2015/08/24 のログ
ご案内:「商店街」に雪谷 憂乃さんが現れました。
雪谷 憂乃 > 朝。
蛇の目の日傘をさしたらば、紺色浴衣。
黒い長髪と相俟って、やたらめたらと和風な吸血鬼少女が商店街を往来。

吸血鬼の朝はキツい。
人は、明るすぎても暗すぎても目が見えないが、
吸血鬼は明るいとダメである。
沢山の朝の人々の小うるさい往来に加えて、照りつける陽射し。
そして何よりも…。

「んん、…ん。ふわぁ…。」

眠い。とても眠い。
不定期的に欠伸が出れば、片手で口許を押さえる。
夜行性種族が奮発して朝一番に起きたりするからこうなる。
覚束ない、フラフラとした足取りと、焦点の合わない目。
ともすれば、不注意で誰かとぶつかりそうな、そんな不安定な足取り。

雪谷 憂乃 > 夏は、そろそろ終わりを迎えるのだろうか。
8月も終盤。喧しいセミの鳴き声もこの頃はあまり聞かない。
ただ、何処へ行こうと喧しい人間の鳴き声は朝晩春夏秋冬東西南北聞こえてくるのだが。
こんな所で吸血沙汰を起こすわけにもいかず、やはり覚束ない足取りがゆらゆらと進む。

「ん…?ええ…と。」

さて、そもそも何故にそんな吸血鬼が朝っぱらから出歩いているのかと言えば、簡単な経緯。
この間先輩から安くて美味しいコロッケパンの売っている店を教えてもらった。
それだけか、と言われてしまいそうだが、それだけである。
ただ、折角なのでなるべく早く見てみたいな、と思って、
こうして日傘をさしながら、苦手な朝に外出しているわけで。

さて、さっきのコンクリートの角を左に曲がる、で、良かったのだろうか。
ひょっとしたら、行き過ぎてしまっただろうか。
こんな時に地図とかメモとか便利。往来の中だが気にせず目的の場所を確認。

雪谷 憂乃 > メモと路地を照らし合わせる。
多分、間違った方向に曲がったとかそういうのではなさそうだ。
暑いし、眠いし、さっさと済ませてしまいたいけど、たまのこうした外出は、悪くないかもしれない。
太陽さえなければ。

「…ここを、こう、ですね。」

ぼやけている赤色の看板の一回り大きめなデパートと思しき建物を右に。

「…はぁ。もう、朝に外出するの…やめましょうか。」

駐車場、駐輪場のある大通りの様な所に出る。
こういう所は、朝っぱらから交通量が多い。
夜型や深夜なら、こういった進路妨害もないのだが。
ふらり、と。また向きを変えた。

赤信号を隔てて向こう側。左から2番目。
あの小さな飲食店の横、だったか。
じっとしている時間がじれったくて仕方ない。
暇潰しにとくるくる日傘を回してみるが、どうにもならない。
あちらの信号は…依然まだ青。日傘を回しながら、点滅はまだかともどかし気に足踏み。

雪谷 憂乃 > 漸くの、待ち受けた信号の点滅。
こうなれば、信号が変わって行くのは早い。
数秒の間にあちらの信号は赤に変わる。
そうすると、今度は車道側の信号が黄色になり、赤になる。
この間にかかる時間は1分もない。
車道側の信号が赤になった時、右折左折、若しくは直進の矢印が出てくれば、
もう一回黄色と赤の灯火を繰り返す。

「…。」

もう一度。繰り返せば、やっとの事であちら側の信号が全て赤に落ち付く。
これで、漸く私は真っ直ぐ歩いていける。
目的の店へと向かう、朧げな足取りは、もうすぐ目的を果たして、多少なりとも満足気になり、帰路につくだろうか―――。

久しく朝に外出したもので。
今日、早起き的な意味で奮発して買ったコロッケパンは、自室で晩御飯にでもいただくこととする。

ご案内:「商店街」から雪谷 憂乃さんが去りました。