2015/06/26 のログ
ご案内:「常世公園」にマリーさんが現れました。
マリー > (そよそよと流れる風。さらさらと流れる水。そして僅かに木の葉と、青々とした芝生。そこを穏やかな表情で歩みを進める、金髪碧眼の女性。小国の姫であった彼女は異邦人としてこの世界に飛ばされ、この学園の生徒として現在の身を置く。)
……嗚呼、久しぶりにこうやって、公園のような場所にやって来るのも良いものですね。
(風でなびく金色の髪を手で押さえ、目を細めて空を見上げる。この空はこんなにも青くて、故郷とまったく同じに見えるのに。)

マリー > (本日の格好は……ジャージではなく、買ってもらった薄水色のキャミソール。王族である以上、故郷ではこんな格好はできないのだから、これそのものは気に入っている。ドレスより軽いし涼しい。)
……ん…っ!
(ぐ、っと伸びを一つ。元々女性らしい見た目と、それなりに健やかに育った身体つき。ジャージでなければしっかりとお嬢様に見える不思議。)
(先日は補習アンド補習で一日休みを潰され、その上でストレス発散とばかりにバットを振りすぎて腕が筋肉痛。結局テスト中は腕がぷるぷるするという失態を晒してしまった。ここ最近失態しか晒していない気がする。でも気にしない。野球しか記憶に残っていないから仕方ないね。)

マリー > こういう芝生は、ゆりかごの丘を思い出しますね……。
(思い出す。柔らかな草が絨毯のように生えた、故郷近くにある丘。化け物がいるから行くなと言われながらも、何度も城から抜けだして寝そべった思い出。思い出しながら、ぽふん、と公園の芝生に腰を下ろして、………思い立ったように、ごろん、っと仰向け。)
……………ああ、気持ちいいですねー。
(目を閉じて、すー、はー、っと深呼吸。お嬢様生まれのすることではないかもしれないが、基本フリーダム。芝生の上で豪快に手を広げて仰向けになり、全身に太陽の光を浴びる。健康優良児。)

マリー > …………………………んー……………
(ぽかぽかと暖かな光。そういえば先ほどたくさん食べた気がする。ラーメン(一玉おかわり)にチャーハン大盛りに麻婆豆腐を食べた気が…………。思考がゆっくりと奥に沈み込み、まぶたを閉じていることすら意識から消えていく。)

………んぐぅ………
(すかー、と、大口を開けて眠る姫。よく食べてよく運動してよく眠る。正に健康体でしかない。)

マリー > ……ふぁ………はっ!?
(がくん、っと頭が横に倒れかけて、はっ、と目が覚める。………ワンテンポ遅れて、眠っていたことに気がついて。………もうワンテンポ遅れて、よだれが垂れていたことに気がつく。いやぐっすりでした。)
……っ……!
(流石の脳内巨人の星も、何だかんだで女子である。多少顔を赤くしながら口元を必死に手で拭っては、周囲をきょろきょろと見回して。………知らない人に見られていたら恥ずかしいどころの騒ぎではない。)

ご案内:「常世公園」に楓森焔さんが現れました。
楓森焔 >  がらん、ごろん、と常世公園に音が響く。
やたらやかましいその音は、一人の少女が鉄下駄でコンクリートを蹴る音であった。
 白い道着に赤い鉢巻。胸に刻まれた"俺"の一字。そんな風体の少女が公園に踏み込んできた。
「ふぃー、ちょっと休憩しようかな」
 汗を拭いながら、給水器から吹き出す水に口付けている。

マリー > 「……っ!」
姫はカッ、と目覚めた。この音は下駄の音……しかし、単なる下駄ではない。そう、普通では考えられないこの音量は……木製ではない!
以前爺にお願いした際に「何を言っているんだこの馬鹿は」といった目で見られてしまった、……そう、鉄下駄ではないか!

がばりっ、と四つん這いになるように飛び起きれば、芝生をがさがさがさ、っと素晴らしい速度で進む。ええと、音はこっちから聞こえたような………。

「………もし、そちらの方。………その、その履き物を見せていただけませんか……?」

わくわくうきうき、金髪碧眼の女性が、見事なまでに瞳を輝かせてマジマジと(下駄を)見つめてくる。)

楓森焔 > 「うおっ!?」
 まるで初めから4足歩行だったかのような鮮やかな身のこなし。
唐突に現れた彼女に驚き、
「うわっぷ!」
 給水器の水が顔面に直撃した。つんとした刺激が鼻を襲い、思わず鼻頭を抑えて天を仰ぐ。
 およそ十秒ほどそれを続けたあと、大きく息を吐いて向き直る。
美しい少女が。下駄を。見つめている。
「お、おお。いいぜ」
 見れば少女の足は鍛えられたものであり、地面を素足で走りこんでいるのか、その皮膚はやや無骨なものとなっている。
 鉄下駄は訓練用か。その鉄下駄を脱いで、そっちにずい、と寄せてやる。
重さは見た目以上であり、ひ弱な腕では抱えるので精一杯、かもしれない。

マリー > 「大丈夫ですか…? その、私のせいでしたら申し訳ありません。……嗚呼、申し遅れました。私、こちらの学園で一年をしております、マリーと申します。」
静かにそっと、礼儀正しくお辞儀をする。頭の中は男ドアホウ甲子園だが、こういったマナーは叩き込まれた。それなりに。
ようやっとこちらを向いてくれた相手のその言葉に、ぱぁ、っと花が咲いたかのような笑顔を向けて。
「ありがとうございます!……私、こちらの学園に来て。運動を好んでいるのですけれど、いつか拝見したいと思っていたのです。」
まるで花を愛でるかのように、きゃっきゃ、と喜びながらその鉄下駄に触れて。よいしょ、っと持ち上げてみて。
「……ほんっとうに重いのですね…! こんなものを履いて、グラウンド百周とか、ウサギ跳びとかをされるんですか?」
好奇心の塊のような、無邪気な瞳で尋ねてくる。ずっしりとしたそれを一応片手づつに持っているあたり、本当に鍛えているのは事実のようだ。

楓森焔 > 「あいやいや、今のは俺がドジっただけだし」
 懐から手ぬぐいを取り出して顔を拭いながら手を振って。
最後に軽く頭を振って水を飛ばすと、
「奇遇だな! 俺も一年だよ。名前は楓森焔。よろしくな」
 笑顔を浮かべて歓迎しつつ、鉄下駄を持ち上げる様にはおお、と声を漏らし。
「んー。うさぎ跳びはやったことないな。もっぱら走りこみ。グラウンド百周っつーか、常世島をぐるっと回ってみたりとか」
 流石にこの広い島をぐるりと走るのは時間がかかる。
余程暇な時ぐらいしかできないが。それでも足には自信がある。
「そっちも鍛えてんだな。武道……いや、スポーツか?」
 じっと見つめながら呟く。別にそういった見抜く眼力があるというわけではなかったが、いわゆるただの勘である。
興味深げに彼女の一挙一動を見つめてみる。あの4足歩行のコツとかが見いだせるかもしれないし。

マリー > 「……よろしくお願い致します! 嗚呼、よかった。怒られてしまったらどのようにお詫びしようかと。」
ほ、っと胸をなでおろすその姿に、わざとらしさは感じられない。自然のまま、ありのまま。
焔と名乗った少女に微笑みかければ、鉄下駄を持ったままトントンとステップ。自分の体がどのように重くなるのか確かめている。
「………!! 島を一周はいいですね、素敵です。なんで思いつかなかったんでしょう。明日にもやらなきゃ……」
まるで新しい玩具を与えた子供のように目を輝かせて、うんうんうん、と何度も頷いて。
そして、スポーツだと言い当てられれば、ぴくん、っと反応を示す。わかる? わかります?的な、うずうずとした楽しげな空気。
「そうです、……ええと………」
慌てて、鞄から取り出したるは、やはり白球。こんなところまで持ってきていた白球。手放せるはずがない。
自己紹介とばかりに、それを十分に豊かな胸の前にセットして。今日は振りかぶらずに、ぐ、っと踏み込んで投げ放つ。唸りを上げる、とまではいかずとも、糸を引くようになめらかなラインを描いた白球は、ずどんっ、と公園のトイレの壁にあたって、てんてんと跳ね返ってくる………
「……野球をしてます!」
振り向きながら言い放った。これ以上無いドヤ顔というか、決め顔である。

楓森焔 > 「いちいちそんなことで驚きゃしねーよ!」
 大げさだなあ、なんてけたけた笑って相手の肩を馴れ馴れしく叩く。
 ついで、彼女がステップを始めればそれを一歩引いて見つめていた。マリーの手慣れた動きは、明らかに鍛えられた筋肉からくるものだ。
 腕も、肩も、足腰も。なるほど確かにしっかりと鍛えられている。
「おう。あ、回ってみるのもいいけど、危ないとこも多いから、北から南を往復するぐらいがいいかもな。あとは産業区のほうまで足をのばすとか」
 落第街。歓楽街。未開拓地区。一般生徒が気軽に踏み込む場所でもあるまいと、ひとまず注意しつつ。
 彼女が取り出すそれを見た。
「ボール?」
 流石の焔も見たことぐらいはある。見慣れたというわけではないけど、本州の授業で触れたことは一度や二度ではない。
 そのボールが、投げられた。美しいフォームだ。焔の目には、その腕の流れとボールの軌跡が尾を引いて繋がるようにすら見えた。
「おお、すげー! 見事なもんだなあ。そうか、野球かあ」
 拍手に喝采。純粋に目を輝かせながら笑顔を浮かべ。
「なるほどな。じゃあ、俺も折角だし一技披露しようかな」
 相手の動きに少しだけ身体が疼いた。一歩、二歩、三歩。距離をとって、構える。武術だ。

マリー > 「いえ、どうもすぐに怒られてしまうのです……」
とほほ、と肩を落としてそう呟く。これが文化の違いか。……実際はただただこの子がとてつもなく成績が悪いだけなのだが、それはそれで自覚が無い。自覚が無いことほど悪いことは無い。
「………? ああ。そうなんですね。私、学園とこの周辺までしか足を伸ばしたことが無いもので。ご丁寧にありがとうございます。」
頭を下げつつも、きっと次の拍手喝采で頭からすっとんでいく。そう、記憶容量は基本的に少ないのだった。
思い切り投げ終わって満足気にしつつも、拍手を受ければ、ぽ、っと頬を赤くして照れる。罵倒はされても、褒められたことは少ないので本当は飛び上がりたかった。
「…いえ、その、………好きでやっているだけで、まだ一人でしかやっていないので………と。…見せて頂けるんですか?」
武術のその構えに、ごくり、と喉を鳴らす。身体を思い通りに動かす術に関しては興味はもちろんあった。その術で戦うことが武術であり、その術を別の方向性に活かしたものがスポーツである。だから、鉄下駄を胸に抱いて、食い入る様に見つめてくる。

楓森焔 >  相手の照れて恥ずかしがる所作に歯を見せるような笑顔を浮かべると、
「一人か……険しい道程だなあ。野球って人気のスポーツだと思ってたけど」
 率直な感想である。少なくともこの日本においてはメジャーなスポーツだと思っていたのだが……。
 しかし、今はひとまず。
「ま。その見事な技に、返礼、ってね!」
 言葉とともに拳を突き出した。
めちゃくちゃなフォーム。めちゃくちゃな踏み込み。
野球で例えるならば、勢いだけが乗った大暴投。
 力の配分も、なにもかも。子どもの理屈のような拳。
しかし、それがまるでひとつなぎの輪のように。身体に力がみなぎり――。
 風が拳の先より吹き荒れ天を駆ける。
 ただのパワーがあるだけのパンチではこうはなるまい。
そのまままるでその風に飛び乗るかのように飛び上がり、公園に植えられた巨木を足で"掴み"着地する。そこを足場に更に飛び上がって一回転するように蹴りを繰り出した。
 めちゃくちゃな動き。しかし、不思議とそこには道理が通っているように見える、かもしれない。
「いよっし!」
 音を立てて着地。勢いのあまりに、公園の乾いた土が空気に舞った。

マリー > ………ぞっ、と背筋に何かが走った。元より、運動力学を学んだわけではない。見よう見まねでフォームを覚え、鏡に写してそれを真似て。後は、ただただ反復練習と、本能の赴くままに身体を動かしてきただけである。
だからこそ分かる。だからこそ感じる。だからこそ気がついた。
猛り狂うような暴風とでも言うべきか、氾濫せんばかりの濁流とでも言うべきか。
荒々しい、何のパターン化もされていない。それでいて一つの流れである。
その紛うことなき一貫性を、彼女は見て取った。
「………素晴らしいです。嗚呼、こんなものを見ることができたなんて。今日はなんて良い日なのでしょう。」
鉄下駄をぎゅ、と抱きしめたまま、どうしましょう、どうしましょう、とせわしなく身体を揺らす。
「きっと、………よーいドン、で始めるのではない戦いの方が、お得意ではないですか?」
ずずい、っと近寄る。もっと知りたい、いっぱい知りたい。そのシャツの漢字も知りたい。読めない。

楓森焔 > 「お、お? そ、そうか? へへ、こっちも照れちまうわな」
 鼻の下をこすると、乾いた土が鼻をくすぐり、
「ぶえっきし!」
 思わず大きくくしゃみを一つ。ずず、と鼻をすすりながら頭を掻いた。
「全方位型必殺格闘術、名付けて流派・俺流! ってね。開祖が俺で、師範も俺。現在門下生募集中!」
 褒められ、近寄られると、恥ずかしそうにブイサインをつきだして。
「実際、なんかあった時になんとかしたくてこれ作ったんだ。だから、確かに試合よりは多分実戦の方が得意……のはず」
 力をふるう機会はあまりない。
本州でも他流試合ばかり繰り返してきたが、
"これ"というトラブルにはあまり遭遇したことがなかった。
 結果は出しているはずだが、実績はない。そんな自己流の武術であった。
「ん、なんだ。気になるか?」
 "俺"の一字。胸をはるようにしてみせつけてみる。

マリー > 「私は、こちらの世界に来て、スポーツに魅せられて、その流れに乗ることを選んだだけの身。………己の力で何かを創りだそう、とするその姿は、剣にせよ、魔術にせよ、……そして武術にせよ、敬意を払うべき事象だと教わりました。」
くしゃみをする姿に、くすくすと笑いながら。
「……なるほど!であれば、練習に私も参加させて頂けませんか? 野球をやる上で、もっと体力をつけたいんです!」
思い込んだら試練の道を行くが男のど根性。思考回路が即座に「やろ!」という結論を導き出して、口がその通りに相手に伝える。
男じゃないけど気にするな。
「それに、……私、こう見えて魔法も使えるんです。むしろ、元々は魔法が主だったんですけど。」
今は9割が野球なのはチョット横に置いて。
「ですから、………例えば、お相手の一つ二つはお任せ下さい! というよりまずは一緒に走りましょう! ついでに鉄下駄どこで売ってるか教えてください!」
怒涛の勢いでずずい、ずずい、と距離を詰める姫。鉄下駄をぎゅうう、っと抱きしめたまま、爛々と光る瞳で見つめてくる。

楓森焔 > 「なかなか話が分かるじゃねえか! いや、でもほんとお前の動きも見事なもんだったよ」
 武術に関してはとことんストイックだ。
だからこそ、そういう風に物事をとらえるマリーはこちらとしても気持ちがいい。
「体力づくりか。よし、歓迎するぜ! 折角だし、走る時のコツかなんかも教えてやるよ。基本は裸足だけど、まあスパイクつけててもなんとかなるだろ」
 ダメだったら、スパイク用の走り込みを考案してみるか、などと自分の追求欲がうずきつつ。
「いよし! 走るか! ええと、鉄下駄は元々特注だったし……次に会う時までには仕入れておいてやるよ!」
 ぐっとガッツポーズを取りつつ大歓迎。自分の道場の位置を教えながら、マリーと肩を組むように腕を伸ばす。
「こっちも、メンバーが足りないとかあったら駆けつけるからさ。打撃練習なり、投球練習なり。なんだったら試合に出たっていい。いつでも言ってくれよな!」
 基本、彼女も単細胞である。満足気に頷きながら、空に瞬く星(あるのか?)を指さした。
「目指せ! 日本一!」

マリー > 「本当ですか? …ふふ、嬉しいです。もっともっと強くなって、もっともっと上手くなりたいんです。」
褒められるとくすぐったい。頬をほんのり赤くしながら照れ照れ。凄く分かりやすい喜び方をする。
「……!! ありがたいです。なかなか、体力をつけるためのランニングのコツ、なんてものを教えてくれる方はいらっしゃらなくて。先生方に聞いても、まだ早いのか教えて頂けなくて。」
まだ早い(成績的な意味で)なのだが、彼女にとってはそれは理解ができない様子。
「…ええ、大丈夫ですよ。裸足でもいけます!」
躊躇なく言い切れば、その場でスパイクを脱いで裸足になる。思い切りの良さだけは一級品である。芝生が足の裏に気持ちがいい。薄手のキャミソール一枚に裸足という、ラフにもラフ過ぎる格好。
「本当ですか! ありがとうございます! 嗚呼、御友人と夢にまで見た物が一緒に、なんて、どうしましょう。」
夢に見る鉄下駄。
「……!! ……どうしましょう。どうしましょう。ちょっと、嬉しいのかわくわくしてきて。」
言葉を発しながら、身体が揺れる。身体全体で喜びを表現しようにもそれができずにむず痒い。がし、っと肩を組んで、そう、彼女は当然のようにそう言い放つのだ。
「目指せ! 甲子園!」

「……あ、ええと、これなんて読むんです?」
ワンテンポ遅れの自由人。胸の漢字をつん、とつついて尋ねてみる。さあ、ここからダッシュだ。頭の悪さを忘れて明日にダッシュさ。

楓森焔 > 「その意気やよしっ!」
 最早勢いだけの会話であった。豪速球で繰り出されるボールを受け止め投げ返すような神経直結型トーク。
 裸足で大地を掴む感覚がどうのだとか語りながら自分の武術の初歩。歩法について教えこむ。もしかしたら裸足で走ることに慣れた時、飛躍的に裸足の時の脚力が伸びるかもしれない。
「ん? これか? おれ、って読むんだよ。俺流だからな!」
 まあ、異世界人だし。分からなくてもしょうがない。細かいことなんて気にしない!
 高まった気を開放するように、うおおお、と叫びつつ。
「よし、ついてこーい!」
 ダッシュだ。明日に向かって。あるいは巨○の星に向かって。
比較的、足を傷つけない土の道を走りながら基礎を教えこんでいく――。
 嗚呼、青春。

マリー > 「押忍!」
もはや受け止めてすらいない。投げられたボールが豪速球で飛んで行くのを見向きもせず、こっちもボールをあらぬ方向に投げ込む。これはもはやキャッチボールではない!戦場だ!見てこいカルロ!
ふむふむと頷きながら、柔軟に吸収していく姫。裸足で走る、しかもスカートだというのに、気にした様子もなくダッシュでついてくる。もうエンジンに火が灯ってしまった。
「わかりました! お供いたします!!」

猛ダッシュしていく二人の暴走特急。若さ、そう若さとは、ふりかえらないことさ。
あばよ涙よろしく勇気。ああいやよろしく焔さん。

楓森焔 >  重いコンダラ、試練の道よ。
 二人の声は遠く響く。
 これが女のど根性。
 真っ赤に燃える巨大な闘志を胸に。
 少女は向こう側の景色へと消えていった――。

ご案内:「常世公園」から楓森焔さんが去りました。
ご案内:「常世公園」からマリーさんが去りました。
ご案内:「常世公園」にアルフェッカさんが現れました。
アルフェッカ > 公園の一角。
ベンチの一つに、パーカーにワンピース、ジーンズにローファー、ハンチング帽を目深に被った少女が腰を下ろしている。
手にはパンフレット、隣には大型の封筒。
封筒には「常世学園入学案内」の文字が印字されている。

アルフェッカ > 「――つまり、この学園都市を作ったのは『常世財団』、それも国連からの嘱託の下、か。成程成程。」

パンフレットの中の、常世学園の成り立ちについて目を通しているらしい。

「世界規模だったのか…。それに、位置こそ日本に近いけど、何処の国にも属していない…。
思った以上に凄い所だったんだね、ココ。」

暢気に呟きつつ、ぱらりぱらりとページを捲っていく。

アルフェッカ > ぱらり、ぱらり、ぱら…。
ページを捲る音が止まる。

「あった。…『入学資格』。」

実際に入学するかは別であるが、ここから何がしかの情報が得られるかも知れない。
真剣な表情で、目を通す…が。

「…ウソ!? 入学に必要な資格は――『特になし』?!」

つい素っ頓狂な声が出てしまう。

入学資格についての項目には
「必要とされる資格は特に存在しません。この世界の出身者であるか否か、異能・魔術を扱うか否か、人間か否か、それらすべては入学について問われるものではありません。」
と、はっきりと書かれている。

アルフェッカ > 「――――。」

これが本当であるなら、とても有難い事ではある。
この世界に来て、まだ日も経っていない。
活動に必要になる拠点も、資金を稼ぐ目途も全くない。
それらについては後で探す必要が出るが…入学さえすれば、学生として大手を振ってこの島を歩く事が出来る。
しかし。

「…ちょっと、不安になるよね。」

うまい話しには裏がある。
様々な世界を見てきて、嫌と言うほど実感した事であった。
それらの経験が、どうしてもこの記述内容に「裏」を感じさせてしまう。

アルフェッカ > 「――――。」

ぱらり、ぱらり。
更にページを進める。
授業・単位制度・進級や留年についてのページだ。

「これは…また、随分と柔軟と言うか、何と言うか。」

単位の認定は授業や試験・レポートに留まらず、学内活動・部活や委員会での活動でも認定が下りる旨の記述がされている。
単位が満たなければ留年だが、それもよほど極端な欠席などが無い限りはペナルティらしきものはないようだ。

「環境に合わせて、か。」

アルフェッカ > 次のページは…校則の簡単な紹介と、学内治安についてだった。
主に挙げられているものは、所謂「法律」のそれ…犯罪行為を戒めるもの。社会的なルールだった。
重大犯罪については「風紀委員」がこれに対応するとの記述もある。

「この「風紀委員」が、警察機構…って事かな…。」

その機能が何処まで動いているのか…。ちらりと疑念が過ぎってしまう。

「……この、公園だったっけ。」

刀を持った少女と少年の争い…いや、あれは「殺し合い」の域に入る所だった。
あの一件があった事で、パンフレットに書かれている治安維持の「陰」が、僅かながら見える。
もしかしたら、今も自分には見えない所で何かが起こっている、のかも知れない。

ご案内:「常世公園」に片翼・茜さんが現れました。
アルフェッカ > ぱらり、ぱらり、ぱらり。
ページを捲る音が響き…そして止まる。
おしまいだ。
パンフレットは、裏表紙を見せている。

「――――。」

小さく、息を吐く。

片翼・茜 > 日の落ちた公園、ほとんど誰もいない道を、右腕が赤い染められたブラックスーツに、革手袋、マフラーをまいた少女が歩いている。
自販機を見かけ、コーヒーを買おうと近寄ると。
「……ン?」
ベンチに腰掛けて、入学希望者用のパンフレットを読む少女を見かけた。
5本ほどコーヒーを買ってから、歩み寄って、声をかける。
「君は、入学希望者かな?」

アルフェッカ > 「…ふぁっ!?」

突然、声をかけられて思わず変な声を出してしまう。
見ると、黒いスーツに手袋、マフラーの少女が目の前に立っていた。
腕に、コーヒーと思しき缶を抱えている。

(随分暑そうな格好…暑くないのかな? …ん?)

何かがおかしい。何かが。でも、それが良く分からない。

「あ…まあ、ちょっと、迷っている所…ですかね? 入るか、どうするか…。」

とりあえず、返事を返す。

片翼・茜 > 「おっと失礼、驚かせてしまったな、すまない。隣いいかな?」
手のひらを見せて害意は無いとアピール。

「そうか、ふむ。この島に来てから入学するか迷っているということは、君は異邦人かな?」相手の外見は地球人の少女に見えるが、現代日本と酷似した世界から来たのかもしれない。
と聞いたところで、自分が名乗っていないことを思い出す。
「私は片翼・茜、この学園で教師をしているものだ。よろしく。」
と言って缶コーヒーを一本開けて、一気に飲み干した。

アルフェッカ > 「あ、はい、どうぞ。」

隣に置いていた封筒を取り、膝に乗せて席を空ける。
どうぞ、と手振りで示した。

「異邦人…うん、多分それで合っていると思います。」

その言葉が、ただの「別の国の者」を指す言葉ではない事は、今しがた読み終えたパンフレットにも書かれていた。

「あ…教師の方、なんですか?」

随分若い…と言いかけて、口を噤む。外見が実年齢をそのまま反映する物でない事は、自分がいい例だ。

「茜さん、ですね。ご丁寧にどうも。――アルフェッカと言います。」

ぺこり、と、お辞儀をしながら茜と名乗った女性に名前を告げる。

片翼・茜 > 「ありがとう。」と飲み終えた缶を少し離れたゴミ箱に投げて、見事に入った。満足気に頷いてから、ベンチに腰掛ける。

スーツのポケットから免許を取り出して、相手に見せる。たまに子供のイタズラだと思われる時がある。「これ教員免許。若作りでね。見た目よりは年をとっているんだ。」言おうとして飲み込んだことを察して、冗談めかして答える。微笑もうとして頬が動かず、右手の人差指と親指で頬を釣り上げる。

「アルフェッカ君だね。さて、まぁ関係者が相手だと言いづらいかもしれないが、迷っている理由を教えてくれないかな。君の話を聞けば、私なりにアドバイスが出来るかもしれないから。」どうかな?と相手の目を見ながら、問う。

アルフェッカ > 教員の免許を差し出され、反射的にスキャニングを掛ける。
「教員」として彼女を信じる為に。

(…偽造防止のセキュリティと思しい反応あり。写真も、同一人物と見て問題ない一致度。
――信じて、いいよね。)

右手で頬を吊り上げる仕草に小さく笑顔を見せると、茜の言葉にぽつりぽつりと応える。

「んー…最初は、まだ此処の事がよく分かっていなくって…少しでも此処の事を知ってからかな、って思ってたんです。」

それについては、大丈夫…と言い切れる程ではないが、情報が集まった。

「此処に来て、まだ数は少ないけど、此処に住んでる人達に会って、お話をして…このパンフレットを読んで、簡単だけど、此処の事は分かりました。
此処では、やっぱり身分が保証されてないと動きづらいみたいで…此処の生徒の人にも、紹介状を書くから市民権みたいなモノを取ったらどうか、って勧められましたし。」

片翼・茜 > 相手が見たことを確認したら、教員免許はしまって。缶コーヒーをベンチに置き、膝の上で両手のひらを重ねた。

「なるほど、まだ学園を信用するには情報が足りない、といったところかな?」いきなり違う世界に飛ばされて、飛ばされた先を管理しているというだけでそこを信用しろというのも無理な話だ。慎重になるのも当然だろう。
「ああ、この島には不法に入島してきた人間や、犯罪をおこして追われている人間もいる。そういった人間でないことを証明するには、学生になる必要はないが、せめて正規の住民として登録した方がいいとは思う。酷い話だが、そうしないと真っ当に生きていくのは難しいだろう。」二本目の缶コーヒーを、一息で胃に流し込む。

アルフェッカ > 「…やっぱり、身元保証が無いと大変なんですね。」

不法な入島者、というのは、今の自分にしっかり当てはまる項目だ。
…犯罪者については、あの可哀想な少女が紛れも無くそうだろう。

「それもある…んですけど――。」

学園を信用できないか、と言う茜の問いに、躊躇いがちに言葉を止め…意を決して続ける。

「――きっと、怖いんです。私の事を知られて、その情報を…機能を奪われる…ううん、「私」の根幹に、手を入れられる事が。それで、誰かを傷つける事が。
…審査とかで、それをされたらどうしようもないですし。」

片翼・茜 > 「情報、機能……ふむ」異邦人は一人一人が全く別の常識やルールを持っている。目の前の少女も、見た目こそ普通だが、何かあるのだろう。
「ふむ、審査で君の秘密が奪われるのではないかと心配しているわけだな。」その心配は無い、と言えたら良いのだが……。学者どもは時折倫理を無視して暴走する時がある。
「島民として暮らすなら、恐らく君が最低限受けるべき審査は、何か未知のウィルスを持っていないかの検疫と、輸血時のための血液検査ぐらいのはずだ。学生になるなら、異能や魔術を持っているかを聞かれるがね。それ以上の検査は拒否しても問題はない。義務ではないからね。それで、君の秘密は盗まれる心配はあるかな?」マニュアルを思い返しながら、伝える。

アルフェッカ > 茜から明かされた審査内容は、思った程に厳しいものではなかった。
強いて挙げるのならば――。

「……血液検査は、どうしようもないですね。それで、どうあがいても私がニンゲンでない事はばれます。
偽装をやってやれなくもないけど…相手の心象を考えると、やめたほうがいいでしょうし。」

それ以上の検査には拒否が可能である、という言葉が有難かった。
異能…という言葉はあまり聞かないが、もしも学生になる事になるのであれば、自身のシステムをそれとして報告すれば良いだろう。

片翼・茜 > 人間でないと聞かされると、なるほど情報や機能と言っていたのはそういうことか、と納得する。機械なのか人工生命かわからないが、つまり作られた存在なのだろう。そしてその機能の悪用を恐れている。
「ふーむ。君としては、人間ではないことは秘匿したいのかな?それとも、自分の機能や情報が漏れなければそこは構わない?」そこは重要だ、人間のふりをしていたいなら血液検査を避ける方策を考えなければならないし、そこはどうでもいいなら検査を受けた後の血液というか、体液の処遇の話になる。

アルフェッカ > 「――活動に身分証明が必要で、しかも誤魔化しきれる目途がない以上、下手にニンゲンでない事を隠す事はないと思います。
幸い、此処には色んな世界から色んなヒト達が集まってる。私と同じような出身の子にも、会いましたし。」

自己判断で、そう答える。
下手に隠して怪しまれるよりは、一定の情報を開示してそこで満足してもらうのがいいだろう。

「機能については…もしかしたら同じ事が出来るヒトが、この学園に居るかもしれないので、そこは必要に応じて開示判断をしようかと思ってます。
…一番怖いのが、私の根幹…私の「心」を書き換えようとする「ハッキング」です。大概は、直ぐにセキュリティが働きますけど――あまりに悪辣なモノだった場合、機密へのクラックとみなされて、「戦闘人格」が起動して…クラッカーに、攻撃を加える可能性があります。」

片翼・茜 > 「うん、確かに人間ではない存在はこの島に数多く存在する。かく言う私もその一人だ。」それを聞いて、少し安心する。検査を避ける方策などさっぱり思いつかなかったからだ。それに後からばれれば面倒なことになる。

「ふむふむ、君の心配はわかった。そのような目に遭うことは絶対にない、とは言い切れないのが悲しい話だな、技術と悪意をもった人間は何処にでも居るからね。
だが住民として登録する際にそこまでされる心配はないだろう、さっきも言ったように君が受けるべきなのは検疫と血液検査だけで、他には何を言われても拒否出来るし、そうすべきだ。これで、心配は少しは晴れたかな?」満足行く回答になっただろうか、手の指の合わせて、相手の返答を待つ。

アルフェッカ > 「……そう、ですか。」

茜の返答に、空を眺めながら小さく息を吐く。
敢えて、彼女は「ハッキングを受ける可能性の存在」を否定しきらず、その上で、入学なり住民登録なりでそういった危険性のある検査に対しての拒否権を認めてくれた。
絶対の安全はない。それを敢えて隠さなかった茜の言葉は、信じたい。

「――ありがとうございます。お陰様で、随分気持ちが軽くなりました!」

茜の誠意ある言葉への返答として、被ったハンチング帽を外して一礼する。
肩口で揃えられた、青みを帯びた銀髪と、澄んだ紫の瞳が露わになった。