2016/02/09 のログ
ご案内:「商店街」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 菓子屋の前でよだれを垂らす姿がある。

『バレンタインフェア』と称して普段は見ないブランドのチョコレートを並べた店先で、
中腰になって目を輝かせているのだ。

「これと……これと、これとこれとこれを」

爆買いである。

限定商品の繊細なデザインをしたパッケージに惹かれて、『ジャケ買い』をするタイプらしい。
試食の一欠片もしっかりと味わって、顔中からきらきらとしたオーラを立ち上らせていた。

「最高の季節だ……」

ヨキ > 『ヨキ先生、バレンタインデーに貰ったりしないんですか』とは、店員の女学生の言だ。

「何を言っておる。
 ヨキは貰えるものは貰う。食いたいものは買う」

強欲が服を着て歩いている。

「……む!あとこの小袋も頂こう」

カウンタの上に並べられていた安価なチョコレートのセットもちゃっかりと購入して、代金を支払う。
店員に手を振って別れを告げ、洒落た紙袋を両手に提げて店先を去った。

頭上からハートマークを絶えず飛ばして撒き散らしながら、大手を振って商店街を歩いてゆく。
早速どこかでひとつ食べようと、ベンチを探して周囲を見渡した。

ヨキ > 通りの隅に設えられたベンチを見つけて、足を向ける。
空いたベンチに腰を落ち着けると、行き交う人々を見ながら、袋から買ったうちの一箱を取り出す。
優美な唐草模様で飾られた箱をじい、と眺めてから、開封する。

小箱の中身は、つやつやとしたチョコレートが四つきり。2000円。
指先でひとつ摘み上げ、口に放り入れる。

「…………!」

瞠目。
薄いチョコレートがふわりと割れて、中から滑らかなガナッシュが口中に広がる。
声にならない声を上げて、背骨をふにゃふにゃに蕩かした。