2017/08/23 のログ
ご案内:「常世公園」に永江 涼香さんが現れました。
■永江 涼香 > 「んー、たまには夜に出歩くってのもいいもんよねー」
竹刀袋を持ってぶーらぶーらと歩いている涼香。楽しそうにそこらの風景を見て回っている。
「夜の風景、怖い気もするけど、やっぱり新鮮でいいわー。実家じゃあ基本、日の出てる時しか外出させてもらえなかったし」
永江涼香は天性の巫女であり、太陽神である天照大御神の加護を得ている。
それはつまり、その加護は日中に強まり、そして深夜は殆ど無くなってしまうと言うこと。
陽光のある時の涼香は強力な力を持つが、そうでない時はガクンとその力が落ちてしまうのである。
それ故に、涼香の両親は陽光のある世界のみを涼香に与えてきた。
が……その教育方針は、涼香に『夜への興味』を強く抱かせる結果になってしまったのである。
「お父様もお母様も、たまには夜に連れ出してくれてもよかったのにねぇ」
しかし、当の涼香は、親の心子知らず。のんきにそんなことを口にしていた。
■永江 涼香 > しかし、その涼香の暢気さも、一応の根拠と言うか、そうしていられる自信の源のようなものは存在した。それが、持っている竹刀袋の中身。
「まー、何かあってもこの『天照』があれば何とでもなるわけだし。お父様もお母様もビビり過ぎよねー」
『天照』。正式名称は『神咒神威 天照坐皇大御神 霊結禊祓剣(かじりかむい あまてらしますすめおおみかみ たまむすびみそぎはらえのつるぎ)』。永江家……と言うより、永江家が代々継いできた神社に伝わる神宝である。
元々は古代……言い伝えによれば神代の時代の祭具であり、天照大御神の力を強く宿しているとされ、実際抜けば陽光を発するという神剣。これがあれば、涼香は夜であろうと日輪の加護を受けることが出来る。
……こんなモン無論子どもの頃の涼香に両親が持たせるわけはないし、そもそも涼香が勝手に持ち出してきただけで正式に与えられてもいないのだから、そりゃ両親がこれを前提にしないのは当然と言えば当然なのだが。どこまでも、親の心子知らずである。
「わざわざ剣術なんてやらせてたのも、その為だろうにねぇ。ま、めんどくさかったからあんまりやんなかったけど」
ブラブラしつつそんなことを口にする。
■永江 涼香 > 実際、涼香の両親は新陰流の道場に涼香を通わせていたし、それは将来的に万一のことがあっても『天照』を使って何とか出来るようにと言う意図があった。
……そもそも直剣である天照は通常の剣術で使うには不向きだとか、涼香の性格上相手の攻撃を待ってカウンターを仕掛ける新陰流よりも、自分からガンガンこじ開けていく一刀流等の方が合ってたとか、そこら辺の絶妙な噛み合わなさはあったのだが。とことん噛み合いの悪い親子である。
「でもまー、結局今のところなんとかなってるわけだしねぇ。二人とも心配しすぎって言うか」
公園をぶらぶらと歩きまわりながら甘い事を平然と口にする。
基本、彼女は世間知らずなのである。それは、両親が涼香を守るためと言う名目でひたすらに制約を課してきたからだ。
与えるモノは両親が全て検閲し。
外出先も全て両親の許可が必要で。
娯楽なんてほとんどありはせず、同年代の子供が遊んでいる時間は学問や作法の勉強にほとんど使われる。
天性の巫女であり、天照大御神との強い親和性を持つという特徴故の過保護であったのだが、ここまでガチガチに固められては、抜け出したくなるのも自然と言えば自然である。
……要するに。親の心子知らずであると同時に、子の心親知らず、であったのだ。
■永江 涼香 > 「……でーもー、夜はヒマねぇ。夜がこんなにヒマってのも知らなかったわー」
ぶーらぶーら。
夜となれば、不夜城と呼ばれるような都市でもない限り、基本は静まり返る。
人の気配は消え、日中のような人類が支配する時間ではなくなる。だからこそ、夜は妖怪が現れる時間とされたのだから。
……そんな、そんな当然のことすら、実感として持っていなかったのだから涼香の世間知らずもとんでもない領域ではあるが。それはそれとして、普段と違う『夜』の世界を楽しんでいた涼香であるが、若干飽きてきたのだった。
「だーれーかー、いないのかしらー?って、まあ考えてみればみんな寝てるわよねー。それもそっかー」
■永江 涼香 > 「ま、夜ってのはこんなもんかー、ってはっきりわかっただけでも収穫よねー」
そう言って、のんびりと歩いてその場を後にする涼香。
……それでもなお挙動不審にきょろきょろしているのは、余程夜が珍しかったのだろう。
ご案内:「常世公園」から永江 涼香さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■飛鷹与一 > 「――…ん?」
今夜も今夜とて巡回警備の仕事を一通り終え、別の同僚と交代してからやっとこさの自由時間。
そのまま男子寮に直帰する事も考えはしたが、何となしに常世公園へと足を運ぶ。
途中、誰かとすれ違った気がしたが…気のせいだろうか?どうも注意力が散漫になっている気がする。
「…うーん、やっぱ疲れてるのかな俺」
苦笑いと共に呟く。どうも自分は息抜きというのが苦手らしい。
自分でも自覚していたが、この前久しぶりに顔を合わせた知り合いと話していて改めて自覚した。
意外と多才であれこれ器用にこなす少年だが、一方で不器用な所も多々ある。
それが人間だからおかしな事ではない。とはいえ、肩の力が抜けてないのは我ながら困ったものだろう。
背負ったライフルケースを一度担ぎ直しつつ、自販機の方へと向かう。丁度喉も渇いていたし。
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■飛鷹与一 > 自販機の前に立てば、飲み物は無難に緑茶をチョイス…我ながらちょっとジジ臭い気が。
小銭を入れてポチッと。緑茶のペットボトルを取り出し口から取り出してから周囲を見渡す。
先ほど、誰かと擦れ違った気がしたので公園を改めて見渡してみるが…誰も居ない、ように思える。
それなりに広い公園だからまぁ、他にも誰か居たりするのかもしれないけれど。
「…ハァ、しかし人員不足とはいえ勧誘は何時まで続くんだろう」
今日も先輩や同僚から風紀委員会の様々な課に勧誘された。誘いは有難いが今の所は全てお断り中だ。
(…下手に責任ある立場とかになるのもなぁ)
仕事は真面目だが上昇志向とかは全く無い。ベンチに足を向けつつ、また明日もそれとなく勧誘されるのだろうか?
他にも優秀な人は探せば幾らでも居るのだから、他をスカウトすればいいのにと思う。
■飛鷹与一 > 「……それに、下手をすれば誰かを射殺する事にもなるし。それは…嫌だな」
誰かを殺さない、不殺の心得。甘いと分かっているが、誰かを殺したら自分の何かが決定的に破綻する。
少なくともそんな気がして。一部では「人を殺せない狙撃手」とも揶揄されているが…それで結構。
(…俺は誰も殺さない。…殺したくない)
ベンチに座ってペットボトルの蓋を開けて中身を飲みながら心の中で呟く。
誰かが誰かを殺すのは否定はしない。理由、ただの仕事、快楽目的、まぁ色々とあるだろう。
殺人の素質があっても、それをどう生かすかは自分次第。師匠もそんな事を前に口にしていた。
「…人を殺す技術と人を生かす・守る技術は表裏一体、みたいなもんなのかな…。」
■飛鷹与一 > (いや、まぁその前に課題が山積みなんだけどね…!)
この前の師匠立会いの元、妹弟子となる少女との手合わせを思い出す。
一応、互角?にまでは持ち込んだが額を派手に切るわ、左肩を脱臼するわアレは散々だった。
魔術もナイフ格闘も、当然ながらまだまだ研鑽や工夫が必要だ。少なくとも余計な怪我をしないように。
「…命だけでなく体も大事に、とも言われたし…けど」
無茶はしないつもりだが、無茶をしなければならない場面は今後出てくるだろう。
そういう場合はどうするか。悩ましいなぁと溜息混じりに。いかん、どうも一人だと考え事ばかりだ。
ご案内:「常世公園」に永江 涼香さんが現れました。
■永江 涼香 > 「やっぱー、迂闊だったわー」
とてとてと走って公園に戻ってくる涼香。
何をしに来たかと言うと……。
「あ、ちょっとそこのアンタ、お財布落っこちてんの見なかった!?」
財布が見当たらないのである。恐らく公園でぶらぶらしてる時に落としたのだとアタリをつけて戻ってきたのだった。
■飛鷹与一 > 「……ハイ?」
声を掛けられて我に返る。お茶を飲みながらボーッと考え事に没頭していたのでワンテンポ遅れた反応だ。
そもそも、彼女が走ってきた足音や気配に気付かなかった時点で没頭しすぎとも言える。
「…えーと、財布ですか?いえ、見てませんけど…ちなみに形とか色はどんな感じですか?」
風紀委員会以前に性格上、困ってる相手を見捨ててはおけぬ。
なので、財布の特徴を教えて貰おうと。場合によっては「天眼」を使えば見つかる可能性も高まる。
■永江 涼香 > 「あ、えっと、四角くて袋みたいになってるやつなんだけど……」
いざ特徴をと言われると説明に困る涼香。ちなみに紐で閉じるという和風の財布で、それはベンチの上にぽつねんと置いてある。色がダークブルーなので少し闇夜に紛れて見つけづらいかもしれない。
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■飛鷹与一 > 「四角くて袋みたい……成る程、ちょっと待って下さいね?」
彼女の言葉に頷いて。軽く微笑んでから瞳を一度閉じて異能を発動。黒い瞳が虹色に薄く光る。
虹色の瞳で周囲を見渡す。――測定、検索……該当あり。
「…そこのベンチの上ですね。ダークブルーのやつ。闇夜で少し分かり難いかもですが多分貴女のかと」
と、少年が座っているベンチの隣のベンチ。やや距離が離れているそこを指差す。
近くにあるが案外分かり辛いのは、矢張り灯りがそこに当たっていないのと、財布の色が原因だろう。
(異能を使う訓練にもなるし、財布も見つけられたから一石二鳥かな)
と、内心で思いながら彼女に結果を告げる。流石に人様の財布なので自分が手に取るのは憚られるので彼女自身に回収して貰おう。
■永江 涼香 > 「え?えっと……」
とてとてとベンチに近寄っていく涼香。そして、即座にその顔が喜色に染まる。
「わ、あった!ありがとう、アンタ凄いのね!」
そして笑顔で礼を言う涼香。
近くで見ても一瞬分かりづらかったのを、即座に見つけたことに驚いている様だ。
■飛鷹与一 > 「いえ、どういたしまして。どうやらそちらの財布で合ってるようで何よりです。
下手すれば誰かに持ち去られている可能性もありましたしね」
良かった良かったと笑う。瞳の色はスゥ、と虹色から元の黒い瞳へと戻る。
このくらいなら肉体への負担みたいなのもそんなに無い。使い方はまだぎこちないが。
「…けど、次からは財布はもっとしっかり持ち運んで下さいね?
今回は俺が見つけられたから良かったですけど…。」
と、風紀委員会の癖が出てしまったか一応忠告はしておこう。
■永江 涼香 > 「う、わかってるわよぅ。今度からは気を付けるわ」
少し気まずそうな表情になる涼香。流石に、自分でも迂闊が過ぎたというのは分かっているようで。
「……ん?アンタ、今目がちょっと変な色してた?もしかして魔眼って奴?」
そして、話題逸らし気味に与一の眼に言及する。一瞬だが、目が虹色だったのが見えた様子。
■飛鷹与一 > 「そうして下さい。まぁ、もしまた財布をなくしてしまった時に俺が居合わせたら協力しますので」
と、笑って少し気まずそうにする少女に答えよう。忠告はしたが同じ失敗をする少女には見えない。
「…え?ああ、俺の異能です。「天眼」とか名付けられてますけど…」
むしろ魔眼とは似て非なる、というかある意味で対極に近い気がする。
まぁ、大まかに分類すればこれも目に宿る力という事で魔眼の一種になりそうだが。
「力を発動してる間は瞳の色が黒から虹色に変わるんですよ。俺も最近気付いたんですけどね」
■永江 涼香 > 「その時はお願いするわー。いやーしかし、なんていうかアンタ、パッと見の印象だけど人が好さそうよねー」
あははー、と笑いつつ率直な感想を口にする。良くも悪くも、あまり歯に衣着せぬ性格の涼香である。
「へー、天眼。天の眼だなんて、ちょっとした縁を感じなくもないわね」
そして、天眼と言う異能に関しては興味深そうに。魔眼に限らず、瞳術系を目にするのは初めてなので、好奇心が抑えきれていない。
「ああ、そう言うのって自分ではあんまり気付かないのね。鏡でも見ない限りは当然か」
■飛鷹与一 > 「…人が良さそうに見えるんですか?地味とは言われますけど…。」
はて?と首を傾げた。実際、顔立ちは悪くは無いが空気はむしろ地味である。
少なくとも、私服姿で往来に溶け込んだらまず目立たないだろう。
「まぁ、でも俺自身も力の全てを把握してる訳ではないんですよ。色んな力が秘められてはいるらしいですが」
と、困り笑い。彼女の言う「縁」というのは少し気になったのか、何かあるんですか?と尋ねつつ。
そういえば、ここまで天眼の異能に興味を持たれるのも珍しいと思う。好奇心が旺盛な少女なのかもしれない。
「ですね。…あ、自己紹介忘れてました。俺は2年生の飛鷹与一といいます。風紀委員会に所属してます」
と、思い出したのか今更だが自己紹介と共に軽く会釈を。先ほどからずっと敬語だがこれが少年の普段の口調だ。
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■永江 涼香 > 「少なくとも私にはね。そもそも、地味さ派手さと人の好さって関係ないじゃない?なんていうかほら、自分で言うのもなんだけどいきなり声かけたじゃない?それでも嫌な顔一つせずに、まず何とかしようって動ける人って、やっぱり人がいいんじゃないかなーって」
世間知らずの涼香による評なので余り信憑性はないのだが、涼香的には『こういう時に即座に人助けに動ける人』は人が好いと感じるようだ。
所謂お人よしと言う認識なのかもしれない。
「色んなってことは、他にも能力があるっぽいのね。いいなー。私は『天性の巫女』なのよね。私は天照大御神と親和性の高い肉体で生まれた。それ故に、この身は天照大御神の体現。人間の体だから限度はあるけど、天照大御神の神威を操る事だって出来るわ。同じ『天』に連なるものだから、ちょっと縁を感じちゃって」
天と言う言葉自体は、『超常的なもの』に対する汎用的な称号として使われる場合もあるので、必ずしも天に連なる縁があるとは限らないのだが。そこら辺は余り深く考えてはいなかった。
「私は一年の永江涼香。所属はないわ。よろしく!」
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■飛鷹与一 > 「…成る程。いや、まぁやっぱり困ってる人を無視とかはそりゃ出来ませんからね。
…って、それだからお人好しって事になるのか…。」
確かに、打算よりもついつい裏表無く人助けしてしまう傾向はあるかもしれない。
勿論、天眼の異能があっても無くても、だ。あと、単純に男として女子が困ってたらそりゃ助けたいとも思うし。
なので、彼女のその認識はあながち間違ってもいない、というより正鵠を射てるだろう。
「ええ、ただこの島に来て目覚めた力なので。発動と停止は出来るんですが細かい操作は難しいですね。
――って、天照…ですか?それはまた…凄いですね。現人神、みたいな感じなんでしょうか?」
彼女の言葉にへぇぇ、と素直に驚きつつ。その言葉を疑いもしない。
この島はとんでもない人間が多いし、彼女が嘘を言うように見えないというのが大きい。
「ただ、俺の天眼というのは異能研究してる人が面白半分に名付けただけなので、実際の所は天に”連なる”かは分かりませんけどね」
困ったように肩をすくめて。少なくとも、神聖な意味合いでは彼女自身――天照には全く及ばないと思う。
■永江 涼香 > 「君子独りして必ず慎むが、小人閑居して不善を為す。本当にこすっからい人間ってのは、特に人目が少なければ大体しょーもないことを考える者よ。でもアンタはそういう事もなさそうって言うか、なんか雰囲気、例えば今の財布でも、自分で見つけたら拾わずにそう言うのを扱ってるところに連絡するか、拾っても中身を見ずにそういうところに持ってってたんじゃないかって気がするのよねー。と言うか、さっき敢えて触らなかったでしょ?そういう気遣いが自然に出る人は、まー多分いい人よ」
世間知らずではあるが、その分学はある。要するに頭でっかちのきらいがあるわけだが、それに基づき、与一を『いい人』だと判断している様子。
……ちなみに、年上だろうが偉そうな口調なのは素である。自分が『天に選ばれた特別な人間』と言う自覚があるが故の振る舞いだ。
「でもそれって、伸びしろがあるってことじゃない。私の力は、まあある程度完成しちゃってるから。んー、そういう発想で考えたことなかったけど、確かに現人神的なものかもしれないわね。お父様からは『神よりその力の一端を借り受けることを許された一族である永江家に、稀に生まれる存在』って聞いてたけど。一応伝説では、神に仕える巫女の中でもトップの家系だったから、神にその献身を認められて力を借り受ける権利を与えられた……ってことになってるのよね、ウチ」
その伝承が真実なのかどうかは、涼香にはわからない。ただ、ともかくそういうことが言われてる家に生まれて、実際に天照大御神の力をある程度行使できる体であるというのが涼香にとっての真実である。
「ありゃ、残念。神様の眼と同種、とかだったらお揃いだったのにねー」
本当にちょっと残念そうに。案外、仲間が出来たと思ったのかもしれない。
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■飛鷹与一 > 「…うーん、自分で自分の事を評するのもアレですけど人徳、みたいなものなんでしょうか?
まぁ、確かに人様の財布を勝手に触ったりするのは控えてますし。
単純に金銭トラブルの時に疑われるのが嫌、というのもありますけどね?」
自衛の意味合いも勿論ある。が、結局の所、彼女の推測は間違ってはいないのだ。
むしろ、本物の神様そのものではないとはいえ、それに連なる者からの直々の「良い人」認定。
ある意味で凄いことなのかもしれない。まぁ少年にそんな自覚は無いが。
少女の口調は少年とは対照的にタメ口だが、そこは人それぞれだから少年も気にしていなかった。
「そうですね。ただどれだけ力があっても自分でコントロール出来ないと意味ないですし。
…成る程。先祖返り…は違うか。一族の中で稀に、という事はある意味で血筋が色濃く覚醒したという事かも」
つまり、彼女の肉体そのものが異能みたいなものなのだろう。
彼女の家系の説明を律儀に頷いて聞きつつ、しかし神に連なる家系とか凄いな、と思う。
「神様の目、とかそこまで上等なものでは。ただ個人に発現した異能ってだけですよ。けど――」
薄っすらとその瞳が虹色に。チラリ、と彼女が持つであろう竹刀袋に向けられて。
「…その竹刀袋の中に入っている剣…凄いですね。見ただけで俺の異能が勝手に”同調”したようですし」
神様の目かはわからない。けれど彼女の持つ神剣に反応する何かはあるようだ。
むしろ、竹刀袋越しにその”中身”を見通せたらしい。
■永江 涼香 > 「そこら辺、しっかりしてるってのはやっぱいい人だと思うわよ。例外もいるんだろうけどね」
ま、アンタは例外じゃないでしょー。と笑う。良くも悪くもさっぱりした雰囲気である。
……ちなみに、涼香の言動を見ればわかる通り、別に涼香の精神性自体は天照大御神とリンクはしていない。あくまで、太陽神の力を多少使える女の子、という感じである。ただし、厳格な教育により善悪で言えば比較的善寄りに育っているため、そういう意味では当てになる判断かも知れない。
「あー、力が暴走したらマイナスだしねー。そこのところが厄介かー。
うん、多分そう言う事なんだと思うわ。一族の中でも特に強く何かが出た時に、私みたいなのが生まれるんだと思う。ま、いい事ばっかりじゃないけどね」
苦笑気味に肩を竦める。
涼香は確かに、神の力の一端を得た。だが、それによって普通の人間としての平穏で通俗的な日常と言うものは奪われてしまった。
この世の原則は等価交換。果たして神威と日常が等価かはともかくとして、得るものがあれば失われるものもある。
涼香は生まれつきに神威を得たせいで、生まれつき普通を失ったのだ。
「お、ホント凄いのねその目。コレに気付くなんて」
お目が高い、って言うべきなのかしら?などと言いながら、竹刀袋から直刀を取り出す。
曰く、神代より受け継がれている神宝。天照大御神の力を宿す祭具。
「銘は『神咒神威 天照坐皇大御神 霊結禊祓剣(かじりかむい あまてらしますすめおおみかみ たまむすびみそぎはらえのつるぎ)』。私は、普段は長いから『天照』とだけ呼んでるわ。ウチに伝わる宝剣で、天照大神の力を宿してるのよ」
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■飛鷹与一 > 「えぇと、素直に褒めてくれるのは有難いんですが、結構恥ずかしいのでその辺りで」
ここまで、いい人扱いというか言及された覚えがあまり無いので気恥ずかしさがそろそろ出てきた。
天眼を使えば、それこそ制御は別として彼女のもっと詳細な天照との繋がりを見通せるかもしれない。
だがそれはしない。それはある意味で彼女の中に土足で踏み入るような行為だから。
「力をどう使うかは本人次第。とはいえその力が勝手に好き勝手したら意味が無いわけで。
…そうですね。俺も正直異能で苦労してる所はありますし」
天眼とは別に、もともと備わっていた先天性の異能。通称「死神」。
名前からしてアレだが、実際にタチの悪い異能ではある。今は口にしないが。
(…そんな生まれなら、永江さんが失ったモノは大きいのかな)
漠然とだがそう思う。神性に連なる者が普通に過ごせる、とは考え難い。
勿論、自由はあるだろう。だが束縛も同時にあるのではないか、と。
「……っ!!」
彼女が竹刀袋からソレを取り出せば、虹色の瞳が勝手にソレを見通し始める。
なまじ神性がこの世界の、本物のソレだからか異能が過剰反応しているのだ。
「……確かに”本物”…です。中に…”太陽”が見えます。神性が強すぎて俺の視界が凄い事になってますし」
太陽が見える、光が見える、そして形にならない”何か”が見える。
…これ以上は駄目だ。その先はただの人間が見ていいモノではない。
何とか異能を解除してから一息。虹色から黒に少年の瞳の色も元に戻る。
「…ちょっと”同調”が強すぎたみたいですね。力、というか威光の一部が目に流れ
込んできたみたいです」
あくまで個人の異能。だが矢張り「天眼」は名前だけではないらしい。天照の神性と同調できる親和性はあるようだ。
つまり、彼女が口にした「神様と同種の瞳」というのもあながち間違いとも言い切れない。
■永江 涼香 > 「えー、せっかく褒めてるのにー」
ぶー、と頬を膨らませる。なんだか子供っぽい仕草である。
「ま、そこら辺はねー……私もまあ、こんな力があるからこそ、相応の振る舞いをしなくてはならないって教え込まれたし」
幼少期からの教育には、道徳も含まれていた。
神に仕えながら神の力を扱う巫女である以上、常に正しく振る舞わなくては神の威光を汚すことになる。故に、間違いのない振る舞いをせよ……と厳しく躾けられてきたのだ。
……その結果、反発して家を出てしまったのだから世話ないのだが。
「そこまで見えるの?すっごいわねホント……そうよ、この天照は内部に『本物の太陽』を宿してる。ちっこいけどね。
……その目なら、この天照の本質を見通せるのかもしれないわね。いや、それにはこの剣はちょっと眩しすぎるのかしら?」
与一の反応を見て、大丈夫?と声をかけながら。
普通に見るだけでも普通に眩しい陽光を放つ剣だが、その内部を見通せば、溢れんばかりの神威に目を焼かれる可能性だってあるだろう。
寧ろ、親和性があるからこそ視界が凄い事になるというだけで済んだのかもしれない。
「でも、その『天眼』、個人の異能だって言ってたけど、名前負けはしてないんじゃない?神威と同調出来るってことは、少なくとも邪なものじゃない……寧ろ神聖なものの可能性が高いわよ?」
■飛鷹与一 > 「いや、褒め言葉は素直に嬉しいですけど!何か何度も言われると恥ずかしいんですって!」
と、子供っぽい仕草で頬を膨らませる少女に苦笑いを返すだろう。
勿論、彼女が素直にそう評価してくれてるのは理解しているので嫌という訳ではないのだが。
「…力には代償とか色々ありますけど、永江さんの場合はそれが代償みたいなもの、なんですかね」
肉体そのものが神性の異能みたいなものだから、必然彼女自身の自由もある程度は犠牲になる、というのも不思議ではないのだろう。
しかし目が地味にヒリヒリする。神威の光を直視したからだだろう。
逆に言えば、直視してこの程度で済んでいるのだから矢張り親和性は高いと思われる。
これが魔眼だったり、普通に見た場合は強すぎる光に目が焼かれる可能性が高い。
「…多分、見ようと思えばその天照の神剣の本質は間違いなく見えます。
けど、多分それをしたら異能はともかく俺の目が潰れますね。
あくまで俺の瞳に異能が宿ってるだけで、目の機能そのものは人間のソレなので」
つまり、目の機能は人間準拠、そこに異能が宿ってるからこそ多種多様な力を発揮できる。
異能が神様の光を和らげてくれたからこそ、ヒリヒリする程度で済んでいる。
彼女の問いかけに「大丈夫です」と頷く。異能を解除した状態で改めて神剣を見る。
それでも感じ取れる威光。ただ異能を停止しているので仲間で見通さないので大丈夫そうだ。
「…冷静に考えたら、神様の力とリンクしてるって事ですよねソレ。
俺の異能はどうなってるんだか…。むしろ神性と相性が良いとか今日初めて知りましたよ」
どうやら、天眼は名前だけではなかったらしい。まさかの事実だ。
少なくとも、魔眼とは矢張り違う類なのは間違いなくて。
「…あ、俺はそろそろ帰らないと。永江さんはどうします?
途中まで送りましょうか?夜は物騒な輩も出たりしますし」
神剣と彼女自身の血筋が守護してくれそうだが、一応ボディガードを申し出てみる。
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■永江 涼香 > 「あー、褒められ慣れてない系かしら?」
くすくすと笑う。まあ、実は涼香自身もあんまり褒められ慣れていなかったりするのだが。
「そうね。西洋のノブリス・オブリージュって概念にも似てるけど、力ある者、何かを持つ者は、それにふさわしい振る舞いを求められる。私は生まれつき力ある者だったから、それらしい振る舞いを常に求められたわ。
……それがあんまりに退屈だったから、家を飛び出してきたんだけど」
てへ、と舌を出して笑ってそんな事を言う。見ようによっては、義務から逃げ出したと取られるかもしれない。
「あちゃー、やっぱそうなっちゃうわよね。いやー、私って一応天照は使えるんだけど、お父様には『それはその剣の本質ではない』って言われちゃったのよねー。貴方に頼めばその本質が分かるかもー、ってちょっと期待したんだけど、流石に目を潰すのを対価にするのは高すぎだわー」
むう、と首をかしげる。
普段、涼香は自身の神威で内部の極小太陽を無理矢理励起させて『天照大御神の陽光』を引き出し、剣を振る動作と共にそれをビームのように撃ち出す使い方をしている。
こうすることにより、天照大御神の浄化の属性や単純な高エネルギーに加え、『全てを焼き尽くす太陽の光』と言う属性が付与され、軌道上にあるものを浄化しながら焼き払うという非常に攻撃的な効果を発揮する。
……のだが、元々祭具であることから分かるように、この用法は『神咒神威 天照坐皇大御神 霊結禊祓剣』の本質とは違う、副次的な使い方である。
その本質に、まだ涼香は気付いていないのだ。
「そうね。寧ろ御神体と言える太陽を宿している以上、小規模ながらこの剣自体が祭壇であり、そして天照大御神の分霊と言えるかもしれない。それと相性がいいってんだから……その目、結構凄いのかもよ?」
出雲神話に目に関する特殊な能力を司る神様いたかしらねー?と考えつつ、その後の言葉にも思考を巡らせる。
帰るだけなら特に問題ない……とも、言い切れない。
なんせ、涼香の強さを支えているのは日輪の加護。夜には効果がないのだから。
「……折角だしお願いしようかしら。この剣振り回すの前提って、冷静に考えるとちょっと危ないしね」
ご案内:「常世公園」に飛鷹与一さんが現れました。
■飛鷹与一 > 「いや、そんな事は………無いとは言い切れませんねハイ」
若干慣れていないのはあるかもしれない。島の「外」ではあまり真っ当な評価をされた経験が無いのもある。
勿論、一部の親しい人達は自分を正しく見てくれていたが。
「…飛び出してもいいと思いますよ?見識を広めるって事になりますし。
本来は俗世に染まってはいけないんでしょうけど、世を知ってこその神性だと思いますしね」
それに彼女は、連なる者であってもまず一人の人間なのだから。
したい事、見たい事、聞きたい事はきっとある筈だ。世界は広いのだから。
だから、舌を出して笑う少女に笑みを返すのだ。義務から逃げたとは思わない。
そもそも、彼女は籠の中の鳥ではないのだから。自由を少し謳歌して何の問題があろうか?
「流石に、それは神剣の使い手である永江さんが自分で見出すしかないかと。
俺が見て伝えてもそれは裏技というか正道ではないでしょうしね。
ただ、まぁ神性の本質も見れるという自分の目のアレな性能は分かりましたが」
本当に俺の瞳はどうなってるんだ、と苦笑い。個人が持つ異能にしては方向性がおかしい。
ただ、彼女の言葉からして矢張り神性と繋がりが深いのだろうか?もしくは…。
「同調できるって事は何かしらの繋がり、とまではいかなくても神性に認められている力という事になるんでしょうね」
極論、天照が直に認めた異能という事になる。…スケールがアレすぎて意味わからん!
実際、出雲神話に関係あるというよりも、天照の神性、もしくは他の神性も含めて「神様」との相性が良いのかも知れない。
「分かりました。じゃあお送りします。…あ、また無くし物とかあればご連絡して下さい。
失せ物探しにも俺の異能は活用できそうですしね。」
と、笑ってメモを取り出してペンでサラサラと携帯のアドレスを書いて渡しておこう。
それを彼女が実際に使うかどうかは彼女次第だ。まぁ、また偶然会う事もあるだろう。
ともあれ、お茶を飲み干してゴミ箱に捨ててからベンチから立ち上がる。
「さて、じゃあ行きましょう永江さん。あ、ついでに永江さんの家系の事とか教えて下さい」
話のネタにもなるし知識も深まる。そうやって、二人して雑談しながら公園を後にしようと。
勿論、彼女の自宅までか途中までかは分からないがきっちりボディガードはしたとか何とか。
■永江 涼香 > 「ま、そういうのはおいおい慣れていけばいいんじゃない?」
くすくすと笑う。何というか、笑っている姿が妙に似合うのが永江涼香と言う少女の特徴でもある。
「へぇ……そんなこと言われたのは初めてだわ。飛び出して、見識を広めて。それでこその神、か……」
自分自身が神と言うわけでは無いけど、一人の人間として、単に神威を宿すことを関係なく世の中を見て。
その上で、自分の在り様を見定める。
その発想はなかった。と同時、目の前の青年にいくばくかの憧憬を抱く。
ああ、この人はきっと、色々なものを見てきたのだろうな。きっと、私の知らないことをたくさん知っているのだろうな。
それは、凄い事で、羨ましい事だなあ、と。
「カンニングはダメ、かぁ。そりゃそうよねー。そういう意味じゃ、私もまだ伸びしろがあるって事かしら」
天照大御神の神威と言うのは、基本出来る事は決まっている。天照大御神、ひいては太陽信仰に連なる効果を及ぼせるし、それしか出来ない。
だが、『天照』を扱う『永江涼香』の技量には、まだまだ伸びしろがあると言うことかもしれない。
「そうね……暇な時に『目』に関する神様、ちょっと調べとくわ。もしかしたら、その天眼の本質のヒントになるかも」
個人にたまたま発現した異能、というだけにしては、やはり異様である。神性に対して適性があると言うことは、やはり神に連なる異能であると考えるのが自然だ。
そうなると、やはりヒントは『神』にあるのだろう。
「あ、おっけ。それじゃー、なんかあったら電話するわ。
ふふーん、なんだかこういうのいいわよねー」
笑いながら、雑談しつつ公園を出る。
恐らくは、寮の前まで送ってもらった事でしょう。
ご案内:「常世公園」から永江 涼香さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から飛鷹与一さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に和元月香さんが現れました。
■和元月香 > それは、バイト探しの帰りに公園に差し掛かった時の事。
「...あ」
ふと公園の中に目をやった月香は小さく声を上げた。
目を少し見張り、しかし緩やかに口角を上げてたちまち笑顔になる。
そのまま、吸い寄せられるように公園の中へ入る。
まるで幼い子供のようにきらきらと目を輝かせて、
膝を折り曲げてそれと目線を合わせた月香は...。
「にゃん!」
弾んだ声色で、声をかける。
目の前には、ちょこんと白と黒のぶち模様が愛らしい子猫。
鋭いが大きな瞳で、月香に上目遣いで小首を傾げ、
『にゃ?』
可愛らしい声で、一声鳴いた。
■和元月香 > 「〜...っ!?」
(うわわ可愛い可愛い可愛い可愛すぎかお前ぇ!)
珍しく顔をボンッと真っ赤にする。
大袈裟にのげぞって悶絶する月香に、
不思議そうに首をまた傾ける子猫。
『にぃ、にぃ~...』
更に何と。
この愛くるしい子猫は、甘えるように足に身体を擦り付けてきたでは無いか!
月香は流石に驚愕したのか、かちんと数秒停止してしまう。
子猫に萌え殺されたのか、野良だと逃げてしまうはずの子猫の人馴れた様子に素直に驚いたか。
恐らくどちらもだろう。
「〜っっ、
お前マジ可愛いな!!!」
『?にぃ?』
萌と驚きの呪縛から回復した月香は、
足元の子猫の頭を愛でるように何度も撫でる。
子猫はまた首を傾げる。
あざとすぎる。
■和元月香 > 「君は野良なの?
それにしては毛並みが綺麗だしちゃんと食べてる感じ」
『にゃ?』
ひょい、と短い腕の下に手を入れて抱き上げる。
薄い黄金色の瞳が、ぱちくりと瞬きをしてこちらを見下ろした。
ぶらんと垂れ下がった胴体も、ぴらぴら動く短めの尻尾も。
最高に可愛らしい。
『にー』
ちょっと不快げに眉間に皺を寄せて、子猫が身動ぎする。
ぶら下がる感覚に飽きたのだろうか。
「んー?はいはい」
月香はそれににこにこしながら応える。
胸に抱くように猫を抱き寄せて、ベンチに座ってあやし始めた。
「うりうりーくらいやがれ」
『にぃー』
月香にとっての楽園である。
■和元月香 > 頭を撫でてやると、目を細めて享受する。
顎を擽ると、ゴロゴロと喉を鳴らして喜ぶ。
紙パックの牛乳を手に出して与えてやると、
近寄ってきてザラザラの舌で掌を舐めてきた。
「ちょっと休憩しよっかー」
『にぃ』
戯れを満喫し、少し休憩する。
膝の上に香箱座りでくつろいでいる子猫と、
うとうとと微睡み始める月香。
____ぶわり、とスクバの中で黒い気配が揺れた気がしたが気にしないでおこう。