2016/02/01 のログ
■セシル > 通常授業が休日となっている日の夕刻。
セシルは買い物の荷物を抱え、商店街を歩いていた。
「やれやれ…いきなり身1つで放り出されると物が入用でいかんな」
そうぼやく。
体力には自信があるが、こうも連日、新たな学校生活のための買い出しに追われていると若干滅入るのだ。
今までとは違う世界(らしい)への適応や対応、学校生活の準備に追われて、剣もろくに振れていない。
■セシル > 「…まあ、一番面倒な買い物を最初に済ませてしまったから、気は楽だが」
そうぼやいてため息を吐く。
何が面倒だったかというと、衣類の調達である。
特に下着類は、売り場に入ろうとしたところで店員に呼び止められ、作りたての学生証(というもの)を全力で押し付ける羽目になった。
(なお、最終的に何とかなりはしたものの、背が高過ぎてサイズに困ったのは余談である)
「…そう考えると、エリー達はどのように私の衣類を調達していたのだろうな…」
立ち止まって、ぽつりとこぼす。
エリーというのは、元いた世界で自分の生家に仕えていた下働きの娘の名である。
エリーは幼くて弟と歳が近かったのもあって、一番話をする機会が多かった。
(…皆は、無事だろうか)
一緒に演習をするはずだった、同期を思い出す。
自分は違う世界(のようである)に飛ばされてしまったとはいえ、五体満足である。
だが、時空魔術の失敗に巻き込まれた場合…最悪、命はないと伝え聞いたことがあった。
(…いかんな、不安で考えが後ろ向きになってしまっている。私らしくもない)
軽く頭を振って、最後の用事がある衣料品店へ足を向ける。
■セシル > 衣料品店に向かっているのは、仕立ててもらっている制服を取りに行くためだ。
衛生上必要になる下着類や、既製品で事足りるシャツは既に買ってあるのだが、制服はサイズを測る必要があった上、かさばるので最後に回していたのである。
この学園では制服着用が義務ではないことをセシルは把握していたが、元の世界でも士官学校の学生であったセシルとしては、制服の方がしっくりくるのである。
(…それに、服を自由に身につけるのは、この場所の風俗を理解してからでも遅くはあるまい)
無論、ここでの「風俗」とは生活上の習わしのことであるのは言うまでもない。
■セシル > そうして、衣料品店に到着する。
「すみません、制服を取りにきました」
そう言って店に入ると、店の主人は
『いらっしゃい、出来てますよ』
と、セシル用に仕立てられた、「男子用の」制服を持ってくる。
■セシル > 男子用の制服を選んだのは、もはや男装が普通になってしまったセシルにとって、この学園の女子用の制服が違和感しかあり得ない代物だったからである。
無論、試着すらしていない。
『大分肩とウエストを詰めたので大丈夫だとは思うんですけど、念のため試着してもらえますか?』
「ええ、もちろん」
そう言って、セシルは制服を受け取り、試着スペースに移動する。
人並みの女性ほどではないとはいえ、一応恥じらいは存在するのだ。
■セシル > 採寸の段階で『幅をかなり詰めることになると思うので、お渡しの際にもう一度試着してもらうことになると重います』と言われているので、軍服のような服…もとい、士官学校の制服の上着の下には、制服に合わせるためのシャツを着てきている。
制服を着終える頃合いに、試着スペースの外から店の主人の声がかかる。
『どうですか?』
セシルは、少し考えた後
「大丈夫だと思いますが…一応、シルエットを確認してもらっても良いでしょうか」
と言って、試着スペースのカーテンを開ける。
制服は窮屈そう過ぎずゆる過ぎず、セシルの細身の身体にしっかり合っているように見えた。
ジャケットのおかげで、わずかしかない胸は殆ど目立たない。
細身の男子、といって通じなくもないだろう容姿だった。
■セシル > 『………』
その様子にしみじみと黙り込んでしまった店の主人は、我に返って
『そうですね、ぴったりだと思いますよ。
…でも、本当にこっちの制服で良いんですか?』
と、改めて念を押しにかかる。
「学園の王子様」としての完成度と、セシルの肉体の性別の食い違いを心配しているのだろう。
セシルは、鷹揚に笑って
「ええ、良いんです。
あんな短い丈のスカートは履けませんし…男扱いも慣れていますから」
と頷く。
店の主人が、営業スマイルの裏で(良いのか、慣れてて)と思ったのは言うまでもない。
なお、店にあった制服のスカートの丈は、当然のことだが、流行を追う女子生徒からは野暮にすら思えるような、校則に倣った膝丈だ。
しかし、セシルの元いた国ではスカートは膝下が基本である。そんなセシルからすれば、校則に倣った丈ですら、十分過ぎるほど「短い」のだった。
■セシル > 一方、セシルはセシルで気になることがあった。
「…しかし…私が元着ていた制服と比べると、このジャケットは随分薄手ですね。
これでは少々寒くありませんか?」
それなりの防御を想定して作られている士官学校の制服は、かなり厚手の生地で作られている。
それと比べてしまうと、戦闘時に着用していることを想定されていないこの制服は、かなり薄手だ。その分着心地は良いのだが…今の気温に耐えられるかというと、なかなか心もとない。
『今は一番寒い時期ですからねぇ…コートも見ていかれますか?
冬物はあまり残っていませんが』
そう言って、店の主人が男物と、女物のコート売り場を順番に指差す。
■セシル > 「ふむ…」
その売り場を見て、考え込むセシル。
「…今から冬用のコートを買って、どのくらい必要でしょうか?」
と、店の主人に問うた。
『そうですねぇ…個人差はありますけど、少なくとも二三週間は。
後はその人次第ですねぇ』
店の主人の答えに、セシルは思案がちに顎に手を当て、眉間に皺を寄せた。
「…二三週間、か…」
こちらの通貨を持っていないセシルは、当然学生生活への準備資金を財団から融通されている。
いくらなんでも、この季節にコートも買えないほど準備資金が渋られたわけはない。
単に、セシルが「二三週間だけ着て、その後一年近くクローゼットの肥やしになるだけのコート」を買うことに、抵抗感を覚えているだけである。
■セシル > (今が一番寒いということは、天気の波があるとはいえこれ以上寒くなることはそうそうないわけだ。
で、今の寒さは元の制服ならまあ我慢出来ないこともないから…)
先ほどから姿勢を変えぬまま、思考を巡らせる。
セシルの故郷は、常世島より幾分冷涼である。したがって、セシルも寒さにはそれなりの耐性があった。
「………制服に合わせるために、この格好のまま、冬用ではないコートを見ても構いませんか?」
『ええ、大丈夫ですよ。春物は、男性用はこの辺で、女性用は…』
そう店主が快諾し、春物のコートのコーナーを示そうとしたところで…
「ああ、構いませんよ。女性用は見ませんから」
と、ことわりを入れた。
コートは、制服と違ってウエストがそれほどシルエットに響かない。
そうなれば、高さの丈に合わせて選べば十分だろうと、セシルは判断したのだ。
「…それでは、見させてもらいますね」
そう言って、試着スペースから出てきて自分の靴を履く。
実のところ、仕立てを頼んだ段階で制服の支払いは済んでいるのだ。
ご案内:「商店街」に真乃 真さんが現れました。
■真乃 真 > コートの売り場には一人男がいた。
きちりと制服を着て首には異様に長いタオルを巻いている。
「うーん、どれが一番動きやすいんだろう?」
普段はウインドブレイカーを着用しているが流石にそれだけでは不味い場面もある。
去年使っていたのは思いっきり風紀委員のマークが入ってるのでとてもじゃないけど使えない。
なら、新しく買うしかない!そう思って即ここに来たのだ。
だが、ここまで来たは良いもののどれを買うかが決まらない。
コートを一着買うというのはこの男、真にとっては小さく無い出費であった。
「はあ、どのコートが動きやすくて温かくて且つカッコよくてその上で簡単に買える値段なんだろう…。」
超・新素材使用とシールの貼られたコートを元の場所に掛けながら思わず声を漏らした。
確かにこれはコートの常識を超えた動きやすさと物理的な防御力さらに軽くて暖かいらしいが
一介の学生にはとてもじゃないけど買えそうもない。
そんな時、一人の男子生徒(?)が試着コーナーの方から歩いてきた。
その制服の具合から新入生だと判断して声を掛ける。
「やあ、そこの君。もしかして新入生かい?」
自分より若干背の高いどちらかといえば細身の男子生徒だった。
その髪の色から外国人か或いは異邦人だろうと思う。
■セシル > コート売り場に赴くと…黒髪で、今の自分と似たような服を身につけている青年が1人。
恐らく、彼も生徒なのだろう。
特に関与せず、自分の物を選ぶつもりでいたのだが…流石に、あちらから話しかけられて、無視するわけにもいかない。
「ああ、そういうことになるな。
この服ではしばし寒さが厳しそうなので、コートを見繕おうと思っていた」
そう答える声は、太くて芯があるが、真がイメージしていたよりは中性的なイメージだろう。
宝塚の男役、あるいは「アニメで女性声優が当てている青年」の声が近いだろうか。
■真乃 真 > 思ったより声が高いと感じたが知り合い?に女子にしか見えない男子もいるので
そういう人もいるだろうと普通に流す。
「いやーこんなに寒いとやっぱりいるよねコート。でも、いい物になると高いからねー。
こっちに来たばっかりで色々揃えるものもあるのに大変だね。」
そう言いながらもいつの間にか別のコートを手に取って調べている。
動きやすそうかとか、軽そうかとか、温かそうかとか、値段…値段…。
コートを戻す。
「本当高いよね!!」
■セシル > 「一番寒い時期でこの位ならば随分とゆるくて助かるが…流石に、この上着の布地ではな。
これから見るところなので、こちらの値段の相場は分からんが…」
そう答えながら、春物のコートを手に取って、身体に合わせて鏡を見たりしてみる。
「…これは丈が短いな…
…こちらは…ここまで寸胴だと、流石に腰回りが煩わしいか…」
ハーフ丈のステンカラーコートや、寸胴のモッズコートを合わせてみて、首を傾げている。
値段以前に、デザインで引っかかっていた。
■真乃 真 > 「これで緩いって…北の方からの来たのかい?北欧とか?それとも別の世界?」
自分とは感覚が違う…。
真は比較的温かい地域から来たのでこの島でも大分寒いくらいだったのだが…。
「この島は学生が多いから外と比べると基本的には安いんだけどね。
でも、食べ物とかは大分やすいと思うよ。」
値札と交互に店主の方を見る。やっぱり高いよなコレ。
この島に来るまではそこまで服屋に行っていない真乃からすれば更に高く見えるのだった。
■セシル > 「…別の世界、というものらしい。
来てしまったばかりで真偽のほどは分からんが…文明の水準が随分違うことだけは確かだ」
良さそうなコートを探しながら、答える。
「お」という声とともに引っ張り出したのは、ウエストベルトがついたグレーのトレンチコートだ。
「話には聞いている。島がまるごと1つ学園なのだったな。
自力で稼げぬ者を商売相手にするのであれば、物価は抑えざるを得んだろう。
…っと、これの値段は…」
真との会話と同時進行で、トレンチコートの値札をチェックする。
一般的な学生からすると、手を出せないほどではないが、気持ち背伸びする感覚になるような値段だ。
■真乃 真 > 「この世界でも地域が違うだけで全然違うからね…。世界が違うなら服から何から全然違うだろうし…。」
うーん、別の店に行こうか?物は良いけど高いなこの店。
古着屋とかでもいいかもしれない。
「学生っていっても色々いるからね。もともこの学園の店は殆ど生徒が経営してるのが主だったらしいし。
実は働いてるだけでも卒業できるらしいよ。委員会でも取れるしね。」
単位は労働でも取れるというシステム。
もっとも学生でないものも多くいるけれども。
「どれどれ、それいいね。僕があと三つくらいバイトしてたら迷わず買ってたね。
でも、一か月の間の晩御飯と天秤にかけるつもりは流石に湧かないかな…。」
声に振り向いて後ろからトレンチコートと値札を覗きこんでおおげさなポーズを取りながら言う。
つまり、真は買わない。
■セシル > 「…なるほど、世界の広さだけはどこでも変わらんか。
幸い、服は機能上の差異が少なくて助かっている」
真の言葉に、ふ、と口元だけで笑う。
仏頂面、ポーカーフェイスなどというわけでもないようだ。
「ああ…多様な取り組みで単位が認められるとも聞いた。
私は元々学生だったし、ここに順応する意味でも通常の授業は一通り受けておこうと思っているがな」
ついでに、この世界に順応する気もあるらしかった。
そして、値札を見て真の言葉を聞くが…
「…しばらく私服は買わんことを考えれば、手が届かぬ値段でもないな。
すみません、これ、試着しても構いませんか?」
と、店の主人に呼びかける。
店の主人は、『はい、どうぞ』と、手で試着スペースを示した。
■真乃 真 > 「元々学生だったのかい。品の良さそうな学校にいってそうな感じだよね。
なんというか雰囲気がそんな感じじゃないか君。」
きっと元の学校でももててたんだろうなと思う。
イケメンだし。なんか爽やかな匂いもするし。
「ここの制服は結構丈夫だしね。ほら、異能とか魔術の訓練とかもあるから。
卒業まで制服だけで過ごした先輩とかも知り合いにいたよ…。」
そこまでのケースは稀であるが、真も基本的に制服で過ごしている。
いわゆる学生らしい服装である。
「…これは買えるけど動きにくそうだな。カッコいいけどなー。」
男子生徒が試着スペースに行くのを見送ると。
また自分のコート選びを本格的に再開する。
■セシル > 「品の良い…とは少し違うな。
士官学校の剣術科だったから、血の気の多い男ばかりだったぞ」
随分時代がかって聞こえる出自を、何でもない風に語る。
「もててた」については…「誰からか」次第で話が変わるだろう。真はまだ気がついていないようだが。
「そうなのか…元の制服と比べて随分薄いと思っていたが、見た目にはよらんのだな。
…流石に卒業まで過ごす気はせんがな。少し、この土地の服のあり方を観察してからでも遅くないだろうと思っているだけだ」
そう言って、くすりと笑みを零す。今度は目も笑っていた。
そして、試着スペースに向かい…ブースの中で、コートを羽織る。
ボタンを留め、最後にウエストベルトを締めて…金具で留める。
ウエストが締まることでメリハリが出て、なんというか、モデルのような出で立ちだ。
「………ふむ、悪くないな」
本人も、鏡を見てそれなりに満足しているようだ。
「すみません、同じサイズとデザインで、色違いのものはありますか?」
そう、店の主人に聞いている。
店の主人は『はい、今お持ちしますねー』と威勢のいい返事をして、いくつか色のバリエーションを持って、試着スペースに向かった。
■真乃 真 > 「おっと、それは意外だな君、男子にしてはどちらかといえば細身な方だし…。
そんなイメージは無かったよ。人は見かけによらないね。」
士官学校って確か兵士とかの学校だったはず。
そんな血の気の多い男ばかりところで過ごせるのはきっと普通に強いのだろう。
イケメンで強くて爽やかな匂いとか。それは女子もほおっておくまい。
あまり人を見る目がない真だった。
「流石にそれは引くよね。…うん。」
自分も何らかの私服を買った方が良いのだろうか?
そんな感情が上がって来る。
「…おお!カッコいいね!これはちょっと僕の晩御飯代が危うくなってきたぞ!」
実際に人が着ているところを見ると凄いカッコいい…。
何故かさっきよりも女性っぽいかなと思うけど。
男子なのに細いな腰…それにはそんな感想しかいだかない。
■セシル > 「まあ、男と比べれば細身だろう。
これでもかなり鍛えてはあるぞ。剣術でなら同期の中でも上の方だ」
しれっと爆弾発言。
この男もどきの見た目王子様、隠す気皆無であった。
「時と場所を踏まえた装い等も、まだ詳しくはないからな。
それからでも遅くはあるまい」
異世界から来た割に状況とかを理解出来ている発言だった。
士官学校出身という経歴が関係しているかもしれない。
ちなみに、色のバリエーションはグレーの他に黒、ベージュ、カーキ。
「…ふむ、この制服に合わせるならこれも悪くないか…しかし、他の服を考えると…」
色のバリエーションを身体に合わせながらぶつぶつと。
先ほど自分が「爆弾発言」をしたという認識は薄いようだ。
■真乃 真 > 「まあ、確かに鍛えて…はい?あのもしかして君は女性の方でいらっしゃる。」
謎の言葉遣いだった。完璧に爽やかなイケメンだと思っていたら女性だった。
衝撃の真実。いや、完璧に胸のある女子が男子だった時の衝撃よりは抑えめだけども…。
その後の言葉は概ね意識から抜け落ちた。
「それにしても驚いたてっきり男子生徒かと、それは趣味なのかいそれとも
そっちの世界では女子生徒が男子生徒の服を着て男子が女子の服を着るのが当たり前なのかい?」
異世界の風習は分からない。とすればもしかしたらそれがその世界では普通なのかもしれない。
勝手に何か新しいことが付け足されているがそれを聞く。
さっきの発言を聞いてからトレンチコートを着ている姿を改めて見るとなるほど。
確かに女性のモデルのような体系である。まじまじは見ない。
■セシル > 「ああ、肉体はな。内面は我ながらよく分からん」
色を合わせてみながら淡々と肯定する。なんというか、もはや驚かれ慣れているのだろう。
店の主人は試着スペースの傍で笑いをこらえたりしている。
実は、店の店主は学生証で性別を確認したとき三度見ほどしているのだが、それとこれとは別の話なのだろう。多分。
「…まあ、趣味のようなものだな。
私のような出自だと、幼い頃に逆の性別の格好で育つのは珍しいというほどではない程度にはあったのだが…ここまで続くのは稀だろう。
もはや癖のようなものでな。今更女らしい格好も出来ん」
そんなことを言いながら、一通り色を見て…
「…すみません、やはりこれでお願いします。色々と合わせやすそうなので」
と、グレーのコートを脱いで持ち上げてみせた。
同じデザインの色まで合わせて丁寧に検討する感じは、割とこの世界の女子に近いだろうが…言われてみなければ、思い至らないかもしれない。
『はい、分かりました』と、店の主人がグレーのコートを受け取る。
「あと…この制服とそのコート、着て帰っても構いませんか?
荷物は少ないに越したことはありませんので」
ついでにそんなことを尋ねると、店主は『構いませんけど、タグはお切りさせて下さいね』と。それを聞いて、セシルは
「タグ?…ああ、これか。
そうですね、お願いします」
と、サイズのタグがまだついているのを確認して。
真の驚きがかなりスルーされたまま、再び試着スペースのカーテンが閉まる。
■真乃 真 > 「なるほど、でも内面が良く分からないって言われたら…うーん。」
体が女性でも中身が男ならそうやって接するべきだと真は考えている。
そう、考えてるが分からないと言われてしまえばどう接していいかこちらも迷う。
いや、男女で接し方は殆ど変わらないのだが。
「習慣なんだね。別に無理して女子制服着る必要もないしね。」
ああいう服の選び方はどことなく女子的なのだろうか?
いやもしかしたらイケメンもああやって服を選ぶのかもしれない。
様々な着こなしとか考える買い方。
買い物慣れしていない田舎者の真乃真にはその判断はつかなかった。
カーテンが閉まった。
店主の顔を見ると少し笑っている。
多分この人も驚いたんだな…。と勝手に仲間意識を持つ。
■セシル > 再び試着スペースのカーテンが開くと、制服のシャツの下に、制服よりも頑丈そうな生地のパンツを穿いた出で立ちになっていた。
こうしてみると、胸が一応あるのが分かるだろう。大分ささやかだが。
「他人からは色々言われるが、性別の差を強く実感する、という経験があまりなくてな。
結局どっちつかずだ…元の学校でもこちらでも、世話になるのは女子寮だがな」
そう言ってくすりと笑う。
今のところ、「内面の性別はよく分からない」で困ったことがないのだろう。
…少なくとも、本人は。
「おまけにこちらの女性のスカートは、私の故郷のそれと比べて随分短いからな…
ますます着る気になれん。
…あ、これのタグ、お願いします。あとコートのお会計も」
女子制服については、少々呆れたかのようにわずかに肩をすくめて言い。
それから、制服の上下を店の主人に預けた。
店の主人は、笑いをこらえていたのを営業スマイルに切り替えて、『はい、分かりました』と制服を受け取り、レジの方へ。
セシルもそちらに向かう。
■真乃 真 > カーテンが閉まってる間に幾らか探してみるが…
結局どれも高い…もう、古着屋に行こう…。
「その感じで女子寮だったら多分モテたんだろうね。女子に…。
多分こっちでもモテるんじゃないかな。」
少し笑いながら言う。
女子寮にこんなイケメンがいたらそりゃあ惚れるわ。
「確かに寒いのに女子はよくあんな短いスカートを履けるよね。
凄い根性だよね。」
きっと寒い地域だから自然にスカートも長くなるのだろうなと考えたりもする。
「さて、じゃあ僕はもう行くよ。」
結局この店にきてさんざん冷やかして世間話をしていただけだった。
まあ、高いものは高いから仕方ない。
「僕の名前は真乃真。何か困ったことがあったら気軽に頼ってくれ!
近くにいればきっと助けるから!それじゃあね!」
頼りになるのかならないのかそんな自己紹介に加えて小さくカッコいいポーズを取る。
会計をするセシルの後ろを抜けてそのまま店を出た。
■セシル > 「まあ、そんなところだ」
「女子にモテたんだろう」と言われると、からからと気持ちよく笑います。
「寒さはまあ、タイツでも履けば何とかなるだろうがな…
ひらひらさせておくというのが、もはや違和感しか感じられん」
スカートの話題になると、そう言って首を横に振る。
寒さの問題では、あんまりないらしい。
「マノマコトか…私はセシル・ラフフェザーだ。
学園で何かあったら、世話になることもあるかもしれん。よろしく頼む」
そう言って、かっちりした所作で軽く頭を下げる。
どちらかといえば、男性的なお辞儀だった。
ご案内:「商店街」から真乃 真さんが去りました。
■セシル > 会計を済ませ、改めてコートと制服の上下を受け取ると試着スペースへ。
そして、制服にコートを着、その腰に剣を二振り下げ…荷物の上に、士官学校の制服を畳んで乗せた出で立ちで試着スペースから出てくる。
…と、店の主人が『着てきた服は、こちらにお入れ下さい』と、店の袋を差し出してきた。
「お、ありがとうございます」
礼を言って受け取ると、その中に士官学校の制服を入れる。
「ありがとうございました」
そう言って、やはりかっちりした所作で頭を下げると…衣料品店を、後にしたのだった。
ご案内:「商店街」からセシルさんが去りました。