2017/05/03 のログ
暁 名無 > 「なんだなんだ、御一人様仲間かよ。」

彼女の言い分を聞いてみれば、どうやら同じく連休を寂しく過ごす勢の一人だったらしい。
せっかく出したタバコだが、まさか生徒の前で堂々と喫うわけにもいかない。
俺は咥えたタバコをそっと胸ポケットに戻した。

「連休だからってこんなとこうろついてると、油断してるところピンクオーラに飲まれて死ぬぞ?
 『私以外にも』ってことはお前さんもオヒトリサマ、なんだろ?」

顔立ちは良い、顔立ちは良いが胸が無い。ついでに眼鏡じゃない。
個人採点するとしたら70点くらいだろう。思わず溜息が零れかける。
流石にあからさまにガッカリする様な馬鹿正直さは失って久しいけどな。

和元月香 > 「いやー、実家に帰ろっかなーと思ってたんですけどー。
そう言えば半分以上縁切られてたなーって~」

地元の友人にも会えやしない、とひらひらと手を振って笑う。
相変わらず軽い調子で、変にぶちまけている。暇だからだろうか。

「その通りですよー。でも行くとこないから仕方なく。
早速死にそうですけどね、ははっ。
…あっごめんなさいねー、がっかりさせちゃって」

相手の視線が顔、そして下の胸に行ったのに気づいて思わず苦笑した。
言うほどない胸と、子供っぽい顔つきはこの男はお気に召さなかったのだろう。

(…まぁ、『そっちこそ』って感じなんだけどね!!)

特に異性に興味があるわけではないが…。

暁 名無 > 「そいつぁ苦労してんなあ。
 まあそういう生徒も居るもんだよなあ。
 おっさんガキの頃から“実家”ってもんがねえから帰れないって事もまたねえんだけど。」

まあそれは今この場に関係無い事だ。
ついでにゴールデンウィークに帰る場所が無いのは、プレイスよりもタイムの問題。あと手段。

「まあ、あと20……いや10cm……げふんげふん。
 ははは、何言ってんだ。可愛い顔の女子に話しかけられてがっかりする男が居るかよ。
 気のせいだ気のせい、ちなみに服装の所為でそう見えるとかじゃねえよな?」

実は着やせするタイプなんです、とかそういうのも全然構わないしむしろバッチ来いなわけだが。
とまあ、初対面の女生徒にセクハラど真ん中の冗談を投げつけられるだけ俺も成長したのだろう。駄目な方に。

和元月香 > 「あらまぁそうなんですか、異世界人?
…苦労してますよー、仕送りが極端に少なくてろくにカフェで甘味も食えやしない」

男の実家無い発言には少し不思議そうにしたものの、
続いた言葉にはぁと小さく溜め息をついて首を竦める事で流した。
気にならなくも無いが、あまり踏み込んでも意味は無さそうだ。
月香の理性がそう訴えていた、気がするようなしないような。

「やっぱり気にしてんじゃないですかっ、もー!」

かわいこぶって高い声を上げてみる。
喉が痛い。
だが次の瞬間ににやりと笑みを浮かべて自らの胸に手を当てて堂々と宣言した。

「…正真正銘のCですよ、残念でした」

…月香は本当に残念な事だが、着痩せはしないタイプであった。
可愛らしい女性に必須の羞恥心も例外を除き極端に無い。
あっさりと、何て事の無いようにカップ数をばらしてしまう程には。

暁 名無 > 「いやあ?
 ああ、でも異世界と言えなくもねえか。
 ……はっはっは、そういう時は然るべき機関に相談して補助金くらい貰っとけ。」

一応学校の事務窓口でその手の資金援助も受けられた気がする。
豪勢な、とはいかないがそこそこの物だった憶えがあるが、如何せん使った試しが無いので何とも言えない。

「ほーん、C……C?」

ちょっと申告盛ってねえ?
思わずそんな眼差しを向けてしまう。いや、ここは彼女の意思を尊重しよう。そうしよう。

「ま、何事もこれからこれから。
 今はBでもそのうちEとかになる未来だって希望を棄てなければ訪れるかもしれない。ふぁいと。」

こころからのこころない声援を送って、俺は努めてさわやかな笑みを向けた。

和元月香 > 「生活資金は何とかバイトで賄えてるんですけどねー。
…下手に補助金申し込んだら家がうるさいよなー…。まっ、いっか!
教えて下さってありがとうございましたー」

申し込もうそうしよう、と決意を固めてから
教えてくれた相手には緩く礼を言っておいた。
何かと姉は常世と繋がっているし、時たま顔を出しては
散々見下して帰っていくので、話はすぐ家に届くだろう。
でもいいや、金には返られんと煩い家族は未来の自分に任せた。

「Cですよ、流石にDは無いですけど…」
(そういえばカナタはでかかったなー。E?いやF?…うん。
…この島巨乳多いんかな、だから普通サイズ長く見てないのかも)

ちなみに、ちゃんとCはある。
確かに小ぶりだが形は綺麗だという感じ。
ちなみに本人にはそれを巡る嫉妬等の感情は無かった。

「いや余計なお世話ですわコラ」

だが男の笑顔には、笑みをひきつらせた。
隠すも何も無いような言動である。

暁 名無 > 「学生の本分はあくまで勉強、そんな生活資金ほ補填にするほどバイトしてたら疎かになるぞ。
 ついでに水商売には手を出すなよ、足を運びづらくなるから。」

礼なんて要らない、教師としての親切心から提案しただけだ。
そう告げようとして、何だかキザったらしくなりそうだったので俺は口を閉じた。
しかし喋り仕事の宿命か中々閉じたままになってくれそうにないのが口というもの。

「さらりと上に盛った事にするな。
 そして何だか遠い目をしてんな、どうした?
 やっぱり年頃の娘だからその手の憧れがある相手でも居るのか?」

俺はすっと少女に歩み寄ると、自然な手つきでリボンを整えるフリをして襟元から覗こうと試みる。
丁度辺りに人目が無い事はチェック済みだし、叫ばれたらどう逃げるかのシミュレートも何回も行った。
まあ近づいた分退かれたら未遂どころか不発で終わる訳だが。

和元月香 > 「学校はちゃんと行ってますよ、無理はしてないんでご心配無く。
今だってふらふらしてる余裕ぐらいありますから」
(やっぱりこの人教師か….)

少しおどけたようにした敬礼のポーズはあくまで明るい。
嘘では無い。魔術の講義は出るだけ出ているし、平日は毎日学校に行っている。

「…いやー、なんか女の使命なんですかね?
まぁCと言うことで!憧れなど無い!
だって巨乳は肩凝るし将来垂れるって聞いたもん!」

見事吹っ切れた。
しかし、そんな事をしている間に相手の手がリボンに掛かっていた。
あまり警戒していなかったせいか、反応が遅れる。

「………通報すんぞ???」

そうドスの効いた低い声で言いながら、思いっきり相手の手をつねろうとする。

(別の女の子にもこんな事してんのかな、ん?????)

という意味であって、自分が恥ずかしかったとかではない。

暁 名無 > 「授業中寝てたりとかしてねえだろうな?
 ま、寝てるくらいで不良扱いする様な先生はこの島にゃ……居ないと、思う……よ?」

正直、自信無かった。
幾ら自分が寝ようがサボろうが結果困るのは生徒自身、というスタンスをとっているからと、
他の先生が皆そうだとも限らない。無責任な言葉で生徒を路頭に迷わせるのは流石に気が引ける。

「かぁーっ、顔は良いのに勿体ねえなあ。
 けどまあ、手に収まるサイズってのもそれはそれで需要はあるからな。
 俺としては少し余り過ぎるくらいがベスト……ってそれはいい。」

リボンをくいっと引っ張って正そうとすれば、身長差から自然と確認がとれると言う素晴らしい作戦だったのだが。
流石に手をつねられれば痛いし、その脅し文句は効果抜群だ。社会的に一撃必殺のカードは宜しくない。

「それだけは後生なんで勘弁してつかぁさい……。
 ふぅ……この手は駄目か。忘れんようにしとこ……。」

なお誤解のない様に言っとくが初犯である!
流石に!さすがに!
いや、それならそれで何故今犯った、という事になるのだが。
……何だろう、春だから頭ちょっとポカポカし過ぎてた?

和元月香 > 「………………………してないですよ!」

妙な沈黙の後、何事も無かったように答える。
ちょっと…うとうとしてたかもしれない。
だが居眠りぐらいで叱っていたらこの学園じゃ身が持たないのでは?と思いながら。

「…あなた教師なんだと思いますけど、ギリギリアウトっすよ?
私じゃなければ即通報でしたよ?」

黙って相手の独り言を聞いていたものの、じとりと睨みつけるように見上げた。
そのまま自然な動作で間合いを取ってリボンを整える。

「いやセクハラは犯罪だかんね???」

(この手もダメかじゃねーよ!!)

外でも中でもツッコみをかける。
この男のこれからが少々、いやかなり不安である。
憐れな女の子達が出ないといいのだが。

暁 名無 > 「バイトもほどほどにな、これから暖かくなってどんどん眠くなって来るからな、昼間は。」

ケケケ、と自分でもそれはどうだろうと思う笑いが自然と漏れた。
まあでも授業以外で淡々と机仕事してるとうとうとするくらい俺でもある。仕方ないのは百も承知だ。

「いかにも。暁先生って気軽に呼んでくれ?
 いやぁ、肝に銘じておくわ。流石に前科持ちにはなりたくないもんねえ、信用商売だし。」

あんまり反省して無さそうな口調に我ながらびっくりだが、一応反省はしてる。
セクハラが犯罪だってのも承知の上だ。いや、承知してればして良いのかって問題じゃねえよな、うん。

和元月香 > 「うん、本当に授業中眠くて眠くて~…」

しょっちゅう微睡んでいると思い出せば笑いながら頬を掻く。
窓際の席なら眠気も倍増、だが望んだ講義ならばきちんと聞いておかなければならないし。

「暁先生、ですか!
私は和元月香、適当に呼んでくだせぇな。
…そうして下さいね!」

にこりと笑って威圧を掛け、月香はふっと空を見上げて何かを思い出す。

「やっば…。そういえば課題終わってないや…」

うう、と嫌そうに声を漏らすと慌ただしく相手を振り返る。
そして足踏みをしながら「さ、さようなら!」と別れを告げて、
そのまま春の学生通りを男子顔向けのスピードで猛ダッシュしていった。

ご案内:「学生通り」から和元月香さんが去りました。
暁 名無 > 「気持ちは解るけどよ、まあ頑張れや学生。」

ケラケラと我ながら軽薄に笑いながら少女を見下ろす。
俺も学生の頃──というか同時進行だが──は事ある毎にうとうとしてた気がするしな。
あいや、今年はどうだったっけか……。

「おう!
 転ばねえように気を付けて帰れよ和元!
 課題はちゃんと提出日までに出すんだぞ、担当の先生困らすなよー!」

別れの挨拶にひらりと手を振って応える。
それからもうダッシュで去っていく後ろ姿を見送りながら、
さて俺はもう少し暇な休みを満喫するか、と引き続き通りを散策するのであった。

ご案内:「学生通り」から暁 名無さんが去りました。