2015/12/23 のログ
ご案内:「商店街」に蔵田 怡与さんが現れました。
蔵田 怡与 > (買い物メモを手にしてぶらつく一人の学生)
蔵田 怡与 > (ふと、学生向けの電器屋で足を止める。)

布団とかカーテンは後でもいいけど、冷蔵庫が先に欲しい。

(現状、何もない部屋では、牛乳やアイスクリームや野菜などを買ったところで床に転がしておくしかないのである。)

蔵田 怡与 > (店に入る。並んでいる冷蔵庫はどれもこれも小ぶりなものだ)

……。

(落胆のため息が漏れる…)

蔵田 怡与 > こんな小さな冷蔵庫しかなくて、この島の人はよく平気で生活できるな。
蔵田 怡与 > (店頭用のカタログを抜いてぱらぱらとめくる。)

(そこには無論、最新の家電がずらりと並んでいるのだが、テレビもパソコンもタブレットも無視して冷蔵庫の部分だけを食い入るように見つめている…)

(具体的には、冷蔵庫に収まった美味しそうな料理や食材の写真を眺めている…)

蔵田 怡与 > ……

こんなのがいつでも出てくる魔法の冷蔵庫が欲しい。
魔法が使えたら、そういうのも作れるのかな。
そんな魔法使いがいたらうちの専属のハウスキーパーになってもらおう。
毎日美味しいもの食べ放題。

…いい。

蔵田 怡与 > ……

違う。冷蔵庫を買いに来た。ハウスキーパーとかの話じゃない。

(ふと、我に返る。)

蔵田 怡与 > (しかし、いかんせん求める冷蔵庫は巨大、しかし陳列されている冷蔵庫はあまりにも小さい。)

(考えていても埒が明かんと、店員と交渉を始める。)

「大きな冷蔵庫はありますか」
「大きな…と申しますと?」
「このくらい。(とカタログを見せる)」
「ファミリー用大容量冷蔵庫でございますね。お部屋の寸法などはもう確認済みですか?」
「寸法……?」

蔵田 怡与 > (なんということだろうか。冷蔵庫を買うには部屋の寸法を測らなければならないようだ)

「…寸法、は、必ずいるの?」
「ええ。設置場所にもよりますし、あとは室内まで運び込めるかどうかが問題となる場合もございますので」
「そうか……、うん、そうだ。正しい。そして部屋の寸法は、知らない。測ったことがない」
「それでしたら、再度ご確認の上、お求めになった方がよろしいかと」

蔵田 怡与 > (冷蔵庫を買うには、部屋の寸法を測る必要がある。)

(彼女はそれを手帳に書き留めた…)

蔵田 怡与 > (店員が去ったあと、ぼんやりと店の中をぶらつく。)

(新品の家具たちは、何となく心がウキウキするものだ。)

蔵田 怡与 > (ロボット掃除機を持ち上げ、しげしげと裏をのぞき込み…)

(ハンドマッサージ器を手のひらに当てて、その振動の強さに少々驚き…)

(電動ミキサーを空回しして、お好み焼きが食べたいなぁと考えたり…)

蔵田 怡与 >
学生はどんな部屋に住むものなんだろう。
学生の部屋、は、どんなものが置いてあるのが普通なんだろう…

蔵田 怡与 > (特にすることも思いつかなかったため、電器屋を出て商店街をぶらぶらと歩き始める)
蔵田 怡与 > (いかにも学生向きといった雑貨屋や、おしゃれなセレクトショップなどもちらほらと伺える。)

(ふと、足を止め、雑貨屋のショーウィンドウをのぞき込む…)

蔵田 怡与 > (飾られているのは女性向けのルームアイテム)

(その華やかな飾りつけを、じっと、眺めている…)

蔵田 怡与 > (花柄のカーテン。毛足の長いラグ。ベッドカバーに、色味を合わせたシンプルな枕カバー。)

(綺麗なペアグラス。可愛らしい模様の食器類。ぬいぐるみのようなティッシュカバー。意匠が華やかな写真立て…)

(今まで見たこともないような、それらの小物が、どうにも眩しく見える…)

蔵田 怡与 > ……。

いいな。

(ふと、ぽつりと言葉が零れる)

蔵田 怡与 > (つい先日、借りたばかりの部屋には、なにもない)

(カーテンも、ラグも、テーブルも、ベッドも布団も枕もベッドカバーも、グラスも食器も、なにもない)

(それを、何らおかしいとは思わなかったのだ…)

蔵田 怡与 > ……
自分なんかが、こんなかわいいお店で買い物なんて、変。
…きっと、変だ。

(店に入りたい気持ちと、躊躇する気持ちがせめぎ合っているらしく、ショーウィンドウの前で立ち尽くしている…)

蔵田 怡与 > ……。
こんなところに立ってるのは、邪魔。

(後ろ髪を引かれるように、ショーウィンドウを見ながら、それでものろのろと歩き出す)

蔵田 怡与 > (のろのろ歩きが、だんだん足を速め、やがて駆け足になる)

(なんとなく部屋には帰りたくない気持ちで、商店街を駆け抜けていく)

ご案内:「商店街」から蔵田 怡与さんが去りました。