2015/10/10 のログ
ご案内:「常世公園」にダナエさんが現れました。
ダナエ >  
──ゴッ……ゴス…… ゴッ……ゴス……
  ゴッ……ゴス…… ゴッ……ゴス


昼下がりののどかな公園に、
雰囲気を一転させる異形の重騎士が現れる。
近くの遊具で幼い子どもを遊ばせていた母親たちが、
ざわめき立って公園の反対側へ避難していった。
それを横目に見送り、
傷つきながらも騎士は金属製のベンチに腰を下ろす。

ごそごそと、
鎧の懐から『「異能芸術の現在」展』のチラシを取り出す。
隣の部屋に住むおばあちゃん大家さん、大橋マツエから
先日渡されたものだ。
何でも、異能を使って造った一般人のアート作品を
展示してくれるのだそうだ。

「勧められて了承したはいいが……
 何を造ればいいのやら」

困り顔。
美しいものを観るのは嫌いではない。むしろ好きだ。
だが、芸術作品を自分で造るとなると苦手意識がある。
造ったものをからかわれた幼い頃の思い出が蘇り、
チラシを片手に小さくため息をつく。

ダナエ > 「そうだ、この間の丸太……
 あれを使って何か造ってみるか」

テーマは決まらないが素材は決まった。
転移荒野に秘密基地ならぬ簡易休憩所を建てる予定で
以前何本か伐採した丸太、あれを使おうと思い立つ。
丸太で造るとなると、トーテムポールのようなものだろうか。
騎士にはあまり繊細な彫像は造れない。
素材が決まっただけでもう満足し、懐にチラシをしまい込む。

隣のベンチのあたりをうろついている鳩の群れから、
一羽の鳩が騎士の側へ寄ってきた。

「…………なんだおまえ、足の指が足りないぞ」

近づいてきた鳩の足の指は、怪我のせいか二本欠損している。

ダナエ > 不便はないようだが可哀相になり、懐を探る。
クッキーに似た携帯食、フォンビィもどきを取り出し、
砕いて鳩の方へ放る。

「そら、食え」

鳩はクックックッと喉から鳴き声を漏らしながら、
撒かれた餌をついばんでいる。
音で気づいたのか匂いで気づいたのか、あるいは見ていたのか、
他の鳩もやってきて餌を漁る。
足の指の足りない鳩は、他の鳩に押し出されるようにして
いつの間にか外側へ追いやられてしまう。

「ああ……」

弱肉強食。

ダナエ > 痩せたカエルを応援する小林一茶的な気持ちで、
足の指の足りない鳩のために遠くまで餌を投げてやる。
当然、鳩達は餌を追って外側へ移動。
足の指の足りない鳩がいくらも食べないうちに、
他の鳩に餌を食べられてしまう。

「おまえらにやったのではないぞ!」

鳩に抗議。完全に不審者めいた行動。
そんなことを、
意地になってフォンビィもどきが尽きるまで繰り返し。

やがて来た時と同じように、
重い全身鎧を引きずりながら帰っていく──

ご案内:「常世公園」からダナエさんが去りました。