2017/05/02 のログ
ご案内:「商店街」に宮比 奏楽さんが現れました。
■宮比 奏楽 > ――もう、夕暮れ時。
そう、もう、夕暮れ時だった。
暮れて、おなかが鳴り、本来であれば大騒ぎ。
社の中でわがままを口にするはずだった鬼は行方知れず。
商店街で、ただ、一点を見ていた。
ただただ、一点を。
そう。
今にも、焼きあがりそうな。焼き鳥を――
ご案内:「商店街」に久世藤士郎時貞さんが現れました。
■久世藤士郎時貞 > 夕暮れ時
みなしごとを終え帰路につく頃
侍は商店街でただ一点を見ていた
唯々一点を
そう。
呆け面で焼き鳥をただ眺める少女を――
「・・・・・・なにをしておるのだ。あやつは――」
■宮比 奏楽 > じゅうううっと音を立てる。
鼻に来る匂いは食欲をそそる――じっくりと、寝かせて。
幾年の月日をかけて熟成された秘伝のたれ。
しっとりとたれを絡みついて、肉汁とともに中に浸透していく極上のむね肉……
間違いなく極上のそれに、ぐぎゅるるるるるっと腹の音を鳴らしながら。
少女はずっと、眺めていた。
その、”上”。
焼いている主人の、さらに上にある”箱”を
■久世藤士郎時貞 > そんなこともつゆ知らず
てっきり食い意地が張っているものばかりと思っている侍であった
「これ。店先で迷惑であろう」
しっしと手を振ってみせる
どうせこの少女、無一文であろう
■宮比 奏楽 > ――聞こえていない。
ぐぎゅるるるるるるっと腹の虫だけをならして居座る鬼。
いつもであれば
――お、いいところにきた! 供物をよこせっ!
そんな風にとびかかってくるはず。
そう、当然無一文なのだから。
だが、彼女は”ここではない別のところにいるかのように”
ある一点を凝視、していた。
そこには、サングラスをかけた司会の男性と
何やら紹介する女性。
すれば―― 十人ほどの女性が舞台へ上がり
歌を歌い踊りを踊り――歓声を受けている姿だった。
「――…………」
息をするのも忘れてみていて。
ただ、その視線の隅に置かれている店主は。
大変困った顔をしているのだった
■久世藤士郎時貞 > 無反応――
気付けばその視線は焼き鳥機よりもやや上方
その目は焼き鳥を見ていなかった
そのはこ――テレビに映っているのは色とりどりの
ともすれば派手と言われるような
かわいらしい衣装を身に纏う少女達
アイドルとよばれるものたちだった
顔を見ればそれは目を輝かせていると形容できよう
いつもの食べ物を目の前にしたときとは違う
そんな顔だった
おもわず何も言えずに立ち止まる
唯々その顔を見ていた
■宮比 奏楽 >
夢を見ているような
そんなここちだった。あれは、”偽り”だ。
本物ではない。偽物だ。
偶像、だ――なのに。
なのに、なぜあんなにも人々が喜び、泣き。
そして――仰ぐのか。それが理解できなかった。
自分のほうがうまく舞えるだろう。
うまく歌えるだろう。
でもそれだけでは至れない、本物の”偶像”を見た。
「――…………」
鬼には、現がない鬼にとってそれは……
ぐぎゅるるるるるるるるる、ぎぅ……
■久世藤士郎時貞 > 腹の音を聞けば我に返る
というか小腹がすいてきた
がま口をパカッと開けて中を確認
しばし熟考の後
「おやじ。ももとかわをたのむ」
と注文する
いつから営業を邪魔されていたのであろうか
少々焼き過ぎな焼き鳥が出てくる
皮をかじればかりかり・・・を越えガリガリともいうべきありさまであった
とはいえ味はいいようである
「うまい・・・・・・」
と皮をぺろりと食べてしまった
■宮比 奏楽 >
なぜか泣いていた偶像の集団の一人が手を振った
その最後で、放送は終わり。番組が切り替わる。
「――……っは……」
夢から覚めたように、言葉を発して。
「お? おぉ?」
ここはどこという認識を再開。
そして――
「おなか、すいた……」
ぐぎゅるるるるる。
地面にぺたんっと座り込み――侍の姿を見つければ。
「あーーーーーー、何を食ってるのかっ!!?」
いつも通りだった
■久世藤士郎時貞 >
番組はニュースに切り替わる
殺人事件だ何だとキャスターが読み上げているようである
「なげかわしい・・・・・・」
もぐもぐとニュースをみながらももにかぶりつく
それなりに大ぶりな焼き鳥であるがもう半分も残っていなかった
「・・・・・・ふむ」
あ^-と声を上げたのに気付けば
何を思ったか宮比の頬をつまむとむにっと引っ張る
しばしむにむにしたあと
「ふむ。いつもとなにもかわらんな」
とぱっと手を離した
■宮比 奏楽 >
「ほひ、ほまえ、ほふへんはひほふふ」
むにむにっと引っ張られれば不機嫌そうに眉をひそめて。
「変わらないとは何事だっ、ええい、うまそうにくっているじゃないか、私にもくわせろおおおお!!」
うがーっと、手にかぶりつく。
思いのほかおなかを減っているようであった。
■久世藤士郎時貞 >
「ぬおっ。はなさんか
働かざる者喰うべからずだ」
しかしあわれ焼き鳥は宮比の胃袋へと吸い込まれていくだろう
別に惜しくはないのだがなんとなく腹立たしい
「おのれ食い意地神め!」
ぶんぶんとうでをふる
■宮比 奏楽 > 「うまうま……」
幸せそうにうまみの余韻に浸ってぶんぶんっと、全身が腕とともに上下する。
もはや、かじるためだけの形態といっても過言ではない。
「あむ、うめぇ……うめぇ……」
しばらくして口を離せば、さっと注文して。もぐもぐと食べていく。
もちろん、侍が払う伝票に店主は書き込んだ。
「……なぁ、侍。まぶしいと、仰ぎたくなるか?」
そして、唐突にそんなことを聞いた
■久世藤士郎時貞 >
「ぐっ おのれ」
まるで保護者である
しかし払わないわけには行くまい
いつにもまして機敏な動きを見せる猿になすすべもなくむさぼられる財布
今日の晩ご飯はめざし一匹が決定である
がま口をパチンと閉じてうなる
「うむ?
まぶしいものは目を背けたいと思いつつも目が離せず
天にあれば思わず仰ぎ見たくなるのが人間というものであろう」
そうしてヒトは目をつぶしていくのだが――
まぶしいものには目をひきつける力がある
■宮比 奏楽 >
「そうか……」
ふむ、っとうなずいて。手に着いたタレを舌でぺろりと舐めて。
「なぁ、侍……」
なんとなく。
「――私は、アイドルになるぞ」
いつか、同じ言葉を言った。
だが、どこか――その言葉の真剣さは――……
「ということで、侍。お前はまねーじゃー、な」
さらっと、道連れにしつつ。
■久世藤士郎時貞 >
「はっ?」
はっ?しかでてこなかった
完全にあっけにとられている
何を言っているのだろうかコイツは――そう思ってはいても
しかしその顔にはいつにない真剣さがあった
こうしてとある侍の運命は決まったのであった
■宮比 奏楽 >
「ふははは! アイドル、みやびそら。爆誕である!!」
そんな侍に。
満面の笑みを浮かべて――……
鬼はこうして、アイドルを目指す
ご案内:「商店街」から宮比 奏楽さんが去りました。
ご案内:「商店街」から久世藤士郎時貞さんが去りました。