2015/08/13 のログ
■アルワルド > ………しかし右も左も判りませんね。
(不慣れな土地を歩く、と云う行為は異国の地を観覧すると思えば幾許か気に紛れたが
本来それは観覧を観覧ならしめる、帰るべき場所が在るが故のものであったから
幾ら塗り替えようとも蒼穹には至らない灰色の空を心に象る。)
いや、いけない、早速と気弱になってどうする……全く、この粘るような密度の空気と、気温と湿度の所為かな。
(往来を歩きながら独りごちて頭を振い思考を払い、それが済んだら右へ左へと店先を見遣る。
看板を見ないのは、曰くこの島全域に作用していると云う翻訳の魔術が、描かれたものには作用していないからだ。
絵でも描かれていればまだ判るが、文字の羅列では埒があかない。)
■アルワルド > ……ああ、此処はそうっぽい……かな?
(やがてショー・ウィンドウに衣服や装飾品が飾られた店先が視界に映る。
武者鎧や忍装束
その中には凡そ見慣れない代物もあったが此処は異世界なのだからと首肯したが
一度店の中に入れば何処と無く中庸な、凡そはっきりとした自己主張を持たない内装に少し、安堵する自分に気付く。
其処彼処に見受けられる品物も大半は何処か見知った所があるものだった。
この後、やたらと馴れ馴れしい店員に様々な服を薦められ、対応に些か困る事になったり
服の入った紙袋を幾つも提げた異世界人が独り、困り顔で往来を歩いたとか歩かないとか。)
ご案内:「商店街」からアルワルドさんが去りました。
ご案内:「商店街」にやなぎさんが現れました。
ご案内:「商店街」に切野万智さんが現れました。
■やなぎ > 青年が片手で何かを食いながら商店街を歩いている。
入り江から帰ってくる途中、腹が減ったので商店街でコロッケを買っていたのだ。
さくさくっとした食感がやみつきになる。
とはいえ馬鹿舌なのもあり、どんなものを食べても美味しいとしか感じないのだが。
1つ食べたら更に腹がへってきた。他に何かないものか。
きょろきょろと首をうごかしはじめる。
■切野万智 > 「たい焼き一つお願いしまーす。」
パトロール中に、屋台でたい焼きを買い込む悪徳・・・もとい、ちょっと不真面目な風紀委員の男の姿。
普段はパトロールなぞしないのだが、歓楽街での誘拐事件、病院の襲撃事件、さらには浜辺での誘拐事件と来て、多少委員が足りていないらしい。
そのため、ヒマなうちの部署から比較的安全な商店街のパトロールを、ということだ。
食事時も過ぎて、商店街も閑散とし始めているし、ばれへんばれへん、と軽い気持ちで。
■やなぎ > お、たい焼き。
男の声に釣られてあちらを振り向いてみると、
ぱっと目にとまる色の制服が目に入ってきた。
少佐と公園で話していた時に現れた人も、同じものを着ていたのを思い出す。
生徒なのはわかるが、それが何を意味しているのかはわからない。
…流行ファッション?
そんなことを考えながら、たい焼き店目掛けて歩いていった。
「たい焼き2つお願いします。」
■切野万智 > 財布を取り出し支払いを済ませる
(ああ、こんなクソ暑いのにたい焼きとか、間違いだったかもな。)
そんなとき、現れたのは、黒っぽい・・・軍服?の・・・男?
肩まで届かない程度の自分の髪が短く思える。
ちらりと見て確認すると、店主からたい焼きを受け取りながら
「さ、サボってるんじゃないですヨ?
コレはですネ、帰ってから食べるんデス。」
と誰も咎めていないというのに、言い訳をする。
またの名を自白と言う。
■やなぎ > 「え?…はあ。」
少し吃驚したような声を上げ、
腰まで届く黒髪を揺らして男の方を向いた。
自分に謎の言い訳をしてくる彼は、さながら放課後にイケナイ寄り道をする輩のようだ。
「…帰ってからだと冷めてしまいますよ。」
ぴったり料金分を置いて2つたいやきを受け取る。
■切野万智 > 「アッハッハ、じゃあ仕方ないッスね。
仕方がない食べましょう。」
正当な理由を手に入れて、見逃してもらえたか、と笑ってみせる。
(2つもか、なかなか食うのなこの人。)
一瞬女性かと思うほどの見た目だ。
いや、正直まだ男性だと思えないが、そこは置いとこう。
あんまり食いそうには見えないが、人は見かけに拠らないというところか。
(そういや、この制服どっかで見たことある気がするなぁ・・・)
とじろじろと軍服を眺めはじめる。
■やなぎ > 「え?ええ。」
特に気にもせずにてきとうに頷いた。
一つ目をもぐもぐと食べ始めながら、
こちらを妙に見てくる彼の様子をうかがう。
たいやきはものの数秒で胃の中に消えてしまった。
■切野万智 > あんまりジロジロ見るのも失礼だとは思わなかったらしい。
「あ、失礼しました。
どこかで見たことがある軍服だなぁ、と思って・・・」
とあいた片手でぽりぽりと頬を掻きながら謝罪する。
(コレじゃあ古いナンパみたいだなぁ)
■やなぎ > 「いえ…珍しかったですか?」
それもそうだ、こんな軍服を着ている者なんて他に1人しか思いつかない。
つまるところ…バレたか!?
そう勝手に結論付けると途端に焦りが出て来る。
狼狽えて、一歩、後退った。
「こ、これは…あの…」
良い言い訳も思いつかなかった。
■切野万智 > その行動はやぶ蛇であったか。
軍の授業も受けておらず、落し物係として働いていた彼は、銃撃事件の主犯者の服装を聞いていなかったのだ。
風紀委員を前にこの反応。
(何だこの慌て様。
もしかしてなにかヤマシイ事でも隠してんのかな?)
彼に疑いを持ち始める。
(怖ェな、コレで凶悪犯とかだったらどうしよう・・・)
ごくりと唾を飲み込み、腹をくくる。
「あー、うん、失礼ですが、学生証の提示をお願いしてもいいですか・・・?」
■やなぎ > 「がっ!?学生しょ…あっ、はい!」
すぐさまポケットの中を探る。
教師の補佐であるので教員を示す物は持っていた。
ポケットの中で証明書を探し当てながら考える。
まず例の襲撃事件の"犯人"である教師の補佐であること。
それがしっかり記載されていることだ。
「……これです。やなぎと申します。」
短い時間で考えたあげく、指であの教師の名前部分を隠して提示した。
とはいえ、知られていたら全く無意味な行動なのだが。
■切野万智 > すぐに証明が出てきたあたり、不思議な軍服はただの異邦人か何からしい。
やなぎさんの持っている教員証明をじぃっと見る。
・・・どう見ても一箇所が不自然だ。
指で隠れているんだもの。
外周には空白があるというのに。
「あの、指、どかしてもらっても・・・」
(なんて言ったら怒られるだろうか・・)
と。だんだんと手汗が出てきた。
■やなぎ > 「…あぁすみません。う、"うっかり"…。」
名前を教えても反応しないという事は、まだ知らないのだろうか?
それともさぼりまくりの補佐は記憶がないだけだろうか?
冷や汗が出て来る。
すすす、と指をずらしていく。
『 イン』
やっちまったと思った。
どうせごまかすのなら、『シイ 』にしておくべきだったと。
■切野万智 > (ああ、どんどんと怪しくなってくなぁ・・・)
隠し事がなければ別の場所を持つなりすればいい話なのに。
じりじりと動かすということは、見せていい場所のギリギリを探っていることだろう。
はぁ、と息をつき。
雰囲気からしても、悪そうな人には見えない。
疑われた時点で、逃げたり殴ったりすればいいのに、それもしない。
罪悪感を感じているのか。
それならば、話し合いで解決する問題になるだろうか。
今は刺激しないように、優しく諭そう。
「やなぎさん、早く指、どかしてください。
たい焼き、いい加減冷めてしまいますよ。」
と、ぎこちない、精一杯の笑顔で。
■やなぎ > 「―たいやきっ!」
なんと見バレよりも食べ物のほうが大事なのか、
うっかり証明書を落としてしまった。
慌てて拾おうとしゃがむのだが、
「………。」
全てを諦めたような顔をしてそのままたい焼きを食い始めた。
■切野万智 > (ハハ、正直な人だなぁ。)
ふぅ、と安堵の息を吐く。
笑顔もぎこちないものから、自然なものへと変わる。
「俺、拾いますよ。」
やなぎさんに続き、自分もしゃがむ。
そのまま、代わりに教員証明を拾うだろう。
ちらりとソレを見て
「シイン先生の補佐・・・ですか。
なるほど、ソレで軍服を。ご協力どうも。」
と証明を差し出すだろう。
頭に過ぎるのは、先日起こされた公園での女子生徒銃撃事件。
そして、それに関する報告書。
(少なくともこの人が共犯には見えないけどなぁ・・・)
とたい焼きを食べるやなぎさんを見て、自分も頭からかぶりつくのであった。
■やなぎ > 「ああぁ……」
やなぎは思わず知られてるものだと思っていたので、
この反応は知られてないのだと考えれば安堵と共に気の抜けた声がもれだす。
立ち上がって証明書を受け取る頃にはすでに手ぶらだった。
「どうもすみません、軍事の授業を行っていますでしょう。それで一応。
わたしは一度も補佐を務めたことはないのですがね。」
もう授業をすることはないのかもしれないが。
薄く笑みを浮かべて、まだ食べたりないのかちらっと食べ物屋を見ていたりしている。
■切野万智 > 「いやいや、こちらこそ察しが悪くてすいません。」
と、再び頬をぽりぽりと。
(・・・今は事件の話は置いておこう。)
彼も彼なりに思うところがあるようだ。
(まずは・・・)
飯屋を見るやなぎの視線に気づいたようだ。
そのような指令は無いが、共犯の疑いはある。
あくまで任意という形で、少しくらい話を聞いたってバチはあたらないだろう。
自分もたい焼きをがふがふと一気に食い尽くす。
グイっと制服の袖で餡子をぬぐうと、にやりと笑う。
「・・・メシ、食いに行きます?」
■やなぎ > 「行きますっ!」
それには本当に嬉しそうに頷いた。
完全にバレてないと思っている、無防備すぎる笑顔。
「どこ行きます?買い食いします?あ、お名前は?」
もう待ちきれないというふうな質問攻めして。
犬が嬉しくてしっぽを振るようにはしゃいでいる。
■切野万智 > (ハハ、この人はしゃいじゃって面白いなぁ)
と仔犬の様なやなぎさんを見守る。
っと、人に名前を聞いておきながら自分は名乗らないとは。
「ああ、失礼いたしました、
風紀委員、落し物係の切野万智と申します。」
と軽く会釈。
「ま、その辺のファミレスでも行きましょうか。」
と、ニルヤカナヤ商店街店を指差し。
■やなぎ > 「風紀委員?の切野さんですね。あらためて、やなぎと申します。」
名乗りながら軽くお辞儀をする。
委員会というと学校でよくある役割のようなものだな…
「はい、そうしましょう!」
と先導して歩いていくだろう。
■切野万智 > 【すぐそばのファミレスへの移動を挟んで。】
ふぅ、と息を吐いて着席。
ついでにメニューをやなぎの方へと向ける。
「しっかし、先ほどはどうされたんスか?
身分証出すのにあんなにテンパッちゃって。」
お絞りで手を拭きながら、あくまで自然な感じを装う。
刑事課じゃあるまいし、越権行為に当たるかもしれないなんて恐怖と、この素性の知れぬ軍人が、何か変な気を起こさないかという恐怖をぎゅっと押し込めて。
■やなぎ > かぶっていた軍帽を膝の上に置き、
メニューを食い入るように眺めていたやなぎが固まる。
悟られてはいけないと、すぐに表情を戻して、
「だって…」
共犯者であると悟られたくなかったから。
「恥ずかしかったんですもん!
補佐といいながらなーんにもしたことなかったんですから。」
すでにばれていることすら知らずに、必死に訴え始める。
メニューのハンバーグデミグラスソースセットの画像に指が置かれていた。
■切野万智 > (ヤベェ、全然メニュー決まんない・・・)
自身もメニューを取って、眺めている。
全然頭に入ってこないが。
が、やなぎさんの言葉を聞けば、緊張がとけたようだ。
「アッハッハ、まぁそう言わないで。
先生のお仕事も忙しそうですし、まずはこの学園に慣れるコト・・・ッスかね?」
■やなぎ > こちらも落ち着いてきて、にこやかに話しをする。
「うーーん、やっぱり慣れる所ですかぁ。
一応島のほぼ全土は歩いてみたのですがね、唯一行けてないのが学生地区の教室なんです。
生徒でもなく普通の教師でもないですから中々。」
メニューの決まっていない彼を待っている。
■切野万智 > (学生地区に寄らない・・・?)
「アレ?
失礼ですが普段は何をされてらっしゃるので・・・?」
聞いた感じは完全にNEETだ。
さすがに失礼極まっているので顔には出さない。
ように努力はする。
(ああ、もうメニュー決まってんのか・・・ビーフカレーとかでいいや。)
「あ、決まりました?・・・よね?」
■やなぎ > 「……あ、えーっと。」
改めてそう問われると浮かんでくるのは、
大抵飯を食ってるか、歓楽区や落第街をぶらついてるか、道に迷っているか―
これってNEETでは?
表情を隠すのは苦手で、わたしは何にもしてないですと言わんばかりに焦った顔が浮かばれる。
「このハンバーグセットで。」
質問には口で答えず、すぐさま店員のベルをおした。
■切野万智 > まさかハイの一言も無く、ボタンを押すとは。
(ホント食べ物の事になるとせっかちだなぁ。)
なんて苦笑いをかましながら
「じゃあ、僕はビーフカレーの大盛りで。」
頭を下げ店員が居なくなった頃に話を戻す。
本日2度目、やなぎさんの焦った顔を見て。
予想が的中してしまったのかもしれない。
(まぁこれフォローいれないと気まずいなぁ・・・)
「あー、まぁ、そっすね、夏休みですし仕方ないですよね。」
そういうことにしよう、そういうことで、妥協していただこう。
■やなぎ > 「…そ、そう、夏休みですから…はなの、なつやすみ。」
誤魔化すため、片言のように言葉を繰り返した。
「そうです、夏休みです。あなたこそあった時、なんであんな事口走ったのです?確かー、サボってるとかなんとか?」
決して悪気はなく、本当にただの疑問としてぶつけてみるやなぎ。
■切野万智 > 「ああ、ボク珍しくパトロール中でして。
・・・まぁメシ休憩ということで、他のみんなにはどうか内密に。」
お願いします、と両手を合わせ、軽く頭を下げる。
「夏休みだってのに困っちゃいますよね、アッハッハ」
「・・・イヤミじゃないッスよ?」
たはは、と笑いながら。
自分の近くに寄せた手が、汗で濡れ始める。
「5日前も花火大会があったってのに業務が忙しくって・・・。やなぎさんは見られました?確か常世公園であったとか。」
5日前、常世公園。
指しているのは間違いなくあの事件だ。
なお、花火大会はその事件のために中止となった。
・・・明らかに自分の担当する領分を越えていることはわかっている。それでも、彼のことを自分で判断し、少なくとも、今回のパトロールでの処遇を決めたい、と思った。
エゴでいい、ただ、今は、犯罪者を見逃すことも、一般人を間違えて捕まえることもしたくなかった。
■やなぎ > 「あぁ、ははは。わたしは気にしませんよ。
折角のお休みなのに、休まないでいられますか。」
そう軽く笑い飛ばす。もし自分が教師でもそれくらい許してしまうだろうと。
が、続く問いかけによってまたもや表情を固くしてしまう。
「…いえ、見られませんでしたよ。知ったのは当日でしたからね。
タイミングが悪かったです。」
さっきから嘘をつきすぎている。
花火大会当日、まさに公園にいて、彼と同じ制服を来た者に"中止"と告げられたのだから。
なぜここまで隠したいのか、自分でもわからなくなってきた。
一度嘘をつけばさらに嘘を重ねていくことになる。そうしていくうちに取り返しがつかなくなることぐらい、分かっているのに。
■切野万智 > 「アッハッハ、俺と一緒だ。
また、あるといいんですけどね」
と空を見つめ呟く。
自分も相手も崖っぷち、という所か。
嘘に嘘を重ねて先に破綻するのはどちらか。
相手は軍人、精神面での訓練もあるだろう。
だが、自分には異能がある。これだけが頼みの綱、だ。
「・・・失礼、タバコ、いいですかね?」
答えを待たず、灰皿を手元に寄せ、煙草を口に咥える。
ああ、きっと始末書物だ。
先輩にドヤされるぞー、なんて笑い事で済む話でもないことは重々承知している。
それでも自分の正義を貫こう、そう強く思うのだった。
■やなぎ > この男はわたしにとってタイムリーな話題をふってくる。
今まで会った方々も"同じような話題"を口にしていたが、まさか。
…気のせいだろうか?
「そうですねぇ、夏はまだまだ終わりませんし、
どこかでやるかもしれませんね。」
楽しみです、と心にもないことを付け足して。
「ああ、タバコは流石にバレるのではありませんかねぇ。
黙っておきますけど…。」
と付け加えて手元に置かれていたお冷に口をつける。
■切野万智 > 「アッハッハ、夏休みボケしちゃって。
明日で夏休みも終わりッスよ」
なんて、ケラケラと笑う。
じりり、と火をつけると、周囲に煙草の匂いが広がる。
そして、ふぅっと息を吐く。
「1歳くらいは誤差ッスよ、誤差。」
と、苦笑い。
普通に一服する振りをしながら、やなぎさんからは自分の影で死角になっているであろう入り口、やなぎさんの背中側の奥の壁、そして、目が向いていないであろう窓から見える電柱に、張り付いているように見えるポスターの幻覚を作り出す。
アハ体験のようにゆっくりと、悟られぬように。
■やなぎ > 再びやっちまったと、そんな顔をする。
「―えっ!?
うっわぁ…ほんとにボケてるかも。」
何もしないうちにいつの間にか休みに入り、そして終わる。
情報すら集めてない事に流石に後悔した。
「1歳って、わたしの一個上なんですね。んまぁ気にしませんよ、わたしは。」
自分も酒呑みなので人のことは言えない所だ。
それより料理はまだかと水を飲み干していく。
話題を振られたらどう誤魔化すか、自分自身の事で精一杯のやなぎは、背後で起こっていることに気づかない。
■切野万智 > 「そんなだから・・・」
「あっちこっちにある花火大会のポスターを見逃しちまうんですよ。」
と、やなぎさんの背中のずぅっと先にある、中止と上書きされた花火大会のポスター、を指差して、にこりと微笑む。
「ホントに当日に知ったんですかね?」
と、カマをかける。
■やなぎ > 「ポスター?―――っ!?」
まさか、そんな。
背後を険しい表情で振り向く。
彼の指さす方向には確かに、それがあった。
表情を戻しながら視線を戻すと、笑顔の彼と同じく笑ってみせた。
「そうですね。夏休みの日にちですら、今日知ったようなレベルなのでね。
それにほら、わたしレストランにいる時はご飯に夢中になってしまいますし、
それ以外ですと学生地区にはあまり立ち寄ってなくて、
こんなポスターまで張り出されているのも"気づきませんでした"。」
ひどく長い言い訳だ。息が苦しくなるのを抑え込み、言い切った。
■切野万智 > 相手もかなり動揺していることが手に取るように伝わってくる。
後一歩・・・か?
それで済まなければ破綻するのは自分であろう。
「そう言わず、ホラ、電柱にも張ってありますよ。」
次に指差したのは、窓の外に写る電柱。
そこにも同様にポスターが貼られている。
・・・ように見える。
「歓楽街にも張ってあるとは思うのですが・・・。
そろそろお話しする気にはなりませんか?」
冷や汗が雫となって頬を伝う。
■やなぎ > 「………。」
視線を外の電柱へと移す。はっきりとは見えないが、何かが貼ってある。
―きっとあれもだ。表情が曇る。
花火大会のポスターとやらはそんなにも貼られていたのか?
今まで見たこともなかったのに。
「ああ、ありますねぇ。それで…何を話せとおっしゃるのです?」
もはや表情を隠す気もない。
なんとも低レベルな争いだろうか。
もうすでに相手にバレていたではないか。
相手を見れば、ここまでわたしに気づかせず、ここまで隠し通していた、
そんな様子がうかがえる。
■切野万智 > 自分もここらが潮時だ。
こんな不自然なポスターの配置で、相手が疑わないはずも無い。
それでも、自分の手札は悲しいかな、コレっぽっちしかないのだ。勝負に出るしかない。
「嘘つくのやめましょうよ、お互い。
僕の話したいコト、解ってるんでしょう?」
灰皿に煙草を押し付け、まだ数cmしか吸っていない煙草の火を消す。
「僕は取調べも、捜査も専門じゃあ無いんです。
・・・ココからはお友達として、ホントのお話をしませんか?」
風紀委員会の腕章を取りながら、大きく息を吐く。
■やなぎ > 観念したというふうに、一つ溜息をついた。
視線も声色も落とし、重々しく口を開く。
「…どうせ全部知っているのでしょう。
それならわたしから話す必要なんてありません。
多分、"その通り"だと思いますから。」
すっからかんの水のグラスに視線を移し、ぼんやりと眺める。
■切野万智 > こちらも一気に緊張が解けた。
とりあえずは水をグイっと飲み干す。
「まさか、解ってたらわざわざファミレスに連れ込んで」
手元には先ほどのニセポスターが現れる。
「こんなもんまで作って、その上、良心痛めてまだこんなコトしねぇッスよ。」
思い出したように溢れる汗を紙ナプキンで拭いながら。
やがて、各所に張られたポスターと、彼の手に合ったポスターは霧散する。
「今聞きたいのは、単刀直入に。
この学校で貴方以上に、シイン先生のコトを知っている方は居ないでしょう。
今の状況じゃあ、自首か、ただの捜査協力かはわかりませんが・・・風紀でも、公安でも、お好きなほうに、あなたの知っていることを話しに行ってくれませんか?」
■やなぎ > そう言われれば彼の手元に視線を移す。
そして、その場で消えてしまうポスターを見てぽつりと呟いた。
「…異能だったのか。」
やなぎの表情は相変わらず暗い。
視線を再びグラスに戻し、また短く息をはいた。
「わたしですら彼の行動はわかりませんでしたよ。
知ってることといえば、ここに来る以前の、少佐という立場の事でしょうか。
でもそれはあの事件とは関係ありませんね…。
あなたは…風紀でしたね。
ごめんなさい、提供できる情報はほんと少ないんです。
聞いてみても支離滅裂なことしか教えてくれませんでしたから…。」
■切野万智 > 「その、貴方しか知りえない様な“支離滅裂な話”だとか、“ここに来る以前の話”だとか、
・・・少なくとも僕のような人間には何の役にも立たないかも知れません。
軍人ならば機密事項もあることはわかってるつもりッス。
・・ただ、貴方の発言で何かがわかるかも知れない。
もしかしたら、犯人を止められるかもしれない。
どうか、考えてはいただけないでしょうか」
人目もはばからず、机に手を付き、頭を下げる。
また先日のように病院への襲撃があれば、次は被害者が増えるとも解らない。それも数人の単位ではすまないかもしれない。
今は頭が熱くなっているだけだろうか。
難しいことなど考えられず、ただ頭を下げるのだった。
■やなぎ > 「頭を上げてください…!」
身内の犯罪者を何とかするために、なぜ関係のない人がわたしなんかに頭を下げるのだろう。
そこまでされて、なおも話そうとしないのは、流石に――
「……分かりましたから、話します。でも、あなたにです。
…あなたが他の人たちに伝えてください。お願いします。」
軍の訓練を受けているとはいえ自分は落ちこぼれ中の落ちこぼれ。
いつも精神だけは強くならなかった。
心が耐え切れず、つぶされそうになっていくのを感じる。
「でもまずは一つ聞かせてください。
女学生を撃ったあと、5日前、それ以降。だいたい二日前。
――病院に、シイン少佐は来ていませんでしたか?!」
酷く狼狽えた様子で、撃たれた女学生の入院している病院の名を告げる。
その日は、自分が少佐にも居場所を教えた日でもあるのだ。
■切野万智 > 「・・・どうもありがとうございます。」
安堵の息を吐く。
やっとひと段落・・・か。
「わかりました。
では、僕のほうから皆に連絡させていただきます。」
腕章を付け直し、メモを取り出す。
その眼差しは真剣そのもの、だ。
ココまでギリギリの手を使ってまで聞き出した情報を、一言たりとも逃すわけには行かない・・と。
「・・・2日前、ですか。
委員としての報告は聞いていませんが、あくまで、噂としては耳に挟んでいます。ソレが一体?」
言ってよかったのか?とすら思う。何が目的で聞いているのか、意図がわからなかった。
■やなぎ > 「…噂。」
その理由は言えなかった。それだけはまだ言えなかった。
「わたしは少佐と今日やっと会えましたが、それ以前の行動が分かりません。
何かあったんですよねその日に。教えてください。
それまでわたしの話をまとめますから。」
■切野万智 > いえない何らかの理由があることは少しは察した。
今は情報交換、自分の知っている情報と引き換えに、知らない情報を受け取る、ソレをするしかなかった。
あくまで他の委員が話していたのを、小耳に挟んだだけだが。
「被害者の居た病院に、容疑者と思われる何かが襲撃、その場に居た学生によって今回はコレを撃退した・・・とのことッス。
ただ、先ほども行ったとおり捜査は僕の専門ではないので、この程度しか知りえていませんが・・・。」
■やなぎ > 「…あぁ、ありがとう。十分です。」
それは自分が引き起こしたも同然だと思うと、ひどく気分が悪くなる。
が、落ち込むのは後だ。
やっと来るだろう料理も食べずに自分の知ってる情報を告白し始める。
「…ここではない世界の軍組織。階級は少佐。特に目立った行動は……
わたしが見る限りなかったように思えます。」
同じ所にいながら、少佐のことを何一つと分かっていなかった。
それを悔しく、そして自分の無力さに苛まれながら、ぽつりぽつりと。
入り江で会った時、彼の体は黒い炎に包まれており、さながら龍みたいだった事。
女学生の肩を撃ったのは、まぎれもなく自分であると言った事。
理由は「幻影を追った」との事。それは"成すべきこと"である事。
「…そして、"結末を待つと良い"、と。去り際にそうおっしゃっていました。」
■やなぎ > 「また彼は動くでしょう。
でも、すごい守護者がいるようなので簡単には襲撃はできないそうですね。
…だから、わたしは、もどかしいけど"待とうと思います"。」
そう告げて、ハンバーグにかぶりついた。
■切野万智 > 熱心に書き込んでいく・・が、それも突如中断されてしまった。
やっとこさ落ち付いた様子に気づき、店員さんが料理を運んできてくれたのだ。
「・・食いましょうか。
悪いコトしちまったんで、ココは俺が持ちますよ」
とつげて、食事に手をつけるのであった。
ご案内:「商店街」からやなぎさんが去りました。
ご案内:「商店街」から切野万智さんが去りました。