2017/12/26 のログ
ご案内:「常世公園」にラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが現れました。
ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「はぁ、なんて言うか、結局常世際もクリスマスも置いてきぼりを食らった感じだったわねぇ」

公園のベンチに座って軽いため息を吐いて、それに続けるように独り言。
誰と過ごすわけでもなく、何をするわけでもなく。
偶然出会った知り合いと簡単に話をして、店を回るくらいしかしていない。
さらに言えば知り合いだって決して多いわけじゃない。むしろ少ないくらいだ。
例年なら家族と過ごすクリスマスだって、両親は仕事で一人だった。

物心ついて以来こんなに寂しい時期を過ごしたことなどあっただろうか。
少なくとも記憶にない。
クリスマスの翌日である今日、町はすっかりお正月にむけて雰囲気を変えていた。
この変化の速さに翻弄され、ついていけなくなり、
今こうしてベンチに腰を下ろして呆然としているのだ>

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「別に恋人がほしいとかじゃないけど、せめて話し相手くらいいて欲しいわ…
 訓練だって、一人で銃乱射して、人形相手にナイフを振り回したって面白くないもの…」

誰も聞いていないのを良いことに、普段ため込んだ鬱憤をぶつぶつと。
すでに日は落ちて周りは暗い。
空に広がる雲は雪を降らしそうなほど低く、その高度の低さゆえに街の灯りを反射している。
ベンチに足をのせて体育座りのようにすれば、膝に顔をうずめて冷気から逃げる。
公園の向こうを行き来する人は、その往来を見るだけで忙しそうなのがわかる。

「別に忙しいのにあこがれるわけじゃないけど、退屈は嫌」>

ご案内:「常世公園」に鈴ヶ森 綾さんが現れました。
鈴ヶ森 綾 > 寒い、凍える程に寒い。日が落ちた夜の公園は、憩いの場と言うにはあまりに寒々しく、気分を落ち込ませる。
吐いた息も白く煙って直後に闇に溶ける。
それを見てはしゃげるような童心を持ち合わせていれば、今の気分も少しは違っているのだろうか。
鬱屈した気持ちを抱えたまま一人公園を行く。

ふと、前方のベンチに足を抱えるように座り込んだ人影を見つける。
少年とも少女ともとれぬその姿に、ちらりと視線を送っただけで通り過ぎるところだったが、
ニット帽からはみでたその髪にどことなく見覚えがあり、反射的に足を止め、横から声を掛けた。

「…ラウラさん?」

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 『どうしようかな、帰ろうかな。でも帰ってもやることないしな。
 訓練場は?さっき詰まらないって独り言を言ったばかりじゃない。
 どこかお店回る?でもそんなにお店知らないしな』

一人むつむつと思考を巡らせるが、結局公園のベンチから立ち上がる理由にはなりえず、
同じような自問自答を堂々巡りするだけだった。
顔をうずめたまま深いため息が漏れるが、これが何度目なのかすら分からなかった。


「ん……え、っと。鈴ヶ森さん……でしたっけ?」

ベンチの上で膝を抱えたまま視線を落としてボーっとしていると、不意に声をかけられた。
思考が働き始めるまで数瞬のラグ。そしてやや確認するように彼女の名前を口にした。
これで名前を間違えたらどうしようという不安を抱えて。

鈴ヶ森 綾 > こちらに向けられた顔と声、それが記憶の中のものとぴたりと一致する。
小さく両手を打ち合わせて、にこやかな笑顔を向ける。

「あぁ、やっぱり。こんばんは。こんな所でどうしたのかしら?
 まるで待ち合わせをすっぽかされたみたいな浮かない顔で。」

相手の自信なげな返答に首肯し、隣、座るわね、と小さく断りを入れてから彼女の隣に腰を下ろす。
浮かない顔、という点では先程までの自分もどっこいどっこいだが、今はそのような雰囲気は微塵も感じさせない調子で会話を続ける。

「ほら、雪でも降りそうな空。朝の天気予報は見なかったけれど…何時降ってきても不思議じゃないわね。」

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「ああ、良かった…名前間違えちゃったらどうしようかと…」

彼女の反応をみて自分の記憶が間違いではないことを確認すると、ほっと安堵の表情。

「別に何かをしているわけじゃなくて……
 むしろ何もすることが無くて途方に暮れてたと言うか……」

浮かない顔。確かにそんな表情はしていただろう。
でもそれは誰かに待ち合わせをすっぽかされたとか、そういうのではない。
むしろ誰とも待ち合わせをするようなことが無くて浮かないのだ。
隣に座る彼女のために少しベンチのはじに寄る。
お尻から凍えるような冷たさが伝わってくるのがわかるが、この感覚には慣れっこだ。

「そうですね、たぶんこれから降りますよ。そういう匂いがします。
 鈴ヶ森さんは何か…幼児の帰りとかですか?」

雪が降りそうな匂い。この感覚をわかってくれる人はごく少数だが、自分にはわかる。
雪が降りそうなとき、もしくは振っているときは、空気が独特な匂いを帯びる>

鈴ヶ森 綾 > 「そうだったの。私はてっきり、恋人と喧嘩別れでもして落ち込んでいるのかと…。
 時期が時期でしょう?」

クリスマスに結ばれる恋人たちが入れば、別れる者達もいるだろう。
しかしどうやらその予想は的外れだったらしい。
そして、そういうものと縁がなかったという意味では自分も同類である事に気づき、思わず笑みを溢す。

「あら、そういうの分かるの?異能とか魔術…なのかしら。」

雲が埋め尽くす空を見上げてみるが、自分には今ひとつピンと来ない。
匂いと言われて鼻をスンッと小さく鳴らしてみるが、やはり同様だ。
天に向けた手のひらにも、まだ冬の空気の冷たさ以外は伝わってこなかった。

「今日は帰省する友人がいたから、その見送りに港へ行った帰り。
 ラウラさんは、故郷に戻ったりするのかしら?」

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「あはは、わかれるような恋人なんていませんよ、今年も独り身です」

もともと人付き合いが得意ではないうえ、軍隊に居て、国外の慣れない土地に移ってきたのだ。
恋人なんていないし、いたこともないし、欲しいと思ったこともそんなになかった。
でも、この国でクリスマスの翌日に独り寒い場所でうずくまっていれば、
そんなふうに見られても何ら不思議ではないのかもしれない。

「うーん、私にそういう異能や魔術はないんですが、雪国にいたからですかね?
 なんとなくわかるんです」

実際そういう環境に身を浸すと五感が経験的に鋭くなるというのはあるらしい。
きっとそういう類のモノだろうと自身では結論付けているが。

「そうだったんですね、私は今年はずっと島にいる予定です」

故郷に帰ればきっと楽しいことや、友人にも会えるだろうが、帰る予定はなかった>

鈴ヶ森 綾 > 「ふーん…なんだか勿体無いわ。貴方、とっても可愛らしい顔をしてるのに。
 そういうの、あまり意識した事がないんじゃないかしら?」

身体を少し前に傾けるようにして、コートの襟に隠れる顔を下から覗き込もうとする。
そうしてゆっくりと伸ばされた手が、首元に見え隠れする銀の髪に触れるか触れないかというところまで近づけられる。

「経験、という事かしらね。私は寒いのが苦手だから、その特技はなかなか身につきそうにないわ。
 あまり雪の降る所には居つかないから。」

吹き付ける風の冷たさにぶるりと小さく身体を震わせ、
首元のマフラーをただし、隙間を埋めて寒気の侵入を妨げようとする。

「じゃあ、おんなじね。私も、今年はここに残るつもりでいたから。」

もっとも、帰るべき故郷がどこだったかはとうに忘却してしまった。
帰らない者と帰れない者では、同じとは呼べないのだろうが。