2016/05/26 のログ
ご案内:「常世公園」に頸城 陸さんが現れました。
■頸城 陸 > ベンチに腰掛け、空を見上げる。
放課後の空は、綺麗な夕焼けだった。真っ赤だった。
「まぁ、だからどうした、って話だけど」
視線を落とし、言葉の後に、小さく息を吐く。
やる気がいまいち出なかった。
授業を終えて、自習も自主訓練もせず、こんなところで時間を過ごしている理由はそれだけだった。
「ま、たまにはそういう時もあるよねー……」
ぐだり、ベンチの背にもたれ掛かる。
■頸城 陸 > 「でも少し位いいよねー……のーんびりするのも」
ほへー、と大きく息を吐く。
世界の流れから、取り残されているような錯覚。
普段は嫌悪をしているそれが、今日は少しだけ愛おしく思えた。
再び、空を見上げる。
「平和だなー……」
こんな日が出来る限り続けばいいのにな、などと思ってみる。
平和が一番。何もないにこしたことはない。
「日常にはほどよいスパイスがー、なんて言うけど、僕はのんびり過ぎていくほうが良いかなぁ」
退屈なら、どこかに新しい物を探しに行けばいいだけだと思うし。
ご案内:「常世公園」にセシルさんが現れました。
■セシル > この季節、日の出間もなくか、夕刻、日が陰ってからがトレーニングの絶好の時間帯だ。
そんなわけで、非番の今日、授業が終わった後セシルは個人トレーニングとして走り込みをしていたのだった。
居住区の外縁をコースにしており、終着点は常世公園にしている。
スペースがあるので整理体操がやりやすいことと、すぐ傍に自販機があって水分補給がやりやすいことがその理由だ。
ペースを少しずつ落としながら、公園の入り口から入ってくる。
その白い首筋を、汗の雫が伝っていた。
■頸城 陸 > 「まぁ、ずーっとのんびりしてたら卒業なんて出来なそうだけどね」
言って、苦笑い一つ。
「勉強とか、絶対ついていけなくなると思うし」
頭が良い方ではない、というのは自分でもわかっている。
だから、人よりも頑張らなくてはいけないということも知っている。
でも、やる気がでないから今はしない。
やる気が出てきたらやる。
何時出るかはしらない。
そのうち出ると思う。そのうち、ね。
等と考えていると、聞こえてきたのは足音。
「……ん」
ゆらり、視線を動かしてみる。
視界に入ったのは、一つの人影。恐らく、ランニング中かなにかだろうか。
「皆やってるんだなー、体力づくり」
ぽつり、言葉を出す。
やっぱり自分も始めるべきなのだろうか、等と少し考えて。
■セシル > 公園の端、少年の座るベンチからさほど離れていない自販機のほど近くで背の高い中性的な風紀委員は足を止める。
それから、軽く呼吸を整えた後淡々とストレッチ。
それを、3分ほど行っていただろうか。それから、自販機でスポーツドリンクを購入して、少年が座っているベンチの方へ。
「…すまんが、隣は空いているか?」
そう、少しだけ腰を曲げて、少年の顔をまっすぐ見つめて問う中性的なその人物は、太くて強い、これまた中性的な声をしていた。
■頸城 陸 > 「ふへー……」
完全に気が抜けていた。
そのためか、近づいて来る中性的な人物には気づくことが無かった。
「うひゃっ……」
突如としてかけられた声に、素っ頓狂な声を出してしまう。
軽く深呼吸して、声の主を確認。
服装から、風紀委員だと言う事は解る。次いで、声だけではイマイチわからなかった性別が、恐らく男性だということも。
「……あ、全然大丈夫です」
小さく頷いて、ベンチの隅へと体を動かす。
■セシル > 「すまん、助かる」
改めてそう声をかけると、ベンチの反対側の隅に腰掛ける。
ペットボトルの蓋を開けると、ごくごくと豪快に、スポーツドリンクの1/3ほどを飲み干し。
ひとつ、息をついた。
隙間があるとはいえ、同じベンチに腰掛ければ、この人物からほのかにミントの香りがするのが分かるだろうか。
汗臭い、という印象は見た目から察せられる汗の量と比べると随分薄い。デオドラントの類を使っているのかもしれない。
■頸城 陸 > 「……?」
少し、嗅ぎ慣れない匂いがする。
隣の人の、制汗剤か何かだろうか?
とはいえ、不快になるほどのものではない。
気にしないでおこう。
「ランニング、毎日やってるんですか?」
なんとなく尋ねてみる。
袖振り合うもなんとやら、少し位話しをしてもバチは当たらないだろう。
■セシル > 隣の少年が自分が纏う香りに違和感を覚えた様子には気付かなかったらしい。
二つの「学校」をまたいで女子寮暮らしが長いセシルが寮に汗臭さを持ち込まないように気をつけているがゆえの、ミントの香りだった。
話しかけられれば、
「ん、ランニングか?
そうだな…委員会の鍛錬の日はそちらで代替したことにしてしまうし、職務の日は距離を短くしているが…まあ、どのみち鍛錬を行わん日はない。
…鍛錬について、何か気になることがあるのか?」
彫りの深い顔立ちに、バランスの良い位置に配置された深い青の双眸が、再び少年の顔を見据えた。
■頸城 陸 > 「……あー、いや、深い、あれじゃ、ないんです、けど」
苦笑しながら、顔を逸らす。
こう見据えられると、なんとなく落ち着かない。
とりあえず、落ち着こう。
そう考えて、小さく深呼吸を一つ。
毎日。
継続は力なり、とは言うが、一日も欠かさずというのは自分には無理だった。
だから今、こうして色々サボっている訳で。
なんとなく気になって、追加の質問をしてみる。
「こう、やる気がでない日とかって、無いんですか? 今日は休もう、みたいな」
ちょうど、今の自分みたいに、と心のなかでつけ足して。
「そういう時って、どうしてるんですか?」
目を合わさずに、そう尋ねた。
■セシル > 見知らぬ場所に来てしまったとはいえ、セシルの目標に揺らぎはない。
剣士として強くなること。
武官として成り上がり、母に、家に恩を返すこと。
だから、鍛えることに迷いなどないのだ。
当然、それについて語る表情にも。
「やる気が出ない日…というのはないな。他にすべきこともあまりないし、私の目標は変わらん。
…もっとも、こうも暑いと昼の最中にランニングをする気にはならんがな」
「流石に時間は選ぶ」と言って、朗らかに笑った後。
「………しかし、貴殿の質問の答としては不十分だな。すまん」
少しだけ、苦笑いをした。
■頸城 陸 > 「……確かに、汗だくだくで走るどころじゃないですよねー」
朗らかに笑う彼に合わせて、己も小さく笑う。
彼には恐らく、迷いがない。
表情を見て、なんとなくそう思った。
……やっぱり、皆そうなんだな。
目標が何か知っている。目標に向けて何をすれば良いのかわかっている。
だから、頑張れるんだと思う。
……なら、自分が今頑張れないのは。
「あー……全然だいじょうぶです。気にしないで、下さい」
軽く手を振り、こちらも苦笑。
経験が無いものに聞いても、求めていた答えなんて帰ってこないのだから。うん、仕方ない。
■セシル > 「話に聞くに、ここはまだまだ暑くなるらしいな。
…何か、暑さを和らげながら身体を動かす算段を考えるべきかもしれんと思っている」
北欧系の人種、と言えるだろうか。
中性的なこの人物は見た目のイメージ通り暑さにはあまり強くないらしく、困ったように笑った。
…それでも、「鍛錬を止める」選択肢が先に浮かぶことはないようである。
「…すまんな。
私も若輩で、他人の悩みにのれるほどの知見もないんだ。
教官か、カウンセラーであれば貴殿の中にあるものを上手く引き出すのだろうがな」
「精進が足りん」と言って、吐息だけで笑みを零した。
■頸城 陸 > 「……ですねー。後二ヶ月ほどしたら外出るのも嫌なくらいになるから……」
夏本番には、まだ早い。
それはつまり、これからもっと暑くなるということだった。
「演習場とか、大ホールとか、どうです? 屋内だから、少しはましだと思うんですけど」
そうだ、と前置きして言葉を吐く。
日光が当たらないところなら、少なくともここよりは涼しいはずだ。
「……やっぱりそういう人に会いに行った方がいいのかな」
顎に手をあて、ぽつり呟く。
餅は餅屋。
少なくとも彼と話すよりは、有意義な結果は得られるだろう。
……とは言え、何処に行けば会えるのだろうか。やはり病院か。
■セシル > 「…ランニングは景色が変わる楽しみがあるから外で行う方が好きなのだが…考えた方が良いかもしれんな。
訓練施設は剣の鍛錬で毎日通っているから勝手は分かるし…汗をかけばすぐにシャワーを浴びれるのも良い」
「これからはランニングも室内か…」とぼやきながら天を仰ぎ見る。基本的にアウトドア派らしい。
「立ち止まっていることに焦りや迷いがあるのなら、会いに行った方が良いだろう。
教室棟にスクールカウンセラーがいるはずだし…鍛錬のことであれば、演習場付きの教官も相談相手には良いのではないか?
自ら人に頼るのもそれはそれで勇気がいることではあるが…教え導くことが生業の者を頼れば、まず酷いことにはならんだろう」
最初は訓練施設の端末の勝手が分からず、それを聞くことも出来なかった自分が言っても説得力はないかもしれないと思いながらも、正論を述べる。
少なくとも、彼の迷いの導き手は、自分の手には余りそうだったから。
■頸城 陸 > 「……熱中症対策はきっちりしないと、取り返しのつかない事になりかねないから……そっちの方がいいと思います」
言って、小さく苦笑する。
好き嫌いよりも、健康の方が大事だろう。少なくとも自分はそう思う。
「……そう、ですよね」
全く焦りがない、と言えば嘘になる。
上手くいかない異能の制御の事、勉強の事、悩み事は色々ある。
やる気がでなかった、というのも一種の逃避なのだろう。向き合いたくなかったのだ、恐らく。
深呼吸して、ベンチから立ち上がる。
「あ、今日は、その、ありがとうございました。僕、そろそろ帰りますね」
彼に向き直り、礼を一つ。
■セシル > 「熱中症?…まあ、覚えておこう。
気遣いには感謝する」
首を軽く傾げるが、それでも最終的には頷いた。
熱中症の認識が希薄でした。よほど涼しいところから来たのだろうか、この見た目王子様。
「まあ、私程度でも貴殿の助けになったのであれば幸いだ。
私もそろそろ帰ろう。もうじき日も暮れるからな。
…近くまで送るか?」
ペットボトルの残りを飲み干して、こちらも立ち上がる。
非番ではあるが、黄昏時は不吉な時間帯だとの思いから、見送りを申し出る。
■頸城 陸 > 「……暑さで倒れたりとかするあれです。あれ。気をつけてくださいね。」
首を傾げる様を見て、ため息を吐いてから雑に解説。
……伝わっていると思いたい。
「あ、大丈夫です。僕、これでも意外と強いんで」
言い終えて、軽く笑う。
……とはいえ、今の気温で自分の異能を纏いでもしたら倒れそうな気もするが。
夏場に鎧は流石に辛い。
「それじゃあ、また……どこかで」
言い終えると、帰宅するべく歩き出した。
ご案内:「常世公園」から頸城 陸さんが去りました。
■セシル > 「…ああ、やはり暑さで倒れられるものなのか…。
気をつけよう。あまり暑さには慣れておらんからな」
溜息を吐かれて、つい苦笑い。
「そうか…ならば良いが。
力との付き合い方にだけは気をつけるのだぞ」
「迷いがあるのならば、尚更な」と付け加え、真顔で諭すように。
「ああ…またどこかでな」
少年を見送ってから、セシルも公園を後にする。
お互いに名乗らなかったので、「誤解」を解く以前の問題だったのだが…まあ、鍛錬を考える者同士また機会もあるだろうと、楽観的に捉えてしまうのだった。
ご案内:「常世公園」からセシルさんが去りました。