2016/06/26 のログ
ご案内:「商店街」に世永明晴さんが現れました。
■世永明晴 > 日中。商店街の外れ。ベンチ。その上に一人の青年が座り込んでいる。
日陰も何もない場所だ。今だ完全に夏ではないとはいえ、暑さはしのげまい。
それを示すかのように、青年の額にも汗が浮かんでいた。
その青年は、少しでも暑さを紛らわすためだろうか(ならば最初から日陰に入れと言うものだが)そこらのチェーンのファストフードで買ったかのような、紙の容器、ストローを咥え、ずごご、とあからさまにもう中身がないかのような音を出しながらも、延々とストローを吸い続けている。
それだけでも多少奇妙なものだが、何よりも奇妙なことは。
その青年の目は完全に閉じられ、それでいて首は細かく、緩やかに上下していた。
つまり。はた目から見て、あからさまに寝ていた。
寝ているのにストローを吸い続けていた。
■世永明晴 > ずごご。
氷はすでに解け始めている。
元に入っていたジュースだったのか、お茶だったのか。はたまた水だったのか。それはもうわからないぐらいだ。
ずごご。
起きる気配はない。
これは数瞬先を予言する言葉ではないが、少なくとも、今この瞬間は。
まるで起きる気配はなかった。
ずごご。
「あついー」
■世永明晴 > 今の言葉は果たして誰の物か。
この周囲に人影はないように見える。
この周囲に日本語を有する何かの物体があるなら話は別だが、少なくともそれは今はない。
それならば、この青年が発した、ということになる。
もちろん。今だに彼は眠り続けている。
目を頑なに閉じ、周囲の情報を拒絶しているかのように映る彼が言葉を発したのだ。
「あついー……」
ずごご。
ご案内:「商店街」に白泉椿丸さんが現れました。
■白泉椿丸 > 「ヤダもう、今日は比較的涼しいとかウソじゃないのォ!」
日焼けしちゃうッ。太陽が激しいッ。
アタシのお肌が、日光に犯されて(イヤァー!!)こんがり狐色になっちゃう!
そろそろつけておかなくちゃって、日焼け止めは塗って来てるけど。
ちょっと強めのやつを練っておかなきゃいけないかもしれないわ…。
ふりふりのレースがあしらわれた可愛い日傘をさしているオカマが、歩く。
商店街の中でも、191センチという身長は頭を1つ抜くものだ。
何を買ったのか――いや、これから買うところなのだろうか。
彼、いや、彼女は大股気味に通りを進んでいた。が、
「…アラッ?」
オカマセンサーに響く何かをキャッチした。
あつい。そう聞こえた。今日と言うお日様日和ならば誰しもが口にしそうな言葉。
しかしそれがオカマのセンサーに引っかかるという事は、何か別の要素があるという事。
ぐるーりと見渡す。眼を閉じて突っ立っている少年が見えた。
違和感――オカマセンサーにひっかかったのは、あの子だろうか。
■世永明晴 > そういえば、何かしらの物音を開くときに耳をピクリと動かすという表現がある。
寝ている彼がそれを成すには、まず意識を開かなければならない。
いや、むしろ……寝ているからこそか。
だからこそ彼は耳をピクリと動かした。
まるで何かしらの物音を拾ったかのように。
「アラー? アララー?」
瞼を閉じたまま、意識を閉ざしたまま。
彼は、その拾った音を探すかのように、首をふらふらと回した。
その姿はまるで、所謂夢遊病――。
それに該当するかのように見える。
あとストローを吸った。ずごご。
■白泉椿丸 > 日傘を軽く傾け、いぶかしげに唇をとがらかす。
いま確かに、自分の言葉を復唱されたような気がする。
さらに、どうも首のすわりが不安定に見えてしまい、オカマは少年に近づいた。
軽く見下ろすようにして、その肩を叩こうと。
「ちょっとォ、暑さで意識が小鳥ちゃんになってないかしらァ?」
ストローを吸っているようだけど、それは中身が無さそうな音ばかりさせている。
なにを吸ってるの?お薬ぽっちゃんぽっちゃんされたジョークジュースじゃない?
■世永明晴 > 避けた。
あっさりと、その手を少し後ろに下がって避けた。
その行為には、推測できることから言えば、大体意味がない。
「いや。いやー、大丈夫。吾輩は人であるー。大丈夫、寝てるよー」
あいもかわらず、瞳は閉じたまま。
だというのに、まるでその相手が分かっているかのような振る舞いだ。
少しだけ見上げるように。閉じた目で、その長身を覗いた。
「ところでー。おにい……あや? おねえ……うん?」
「まぁいいや。飲み物奢ってー」
まるで遠慮がなかった。
というより、まるで。その為にここにいたかのような躊躇のなさだ。
■白泉椿丸 > オカマの手は空を叩いた。
想定していたところに肩が無かったので、空を扇いだだけになった。
推測は出来ても実行するとは思えなかったらしく、眼を大き目に開く。
「大丈夫?ええ、大丈夫なら良いけどン……。
お外で立って寝て良いのは、案山子か野戦の兵士だけよォ。
アタシはおネエさん………って、初対面に随分な子ねェ~~!良いけどネ!」
オカマは気前が良かった。
ただ、糸目というわけでもなさそうな閉じた眼に、不思議そうな表情をとる。
寝てるよー。そう言っていた。寝てるなら何故喋っているの?といったところだが。
そこまで驚かないのは、この島には変な子の100人や1000人いても普通だから、だ。
「奢るのは良いけど、飲み物はそこの珈琲ショップのものよン。
アタシ、新作をチェックしないといけないから!」
■世永明晴 > 「オォ。おネエさん」
風に揺られるように自然体すぎる姿で、青年はふらふらと立っている。
非常に危なげないが、これが寝ているから、と言われれば確かに納得出来るかもしれない佇まいだ。
目の前の彼……彼女は気前がよかった。そして、この青年の運もよかった。
彼のような彼女……いや彼女のような彼に対しても何を思うわけでもなく、彼は普通にその言葉に喜びを示す。
「やった。砂糖たっぷりー。多めでー」
「新作? 豆ー? 豆を炒る?」
■白泉椿丸 > 「そうよ、おネエさんよォ。貴方は生徒ちゃん?教師名簿では見なかった顔だけどン」
空を切った手は、自分の頬に当てる。
「お豆は炒らないタイプねン。あすこの新作は…えーと、
チョコレートカシス・ベイクドチーズケーキ・ディライト・フラペチーノよ!」
オカマがコーヒーショップに求めていた新作は、長い名前の飲み物であった。
お外は暑いからイートインよ!とばかりに手招きをして、店に入っていく。
少年が来なければ、注文の途中で気づいたオカマがツカツカと寄って来て店内へ連れ込むだろう。
こんな暑いトコに突っ立っていては、そのうち倒れて病院送りになってしまいそうだ。
■世永明晴 > 「生徒? ここの? いやー、俺は…………あぁー? うん、生徒」
あやふやな物言いだ。生徒ではあるのだ、間違いなく。
「あまければよーし。長い。ながいなー」
長い、と言いつつも、口の中でもごもごとその言葉を唱えようとする。
しかしながら、元々の喋り方もあってか、チョコレートケーキーノ、等という明らかに間違っているのかやる気がないのか、等の言葉が漏れ出ていた。
ふらふらと。見えているのかいないのか。間違いなく、その目は閉じている。
しかし乍ら、その足取りはしっかりと、とは言えない物の彼が手招く先へ動き出した。
汗が額から垂れている。
■白泉椿丸 > なんだか変な子拾っちゃったわネ。
見た限りでは、手帳持ちの生徒だと思うんだけどォ。
結構可愛い顔してるのに、眼はとじたままなのが不思議だわ。
寝てると言ってた通りにフラフラしてるしぃ……夢遊病みたい。
ただ、夢遊病にしてはハッキリ受け答えするのよねェ~。チューしたら眼が覚めるかしらン?
チョコレートカシス・ベイクドチーズケーキ・ディライト・フラペチーノを2つ、通常サイズで頼む。
それを持って席へつき、少年の額から流れる汗におしぼりを差し出した。
冷却魔術をかけてやるにも、この汗では気持ち悪かろう。とのことで。
「どのくらい前からあそこで立ってたのン、あなた」
■世永明晴 > 手招かれるまま。
手招かれるままに席へ着く。
何やらブルリと一度震えたが、特に何もなかったかのようにべたりとテーブルに上半身を貼りつかせた。
「ちべてー。つめてー」
そのまま手を伸ばしおしぼりを受け取る。非常に行儀が悪い。
そもそも人目など存在していなかったのかもしれない。
「たしかー……寝る前からいた。あれねてーからだっけ」
顔を拭き乍ら、くぐもった声を出しながら、眠っている。
首を傾げた。そして、非常にスローペースで上半身を起こして。
「あれ。俺いつから寝てたっけー?」
■白泉椿丸 > 「ヤッダァ~~~~~~~~。いつから寝てたかも分からないのォ?
でもジュースは持ってたわけよネ?あれも誰かに買って貰ったヤツ?」
ご飯ちゃんと食べたの?と、自分の容器にストローを差す。
カシスソースとチョコレートソースの色彩がシックな雰囲気の飲み物だが、
味は非常に甘ったるくこってりとした仕上がりで、飲めば1食分のカロリーは取った気持ちになれる。
甘党ならば大喜びの味であることは確かだ。生クリームもぽってりと絞られているのだし。
「最近は雨もそんなに降ってないから……。
ずぶ濡れの記憶がないなら本当にいつから立ってたのよォ~。
アタシそういうのダメ。もーダメ。サンドイッチ買ってくるから食べなさいよアナタ。
脳みそが本格的に小鳥になって、お日様チーパッパするまえに食べなさい!」
■世永明晴 > 「あー? んん。自分で買った。んんー……」
ズズー。音を立てて、ストローを吸った。
思い出せないというより……そう。
まるで起きている時と、眠りに入る時の境目が分からなくなるような――。
小首を傾げる。
「小鳥。ピーピー。いやぴょっぴょー? おーれーはーにんげんー」
「食べたい!」
殊更、それまでの事など何でもよかったかのように今までのふわりとした言葉から一点。やたらと元気のいい言葉。
それは夢の場面が移り変わるような唐突さでもある。
■白泉椿丸 > 「じゃあ少なくとも数日突っ立ってたってワケじゃ無さそうねン。
今買ってくるから、ちゃんと手から顔からおしぼりでふいときなさいッ」
打って変ったような元気な返事に頷くと、ビシッと指さしオカマは席を立つ。
追加の食べ物を注文し、サンドイッチの他にもサーモンパイやスコーンなどなど、
それを専用ボードへ乗せて、オカマらしくしなやかな動きで戻って来た。
いかにもお節介焼きと言った動きだか、その中のフルーツサンドは自分で食べるらしい。
「はい、おかな壊すんじゃないわヨ。
……で、その寝てるのはいつもなのォ?アナタほんとに実体?」
違和感を覚えているのは確かだが、それをはっきりさせるところまでは来ていない。
魔法体のような存在という路線を疑っているようだ。
■世永明晴 > 元気よく片手を上げた。
了承の意。大人しくまってるとも言うし、その姿は椅子に座ったまま寝てるとも言う。
彼が戻ってきたその手にあるものを注視しながらも。
熱視線。しかしながらも。ふと、その言葉に何か。
「壊れないよ。ちがーう。いつもじゃない。んー、ん」
少し言葉を考える素振りを見せている。
数瞬の間の後。
「アナタは眠りに入る瞬間を覚えている?」
やたらとハッキリした言葉。
その言葉と共に、今までどうやっても開きそうになかった瞳が、ふと。
パチリと開いた。
眠そうな瞳を数度瞬かせ、どことなく困惑が残る表情で周囲を見回した後、ため息をついた。
そして、近くにいる彼を目にした青年の口からはヒッ、という言葉が聞こえた気がするが、恐らく気のせいだろう。
「……あの。ここ、どこっスか?」
■白泉椿丸 > 「眠りに入る瞬間?」
そうオウム返しをした時だった。
まるでスイッチが切れた瞬間のように――いや、これは入ったと表現すべきなのか。
少年が小さく声をあげた。こちらを見た。
見た?
いいえ、これは目覚めたってワケ?
「どこですってェ?」
「少なくともコーヒーショップ設定のホテルでは無いわよ。
連れ込んだけど、ここは商店街のお店のひとつ。…あなた、自分が今何を飲んでいるか覚えてて?」
■世永明晴 > 「で、でスよねー。……あー、びびったッス」
起きたら見知らぬ場所にいる、ということはよくある事だが。
その近くに、彼の様な……まぁ、別に何を考えていたわけでもないのだが。
口の中にどこか甘ったるくて、何とも言えない後味が広がっていた。
「いや……」
首を振る。分からない。
「なんか、なんスかねこれ」
連れ込んだ、と聞いて記憶をめぐる。
自分には彼のような人物に覚えがない。それならば――まぁ、それしか答えはないのだろう。
「……もしかして、俺と知り合いだったりしますっス? あの、ほら。寝ている感じの」
この類の質問は、幾度ともなくしてきたが……相変わらず胃に優しくないな、と感じながら。