2016/01/28 のログ
真乃 真 > 真乃真は走っていた。
日課のランニング、早く家に帰りたい思いが合わさってベストレコードを
叩きだしそうなペースだった。

「寒い!」

公園を通るとその池の中に子供が浮かんでいるのが目に入った。
例えば夏ならば、その池に入っている子供を見ても何も思わない。
だけど、今の気温だ。水も冷たいに違いない!
時は一刻を争うだろう。
ウインドブレーカーとタオルを脱ぎ捨てて噴水池に迷うことなく飛び込んだ。
水温は確かに寒い凍ってないのが不思議なくらいだこれは早く助けなければ!

「そこの君大丈夫かい!?…大丈夫そうだね!」

寒さに震えながら近づいて声を掛けようとするとどうやら九九を唱えているようだった。
うん…大丈夫そうでよかった

リヒット > 「さんはち……さんはち………っ!?」

24個の星を懸命に数えていた視界が、唐突にぐわんぐわんと揺れ動きます。
リヒットの軽い身体を支えていた水面が逆巻き、波打っているのです。
流木のごとくひとしきり揺られた後、ようやく首をもたげ、噴水池に新たな来客があったことに気付いた様子。

「……んー? リヒットは、大丈夫だよ。九九のふくしゅーはダメだったけど……。
 おにーさんは、だいじょうぶ? 寒くない?」

相変わらず仰向けに水面に浮かんだまま、首だけを男性の方へ向け、性徴の感じられない甲高い声で尋ねます。

「公園の噴水で寝てて、ごめんね。人が見るとびっくりするって言われてたけど、でも、乾くのもつらくて、つい……
 きっと、リヒット、おにーさんをびっくりさせちゃったんだね……ごめんね」

語調はやや申し訳無さそうにトーンが低くなりますが、抑揚に乏しく、姿勢も変えないので、あまり謝ってるようには聞こえないかも。

真乃 真 > 「だ、だい丈夫なら良かった…。てっきり池に落ちたんだと思ったんだ…。
 僕はき、鍛えてるからこれぐらいの寒さならいけるさ…。」

歯をガチガチと鳴らしながら自信ありげな笑みを浮かべ強がって答える。
ああ、水に浸かった部分からどんどん体温が奪われていく…。

「ホントに驚いて慌てたさ。反省してるなら許すよ!あと、喉が渇いたにしても池の水よりも
 あっちの蛇口の水の方がきれいだと思うよ!」

もう少し落ち着いてたらこんな事にはならなかっただろう。
震える指先が指すのは蛇口の付いた水飲み場。

リヒット > 「にんげん、冷たすぎる水に入ると、風邪ひいたり倒れたりする。おにーさんが平気ならいいけど……」

感情表現に乏しく、か細い声ですが、リヒットの声には震えや凍えは感じられません。やや眠たげに聞こえるかもしれませんが。
震えながらも威勢を張る男性を、リヒットはまんまるの瞳でまっすぐに見つめ上げ続けます。
リヒットは残念ながら、寒い人を暖めてあげるような芸当は持っていません。

相手が指をさすのをみると、ようやくリヒットも水面に寝そべっていた身体をパシャッと起こし、なおも半身を水に浸しながら立泳ぎの姿勢で浮き、その方向に視線を移します。

「あっちって……水道。うーん。水道じゃ全身潤わないし、水道で水浴びしたら水出しっぱなしって言われて怒られちゃう。
 リヒットは喉だけじゃなくて、髪の毛も、足も、おしりも潤わないとつらくなっちゃうから、こっちのほうがいい。
 あと、きれいすぎる水もあまり好きじゃない。ホントは、土にくっついた池のほうが好き。……ぜいたくかなー」

そう、リヒットは水浴びが目的で、真冬の夜の噴水池に浮かんでいたのです。常識的に考えれば酔狂にもほどがあるでしょう。
異邦人でもなければ……。

「この辺の水って、水道ってのをひねればいくらでも出るし、湧き水みたいにすごくきれいだよね。
 なんか変なにおいも混じってるけど。リヒットはびっくり。どうやってるんだろう……」

塩素臭い水を吸った自らの掌に鼻を近づけ、くんくんと嗅いでにわかに顔をしかめています。

真乃 真 > 「ああ平気だ!気にしなくでもだいじょうぶだぜ!」

そんな事を言いながらもこれ以上は厳しい!
噴水から上がって靴をひっくり返して水を出す。
この靴こんなに入るんだなと感心するぐらいの量の水が出てきた。
そして外してたタオルで自分の体を拭く、駄目だこのタオル全然水を吸わない!
せめて水を払いウインドブレーカーを羽織った。

「そうか、全身入れないとダメなのか。それじゃあこの辺りじゃここしかないな…。」

もしかしたらこの子は水を必要とするタイプの異邦人なのかもしれない。
あの冷たい池に平気で入ってられるのがその何よりの証拠!

「確かウチの方では川から水を引いてきて、こうフィルター?なんだろう水を綺麗にする何かに通して使ってたな。
 あとこの匂いは塩素かな?菌とか小さい生き物とかを住めなくするらしいよ?」

自分の服からもする塩素の匂いを嗅ぐ。
どことなく夏を思い出す匂いがする。後、布巾も思い出す。

リヒット > 「へぇー、水をキレイにするなにか。小さいいきものを住めなくする……えんそ? これはえんその匂い?」

ようやく、水道の水の匂いの正体がわかりました。いや、実際その『えんそ』がどういったものなのかは相変わらずわかりませんが。

「にんげんが池の水とか飲んで、お腹ごろごろーってしちゃうのって、小さいいきもののせいなのかな?
 泳いでて、たまに目の前を爪の先よりも小さな虫っぽいのがピョンピョン横切るのを見たことがあるよ。
 ……棲めなくなっちゃうのはかわいそうだけど、ちゃんと普通の水も川や池にはあるし、だいじょうぶだよね」

故郷の世界でも、人間の生活圏の傍に棲んでいたリヒット。……正確には、人間の傍に棲んでいたがゆえに、シャボン玉の精へと変質してしまった種族。
人間が己の都合のために自然に手を入れるという光景は飽きるほど見てきましたし、それゆえに今の自分がいるともいえます。
人間が水を安全に飲めるよう、濾過し、えんそなるモノを混ぜる。きっとそれも、知恵というものです。

「……おにーさんは、ものしりだね。それとも、とこよじまでは常識?
 リヒット、まだ勉強中で、わかんないことばっかり。おにーさんも生徒? それとも先生?」

寒さに震える相手の様子を気に留めるそぶりも見せず、好奇心に瞳をらんらんと潤ませながらも、相変わらず無表情のままで問いかけます。

真乃 真 > 「それは多分小さい生き物のせいだな。ああ、少し遠くに行けば自然いっぱいだもんな。」

池の水なんて飲んだりしたらそりゃお腹壊す。
学生街はともかく未開拓地区は自然の宝庫だ池も沼も川もなんでもあるだろう。

「うーん、どちらかといば常識かな?でも、僕も君ぐらいの大きさの時は知らなかった気がするよ。」

あれ、自分にもこれぐらいの大きさの時があったのだろうか?
何か違う気がすると言ってしまってから思う。

「ああ、僕も生徒だよ。二年生の真乃真って言う生徒さ!クシュっ」

無駄にカッコを付けたポーズで宣言し、くしゃみを一つ。

リヒット > 「自然、いっぱい………んー、そうだね………」

あからさまに同意しかねるといった感じの渋い返答。
この島に落ちてきてから見たものは、人の手によって整然と・清潔に整えられた住環境、あるいは転移荒野の荒れた地勢くらい。
……鬱蒼と緑が茂り、清流が付近を流れていた、故郷の風景を思い出します。自然がいっぱいというのは、リヒットの中ではそのくらい。

「おにーさんは、まのまこと。まことさん、だね。これはリヒット。シャボン玉だよ。よろしくね」

名乗られれば、リヒットも自らの鼻っ面を指差しながら名乗り、軽くおじぎをします。

「……やっぱり、濡れたら寒いよね。無理しないで、まことさん。
 こういうとき、人間はお風呂に入ったり、火に当たったりするよね。リヒットもお風呂は好きだよ。
 ……でも、この島に来てから、リヒット火を見たことないよーな……。
 灯りも、火がないのにぴかぴかしてるし。ふしぎ……」

辺りをぐるりと見回すと、濡れた長い青髪が鞭のようにしなり、周囲に冷水を振り撒きます。
公園にいくつか立っている街灯、その先端には煌々と灯る光源がありますが、それが火でないのは周知の事実。
しかしてその正体がリヒットにはまだわかっていませんでした。

真乃 真 > 「これ?シャボン玉?分からないけど、よろしくリヒットちゃん。」

自分のことをこれって物みたいに言ったりシャボン玉って言ったり良く分からない。
なにが種族の名前なのかもしれないシャボンダーマ的な。
その長い髪から女の子だと判断してちゃんづけで呼ぶ。

「うん、僕は今凄く風呂に入りたい…火にも当たりたい…。」

近くに銭湯とかあっただろうか?家の風呂は近くない…。
一瞬ポケットの中の魔法道具を思い出したけどあれは何の意味もない。

「火は料理ぐらいにしか使ってないんじゃないかな?
 あの明かりは電気だね。雷みたいなものだから光るんだ。雷のお手軽番みたいなものだね。」

電気関係の説明は難しい。異邦人への説明は凄く難しい。

リヒット > 「んー、リヒットちゃんって呼ばれ方はよくされるけど、リヒットは男だから、リヒットくんのほうがいいかも?」

自分のことをちゃん付けで呼ぶ者とくん付けで呼ぶものが混在すると、リヒット自身も混乱してしまいます。些細なことですが。
なので、こう言われた時はハッキリしておきたくなる性分のようです。
しとどに濡れたスモックの裾を掴んでおもむろにめくり上げると、その下には一糸まとわぬ白い下半身が隠れていました。脚の間には、男の子の証がちょこんと。
そして同時に、衣服の中から数個の小さなシャボン玉が現れ、夜風に流されてふわふわと風下へと流れていきます。
水分を補給してある程度は復調したようです。

「……へぇ、雷。とこよじまの人って、雷も扱えるんだね。すごいなぁ。リヒットは雷、ちょっとこわい……。
 やっぱ料理には火を使うよね。じゃあ、家の中に火はあるんだ。お外で見たことないけど、ちゃんとここにもあるんだね」

恥ずかしがる素振りもなく半裸を見せつけながら、雷の力によって煌々と輝く街並みに思いを馳せるリヒット。なかなかピンと来ない話でもあります。
……それにどうやら、おちんちんも見せたくて露出し続けてるわけではない様子。
スモックから手を離しても、布地は捲られた状態で固まったまま下りません。なんと凍ってしまってます。
しかしリヒットはそれを気にする様子もありません。

「……さむいと、風邪引いちゃうよ。ガマンしないで、お風呂入ってこよう?
 リヒットとのお話は明日もきっとできるし。いろいろ教えてくれるまことさんは、リヒット、好きだよ。
 リヒットには家がないから、お風呂には入れないけど……」

最後の方、ちょっとだけ寂しそうな表情を浮かべます。寒さが平気とはいえ、暖かさが恋しくないわけでもありません。

真乃 真 > 「そうか男の子だったのかごめんリヒット君、いや、見せなくていいよ見せなくていいから!」

ふわりと飛ぶシャボン玉それに目を取られると。
パンツ履いてないのかこの子。

「なんだっけ?テスラさんだっけそんな名前の人が電気を使えるようにしたらしいよ。
 ああ、火は危ないからね。あまり使わないようにしてるのさ…。」

ああ、固まってるスモックあの状態で固まってる。
うーん、色々と不味いなあれは。

「そうだな流石にこのままだと風邪ひきそうだしなー。
 うーん、リヒット君は家がないんだな…。」

最近家のない子がかなり多い気がする。いけるのだろうかこの島?
でこんな寒いのにお風呂に入れないのは辛いからな。
よし!

「よし、分かった一緒に銭湯に行こう!」

リヒット > 「だいじょーぶだよ。あまり気にしてないから。リヒットはシャボン玉で、男とか女とかはあまり関係ない」

見せなくてよいと言われれば、リヒットなりの力を込めて凍りついたスモックを押し下げていきます。
パキパキと音を立てて生地が曲がり、とりあえずなんとか隠すべき部位は隠れたような、そうでもないような。

「この島は建物いっぱいだよね。植物もそこそこ植わってるし……火事になったらたいへんだね。
 雷を扱うほうが火事になりにくいんだね……すごいなぁ。よくわかんないけど、勉強すればそのへんの仕組みもわかるのかな。
 てすら、さん……その人も、『いのーしゃ』なのかな。雷を使いこなすなんて、すごい力だね……」

異能者。島で暮らすための勉強をはじめて、『異邦人』と共にいの一番に叩きこまれた概念。
実際まだそれほど多くの異能者・異能を目にしたわけでもないので、そちらについても知識はまだ乏しいですが。

「いちおう家はあるよ。『いほーじんがい』の池。今日はそこまで帰れなかった。
 もちろんお風呂もないから、まことさんをあたためてあげることもできないし、きっと人間にはばっちぃ池。
 ……せんとー。でっかいお風呂のことだよね。いつか行ってみたいとおもってお金貯めてたんだ。いこう!」

今日会話したなかで一番テンションの高い声が飛び出し、公園の広場に響きました。相も変わらず顔は仏頂面のままですが。表情作りが苦手な様子。
しかしお風呂が楽しみなのは確か。しかも話が面白くてためになるお兄さんが一緒です。きっと素晴らしいバスタイムになることでしょう。

凍りついててるてる坊主みたいに伸びたスモックと髪を振りながら、リヒットは真さんの後に付いて行きました。

ご案内:「常世公園」からリヒットさんが去りました。
真乃 真 > 「うん、とりあえずそれでよし!隠れた!」

何かギリギリさを感じる。隠れ具合だった。

「大抵のことは勉強すれば分かるからね。
 テスラさんはどうなんだろう?多分異能者だろうね。」

何かどこかで名前を見た気もするし。なんだっけ?Tさん?Eさん?

「異邦人街なら僕の家も近くだよ。ああ、行こうか。」

長いタオルを首に巻きなおして、また一つくしゃみをしながら銭湯への道を二人で行く。
…銭湯から出たらパンツとか買ってあげた方が良いのだろうか?

ご案内:「常世公園」から真乃 真さんが去りました。