2015/06/29 のログ
シィレ > 「……。」

なるほど、といった表情で少女を見上げる。
目を覆う包帯はそのままの意味なのだろうか。詳しいことは分からないが、なんとなく察することは出来た。

どうやら自分に危害を加える様子もないようで、少し落ち着いて会話をすることができそうだ……。

「……ん。この、いけ。いごこち、は、いい、よ」

ゆっくりと泳ぎながら答える。今日は比較的涼しいのか、夜風も心地よかった。

ジブリール > 【口元に笑みを浮かべる。危害を与える気も、弱者を甚振ることはない。
 ――人魚の発する"明かり"だけははっきりと見えてきた。その眼に視線が向かう。】

「そうでございますか。わたくしは泳ぐことができないので少々うらやましく思います」

【泳げなくてもここは涼しい。夜風は熱をまだ持たず、体を冷やすために吹いてくる。
 長い髪はゆらゆら、揺れた。】

「少しばかり小さいお方とお見受けしますわ。声も少し遠いものですから。」

シィレ > 「ん……。」

どうやら、相手にも自分が少し“見えて”きたのだろうか。なんとなく、先程よりも視線の合致を感じる。気がする。

「……みんな。わた、し、より。おおき……い」

自分よりも小さい“ヒトガタ”は見たことがない。そういえば、存在するのだろうか……。

「およ、げ、ない? ……しか、た、ない。
 で、も。ここ……で、およぐ、にん、げ、ん。……めった、に。いない、よ……?」

小首を傾げそう返した。

ジブリール > 「さようでございますか」

【相手がそういうならば、納得した。その人型は15センチという小サイズであろうて、だからといってそう気になるものでもなかった。女にとっては瑣末な問題である。
 つい、と口元を緩めた。】

「やはりそうでしたか。この場所で騒ぎ立てる人間は知る限りいなかったので、杞憂で良かったですわ。
 ……あなたはいつもこのような時間、静かなときに来ているのでしょうか。この場の気配はとても薄く感じましたので、もしやそうかと。」

シィレ > 「……? “来て”、いる……?」

はて、と言った様子で言葉を受け止める。

「……ぁ。そっ、か」

そして少しした後、理解したとでもいうかのように耳の部分にあるヒレをぴこぴこと動かし。

「え、と。わた、し……ここに、“来てる”、わけ、じゃ、な、い……よ。
 わたし。ぇと……ここ、に。“棲んでる”、の」

ジブリール > 「……あら、あら」

【口元を覆う。】

「"住んで"おられる――いえ、"棲んで"おられると」

【なるほど。何となく察しがついたように女は頷いていた。女はようやく納得がいったとばかりに肩を竦めた。】

「知っていますか。夏になると人間社会、学校というコミュニティには怪談というものが流行りますわ。学園では定番とされている奇怪・恐怖する現象に数えられる事象ですわ。
 お噂はかねがね聞いておりましたが、もしや公園に棲まう人魚ではございませんか?」

【その眼に向けて、好意的な感情を押していた。】

シィレ > 「……。」

ぽかん、と呆けるように少女を見つめる。
向けられた視線?は決して負の其れではなく、むしろ好意に近いもの。

「ぁ……え、ぁ。う、うん……」

小さく頷き、先ずは問いに対し肯定を意を示す。

「……わた、し、の、こと。しっ、て、る……の?」

相手はまるで「合点がいった」とでも言うかのような様子である。
それに、“お噂はかねがね”とは……どういうことなのだろうか。

ジブリール > 「お話だけは聞いたことがございます。この池に人魚が棲んでいる、なんてお話がされているものですから
 わたくしも実際にお話を聞くまではいないと思っておりました」

【それでもこの学園都市からすればマイナーな噂らしく、大きく取り沙汰されている様子も無い。
 加えて噂である元凶がとてもおどおどしていることも起因しているのかもしれない。こうして人前に出ないこともあるのだろう。】

「この場では眼にすることは叶いませんが、お会いできて光栄ですわ」

シィレ > 「……ぁ、そ、そう、な、の……」

少ししどろもどろ気味になる。
元より、あまり人前に姿を見せるのは好む方ではなく、当然見られることもあまり良しとはしない身だ。
空気から察するに、悪意を持って流されている噂ではないようだ。
それに、目の前の少女からも相変わらず敵意や悪意はない……ように、見える。

「……う、うん」

……しかしながら、複雑な心境である。

ジブリール > 「……大丈夫ですわ。あなたを捕らえたり、ここに人魚がいると口コミを挟むことも致しません」

【しどろもどろに返す声に、小首を傾げながらそう返す。当然ソレを対価に何かを要求、なんてことも。
 人魚が流す涙には真珠を落とす。その肉を食えば不老不死になるなんていうけれど、それを求めるほど女は貪欲ではない。】

「だからどうか怯えないでくださいませ」

【微笑んでそう言った。危害を加えないよう約束する。表面上、敵意などの負の感情は全く感じられないだろう。女はどこまでも好意的であり、興味を抱いていた。】

シィレ > 「……う、ん……だい、じょう、ぶ。……あり、がとう」

小さく頷く。
何とか取り乱さずにすんでいるのも、少女から向けられた好意が純粋な其だったからなのだろう。

「で、も。わた、し、は。しずか……なの、が。すき。
 ここ、の。しずか、な……よる、が、すき。」

そう言い、ちゃぷ、と水を浴びるように水面を泳ぐ。

ジブリール > 「わたくしも同じですわ。静かな夜はとても落ち着きます。暗いところであればなお良いですわ」

【その手に握った杖。矮躯の腕なりに強く握り締めた。】

「ここも、普段はとても穏やかですからね。こうして涼めることですし、海のような荒々しさも無いから素敵に思います」

【ひとつ、水音。回遊する姿を捉えることは出来ないが、動きがあったことは悟った。耳ばかりでは在るが、中々楽しませてくれる。】

「人魚さんは、ここに棲んで長いのでしょうか」

シィレ > 「くらい…? くらい、の、が。すき、なの……?」

変わった人間もいたものだ……。そんな顔をする。

「んぅ……。“うみ”、は、まだ、よ、く、わからない……けど。
 ここ、は。いい、ところ。」

すぃーっと泳ぎ、少女の前にまた姿を見せる。

「ん。んん……。んー……。
 なが、い。みじか、い、は……よく、わから、ない。
 きづい、たら。ここに、いた。その、まえは。……やっぱ、り。わから、ない」

少なくとも、此処に住んでいた以前の記憶はない。それくらいの間は、此処に住んでいた、ということになるのだろう。

ジブリール > 「はい、暗い場所だと"よく見える"ので。わたくしは暗い場所が好きですわ」

【それこそ本当に変わった人間と思われても可笑しくない。けれど人間は様々、色々いるのだから。
 変わっていると認識するなら、きっと多くの人間を見てきたのやもしれないけれど。
 近くて、また水音。反応した。】

「なるほど。わたくしがここに来たときよりもっと前にいたかもしれませんのね。とても不思議です」

【自らが座る補正された石の上に手を置いた。ひんやりとした感覚が心地良い。池は見えないクセ、そちらのほうに上体を向けた。】

「ではお名前はあるのでしょうか。わたくしはジブリールと言いますわ」

シィレ > 「じぶ、りーる。……ジブリール」

名乗られた名前を噛みしめるように、一度反復する。
そして今度は、自分が名乗りを求められた。

「わた、し? わたし、は……。シィレ。シィ、レ……だ、よ」

よろしくね。とまでは続かなかったが、名前はすんなり教えるのだった。

ジブリール > 「シィレですね」

【聞きなれない発音だが、返すことは容易だった。かわりに「よろしくお願いしますわ」とこちらから申し出た。】

「人魚のご友人が出来るなんてとても神秘的ですわ」

【とても嬉しそうな声をしていた。言葉を弾ませ、手を合わせて喜んでいた。】

シィレ > 「……ん……」

目の前の少女は、手を合わせ喜んでいる様子だ。
その純粋な好意と喜びに、本来ならば応えるべきなのだろう。

が。

「……~っ……」

人魚は、しばらくその様子を眺めた後、ふぃ、と背を向けると。

「……っ」

ちゃぽん、と池の中に潜って行ってしまった……。
こういったやり取りに慣れていないのか、照れ隠しなのか、はたまたその両方なのだろうか。
ただ、潜る直前、少しだけ手を振っていたような気がする……かも、しれない。

ご案内:「常世公園」からシィレさんが去りました。
ジブリール > 「――あら」

【潜ってしまわれた。何か呼応する声がしたと思ったら、その場から消えてしまっていた。
 少し待ってみても音沙汰なし。女は水底へと帰ってしまったのだろうと考えた。
 手を振ってもなお、その姿を捉えることは出来なかったものの】

「――では、またお会いできましたら」

【聞こえもしないはずの吐露を零し、女は立ち上がった。杖でこんこんと地面を叩く。安全確認。女は静かに、音を出来る限りたてぬよう後援を後にした。】

ご案内:「常世公園」からジブリールさんが去りました。
ご案内:「常世公園」にエルピスさんが現れました。
エルピス > 「ねむ……サイボーグでも眠さは感じるんだねー……」

 委員会街の陳情――という寄りは相談に近いそれを一蹴された翌日。
 『あの光景』を見た身としては、動かざるを得なかった。

 とは言え『知らない』し『別の部署』と一蹴されればそれで済んでしまう話でもある。
 泣きたくなる――実際に泣いた気持ちが有るといえ、それはそれだ。

 此れ以上踏み込むとすれば、覚悟が要る。

(……主義が対立して、お互いに引かなければ戦争だもんね。
 それは、嫌だな……。)

エルピス >  自販機でジュースを買って飲む。
 サイボーグには涙を流せなかったり味覚がオミットされている事も多いと聞く。
 自分のこの身がそうでないと、心から安堵する。

(ボクはボクの出来る事をする。――"そうなる"前に未然に防ぐ、それが出来れば、最良なのかもしれないけど……)

エルピス > 「ボクは、『英雄』にはなれないかもしれないけど」

 ひょいっとジュースの空き缶を投げ入れる。
 かこころん、と、小気味よい音が響いてカゴに入る。

「見回りと事故の発生防止ぐらいは、頑張らないとね。」

ご案内:「常世公園」からエルピスさんが去りました。
ご案内:「常世公園」に日恵野ビアトリクスさんが現れました。
日恵野ビアトリクス > 「………………」

呆けたような表情で人気の少ない公園のベンチに座る。
顔は涙のあとで腫れていて、泣き腫らしたことは誰の目にも明らかだった。

「…………言ってしまった……」

日恵野ビアトリクス > 病室で交わした会話のことを思い返すと、
恥ずかしくなって足をバタバタさせてしまう。
愛の語らいの真似事ならそれなりには慣れていた。
けどほんとうの心のうちをあそこまで露わにするのははじめてだった。

(これでよかったのだろうか)

それはわからない。
自分のなかで頑丈ななにかが粉々に砕ける感触がした。
まださらさらとした感触がある。
昨日までの自分とは決定的に変わってしまった。
それだけが確かだった。

「……ふう」

日恵野ビアトリクス > これからのことを考える。
淫売――もとい、楓が復調したなら、もう一度話しておかなければなるまい。
できるかどうかはわからないが、ちはやの願いは三人で仲良くすることだ。
彼女が信頼に値するかどうかは、まだ見極められていないことだし。

「…………」

まだ気の昂ぶりが残っている。
何か描いて気を紛らわせてもいいだろう。
最近、絵を描くためだけに筆を取っていなかった。

かばんからスケッチブックを取り出す。
大した画材は入っていない。
……練習を兼ねて、《踊るひとがた》を使おう。
そう考えて、開いたページに指を添わせる。

日恵野ビアトリクス > (何を描こう……?)

今ひとつ思いつかなくて、紙の上で指が右往左往する。
絵の基本に立ち返る。
自分の気持ちを画用紙に率直に。

「…………」

すると、

「わっ!」

《踊るひとがた》が発動――
たちまちのうちに、スケッチブックに色が広がる。
それも今まで暴走した時のような、抽象的な色彩の模様や広がりではない。
踊る色が明確な画を結ぶ。

数秒後、スケッチブックの上に完成したのは
黒い長髪、藍色の瞳を持った天使の画。
色鉛筆で描かれたような、優しく柔らかいイメージ――

「――――」

日恵野ビアトリクス > 「わっわっわっ」

誰も周囲に見るものなどいないが、慌てて頁を隠す。
あまりにも恥ずかしすぎるなんだこれは。

「…………」
ふたたびの嘆息。
そしてはたとひとつの事実に気づく。

自分の意思で使った《踊るひとがた》で
こんなにハッキリとした絵を出力できたことは
これがはじめてだということに。

日恵野ビアトリクス > 「成長……した。
 《踊るひとがた》が…………」

目を見開く。信じられない、という表情。
いままでどれだけ訓練しても『便利なペン』程度の使い方しかできなかった
《踊るひとがた》が、望むイメージを形にしたのだ。

「……ははっ」

日恵野ビアトリクス > 「……あははははっ」

(自分は無力で)
(世界はあいかわらず不愉快なままで)
(好きな人は別の人に夢中なままだというのに)
(どうしてだかとても愉快な気分だ)

ビアトリクスはスキップを踏んで、公園を後にする。
ほんの少しの勇気が、彼に宿っていた。

ご案内:「常世公園」から日恵野ビアトリクスさんが去りました。