2018/08/31 のログ
ご案内:「古書店街「瀛洲」」にアリスさんが現れました。
■アリス >
私、アリス・アンダーソン。
今年の四月から常世学園に通っている一年生!
去り行く夏季休講を惜しんで、とはいえ。
明日から学校という時に遠出もしていられない。
とりあえず古書店街に来て、ぶらついている。
私は本が好きで、漫画に小説に辞典と様々な種類が揃っているこの街が気に入っている。
まだまだ日差しがきついので道すがら日傘を錬成。
途中、古びた古書店が目に付く。
古本屋『無何有郷』……よ、読めない!
でもこういう店にこそ掘り出し物がある、と思う。
とりあえず中に入ってみる。
■アリス >
中はきちんと虫干しされた本の匂いが漂っている。
外から見ると古く感じたのに、店の中には埃ひとつ落ちてない。
異世界!って感じの古本屋で、私は一目で気に入った。
本棚で大半のスペースが占められた店の中を歩くと、眼鏡をかけた老人が本を読んでいた。
「こ、こんにちは」
声をかけると、ゆったりとした動作で老人は顔を上げて。
『いらっしゃい、ムカウノサトへようこそ』
「む……かう…」
ああ、この店名ってそう読むんだ。
ムカウノサト。携帯デバイスで調べると、楽園や理想郷の一種らしい。
とりあえずムカウノサトって古本屋なう!!とSNSに書いておこう。
なう!!って古いかなとは思うけどつい癖で書いてしまう。
携帯デバイスをポケットに入れると、周囲を見渡した。
って、あれ……ガラスケースの中にあるの、不思議の国のアリスだ。懐かしい。
私の名前の元になった少女。それにしてもずいぶん古い装丁。
子供の頃に夢中になって読んだけど、その時に持っていた本より古い。
■アリス >
目を輝かせて不思議の国のアリスを見ていると、店主と思われる老人が声をかけてきた。
『読むかい?』
「え、いいの? あんなに大事に飾ってある本なのに」
そう聞き返すと、老人は口の端を持ち上げて笑う。
『本はね、読むためにあるんだよ』
そう言って自分の座っていた瀟洒な動作で椅子を勧めてくれ、ガラスケースの鍵をあけて本を出してくれた。
『どうぞ』
「わぁ、ありがとう!」
嬉しい。今すぐ写真を撮ってSNSにあげたい。
けど、そういうのじゃないのは私にもわかる。
今、している経験は。携帯デバイスじゃなくて心に保存するもの。
本を開くと、色彩が反転した光がカメラのフラッシュのように瞬いて。
私の意識は急速に暗闇の中に落ちていった。
『これはね、カバーを魔術欺瞞で覆っているだけなんだ』
老人が私が持つ本の表紙を撫でると。
不思議の国のアリスは……表紙が変わり…『Dead man's fingers』と書かれた魔術書のような何かに…
『駄目だよお嬢さん、知らない人の言うこと聞いちゃ。でないと…本の中で魂を喰われることになる』
ご案内:「古書店街「瀛洲」」に白鈴秋さんが現れました。
白鈴秋 > この古書店街には今まで何度か足を運んでいた。色々な本やゴシップ誌なんかも見つかる。情報収集にも自分の知識を深めるためにも色々と便利だったから。
慣れた様子で歩いている時に前に見えた後ろ姿。それは前に時計塔の上で出会った少女の物だった。
「アリス、だったか。こんな場所で会うなんて奇遇だな」
今の所気がつくことは無く。そんな感じで軽く腕を上げ近寄る。
内心情報集は出来ないかなどと考えたものの別にそれだけが目的でもない。
「今日はどんな本を探しに来たんだ。俺は魔術書の類を……アリス?」
近寄り、少しだけ不穏な気配を感じる。杞憂か否か。
……どちらにしても、危険を冒さねばどちらかもわからないだろう。手元を見る、何かを読んでいるのはわかる。
近くに居る老人が関係しているのか違うのか。まだ絶対的に経験が足りない自分は……踏み込むことでしかわからない。
「何を読んでいるんだ」
そう言いながら一歩を踏み出し近くまで歩く。
■アリス >
声が聞こえてくる……友達の声が…
ダメ……秋…来ちゃダメ…
そう言わなきゃダメなのに、瞼が重くて持ち上がらない。
『このお嬢さんが本を読みたいと言っていたんだが、少し眠くなったようだね』
老人は口元に指先を当ててしー、と静かにするように彼に伝えた。
違う、私は眠っているんじゃない。
それなのに、体が動かない。
『何かお探しものかね、とはいっても見ての通り小さな古本屋さ』
老人は両手を広げて言う。
何か、何か意思表示をしないと……
白鈴秋 > 「……眠くね。まぁ確かに眠くなる気持ちはわかりますが」
どうにも腑に落ちない。本当に眠っているだけなのだろうか、だが今は確かめる術が無い。
ある意味で直感でしかないが。嫌な雰囲気が漂う、これは果たして杞憂なのだろうか。そうではないと思える理由は……寝ているにしても動きが無さ過ぎることだ。本来机に倒れるなりフラフラするなりするのではないだろうか?
だがそれを確認する術は今は無く、悩んでも仕方が無いと。意を決し……
「彼女知り合いなんです。本、私が返しておきますよ。売り物に涎でも落ちたら大変でしょう」
影響するとしても本か老人かのどちらか。二つくらいに意識を向けることは可能だ。
それならば確認の為にと本を手に取るため。老人に渡すように手を伸ばす。自分でとっても良いのだが。もし嫌な予感が的中していた場合それをすると不味い場合もありえる。だからあくまで相手主動で回し……何が起きているか確認する必要がある。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」から白鈴秋さんが去りました。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」に白鈴秋さんが現れました。
■アリス >
『寝る子は育つというからね、この子も素敵なレディになるだろうさ』
身動き一つ取れない。
今すぐにでも違う世界に精神が飛ばされそう。
そこはきっと、楽園じゃないこともわかる。
『そうかい、それじゃよろしくお願いしようかな』
そう言いながら老人は開かれている本を、死者の指と書かれた魔術書を秋に向けた。
意識を奪う魔の明滅が放たれる。
『真実というにも陳腐な話だがね、この本は定期的に若い魂を喰わせてやらないと文字が逃げ出してしまうんだ』
老人が口の端を持ち上げて、今度は誰にもわかる醜悪な笑みを浮かべた。
『なに、二人分ならちょうどいい。本の中の世界をしばらく堪能したまえ』
■白鈴秋 > 「ッ、呪いの書物か……!」
この手の書物も中にはあるとはわかっていた。となると相手はそれに魅了された丁度いい宿主……といったところだろう。
そのあとに続いた言葉。それが真実ならば……憎らしいが本に囚われているということだろう。
シュルンと二本の糸が伸びる。1本はキラキラと光る普通の糸。それを自身に突き刺す。効果は対異、異能や魔術に対する防御効果を付与した糸、それを突き刺し呪いを弾き出そうとする。
「っがぁ」
半分以上持っていかれかけているが。寸での所で耐える。チカチカする目を閉じ、空間感知。
周囲の空間と位置を察知し、老人に向かい紫の糸を放つ。それは麻痺毒を仕込んだ糸。殺すわけには行かない、情報を吐かせる必要もある。
それに、麻痺させておけば……最悪自身の意識が飛んでも相手が自分達の肉体を同行することは出来なくなるはず。その二つの意味を込めてある。
■アリス >
『なぁに、ただの本さ。学園の図書委員がB級魔導書と分類するだけの』
魔導書には図書委員がC、B、A、Sと順に危険度をランク付けしているという噂がある。
Bランク……それでも、生贄を要求するほどの危険性があるというのだろうか。
老人の腕に糸が突き刺さる。
『……! なるほど、異能者だったか…』
老人が片膝をつく。
『しかしそれも織り込み済みだ、異界で彼女と最後のひと時を過ごしたまえ』
術者に危険が及んだからか、少しだけ目が開いた。
涙が流れた。
気がつくと、私はレース場のようなところに立っていた。
いやに円が狭い、徒競走の会場のような……?
「秋……秋ーっ!!」
観客の騒音の中で彼の名を呼んだ。
もし、同じ場所にいるのなら協力する必要がある。
■白鈴秋 > 「B級魔導書……それが聞けただけでも価値はあった」
少しだけ口の端が浮き上がり笑う。Aならば難しいしSなら不可能なレベルだろう、だがBなら……まだなんとかなる可能性はある。
「ああ、お前はそこで……待っていろ。戻ってきた時がお前の最後……だ」
麻痺は打ち込んだ。効果が発動するかは見届けられないが。まぁ良い、向こうの思惑は本に魂を食わせる事。その前に俺たちをどうこうはしないはずだ。
意識が離れる。同じように闇へと……
そこにあたかも初めからいたかのように現れる。周囲に聞こえる騒音。目の前にいたのは……知り合いの少女。
「……アリス。無事だったみたいだな」
良かったと呟き、周囲を見る。狭い円、観客の騒音……なんとなく理解する。
徒競走の会場というより彼にはこう感じた。
「コロッセオ……か?」
■アリス >
「秋、よかった……一人だったら心細くて死んじゃうところだったわ」
彼のコロッセオ、という言葉を聞いて背筋を寒気が走った。
確かに似ている。
だったら周囲の観客が求めているのは、血、だろうか。
「コーカス・レースって知ってる? 不思議の国のアリスの不思議な競争」
「こういう円を子犬たちと走るんだけど、挿絵と全然似ていないわ」
「多分、私が意識を手放す前に期待していた不思議の国のアリスの世界観と…」
「秋が戦闘の意思を見せていたのが混ざったんだと思う」
何か恐ろしいものを想像してしまう。
でも、対処法はある。かも知れない。
ドズン、と音がした。
振り返ると、いつの間にか赤黒い肌をした巨大な赤ん坊がコロッセオの中にいた。
彼? 彼女? の背は剣竜のようにゴツゴツとした背骨が浮き出ていて、
口には回転ノコギリの刃を内側に並べたような歯列がある。
「……悪夢だわ」
見上げるほど巨大な赤子。
それは恐怖と嫌悪感を煽った。
生臭い吐息がこちらまで来る。