2017/05/05 のログ
真乃 真 > 「OK!暁先生!バッチリ覚えましたとも!
 ほらこの学校って生徒と先生の区別付きにくいじゃあないですか!!」

それにさすがに昼間から公園で酒を飲んでいる人を教師だとは思わなかった!

「おっと!あったばかりの先生なのにそんな見てきたように言われるとは!
 先生!さては僕のファンですね!!サイン要ります?」

冗談は置いておいて今日、初めて会った教師にここまで言われるとは…。
多分、以前から真を知っていて会ったら言いたくて堪らなかったのだろう。
それか、あれだ!始めの第一印象の声の掛け方が相当据えかねたかだ!

「見えるじゃなくて事実ですよ暁先生。
 自己満足の慈善行為。自分は満足、相手も助かる!
 なら問題ないじゃあないですか!!」

真は自らの人助けを自己満足と言う。
言い切る。人を助けるなんておこがましい。

「ふふふ、良く聞いてくれましたね!
 普通に何の予定もなくブラブラしていましたとも!!
 僕は進学じゃなくて就職ですからね!!」

困っている人を見かけたら助けるぐらいで。

暁 名無 > 「まあ確かにな。
 生徒の数も教員の数も並じゃねえしな。」

続く言葉は完全にスルーを決め込んで、俺は懐から取り出したタバコを一本咥えた。
ちゃちゃっと魔術でタバコに火を着け、明後日の方向へと煙を吐き出す。
流石に目の前の生徒に掛ける訳にはいかない。

「ふーむ、まあ自覚はあるんだな。
 なら尚更性質が悪い気もするんだが……

 なあ、真乃。
 お前、今まで自分が気まぐれに助けた相手が、だ。
 本当に助けられたと思ったのかどうか、考えた事あるか?」

ちりちりと僅かに火が燃える音がタバコの先から聞こえる。
別に悪事を嗜めるという訳でもないのに、言い知れぬバツの悪さが胸にこみ上げて気持ち悪い。
続けなくてもいいか、こんな話。

「就職。就職ねえ。
 じゃあもう内定貰ってるわけか。」

真乃 真 > 「困ってる人の為に人を助ける、正義の為に人を助ける。
 確かにそっちの方が立派だと僕も思います。
 でも僕は正義のヒーローじゃあ無いですからね!」

立派だと思う。カッコいいと思う。
でも、人の為を名乗るには自分本位が気にかかる。
正義の為を名乗るには力の無さが否めない。

だから、真は自己満足の為と言う。

「仮に助けられたと思われて無かったとしても僕は続けますよ!
 邪魔をされたと言われても、不要だったと思われても!
 言ってるじゃあないですか。僕が人を助けるのは自己満足の為だって!」

仮に100人を助けて99人が真を不要と判断しても残った1人が助けられるなら良い事だ!
100人のうち100人が不要だと思ったとしてもそれはそれで困ってる人が誰もいないから最高だ!
真にはただがむしゃらに手を伸ばすことしかできない。
困ってる人困ってそうな人とにかく突っ込んでいくしか出来ない。

「いいえ!内定と言いますか!
 本土の方で何かしようかなと思ってるんですよ!
 この学園で学んだことを生かせるような事を!」
 
アバウト!!具体的な就職先は無いらしい!
無いのにこの余裕!!
大物である!!

暁 名無 > 「別にどっちが立派だとかそんな話はしてねえんだよ。」

頭が痛い。
こめかみの辺りがズキズキと鈍く痛む。
どうして此処までくる間に、誰も言ってやらなかったんだ。
……いや、もしかしたら既に言われてるかもしれない。それが響かなかっただけなのかもしれない。
後者で無い事を祈りながら、俺は口を開く。

「いいか、真乃。それじゃあダメなんだ。
 それだけじゃあダメなんだよ、真乃。」

吸い慣れたタバコの味が酷く不味い様に思える。
この状態が続いたら禁煙も出来そうだ。その前に胃がやられるだろうけど。

「いいか、真乃。
 人間には、少なからず困難な事が必要だ。困らなきゃ駄目なんだ。
 困って、試行錯誤してどうにか自分で成し遂げる事が必要だ。

 困ってる人を助ける、助けを求めている人間に手を差し伸べるのなら問題は無い。
 ただ、お前は自分の満足の為にと言って、ただ困ってそうなだけの人間にまで世話を焼く。
 良いか、真乃。社会に出る前にこれだけは覚えとけ。
 困る事は悪い事じゃない、困ってる人間は弱者じゃない。
 これから壁を自らの手で乗り越えて、一つ成長しようとしている人間だって含まれる。そこを見誤るな。」

我武者羅にやるだけを認めていては、多分この生徒の為にもならない。
どうして誰も言ってやらなかったんだ。なまじ事が上手く運び過ぎるのも善し悪しってもんか。

「今一度、卒業を控えた年だからこそ考えろ。
 自分が本当に助けるべき人間を。
 その目を養え。力にしろ。
 そのままじゃお前は、救った数だけ、人を腐らせるぞ。」

真乃 真 > 「…暁先生はどうやら僕を過大評価しすぎているみたいだね!
 僕の言う人助けなんて精々迷子を捜したり、落とし物を見つけたりするぐらいだよ。
 試行錯誤をする必要も無い事さ!ただそれにかかる時間が減るくらいの事だよ!」

敬語が崩れる。
実際真が助けていたのはほとんどそういう具体的な物ばかり。
小さな事しか出来ていない男だ。

「困ってる人間は確かに弱者じゃないさ。それは分かるよ。
 でも困ることが悪い事じゃないっていうのにはどうも同意できないね!

 一人で困ってたらさ。どうしようもない気持ちになってくるんだ。
 どうして、こんなにも困ってるのにこんなにも苦しいのに誰も助けてくれないんだろうって!
 焦っても何も前に進まない!時間だけが過ぎていく!そんな思いするべきじゃあないよ!

 悩むにしたってプラスの方向で悩めばいい!良い方の課題を解決して成長すればいい!
 だから、どうしようもない困りごとは誰かに頼るべきだ!少しでも苦しまず解決するべきだ!
 その頼るべき誰かがいないなら僕が助けるってだけだよ!」

きっと、この教師は強い人間なのだろう。
困難を乗り越えてここにいる人間なのだろう。
きっと、彼には壁を越えられなかった弱い人間の気持ちは分からないのだ。

「…助けるべき人間ですか…。
 残念ですが僕は先生の考え方が受け入れられない。
 助けられるべきでない人間なんていないと思います。」

少しおちついたのか敬語に戻る。
それがいくら本人の怠惰が招いたものであっても。
周囲の環境が悪いというだけであったとしても。

どんな相手でも関係ないもしそこに手が届くなら
この腕で、限られた長さしかないこの腕で助けられるものがあるのなら真はそれを助けるだろう。

暁 名無 > 「だから。」

そんなに回りくどい言い方を、俺はしただろうか。

「はぁ……いや、いい。
 いきなり変な話して悪かったな、柄にも無い事は言うもんじゃねえや。」

届かなかった。理解されなかった。
ああやっぱりな、という諦観とともに立ち上る紫煙を眺める。
受け入れられない、と本人が言う以上はそうなんだろう。
であれば、話を続けること自体無駄骨だ。そんな愚行に時間を割けるほどの熱は、もう冷めちまっている。

「まあ、志を高く持つ事には言う事無しだ。
 ただそれを掲げるからには違えちゃいけないものが沢山あるぞ。
 それだけ忘れんな。自己満足とは相容れない理想だ、それは。」

言い分からして、大きく勘違いをしているだろう。

俺は、
弱いから此処に居る。
困難を越えられなかったから此処に居る。
誰も助けてくれなかったから此処に居る。

「まあ、精々就活に影響がない程度にしとけよ、真乃。
 お前は──」

──俺を助けなかったぞ。

言いかけた言葉は喉元で詰まり、代わりに、

「それと、もう少し人から言われた事をちゃんと聞け。」

皮肉った様な笑いと共に零れた。

真乃 真 > 正直なところ、会って間もない初対面の相手に対していきなりそこまで言われる覚えはない。
それが、教師だとしても何も知らない相手にこの学園生活を否定されるいわれはない。

その事による反発もあった。
彼が真の何を知ってそこまでいうのか。

はじめて会う相手にそこまで言われるなんて…やっぱり、最初の話かけかたがマズかったのだろうか?
うん、第一印象って大事。

「違えちゃいけないものですか…。」

自己満足、それは言い訳の言葉だ。
思いつかない人を助ける理由を埋める為だけの言葉だ。

そして、自分が自分であるための行為だ。
目の前で困っている人を助けなきゃ自分が納得できない。
そんなのは自分ではない。そんな自分には満足できない。
目の前で困ってる誰かを見過ごすなんてそんなのは真乃真ではない。

「…ええ!大丈夫ですよ!
 影響が出ても気合いでカバーします!!
 はい!それも頑張りますね!!」

話は聞いた。理解は出来る。多分出来るだろう。だけど、受けいれられない。
これをそのまま受け入れてしまえば真は鈍くなる。
助ける事を躊躇ってしまう。一瞬、一秒、考えるようになってしまう。

暁 名無 > 「ま、社会に出るならもうちょっと社会のことを知っとけってこった。
 連休明けからインターンでも探してみたらどうだ。
 この島の環境もだいぶ特殊だからな、卒業前に島外の状況を知っとくのも良いかもしれねえぞ。」

ふわあああ。
漏れ出る欠伸をそのまま出し、俺は缶チューハイを一気に呷った。
うん、不味い。禁煙も禁酒も出来そうな気がしてきた。
でもきっと一晩寝たらどころか、家に帰る頃には忘れてる気がする。

「箸をまだ持てない子供に、延々と代わりに食べさせてればそのうち自分で食うようになるのか?ってことだ。
 さっきの話はな。」

別に今までの生活を否定する意図は無い。
むしろそこから一歩飛躍が必要だろうと言っただけの話だ。
それが不要だと本人が言うのであれば、それまでの話ということ。
本人の言う通り、過大評価だったのかもな、と俺は改めることにして。

「じゃーな、貴重な時間無駄にさせちまって悪かったなー。」

真乃 真 > 「ええ、ありがとうございます!
 機会があれば調べてみますね!」

確かに調べてみるのもいいかもしれない。
島外にはどんな仕事があるのだろうか?

「…流石にそこまで過保護に助けてないと自分では思ってるんですけど。」

分かりやすい例えだ完璧に理解できた!
だが、それと同時に少し不満が噴き出す。
流石にそこまで過保護には助けて無かったと思う。
思いたい…どうだろう?

…本当に、必要な分だけ助けられていただろうか?

もやもやとした不安が胸に募り始める。

「いえ、こちらこそありがとうございました!」

もやもやとしたものを胸に抱えたままで公園を去るだろう。

…そういえば最近こんな風に説教とかされてなかったな。
最後にされたのはいつだったけ?

ふと、記憶に浮かんだのは一昨年の九月ぐらいの事。
真が一番迷走していた時、あの時は確か屋上で…

ご案内:「常世公園」から暁 名無さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から真乃 真さんが去りました。