2015/07/24 のログ
ご案内:「商店街」に渡辺慧さんが現れました。
■渡辺慧 > 何処を歩いているわけでもない。
ただ、何となく歩いている。
予定があるわけではない。買い物するものがあるわけでもない。
何を見るわけでもないが……ただ、のんびりと。
機嫌よさげにまだ、そう少なくはない人通りを。
ふらふらと。
いつぞやのように人に当たりそうな、当たらない。
そんな歩き方で、どこに視線をやっているのかわからないように、見て回っていた。
いつも通りの格好に。もう、つけなくてもいいだろう鼻の頭に絆創膏を付け。――もしかして、気に入ったのだろうか。――
ご案内:「商店街」に阿賀佐 メアリさんが現れました。
■渡辺慧 > ワザとらしい下手くそな鼻歌を鳴らしつつ。
機嫌よさげに。
辺りは、どことなく暗くなり始めるぐらいの、そんな時間。
小腹がすいているような。別にすかないような。
何かを食べたいような、それよりも歩きたいような。
本当に、前の時とは違う。
あてはない。目的もないが――。ただ、こうして歩いて、どこを見るわけでもない、この時間も、なかなかに楽しい。
人の流れに逆らうわけでもないが、流されるわけでもないこの感じが、ひどく楽しいものだ。
■阿賀佐 メアリ > ひょいと通り交差の細い路地から人影が飛び出してくる。
見通しは悪くはなかったがあいにくの一時停止無視。
車ではないが気をつけるべきだ。
飛び出してきた少女と避けれず衝突。
「きゃっ!」
小さな悲鳴とともに尻餅をつく。
ドーナッツの入った袋を抱えていた。
セーフ、腕の中に収まったままだ。
残念なことにそのお陰で思い切りおしりを打ち付けたのだが。
そして口に咥えていたチョコリングが悲鳴とともに地面に落下。
そのすきを狙って野良犬が咥えて走り去ってしまった。
「いたたた……。
えっ……? あぁっ!?」
情けない声、そしてようやくぶつかった人物に気がつくのであった。
「えっと……ごめんな……。
あ……慧……」
■渡辺慧 > 「おア゛」
ぶつからないぎりぎりのところを歩くということは。
ぶつかりそうでもあり。
つまるところ、今のように。何かバランスさえ崩れれば簡単にぶつかる、という話でもある。
と、言っても今までぶつかったことなどなかったから……慢心のようなものだったのかもしれないが。
ぶつかった衝撃はそう強くない。
少女が一人ぶつかった程度だからだ。
だけれでも。
その小さな衝撃に見合わないほどの大げささで。
「ウワーー」
ワザとらしい悲鳴を上げ乍ら。
真後ろに向かって思いっきり倒れこむ、というのは。
――まぁ、明らかに。ノリであろう。
その証拠に、まるでダメージがないような器用な倒れ方、というのも変な話であるが。
そも、誰が当たったか。特にそれを確認する前に倒れこむのだか、なにやら。それすらも楽しむように。
■阿賀佐 メアリ > 「よいしょ、ててて……」
立ち上がろうと思ったが、思った以上に打ったところが痛む。
その場に膝をついて座り込んで、おしりを浮かしつつ。
倒れた慧に謝ろうと。
しかしなにやら変な倒れ方をしているではないか。
「えっと……慧、大丈夫?」
そのままの状態で手を差し伸ばして。
だが、座ったまま差し伸ばすのも失礼かと思い引っ込める。
やはり差し伸ばさないのも失礼かと思って差し伸ばす。
迷っている、目の前の少年に対してどう対処すればよいのかと。
■渡辺慧 > 「………………うむ!」
聞こえた声は、聞き覚えがある。
目をぱっちりと開くと、その顔に笑顔を浮かべ。
「よい、っしょ、っと」
身軽な動きで、飛び上がるかのように。
倒れた状態を、立った状態へ移行させた。
目の前にいる、その少女の姿を、確認すると。
「よーす、メアリ」
「久々ねぇ」
「元気?」
等と、今の状況にそぐわない、そんな気軽な言葉をかけつつ。
その倒れてる姿に。
その、差し伸ばした手に、こちらも手を差し出し。
引き起こさんとばかりに。
■阿賀佐 メアリ > 「……あ」
引き起こそうか迷っていたはずの手。
その手が逆に引き起こされるための手になっていた。
膝を震わせながらようやく立ち上がる。
「ありがと……えと、ぶつかってゴメン。
久々……だけど、うんまぁまぁ……」
ようやく謝れた。
なんだか恥ずかしい。
誤魔化すように服の土埃を手で払う。
なにを……話そうか。
言葉を何か浮かべようと頭を巡らした。
「えと、その……」
袋からオールドファッションを取り出して慧の目の前に。
目線を合わせれないのかそっぽを向いて。
あいにく先ほどの転倒時に潰れてしまったが。
「……お詫び」
ボソリとつぶやいた。
■渡辺慧 > 「相変わらず、ドジっ子やってるよーだね」
視線を合わさない彼女に、だけれども。
楽しげに笑って。前にした話は覚えている。
彼女は否定していたが――。
「ありがと」
潰れていたことなどまるで気にせずにそれを受け取るが。
「お詫び。というか。気にしてないから別にいいんだけどさ」
だって、楽しんでいたから。
「ただ忘れてない?」
以前、確か。
何が、自分の言葉が彼女の琴線に触れたか、よくわからなかったが。
ただ、覚えている。それは、ひどく、彼女が笑っていた、ということ。――そう、涙を流すほどに。
だから、確か。一つの注文を付けたはずだ。
君は、それ、覚えてない?
なんて。そうやって、悪戯気に笑いかける様にして、嘯いた。
■阿賀佐 メアリ > 「ドジって訳じゃないんだけど」
自らの異能のせいではあるが。
足元には焦げた呪符が落ちている。
「気にしないって言われても……!
ぶつかったのは私の方だし」
なぜ、彼はこうも楽観的なのか。
不思議だ。
阿賀佐のネガティブとは逆方向だ。
「え……何を?」
一体彼が何を言っているのか、すぐに思い出せなかった。
あの時確か……「笑え」と。
「……!
うぅ、その……急に笑うことなんて……」
あの時は彼が面白いことを言ったから笑えたのだ。
眉と口が平行ないつもの仏頂面。
笑顔の仕方を忘れていて、どうすればいいのか。
両手の人差し指で無理矢理に口の端を吊り上げる。
ダメだ、何かが違う。
それになんだか無理矢理な笑顔というのがすごく恥ずかしい。
真っ赤な顔で困り顔。
思わず慧に背を向けてしまった。