2017/08/09 のログ
笹貫虎徹 > 「……取り合えず帰って寝直すか」

近くのゴミ箱に丸めた求人雑誌をポイっと放り込んで。
…そして、フワリ、とまるで宙に浮くかのようにベンチに座ったままの姿勢から『跳んで』地面に着地。
筋力とかバネとかを使った、ただの身体操法。だが見る者が見ればその練度が分かるだろう。

生憎と誰も見ていないのは幸いなのか。そのまま少年は眠たそうにもう一度欠伸をして歩き出す。

ご案内:「常世公園」から笹貫虎徹さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に和元月香さんが現れました。
和元月香 > 『____っ、まだなの!?いい加減にして!!貴方にはうんざりよ!!!!』

ヒステリックな女性の絶叫が、夜の静かな公園に響き渡る。
月香は携帯電話から聞こえてきたそれに、思わず顔を顰めて耳を離す。

(甲高くて何言ってるかワカンネ...)
「あー、ハイハイ。
すみませんねお母様。でも異能者ってほんの1握りなんですよ?
家族全員が異能を持ってるだけでもラッキーだと思いません?」

『攻撃系異能じゃないと意味が無いのよ!!
なによその意味不明な異能!!何の役にも立たないじゃない!!』

「...」

公園中央奥のベンチに足を組んで腰かけ、
めんどくさそうな表情で電話に応対する月香。
このヒステリックな母の扱いも慣れたもので、
なんとかあと1年は待ってもらう約束を取り付ける。

和元月香 > 『...分かっているんでしょうね?
大変容はただの始まり、新世界はまだ姿を現してさえいないわ。
私たちが作るのよ、強力な異能を持つ私たちがね。
強力な異能を持たない凡人は、新世界に生きる資格さえ無いのよ?』

「.........」
(やっぱダメだ、話通じねぇわ)

何かに取り憑かれたようにブツブツと呟く母相手に月香は無言を貫く。
しかし表情にはありありとうんざりという感情が滲み出ている。
構うことはない。
母がこうなったのは、何も今日からではないのだから。

「____...はぁぁぁぁぁぁぁっ...」

何とか電話を切り、大袈裟に溜息をつく。
疲れを感じずとも溜息をつかねば、身体的ストレスで勝手に死んでしまいそうである。

和元月香 > 母だけではない。
月香の家族は皆そうだ。
姉も父も攻撃系の異能に目覚めた特別さに酔いしれた。
酔いしれすぎて狂ってしまった。
異能、というより異能者を崇める怪しいにも程がある宗教に入教。
のめり込んだように夢中になり、今に至るという訳だ。

「____大したもんじゃないんだけどなぁ」

常世学園に短くとも過ごしてきた月香はもう分かっている。
エリートだった姉はともかく、両親の異能は本当に大したものではないと。
常世学園に在籍する異能者に比べれば、些細なものだと。

敢えて指摘しなかったのは、勿論余計な体力を使って自分が過労死するのを防ぐためだ。

ご案内:「常世公園」に筑波 察さんが現れました。