2018/08/19 のログ
ご案内:「学生通り」にアリスさんが現れました。
アリス >  
私、アリス・アンダーソン。
四月から常世に通ってる一年生!
ぼっちキャラも卒業したことだしそろそろリア充になるための道をーとか色々考えてるの。

考え事をしながら道を歩いていたら。

何故か学生通りで犬に追いかけられてます。

「ああああああああああああぁぁ!!」

平和とは言いがたい街だとは思っていたけど。
シベリアン・ハスキーに追いかけられている。
尻尾を踏んだとかそういうことはない。
ただ、首輪をしている飼い犬と思しき犬に一方的に追いかけられている。

「誰かー!!」

道行く人に助けを求めても、微笑ましいものを見たという微笑を浮かべるだけだ。
この街いつか燃やす。

アリス >  
ちら、と後ろを振り向く。
般若を思わせる恐ろしい形相の犬がハッハッハッハと舌を出しながら追ってくる。
怖い!!
恐ろしい!!

噛まれたらどうしてくれる。
これからリア充になろうというこのアリス・アンダーソンに対して!!
万が一おしりに噛み跡なんて残ったらお嫁にいけない。

お、おなかが空いているのかしら?
だったらこれでもくらえー!

「空論の獣(ジャバウォック)ッ!!」

手の間に異能でビーフジャーキーを作り出す。
本当は安全検査にクリアしてないので人や動物に異能で作り出した食べ物を与えてはいけないのだけれど。
ええい、この邪犬魔犬雑犬鬼犬がどうなろうと知ったことかー!!

ポイ、とジャーキーを後方に投げた。

それをべろんと食べて咀嚼を始めるシベリアン・ハスキー。

「やったの!?」

息を切らして犬の様子を見る。
走るにも限界というものがある。

すると。
犬はますます目をキラキラさせながら私を追いかけてきた。
脱兎の如く逃げ出す私。炎天下鬼ごっこ、ワンモアセット。

ご案内:「学生通り」にアガサさんが現れました。
アガサ > 見上げると眩む程に太陽が眩い夏のある日のこと。
暇だから本でも買おうかと学生通りをのんびりと歩いて時のこと。
何やら遠くで遠雷にも似た悲鳴が聴こえ、何事だろうかと首が傾く。

「こんな所で悲鳴だなんて珍しいね?はて、一体何事──」

傾いた首が真横になった所で視界に誰かが入り込む。
中々いい足さばきと速度でコーナーを曲がってくるのは、遠目にも金髪が鮮やかな女の子。
そしてその後ろを楽しそうに追いかけているのは大型犬だ。
どうみてもペットに追いかけられている飼い主、には見えない。

「……えーと、大丈夫だよね。うん、緊急避難とかそういう奴。救助だからね、救助」

車道に出て右手を前に。
人差し指と中指を揃え目の前を指差さすようにし、左手を添える。
空手だけれど、遠目には銃を構えたように見えるかもしれない所作。
狙いは少女の背後の、犬だ。

「Dechrau cyflym.《当たってくれよ》」

指先に白青に煌く魔力が灯る。
出力は中程度。当たれば気絶くらいはするだろうか。

「TRI DAU UN──Nod!《今!》」

空気の爆ぜる音を伴って車道上に光の光跡を曳いて魔弾が飛ぶ。
よしんば間違えて少女に当たったら、その時はその時だ!

アリス >  
不良っぽい上級生には絡まれ。
悪い異能使いには誘拐され。
今はこうして犬に追いかけられている。

ひょっとして私はこの街の食物連鎖で最下層に位置しているのでは?
そんなことを考えながら学生通りを逃げた。

後ろにはハスキー犬が疲れ知らずに追いかけてくる。
人はひょっとしたら全力で走っている限りは犬から逃げ切れるものなのかしら?
しかし体力はレッドランプを点灯させている。

ふと。
遥か遠くに見える少女が。
光弾のようなものを放つ。

「ぎゃー!!」

わけも分からずスライディング気味に姿勢を低くした。
上を通り抜けた魔弾は、シベリアンハスキーにヒット。
きゅうううんと唸って気絶した。

「はぁ………はぁ…」

へろへろと走りながら助けてくれた少女の下へ。

「はぁ………はぁ……はぁ…た、助けてくれて……ありが…はぁ…はぁ…」

息が切れすぎてまともに喋れない。
オンラインゲームのしすぎで体はなまっている。

アガサ > 学園地区で魔術をみだりに使うと大体は怒られる。
大体に外れるのは、緊急避難だとか、人命救助だとか、そういった奴で、
今回私が魔術を使ったのも、そういった区分に含まれるのだ──と、主張したい。
だってほら、ちゃあんと犬に当たったんだから。

「……あ、やっぱり危なかったんだ?良かったあ。これでもしペットと微笑ましいスキンシップをしていた!
とかだったら私がちょっと職員室に呼ばれる事態になっていたかもだ!」

切れ味鋭い、良いコーナーリングを見せてくれた金髪の子に駆け寄って、健闘を称えるように肩を叩く。
見たところ、私とそう年は離れていなさそうだからか、幾分調子が軽いかもしれない。

アリス >  
「はぁ……はぁ…ふー、死ぬかと思ったー……」

肩を叩かれると、笑顔を見せて。
紫のシルエットの少女としか見ていなかったが、可愛らしい同世代の女の子だった。

犬を指差して説明タイム。

「あの犬が突然追いかけてきたの!! 突然! 首輪をしてるのにリードがなくて!!」

半泣きで喚いた。
犬はぐったりしているが、気絶しているだけのようで。

「はー……ありがとう、私はアリス。アリス・アンダーソン。あなたは?」

思えば、私は助けられてばかりだ。

アガサ > 「でも君、どうして犬なんかに追いかけられてたのさ。尻尾でも踏ん……うわあ突然かあ。
君、動物に好かれる性質とか……」

指差す先を見ると車道のど真ん中でゴロ寝している大型犬の姿。時々動くから死んではいないと判って、それはそれで一安心だ。

「どういたしまして!授業以外で魔術使ったの、初めてだったけど上手くいってよかったー……
と、アリス君だね。私はアガサ。アガサ・アーミテッジ・ナイト。この春からこの島に来た一年生だよ。」

自己紹介には自己紹介を、頬を指で押し上げながらのおふざけ交じりの笑み顔を添えるも、目線は彼女の頭に向かう。
いやほら、だってあんまりにも綺麗な髪色だったから。

「なんというか……うーん綺麗な色だなあ。ちょっと羨ましいかもだ。案外犬もそういうのに惹かれただけだったりして」

アリス >  
「わからないわ、私の体から犬を呼び寄せる粒子でも出ているのかも」

げんなりとした表情で呼吸を整えていると、流れが止まっていた車道に巨人が。

「え………」

巨人、ではない。人間だ。
ただ、マツコ・グラシャラボラスとでも形容するべき人だ。

『ケンちゃんアンタねぇ、車道のド真ん中で寝てるんじゃないわよ』

そう言っておじさん? おばさん? よくわからないヒトは大型犬を軽々と担いでそのまま去っていった。
意味がわからない。わからないけど放し飼いはやめてほしい。

「あー……事件解決みたいね、魔術だったの? あれ」

指を銃のように構えて虚空を撃つ。
当然、何も出ない。

「アガサ・アーミテッジ・ナイト……同じ一年生ね、よろしくアガサ」

自分の髪を指先で摘んで。

「ありがとう、犬はノーサンキューだけどパパとママからもらった髪色なの」
「あなたの髪も素敵よ、アガサ。赤いリボンも似合ってる」

アガサ > 「身も蓋も無い事を言うと、この島って結構変な事が多いそうだからね。
この間も商店街の方でUFOの大群がどうのって、島民向けのSNSに載ってたりしたし、
転移荒野で航空宇宙開発部が大型の怪物の対処云々とかもあったし、
そう考えると大型犬に追いかけられるのって凄く些細な気がしなくも……
いや追いかけられた君からすると些細もへったくれも──」

何ゆえ犬は人を追いかけるのか。往来の真ん中で謎に対して首を傾げる私の言葉が不意に止まる。
巨人だ。いや、巨人ではないけど、巨人のようにみえる人間だ。
あれこそが転移荒野に表れたる大型の!と一瞬思いそうになるのを振り払い、地を揺らして犬を担ぎ去る彼(?)を見送ろう。

「………うん、解決だね。で、うん。魔術だよ。と、いっても火をぶわーって出したり、そういうのは出来ないんだけどね。
それも当たっても精々、当たり所がよければ気絶するかなあ程度でね」

真似するように指を銃に構えると、線香花火のような小さな光が灯って、そして直ぐに消えた。

「わお、同じ一年仲間なんだ!いやあこの学校生徒がやたら多くって、中々気付けないんだよね。
……それとー……褒められるとちょっと恥ずかしいなあ。ふふふ、でもありがとう。このリボン、パパが買ってくれた奴で──」

往来でそのまま歓談しかかる背後より鳴る車のクラクション。そういえば此処は車道上だったと思い出し、
アリスの手を取って歩道に移り、とりあえず目の前にあった自動販売機でオレンジジュースを二本買おう。

「はい、喉、渇いてるだろう?」

アリス >  
「あー、あのUFOの群れが発生したやつは現場にいたわ…」
「私の異能で颯爽と解決してあげたけれど?」

ドッヤァァァァ顔をきめる。

「転移荒野の話は聞いたことがないわね…あそこ危ないし。一度、亜人に追いかけられたわ」
「些細かも知れないけど犬でも十分死ぬかと思ったわ…」

小さな灯りを見せる彼女の指を見て目を輝かせる。

「わぁ、すごいすごい! 魔術使いというのは、なかなか珍しいわ!」
「パパが買ってくれたのね、良いと思うわ。私のパパは最近、口うるさくて…」

そこまで話して手を引かれながら車道から退避。
どうでもいいけど手を握られると鼓動が一瞬だけ早まります。元ぼっちだから。

「え、お金、私が払うわ。だってあなたには助けてもらったし……」

あわあわ。渡してもらったジュースは、とっても冷たい。

アガサ > 「門とやらの所為で異世界だか並行世界だか判らないけど、色々な人とか物が来る御時勢だもの。
そりゃあUFOがあってもおかしくは……居たの!?解決したの!?」

ジュースの缶を危うく取り落としそうになった。
胡散臭さしか感じないSNSにまさか信憑性が伴おうとは、明日は雪でも降るのではなかろうか。
思わず青空を見上げる。雲ひとつ無い、爽やかな青色が目に痛いくらいだった。

「……転移荒野行った事あるんだ。君すごいなあ。無茶するなあ……。
でも、そうかな。魔術、そんなに珍しい?私はどうもそのー……幅が狭いみたいで、これ以上は無理らしいし。
異能もまあ、そんな派手なのじゃないからさ。物事を解決出来る程なんてのは凄いと思うよ。
ちなみに、どんな奴?UFOを何とか出来るくらいなら、空とか飛んで捕まえたりするのかな?
差し支えなければ、ジュース代の代わりだと思って教えて欲しいな」

幸いにしてジュース缶は落ちずにアリスの手に渡り、義父を褒められたのもあって口は弾んでより気安い。
手で少しリボンを撫でるようにしながらも、私の眼差しは好奇心を隠しもしないできらきらしているに違いなかった。

アリス >  
「あのUFOは、赤ちゃんが目覚めた異能で作り出したものだったの」
「放っておいたらどんな影響が出るかわからないから、みんなで虫取り網を振って捕まえてたのよ」

ジュースの缶を手にしたまま彼女の隣で青空を見上げる。
何か私たちに恨みでもあるのだろうか、太陽は。
幾分か涼しくなったとしてもこの暑さはまだつらい。

「それが、異能の練習のつもりで行ったら門が不安定になってる時期でねー……」
「ふーん? でも私を助けてくれた最高の力だわ」

ジュースのお代と言われては仕方ない。
白衣のポケットにジュースを入れると、ふふんと笑って両手を広げた。

両手の間にロープが作り出され、それは右手にまとめるとカキ氷になり、地面に放り捨てるとスパナになった。
靴の爪先でスパナを軽く蹴ると、無害な大気成分に分解されて工具は消えてしまった。

「私の異能、空論の獣(ジャバウォック)は物質創造系の異能よ」
「これでUFOの気を引くものを創って、みんなで私の作り出したネットランチャーを打ち込んだわけよ」

得意げに語る。これは私の数少ない武勇伝で。

「とはいっても、食べ物は生物にどんな影響があるかわからないから基本的に創っちゃだめなんだけどね」

そう言ってオレンジジュースを開封、渇いた喉を潤す甘酸っぱい佳味。