2017/05/21 のログ
ご案内:「常世公園」にアーサーさんが現れました。
アーサー >  
天候に恵まれ、空はどこまでも青く白い雲とのコントラストが素晴らしい──
そんなある昼下がりの常世公園の芝生に制服をきちっと着込んだ青年が黒い毛色の馬にまたがり楽しそうに駆けてゆく。

駆けると言っても競走馬の走りではなく駆け足程度である。
彼らは実に楽しそうに、それでいて優雅に芝生の上を足取り軽く一歩また一歩と踏みしめて行った。

「今日は良い散歩日和だね、アネモイ?」

相棒の首筋を撫でつつ、今日の好天を喜ぶ青年。
アネモイと呼ばれた馬は彼の言葉にブルルっと応えた。

青年の名はアーサー。
放課後の時間を利用してアネモイの世話をするつもりでいたのだが
この好天に厩舎に閉じ込めておくのも忍びなかったので、思わず外に駆り出す事にしたのだった。

アーサー >  
常足(なみあし)で肘と膝を高く挙げるハクニー歩様と呼ばれる特徴的で芸術的な仕草を見せるアネモイ。
わずかに前後に揺れる振動がアーサーにとっては心地よく感じる。
こうして馬に直に触れ合うことで分かることがある。
彼女の機嫌の良し悪しであったり、体調であったり。

「今日も元気そうで何よりだよ」

アネモイから感じる気配にふっと顔を綻ばせつつ、アーサーは軽く腹に刺激を与える。
それを合図として一気に視界が、世界ですら置いて行くかのように流れて行く。
全身で風となった己と相棒を感じるアーサー。
無邪気な子供の様に目を輝かせ、その流れに身を任せていた。

アーサー >  
アネモイから伝わってくる気持ちの良いリズムと力強い振動。
自然と笑顔になるのが分かる、でも止められない やめるつもりもない。

「(ああ、やっぱり僕は)」

好きなんだ、馬と共に疾風の様に駆けるのが。
自然と身体が心が求める。もっと、もっと速く──と
高速で流れる世界とは裏腹に、己の中の時間はゆっくりと過ぎていくような感覚を覚える。

──たまらない。

流れ行く世界がより曖昧になった気がする。
アネモネがさらに速度を上げたのだろう、それに恐怖は感じない。
ただ喜びが心を支配していた。

アーサー >  
暫し芝生を駆けるアーサーとアネモイ。
目まぐるしく変わる景色を惜しみつつも徐々にスピードを落とした。
そして再び常足までゆるめると、優しくアネモイの首を撫でてやる。

「お疲れ様、アネモイ。今日も良い走りだったよ」

慈しむ様な声色でそっと囁けばアネモイは嬉しそうに嘶いた。
まだまだアネモイは元気だが、今日はこれくらいにしておこう。
手綱を引いて厩舎方面と方向転換し、公園を後にするだろう。

厩舎に戻ったら汗を流してブラッシングして──

等と相棒のケアを考えながら帰路につくのであった。

ご案内:「常世公園」からアーサーさんが去りました。