたら毎日これの繰り返しだったのか。
ぜってー俺には合わん。
■竹村浩二 >
客足がひと段落した頃、パイプ椅子にどっかりと座って禁煙パイプを咥え直した。
退屈は辛い。
名前も知らないカクテルのように青い空を眺めた。
「僕はあの子を踏み倒し、僕は街に踏まれたぁー……」
男のぽつり、ぽつりと溢す歌声だけが静かに流れた。
■竹村浩二 >
「……なんか面白ぇことないかなぁ…」
自分の独り言にゾッとした。
まるで自分の人生に面白いことなど一つもないかのような冷たい響きだった。
事実、自分は酒と煙草と女と正義がやめられないクズだ。
そんなことはわかってる。
わかっているんだ。
ただ…自分自身がつまらない大人に成り下がったことに反抗している、子供の頃の自分がどこかにいて。
時折、熱を持って痛みを発する。
■竹村浩二 >
強がろうが。弱さを認めようが。
それからも男の日常は続く。
男の退屈な人生が変わることは、あるのだろうか……
ご案内:「学生通り【常世祭期間中】」から竹村浩二さんが去りました。