2016/01/12 のログ
ご案内:「常世公園」に真乃 真さんが現れました。
真乃 真 > 清く!正しく!人助け!今日も元気に真乃真!!
この名乗り口上はどうだろうか?

「うーん、なんか違うな…。」

そんなしょうもない馬鹿な事を考えながら昼間の公園をプラプラと歩く男が一人。
白く棚引く長タオル。きっちりと着こなした制服の上からウインドブレイカーを着用している。

「人は助けてもなー僕は別に正義じゃないからなー。」

自分は正義の味方でもないしヒーローないでもましてや正義でもない。
人を助けたいという思いはあるけどそれはきっとそうすることで自分をカッコよく見せたいだけ、少しでも人より目立ちたいだけ、自分が特別な存在でありたいと思ってるだけ。
もし、本当に人を助けたいのなら風紀委員にでも公安委員にでも或いは生活委員でもいいだろうそのどれかに所属すればいい。
もし委員に入らないのなら落第街にでも行けばいい。後先考えなければ運よく人の命を救う機会もあるだろう。
そこまで、行かなくても歓楽街でも風紀の目の届かない犯罪行為は起きている。その被害に会う人を助ければそれは立派なヒーローだろう。

真乃 真 > けれども、真乃真は動かない。
目の前の人しか助けない。いや、自分の手の届く範囲までしか見ない。
届かないなら見ない方がいい。
見えてるのに届かないのと初めから知らないのなら知らない方がましだ。
自分の無力さも知らずに済む。
後悔も葛藤もせずに済む。知らなかったんだから仕方ないことだった。

そんなつまらない話より今は名乗り口上の方が大事だと無理やり思考を切り替える。

「うーん、やっぱり思いつかないな…。」

もしかしてヒーローでもないのに名乗り口上なんて必要ないのでは?という思考にたどり着きかけたところで何か小さな声が耳に入ってきた。
上の方から聞こえる。何となく助けを求める声にも聞こえて声の方角を見上げると
そこには小さな猫がいた。木に登って降りられなくなったのだろうか?
心細そうに鳴いている。

真乃 真 > 「どうした、そこの君さては木に登って降りられなくて困ってるそんなところだろう?」

あたりまえのように猫に声をかける。だが特に猫に言葉を伝える異能や魔術なんかは持っていない。
しかし、真の言葉を理解したように猫は短く鳴いた。

「なるほど、ならば僕が助けよう!何、心配はいらないさ僕は木登りは得意なんだ!」

その言葉の通りするすると木を登っていく時に自らの異能を用いて時に自らの筋力で梯子を登るかのような容易さで
見る間に猫の横にたどり着いた。

「結構高いなここ!いやぁ良い眺めだな!これは穴場的なスポットってやつだね!」

煙と真乃真は高いところが好き。
一方、横の小さな猫はいまだに震えて小さくなっていた。

真乃 真 > 「さあ、乗りなよ特等席だぜ!」

そう言ってカッコをつけてウインドブレイカーのフードに入るように示しても気にいらない様子だ。
タオルで包もうとしても更に嫌がって落ちそうになる。

「我儘だな君は…。」

仕方なく抱きかかえると抵抗もなく捕まった。
だが、問題はここからだ…。
自分一人なら例え落ちても異能を使えば無傷で済む。だが自分以外の生き物に使えない制限が足を引っ張る。
手が使えれば簡単に木を降りることは可能だ。だがこの猫はどうやら真の腕の中から離れるつもりはないらしい。

つまり、手と異能を使わずに木を降りなければならない!!
とりあえず、両足で幹を挟んで蝙蝠のようにぶら下がってみる!

「うん、いい景色だ空があんなにも大きく見える…。」

どうしよう、どうしようもない!

真乃 真 > その後はもう大変だった。頭に血を登らせつつナメクジのようにじりじりと下の幹に移っていく。
それ三回ほど繰り返していると下の方から写真を撮られていることに気が付く。普段なら最高にかっこいいポーズを決めるところだが
今は無理だ、恐らく新種のナナフシみたいなポーズで写ってるんじゃないだろうか?

そんなかいもあって(?)だんだんと地上が近づいてきた。
もう下に幹はなくナメクジ戦法は使えない。
だいたい下まであと人、一人分の高さだ。

「そろそろ降りられるんじゃないか?」

猫は自信なさげに小さく鳴いた。そうか…まだ無理か…賢い猫だ。
この通行人と同じくらいの目線で木からぶら下がり猫に声をかける姿。事情を知らない人が見ればどう見ても変人だ。
事情を知っていてもなお怪しいだろうが…。

真乃 真 > 「頭、くらくらする…君はもうあの木にはのぼるなよ!本当に!」

最終的にタオルの真ん中あたりに猫を乗せてそれをゆっくり降ろすタオルエレベーター作戦にて決着。
一時間近い救出活動の末、一名と一匹に怪我はなく無事救出。
なおタオルに乗せられる際、猫には最後まで抵抗があったことをここに記しておく。

ご案内:「常世公園」から真乃 真さんが去りました。