2017/08/24 のログ
■和元月香 > ふわふわと、現実と夢想の狭間を漂う。
どちらも壊れた光と闇だが、仕方なく光に帰ることにする。
「____.....、ん、」
瞼を上げると、一瞬何故この場所にいるのかという思考が過る。
しかし、星の見える夜空と、暗がりに存在する遊具たちによって微睡み前の記憶はすぐに蘇った。
「ふぁぁぁ〜っ..
...と.....」
大きく伸びをして欠伸をする。
...それから膝を見下ろせば、
子猫は瞳を閉じてすぴすぴと寝息を立てていた。
「...ふふん」
寝惚け眼を擦りながらも、優しい手つきで毛並みを梳く。
慈愛のような眠気にとろけた瞳を細めつつも、にやにやと唇を歪めながら。
(かわいい、かわいい、かわいい、)
(...かわいい、)
ふ、と月香の周りの空気が落ちてゆく。
猫の愛らしさに興奮していたせいで上がったように感じる空気が、
冷えるように周りと同化してゆく。
月香は、もう緩みきった笑顔を浮かべていない。
まるで道端に落ちている石ころかのように、
さっき散々可愛がっていた子猫を見下ろす。
嘘のように、好奇心の一欠片も無い瞳。
冷えきった、興味を示さない無の瞳。
____まるで、先程とは別人のような目つきだった。
■和元月香 > この子猫に抱いていた愛でる気持ちが、触れ合いたいという欲求が、
優しい庇護欲までもが、嘘のように霧散していく。
月香自身は突然のそれに、慣れたように小さく息を吐いた。
(...ダメだダメだ、一旦落ち着け)
気づけば、月香の右手は猫の背中に差し向けられていて。
放り出そうとしていたのだろう。
背中の皮を掴んで、子猫に配慮せず。
まるでいらなくなった玩具をゴミ箱に放り捨てるかのように。
「ごめんねぇ」
ぼそりと謝るように呟くと、
月香は掴もうとしていた子猫の背中を労わるように撫でた。
子猫が寝ていたのが幸いだろう。
(いきなり興味失くしたら、放り捨てるような癖辞めたいなぁ。
玩具じゃあるまいし)
ふわー、と再び欠伸。
呑気な物言いで軽く済ませる月香からしたら、
正直大した問題では無かった。
ただ猫には、ちゃんと謝る。
■和元月香 > 『にぃー...?』
「あ、起こしちゃった?」
黄金色の瞳がゆっくり姿を現すのに気づき、
月香はその瞳を覗きこんで笑みを浮かべる。
先程の無関心の象徴のような冷えきった空気と目は、既に跡形も無く。
「子供は体温が高いねぇ」
背中の毛並みに顔を埋めて、瞼を閉じる。
暖かい肉の温度と、匂うのは噎せ返るような土。
とくり、とくり、と心音が確かに聞こえる。
(...生きてる、なぁ)
生を満喫しているぞと、身体が精一杯表現している。
月香はそれに笑みを浮かべた。
『に?』
「...ふぅぅ...はぁぁ」
そのまままた、微睡みへ。
何度眠るつもりなのだろう。
■和元月香 > 本格的な眠りに落ちていく少女を、
腕の中からじっと見上げる子猫。
小さな前足を少女の鎖骨に掛けて、
長い胴体を利用するように頬をぺろぺろと舐める。
「ん、ぅ」
『にゃ!
っ、!!?』
満足げに頷いた猫。
しかし、傍でガタガタと激しく揺れ始めたスクバに飛び上がるとたちまちベンチを駆け下りて茂みに逃げ込んでしまった。
『何やってるのかしら』
『あの畜生が』
少しチャックが開いた鞄の中で踊る白い文字。
それ以外に、赤い二つの光がギラりと凶悪に光った。
「____っ、ん」
月香は、目を覚まさない。
ベンチにもたれ掛かって、すやすやと寝息を立てて惰眠を貪るだけだ。
ご案内:「常世公園」から和元月香さんが去りました。