2016/02/10 のログ
ご案内:「商店街」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 「やはり店で買うチョコレートは文句なしに美味いな……。
 餅は餅屋、チョコはチョコ屋である」

よく判らないことを良い声で呟きながら、そっと小箱の蓋を閉じる。
二つ目を口に入れたい衝動で、内心はらわたが捩じ切れそうになっていた。

「今年は何をこさえるかな」

手ずから拵えるチョコレート菓子のメニューに、あれこれと思いを馳せる。
舌の上に残った上品な後味を転がしながら、たくさんの吹き出しを頭上にふわふわと浮かべた。

ヨキ > 食べたいから作る。作るのが楽しいから作る。
獣の視力で繊細な料理を拵えるには技量に限りがあったが、それでも楽しみであることは変わらない。
煮物から菓子まで、折に触れて手料理を持ってゆくのはヨキの趣味のひとつでもあった。

「…………、」

ちら、と袋を覗き込む。

「……………………」

次の瞬間には、最後に買ったチョコレートの袋を開けていた。
完全に堪え性のない駄犬の所業だ。

個包装を開いて、口へ。香ばしいアーモンド入りの一口。
先に食した高級チョコレートに比べれば随分な安物だが、舌鼓を打つリアクションは同じだった。

「うまい……!」

頭の中はもはや常春のお花畑である。

ヨキ > 「今度こそ……今度こそ終わりにする!」

手を伸ばして顔からチョコレートの顔を引き離し、袋の口をビニールタイでぐるぐると縛る。
くしゃくしゃにした顔はいかにも苦悶に満ちていた。

「続きは帰ってから食べるのだ……!」

結局食べるらしい。

チョコレートを紙袋に仕舞って、ベンチから立ち上がる。
薬物にでも中てられたように昂揚した足取りで、商店街を後にした。

ご案内:「商店街」からヨキさんが去りました。