2017/07/30 のログ
ご案内:「常世公園」に幡ヶ谷 赤志さんが現れました。
■幡ヶ谷 赤志 > 物を燃やすと興奮することを覚えたのは、まだ毛も生えそろっていない頃のことだ。
親の部屋から盗み出した着火符で生じた小さな炎に、幡ヶ谷少年は一瞬で魅入られた。
揺らめく炎。
反射する光。
照らし出され、煌々と明るくなる周囲。
見つからないように、両手で覆った炎が、赤く燃えるその様。
少しだけの背徳感。そして非日常感。
その炎が齎すすべての要素が、幡ヶ谷少年を興奮させて、
多分その辺りできっちりぴったり、綺麗に道を踏み外したんだと思う。
■幡ヶ谷 赤志 > 炎で興奮することが分かってからは、
どの辺が興奮を齎すのかを、もちろん突き詰めた。
当たり前だ、こちとら健全な肉体と不健全な精神を持ち合わせた青少年男子だ。
自分の性癖にくらいちゃんと向き合うし、
恋をした相手が火傷しそうなくらいに熱い愛情を持った情熱的な相手なら、
その距離を測る必要がある。自分がその恋に溺れられるように。
物を燃やしてみた。――興奮した。
長い時間をかけて燃やしてみた。――興奮した。
大きな炎で燃やしてみた。――さらに興奮した。
どうやら、大きな炎が自分の見たい炎らしい。
本を燃やしてみた。――興奮しなかった。
虫を燃やしてみた。――少し興奮した。
小動物の死体を燃やしてみた。――かなり興奮した。
対象が自分に寄った生物だと、さらに興奮するらしい。
想像の中で、親を燃やしてみた。――悲しかった。
想像の中で、友人を燃やしてみた。――悲しかった。
想像の中で、恋人を燃やしてみた。――ただただ悲しかった。
どうも、猟奇的な素養は自分にはないようだった。
■幡ヶ谷 赤志 > 想像の中で、知らない相手を燃やしてみた。――興奮できた。
想像の中で、親しい知人を燃やしてみた。――悲しくはあったが頑張ったら興奮出来た。
想像の中で、親しくない知人を燃やしてみた。――かなり興奮した。
天啓を得た心地がした。
想像の中で、命乞いをする親しくない知人を燃やしてみた。――かなり興奮した。
想像の中で、こちらを罵倒する親しくない知人を燃やしてみた。――さらにかなり興奮した。
想像の中で、こちらを敵視する親しくない知人を燃やしてみた。――最高に興奮した。
予想の通りだった。
自分の性癖の傾向が分かってきたことで、充足感すらあった。
想像の中で、こちらを敵視する誰かを燃やしてみた。――最高に興奮した。
想像の中で、自分が死ぬとも思ってない驕り高ぶった誰かを燃やしてみた。――この上ないほど最高に興奮した。
想像の中で、己の能力を根拠として、死を一度も連想したことがないような、悠然とした誰かを燃やしてみた。――興奮で、胸が張り裂けそうだった。
■幡ヶ谷 赤志 > 自分の性癖を知ってしまってからは、もはやそのことで頭がいっぱいになった。
普通の学園生活を、普通の学生として送ってきたこの十数年間を、自分で褒めてやりたいくらいだった。
完全に自分の中で理解し終えたその興奮の材料は、ともすれば隣に存在する隣人だったのだから。
成る程。
そうか。
わかった。
自分に、炎を操る異能が生じたのは、その根本に生じた欲求そのもののせいだと思っていたが、
その実それはこの島に於いてはそれこそが本懐に寄り添う物であったのだと。
そう合点がいった。
早い話、まあ俺、幡ヶ谷赤志は。
『自分が死ぬとも思ってない異能者』を自分の炎で焼きたいのだと確信した。
笑える話だろ、名前にも炎の赤が入ってるんだぜ、こんなもの運命じゃないか。
■幡ヶ谷 赤志 > ただ、何度も繰り返す。
自分は猟奇殺人犯なんかじゃない。
人並みに親を愛してもいるし、友人も多少なりともいる。
恋人と呼べるような相手はいないけれど、それなりに親しくなった異性だっていた。
何一つ欠落することなく、欲求だけが一つ多いのが自分だと思っている。
――例えば。
こうやって昼下がりの公園のベンチから人並みを眺めていて、
目の前を異能を使って軽快に走っていく異能者を見ても、微塵も興奮なんて覚えない。
呼び止めて、自分の炎で焼いたところで、多少の興奮しか得られないだろうと思う。
これは、自分の性癖とちゃんと向き合ったがゆえの理性だと自分では思っている。
そういう意味では、少しばかり褒めてもらったっていいくらいじゃないかな?
両手を組み替えながら、ぼんやりと公園の中を眺めて、小さく嘆息した。
結局のところ、複雑な性癖を抱えてしまった自分にとっては、
そんな多少の逸脱では、満足することが出来ないのだという確信がそこにあった。
「……いやぁ、難しいよねぇ。人間って」
■幡ヶ谷 赤志 > ただ、少しだけ、考えていることはあった。
伊達に自分の嗜好と向き合っているわけじゃない。
そういった、細かい事情を鑑みるから良くないんだ。
この人は親しい、この人は親しくない。
この人は燃やしてはいけない、この人は燃やしたほうがいい。
そんな風に線引をするから物事がややこしくなり、変な方向に進むんだ。
もっと性癖と向き合うときは、静かで、シンプルで、単純明快でないといけない。
こじれた性癖に付き合って、性癖をこじらせる必要はないんだ。
だから、もっとシンプルに考えて、
そして、ずっと昔、初めて覚えた興奮と同じ感情を以って、幡ヶ谷青年は思うわけですよ。
なんもかんも燃やせばさ、
細かいことはどうでも良くなるかもなあって。
それこそさ。
常世島ごと。
ご案内:「常世公園」に和元月香さんが現れました。
■幡ヶ谷 赤志 > 考えるだけで、少し震えが起こる。
細部を見ずに、もっと大きく行えばきっと、それは最高の興奮を齎す。
それは理解出来ているし、それが自分にとって理想の燃焼だ。
今この島で、自分が死ぬとも思っていない、異能や、異能者の世界に守られている誰かが、
その日常をぐずぐずに熔けさせるような炎は、きっと最高に綺麗なものだと思う。
自分にそんな規模の炎は生み出せないし、
そんなことをすれば、きっとそれこそ誰かを守る者に邪魔も妨害もされるだろう。
クリアすべき障壁はいくつもあるし、どの道程を通ったとしても達成出来る物ではないかもしれない。
でも、だからこそ燃えるものもある。それは他者を燃やす炎よりももっと熱い火種だ。
万が一、その全ての障壁をクリアすることが出来るなら。
きっとそれは楽しい楽しい宴を齎すことになると思う。
それを夢想し、静かにベンチに背中を預けて空を見る。
「うーん。……興奮してきたな。危ないやつみたいだ」
■和元月香 > ある日、月香は公園を訪れていた。
手に持つのは夏にぴったりのソフトクリーム。
あと数口で食べ終わる、溶けかけのそれをぱくりと口に含む。
誤って顎を伝った白い溶けかけた液をぺろっと舐め、月香は少し眉を顰めてくるりとワンピースを翻して呟く。
「ワンピースとか久々に着た...」
先日、何を思ったか敬遠な両親が大量の衣類を贈ってきた。
添えられていた手紙を流し読みする限り、粗末なもんばっか着て恥かかせんなということらしいが...。
(じゃあ最初から衣類代出せやコラ...)
はぁぁぁぁと深い溜息を吐き出すと、とりあえずベンチを探し始める。
すぐ見つかったベンチには、誰かが座っていた。
(ん?)
空を見上げている、赤髪の男子生徒。
その瞳に宿ったものに、ピリッと背筋に痺れる感覚。
(なんだろあの人。何かよからぬ事考えてんな)
自分には関係ないが。
誰が何を考えるかは自由、とりあえずベンチに座りたい。
てくてくとそっちに向かい、愛想のいい笑を浮かべて挨拶した。
「こんちは。隣いいですかー?」
■幡ヶ谷 赤志 > 口の端を持ち上げて笑う。笑うしかない。
「いいですよー。俺のベンチじゃないからさ。
っていうか、積極的だね。なんか他人がいるベンチって座りづらかったりしない?」
軽佻浮薄に笑って隣を手のひらで指す。
親しげな隣人は歓迎するし、それが美少女であるなら尚更だった。
ベンチに置いていた飲み物をどかして、少女に座ることを促す。
世間話の一つでもしたほうがいいかと思った。
多少なりとも、さっきの空想で軽い興奮もしていたから、饒舌にもなっていた。
「学生さん?
それとも、そう見えて年上のお姉さんだったりする?
こっちは学生なんだけどさ」
■和元月香 > 相手の笑みを見て、月香はぴーんと来た。
(____こいつ、チャラ男か!?)
いや、だから何なのだという話なのだが。
最近シリアスな人柄の人物にばっかり関わってきたからか、
何だか新鮮なような感慨深いような気持ちになってしまう。
「ありがとー。じゃ、お邪魔しますっと。
...ん?あー、まぁあんまり怖そうな人だったら遠慮するけど、
そういう人らじゃないなら私遠慮無くなるタイプなんだよねー」
そうからからと笑いながら、空けられた席に腰かける。
またソフトクリームをぱくりと1口食べて、悪戯っぽく首を傾げてみせる。
「正真正銘の17歳の学生だよー」
(中身はそうだとは言ってないけどね!)
バレてもいいが、いきなりぶっちゃけるのはあれだろう。
正真正銘の17歳なのは嘘では無いし。
「あ、私からも1つ聞いていいかな?
君、なんか考えたみたいだけど何考えてたの?
何か楽しいこと?」
ズバッと単刀直入に聞いてみた。
単なる好奇心、それからちょっとの警戒心を笑顔の裏に混ぜて。
大半は好奇心だが。
■幡ヶ谷 赤志 > 「いいねいいねー、俺も似たようなタイプだよ。
堅苦しいのって苦手だからさー、どうにも」
へらっと笑いながら返す。
いやはや、この見目でこの人懐っこさは色んな人間を勘違いさせてるだろうなと思った。
隣に座るだけで空間が華やぐ17歳学生はちょっと罪作りだろうにね。
「あ、同じ同じ。生まれ歳一緒じゃん、奇遇ー」
両手の指を銃にして相手に笑いかけて口笛を吹いた。
軽く投げられる質問に、へらっとした笑いを浮かべて公園内に視線を移した。
「そ、楽しいこと。
楽しいことを延々考えて、一人でへらへらしてたってわけ。
なんかさあ、平和だよね、この島。異能とかでさ、結構特殊な環境なのに。
もうちょっと面白いこと、出来ないかなあって考えてたんだよね。
キミは、お祭りとかさ、好きな方?」
■和元月香 > 「だろうねー!」
見た目が遠慮知らないタイプー、と続けるさりげな失礼な月香。
こういうタイプの男性が嫌いな訳では無い。
寧ろ友人としてはかなり付き合いやすいと思える。
「おう、マジですか!最近近い年の人とよく知り合いになるなー」
目をぱちくりさせて、嬉しそうににへっと笑う。
そして質問の答えを聞くと、ふむと興味深げに思い出すかのように考え込んだ。
「何かそれだけ聞くと変態っぽいね!
...んー、まぁそうね。私もこの島に望んで来たわけじゃないからさ、
もしかしたら弱肉強食の無秩序無法地帯でサバイバルせなあかんのかとか思ってたけど、そーでもないし。
楽しいこととか、面白いことは大好きだよ、退屈が無くなるからね!」
きらきら瞳を輝かせて、笑顔で大きく頷く。
退屈は嫌いだ。
だから、パーっと楽しいことがあるのはいいことである。
それこそ、祭りとか。
■幡ヶ谷 赤志 > 「ま、割りと学生多いもんね、この島」
だからこそ多少未発達なところがあり、
看過されるべきところは看過され続けているのだろうけど。
少女の軽口に軽口で返す。
「男なんて多かれ少なかれどっか変態っぽいとこあるよ。
他人に見せるか見せないかの違いだけだよ、多分。
皆凄いよなあ、なんか建設的なことにばっかり異能使えててさ、
もっとこう、なんか悪いことしようと思うやつがいてもいいのに。
それだけ、風紀とかその辺が優秀ってことなんかなあ」
口にして、それはあんまり、面白い話じゃないなあと思った。
退屈がなくなる。
成る程、と小さく独りごちた、もしかしたら自分は、退屈してるのかもしれないと。
少女の笑顔に合わせるように苦笑いして。
「……だよなあ。
退屈はなんとかかんとかを殺す唯一の毒とか言うけどさ。
案外退屈みたいなどうでもいいもんで、学生の俺らも簡単に死んじゃうからさ。
楽しかったり面白かったりするほうが、みんな喜ぶんじゃないかなって俺は思うんだよ」
同じく少し輝いた、夢見る少年のような目で遠くを見ながら言った。
冗談めかして少女の方を横目で見て。
「もし、そのときは暇してた場合一緒に退屈潰しにお祭り行ってもらえたりするんかね?
少なくとも退屈はさせないことは約束するからさ」