2016/11/19 のログ
ご案内:「常世公園」に霧依さんが現れました。
霧依 >  響き渡る切なげな音色。
 アコーディオンを小さくしたような楽器を手に、ベンチに座って音色を流す、一人の女。

 物悲しい音色ではあるが、地面でとんとんと跳ねるかのようにリズムを刻む。
 しとしとと降る雨のような、どこか物憂げな楽曲を。

 目を閉じて思いを馳せるように、ただ弾き鳴らす。


 ショートカットの女は、女性らしい身体のラインを隠さぬまま、暖かそうなセーターを身に纏う。
 彼女の周辺だけ時間の流れがゆっくりとしているような、そんな空間。

霧依 >  異邦人街の祭りは楽しい。 心からそう思う。
 全く異なる文化と文化が、形式的にではなく、人の手によって伝えられる。
 歌も曲も踊りも何もかも。

「……本当はどんな曲なのかな。」

 弾き終えて、ふと声に漏らす。


 どの祭りに参加しても、どんな曲を教えてもらっても。
 拭いきれない一つの感情。

 どんな曲にも滲みだし、押し隠しても隠せない。


 郷愁。

 放り出されたこの場所で、遠くを思う気持ちだけは、
 どんな人でも隠せない。


「本当の曲が聞きたいな。」

 彼女は囁く。

霧依 > 行こう。
そう一言だけ呟いて彼女はベンチを立つ。
この祭りの間に、できる限りいろいろな曲を覚えたい。

リズムもテンポも、音階の分け方すらバラバラの。
それに共通する思いを感じ取る。

だからきっと、彼女の曲はいつまでも物悲しい。

ご案内:「常世公園」から霧依さんが去りました。