2017/04/23 のログ
ご案内:「常世公園」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > 休日の午後。公園に楽しげなジャズのリズムが溢れる。艶を備えつつも軽快なアルトサックスの音色。それを支える、ピアノの音の伴奏。無論、キーボードだが。
蘭の所属する第二器楽同好会の、新入生歓迎野外ミニコンサートだ。蘭も早速、伴奏者として駆り出されているのだ。
親しみやすいように、ジャズやポップスのアレンジものを中心に組まれたプログラム。
『よろしくお願いしまーす』
演奏会終了後、同好会員が見物人に同好会について簡単に説明する小冊子を配る。
■美澄 蘭 > 第二器楽同好会は、所属者も多くないし、活動費も決して潤沢ではない。
よほど安価なものや、ピアノの類の持ち運び出来ないものでない限り楽器は個人所有が基本だし、教師などの指導者は基本的につかない。
自主的な活動が中心になるので、ある程度自主的に練習したり、技術向上の確認が出来る経験者向けの同好会だ。
『それでも、こういう場所で気軽に音楽続けられるよっていう発信をするのが救いになる人は絶対いるはずだからねー。私もそうだったし』
というのは、部長の弁。だから、新入生歓迎のイベントもきっちりやるのだと。
■美澄 蘭 > 小冊子を大体配った後(数は元々そこまで作っていない)、片付け作業を進めながら雑談する所属者達。
『にしても美澄さん、ジャズもいけるじゃん。本業じゃない、って言ってたのに』
そう言って笑うのは、先ほど蘭の伴奏でアルトサックスを演奏していた男子学生。
歳は上だが、学年は蘭より下だ。
「…ジャズのリズムを、クラシックのリズムを突き詰める感覚で出来るだけ厳密に、ってやってみただけよ。ジャズ本来のあり方からすれば邪道だわ」
蘭は、苦笑いで答える。
『…ほんと、美澄さんって真面目だよねー。ストイックっていうか?』
アルトサックス吹きの青年は、けらけらと笑う。
「………別に、そこまでのつもりじゃないんだけどね…」
蘭は、困ったように笑うしかなかった。
ご案内:「常世公園」に和元月香さんが現れました。
■和元月香 > 退屈だったので町をぶらりぶらりとしていた最中、
賑やかな音楽が聴こえてきて月香は公園にふらふらと入っていた。
(音楽はさっっぱりだけど、なんか凄いな…)
演奏が終わった後はきちんと拍手をし、
配られた小冊子にふむふむと目を通す。
そんな事をしながら、公園からは出ずに会話をする所属者達を興味深そうに眺めていた。
■美澄 蘭 > キーボードをケースに入れ、スタンドを折り畳み、電子ペダルを回収する。
運搬用の車両の手配をする余裕はないので、楽器やそのオプションは手持ちで運搬だ。
オッドアイの少女が、キーボードを入れた長いケースを手に取ろうとして、トランペットのケースを手にした男子学生にかすめ取られる。
「あっ」
『長いものは運ぶの大変でしょ、美澄さんは代わりに俺のペット持ってよ』
朗らかに笑ってそう言いながら、男子学生は自分のトランペットケースを差し出す。
「………う、う〜ん………」
蘭は男子学生が持っているトランペットケースと、担いでいるキーボードケースの間で視線を行き来して困り顔。
キーボードは部所有だし、まともなトランペットの方が流石に高い。
責任を考えると、気が引けてしまうようで…。
■和元月香 > 「…ん?」
まじまじと楽器を回収する彼女らを眺めていたが、
楽器を片付けている少女が迷っている。
その経緯を眺めながら、月香はちょっと流石に困った。
(…うーん、どう声を掛けたらよいもんか…)
部外者であるし「運びましょうか」などと声を掛けても彼女が迷っているのはただの遠慮だろう。
自分が声を掛けても同じだろうが…。
(えぇい、どうにでもなれや!)
「…何かお困りですかー?」
せっかくいい演奏を聴かせてくれたのだし、何かお礼がしたい。
無駄を承知で、明るい笑顔で背後から声を掛けた。
■美澄 蘭 > 「え?」『へ?』
やたら明るい声をかけられ、同好会員達が振り向く。
「いえ…その、大したことじゃないんです。
私が、ちょっと、迷ってただけで…」
左右で色の違う瞳をした、月香より10㎝ほど背の高い少女が、申し訳なさそうに答える。
それから、男子学生の方に振り返って…
「…分かった。ペットの方持つわ。気をつけて運ぶわね」
『うん、任せたよ。変に緊張しない方が安全だと思うし、気負いし過ぎないでね』
男子学生は大らかに笑って、蘭にトランペットのケースを預ける。蘭は慎重な手つきでそれを受け取り…取っ手で持つだけでなく、下からも抱えるように支えた。
「…ごめんなさい、変な心配をさせてしまって」
トランペットの青年が歩き出すと、改めて月香の方を向いて、申しわけなさそうな顔で詫びる少女。
月香の声かけが、思い切りのきっかけにはなったようだった。
■和元月香 > (うん、知ってた!)
「あ、そうなんですか。何でもないようで良かったですー」
予想通り無駄にはなったが、きっかけにはなれたようだ。
にこにこしながらも、月香は目の前の少女をじっと見つめた。
月香が小柄なのもあるが、女性にすれば長身のようだ。
そして高いところにある瞳は、色が左右違う。
(…オッドアイ?カラコンじゃないよなー。めずらしー)
さして驚かずに、興味津々にその綺麗な瞳に視線を移す。
申し訳なさそうに謝る少女を
「大丈夫ですよ、何にも無くて良かったですぜ!」と
少しふざけたような口調で笑ったまま宥める。
そして、自分の目を指差して無邪気に尋ねた。
「綺麗な目ですね。オッドアイってやつですかね?」
単なる好奇心である。
言うなれば、小さな子供のような。
■美澄 蘭 > 「そうですか…なら、良かった」
ふざけた口調なりにフォローしてくれる相手…だが、目のことを無邪気に尋ねられれば、その表情が強張る。
「………ええ…そうなんです。生まれつきで…ちょっと、特殊な事情があって………」
そう言って、視線を落とす…急に目のことを突かれて調子が狂ったのか、手にしたトランペットケースが、少し揺らいだ。
「あっ」
少女は、そこで我に返ってトランペットケースを支え直した。
■和元月香 > 「……」
目の事を聞かれた彼女の表情が強ばったのを、月香は見逃さなかった。
…どうやら、彼女にとってはあまりよくない話題だったようだ。
「えーっと、…ごめんね?」
気遣うように、申し訳なさげに微笑んで謝る。
誰にだって、触れられたくない話題はあるだろう。
(でも、綺麗だとは思ったのは事実だけどな!)
その表情は次の瞬間には切り替わり、先程のように明るい笑顔でずっと言いたかった言葉を投げかけた。
「それはそうと、さっきの演奏凄かったですね…!
私、音楽正直よくわかんないんだけどなんか…楽しかったでっす!」
■美澄 蘭 > 「いえ…最近はあんまり聞かれることもなかったので、ちょっと、びっくりしてしまって」
この島では、蘭のオッドアイ程度では埋もれるような外見の差異には事欠かないし…その空気に馴染んでいて、油断していたのもある。
…しかし、この学園を出た後、本土の大学に進むならば。
この好奇の目は、差異を見る目は、向き合わなければいけないものだ。
しかし、考えを掘り下げる間もなく、相手は話題を先ほどのコンサートに切り替える。
蘭は、目をぱちくりとさせて…
「…ありがとうございます。
夏と、常世祭の時にはちゃんとしたホールでの演奏会をやるので、よろしければ是非いらして下さいね。
その時には、私も伴奏だけじゃなくて、ちゃんとした演奏者として出るつもりでいるので」
と、優しい笑みでお礼と…同好会の演奏会の宣伝をした。
■和元月香 > 「…あー…。
私転入してあんまり時間経ってないんで…」
だから彼女の姿を見た事が無かったので言ってしまった。
続く言葉は呑み込んで、たははと苦笑する。
「でも、その目悪いもんじゃないと思いますよ?
私は綺麗だって思ったし」
軽い口調である。
だが、月香は月香なりに目の前の少女を元気づけようとしていた。
恐らくこの子なら大丈夫だろう、と慈しむように目を細めたのは一瞬。
「へー、じゃあ行ってみましょうかね!楽しみ。
ちなみに、どんな楽器演奏したりするんですか?」
演奏会、という言葉に興味深そうに反応する。
そして、ふと思い出したように尋ねてみた。
「そーいえば、名前なんていうんですか?
私は和元月香、17歳です!…いらん情報でしたかね」
■美澄 蘭 > 「ああ、それで…。
私の目に驚くようだと、大変かも知れませんね。この島は」
相手がこの島に来たばかりと知れば、納得した風で、寧ろ相手の不慣れさを慮る優しい微笑が浮かんだ。
…けれど、目を「綺麗だ」と言われれば、少しだけ頬を赤く染めて。
「………ありがとう、ございます」
楽器のケースは丁重に支えながらも、わたわたと頭を下げた。
「私は、ピアノだけなんです。まだ演目が決まってないので…連弾になるか、ソロになるかも微妙で」
でも、出るつもりはあるらしい。そう語る少女の瞳は輝き、意志のようなものが強く伺えた。
「月香さん、ですね。私は美澄 蘭。3年生で…今年、18になります。
音楽に興味を持ってもらえたのは嬉しいですし、いらない情報なんてとんでもないですよ」
月香の名乗りには、自らも名乗り返す。その表情は、どこか嬉しそうな、くすぐったそうな笑顔。
■和元月香 > 「はは、かもですねぇ。
でも、私はそれが楽しいんですよ」
気遣うような言葉には月香らしく前向きに笑って返した。
驚きに満ち溢れた毎日だなんて素晴らしい。
好奇心がくすぐられるものが周りに沢山ある、楽しい生活だ。
そんな月香に照れたように礼を言う相手。
(あらなにこの可愛い子)
月香はずきゅーんと心を射抜かれながらも、通常運転であった。
妙にこの島はかわいらしい女性が多い。
「…ピアノ好きなんだねぇ」
独り言のように、ぽつりと呟かれた言葉。
さっきとはうって変わって、月香は相手を見守るように目を細めて、穏やかな笑みを浮かべていた。
「蘭さん、ですね!よろしくお願いしますね…!」
嬉しそうな笑みを向けてくれた蘭に、月香もまた年相応の笑顔を向けて応えた。
■美澄 蘭 > 「そうですか………なら、良かったです」
「それが楽しい」という言葉と前向きな笑顔に、こちらも釣られて笑みがこぼれる。
相手がその「差異」をどう捉えているのかを気にしてしまう蘭では、前向きなだけでは終われないから、それが眩しく映って。
「ええ…プロの道を諦めても、捨てたくない程度には大好きです」
ピアノ好きを、満面の笑みで頷いて肯定する蘭。
…と、その時、
『美澄さーん、早く撤収するよー!』
と、公園の出入り口から声がかけられる。
「…あ、すみません。私、行かないと。
今日は、コンサートを聴いて下さってありがとうございました!」
最後に、満面の笑みで月香に言うと。
蘭は、
「はーい!」
とかけられた声に答えながら、楽器を支えつつ早足で仲間の元に向かったのだった。
ご案内:「常世公園」から美澄 蘭さんが去りました。
■和元月香 > (若いってええなー…)
自分も若いが、それは体だけ。
少しだけ…なんかくっそ老けてやがるなと思わなくもないが、平然と笑顔を保つ。
「そっか…。頑張って下さいね!」
きらきらと輝く色違いの瞳に、ぐっと親指を立てる。
(彼女なら、きっと大丈夫だろうなぁ)
「はい、また!」
そうして笑顔で手を振って蘭を見送ると、
別の入り口へスキップをしながら公園をあとにした。
ご案内:「常世公園」から和元月香さんが去りました。